やることと考えることが多過ぎて、昨日は日記を書けませんでした。来てくれた方ごめんなさい。

息子・タク(8ヶ月)は産まれた時から髪の毛がフサフサで、未だ1回も切ったことがなく、もう往年の西城秀樹ばりのライオンのたてがみのようになっていた。

もともと赤ちゃんは体温が高く、だるまストーブのような存在。それに加えてこのところの蒸し暑さでタクはいつも汗ダラダラで、髪の毛を掻き分けてみたら逃避に汗疹ができてしまっていた。おぎゃー。おぎゃー。おギャランドゥ。

「ああかわいそうに」

バッサリ断髪式をすることに決めた。このままではタクがへばってしまい、皮膚もダメージを受け体力の限界、気力もなくなり、引退します。

僕は会社に行っていたのだが、午後3時ごろケータイの着信音が鳴り、

「髪切ったよ」

と書かれたメールに添付された写真は、モンチッチのようになったタクであった。な、なんか女子柔道選手にありがちな髪型だなあ…。

タク
ビフォー。

タク
アフター。

家に帰ってから実物を見てみると、なるほど見事な丸刈り。マルガリータと思わず呼んでしまったほどであるよ。これまでいかに無駄に暑苦しかったかが分かった。これまで女の子に見られることが多かったタクであるが、もう間違えられることもなかろう。

一方で娘・R(2才)の髪もこれまた多く、長くなる一方だが、こちらは嫁がいろいろといじくってだんだんと女の子らしさがむんむんとしてきており、おやじとしてはハアハアする思いである。

とにかくこれで夏の趣になったタク。

「よ、マルガリータ。涼しくなったかい」

マルガリータとは女性の名前であるが、さして差し支えなかろう。

おやじはロリータなのだから。


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夜、仕事から帰って来て子供たちの寝顔を眺めていた。
朝も仕事に行く時に子供たちの寝顔を眺めてから出掛けた。

娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)。丸1日会っていない。同じ屋根の下に住んでいながらこのすれ違い。こんな悲しい思いは僕だけではなく、多くの子を持つ日本のオヤジ達も同じ境遇であるに違いない。

タクの夜泣きが始まったので、嫁がモソリと起き上がった。僕もタクをおおよしよし久しぶりだな、とあやしていると、

「あなたが会社に行った後、Rが『パパどこ行っちゃったの?』って探してたよ」

と嫁が言うので、Rのその言葉を聞いて尚更切なくなった。

「Rちゃん、パパはここにいるよー」

眠っているRの手を握ってみても、Rは夢の世界。すぐそばにいても分かってもらえないもどかしさよ。こんなに近くにいるのに、こんなに遠いなんて。

「せめてパパの夢を見てくれよ。パパがRちゃんの夢の中に行ってあげるからね」

と、Rの頭を撫でて僕も寝床に着こうとしたのだが、5分後

「うーん、うーん」

Rはうなされていた。い、一体夢の中の僕は何をやらかしているというのだ…。

翌朝、Rはいつもより早起きだったので僕と会うことが出来た。起きて僕の顔を見るなり

「ぱぱ、だっこ…」

僕にしがみついて離れなかった。ああそうか。夢の中でも僕に会えなかったんだなあ。しかしそんな朝の逢瀬もいつまでもしていられるわけでもなく、また仕事に出かけていくのであった。スーツにRの鼻水がついていた。

鼻と夢、か…。


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娘・R(2才)と公園で遊んでいる時、ちょっとした催し事が行なわれていて、その中に

「似顔絵:500円」

似顔絵描きのおじさんがいた。僕は遊びながら時々通りかかって様子を伺っていたのだが、常に子連れの客が座っており、おじさんの筆が休まることはなかった。

やはり可愛い我が子の似顔絵を描いてもらいたい、と思う親は多いようである。しかし何故僕も彼らの後ろに並んで待たなかったかというと…

ちょっと…絵柄が…あまり…可愛くない。

そう思ってしまったからである。見本として立てかけてある小泉首相や女の子プロゴルファー(名前忘れた。ばくだんいわに似てる子)と思われる似顔絵は、確かにとても優れていてすぐに分かった。ただ絵柄が「針すなおの絵」っぽくて…。

針すなおの絵を知らない方はこちら

このおじさんや針すなおの画力を貶める気は全くない。ただ、顔の特徴をデフォルメして似せる手法よりも、もっとマンガっぽくてもいいので可愛く描いてもらいたい…という僕の勝手な趣向であった。

イラストが上手い友達や、何度か会ったことがある絵日記サイトの方達には既に描いて貰ったことがある。その時はとても可愛くて有頂天になってしまったものである。ついでに僕の顔も、実物はダンゴムシの裏側のような顔なのに、下手すりゃジャニーさんにセクハラされてもおかしくないぐらいの美形に描いてくれていた。あんな感じがいいのになあ…と、絵描きのおじさんを横目で眺めつつ公園を後にした。

「なんで描いてもらわなかったのよ~」

家に帰ってから嫁に似顔絵のことを話すと、案の定そんなことを言っていたので、針すなおの話から説明を始めていると、

「ぱぱー、えんぴつー」

Rも触発されたのか、絵を描きたくなったようであった。紙と色鉛筆を用意してやると、ぐりぐりと絵を描き始めた。

「はい、ぱぱのかおー」

そこに描かれていたものは、ダンゴムシの裏側であった。


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昼下がり、娘・R(2才)と公園に遊びに行った。

「うなば(砂場)、あそぶの!」

砂場で遊ぶRを横に座って眺めていた。Rの背後にはベンチがあり、そこにはカップルがひと組いたのだが、やがて彼らが目障りになって来た。

イチャイチャしてるんである。日曜の昼下がりのほのぼのとした公園でなんたるみだらな行為。Rの他にも近所のよい子達が遊んでいるのである。そういうことは夜来てやれよ。

にもかかわらずその男女のツガイは男がベンチに座り、女が覆い被さるような形で腰をクネクネ摺り合わせていた。まるで座りながらのランバダ。ほのぼの公園の中で、ここだけ場末ストリップの本番まな板ショー的雰囲気。

早く離れてくれないだろうか。幸いRの背後なので、Rは砂場に夢中で気付いていないが、ちょっとしたきっかけで振り向いてしまうことは大いにある。当然2才児には何をやっているか分からないだろうけれども、Rの澄んだ瞳にこんなみだらなモノを映らせたくなかった。

「ああん、ちょっとやめてよー」

男が更なるみだらな行為に取り掛かったらしく、それを嫌がる女の声。ほのぼのとした公園の中で、ここだけほのぼのレイプ。

お、お前らいい加減に戦艦ヤマトー!と悲鳴を上げそうになったが、逆に男の強引さが幸いし、女が離れてその桃色遊戯は中断した。男から離れてベンチにドカッと座り、ひと息付いている女。よく見るとポッチャリというかダイナミックというか、取り組みを終えて控え室でマゲを結い直している関取のようだった。いろんな意味でガッカリした。

ともあれこれで公園は元のほのぼのとした空気が戻り、ほのぼのレイプカップルを気にすることなくRと遊べるようになった。砂場で地味に遊んでしばらく、

「しゅー(滑り台)、したい」

砂場に飽きたRがそう言うので

「おお、じゃあ行っておいで」

とRを滑り台へ送り出したのだが

「ぱぱー…」

Rはちょっと困り顔。ん?どうした?と滑り台に視線を移すと…てっぺんに先程のほのぼのレイプカップルがいつの間にか登っていて

「ディカプリオ」

こともあろうに今時タイタニックごっこをしていた。今更感にも程がある。開いた口が塞がらなかった。R、お前滑り台に登って後ろから無邪気に突き落として来い。沈没してしまえ。2才児のお前なら犯罪にならん。

しかしこのほのぼのレイプカップルに一番驚いたのは、彼らが

「ゆうたくーん、おいでー」

と呼ぶと、小3ぐらいの男の子がダダッと走って来たことであった。なんと子連れ夫婦だったのである。付き合って程ないカップル故の愛の暴走だと思っていたのに。

新婚ラブラブなカップルでも、普通は子供が出来ると急に所帯じみて、彼らのようなみだらな熱は冷めるものである。男はいざ知らず、女は手を触れただけでも跳ね除ける。どこの夫婦とは言わないが。

それなのにあそこまでベタなベタベタぶりは、一体どういうことなのだろうか。ウチも見習うべきなのだろうか。あ、言っちゃった。

この調子なら、このほのぼのレイプ夫婦の息子君にも弟か妹がわんさかいてもおかしくないのに、と思った。ひょっとしたらほのぼのレイプなだけに

子作りは計画的に

と、しているのかもしれないけど。


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食欲がないので、ここ1週間ほど1日1食である。

会社に行く時、嫁が弁当を持たせてくれるのだが昼は仕事に追われてストレスで食欲が全く湧かず、夜帰って来てからそれを食べていた。

嫁は夕飯も作ってくれているので、それは次の日の弁当の中身になった。だからこの1週間は嫁が前の晩作ったものを翌日の晩に食ってたことになる。そのせいか腹が下り気味。ドンドンパンパン。

昨日の土曜日も休日出勤だったけれども、どうせ今日も食べられないだろうから…と、

「今日は弁当はいいよ」

と嫁に断ってから出掛けたのだが、珍しく食欲が出て来て、嬉しくて調子に乗ってハンバーガー3個食ってしまったら、また夜の食欲が全然なくなってしまった。

仕事後友人たちと飲みに行って、いろいろ珍しいメニューがあって頼んだのだけれども、あまり食えず。

紅しん大根とかドコモ茸とか珍しい食材があったのになあ。あ、いやドコモ茸じゃなかった、マコモ茸だ。「紅しん大根」も、どう読むのかと皆で悩んで

「クレしんじゃないですか?」

飲んでいた内のひとりがクレしん(=クレヨンしんちゃん)のマンガを出版している会社の人だったので言ってみたら

「やめてよー」

と言われてしまった。最近娘・R(2才)がクレヨンしんちゃんのアニメを見始めたらしく、アニメの中でしんちゃんがよくやるお尻をフリフリするポーズをRがやたらとやるようになってしまった。

嫁入り前の娘がそんなみだらなマネを覚えてしまった。どうしてくれるんですか、とこの人に言おうと思ってたのだが忘れてた。今思い出した。

頭に栄養が回ってないようであり、この日記も全然脈絡がないダラダラ文である。申し訳ない。


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「ほれほれ」

嫁が僕の目の前で雑誌をバサッと広げて見せた。

「ああああ、タクが載ってるうううう」

息子・タク(8ヶ月)が雑誌の読者モデルとして紙面に出ていたのであった。読者モデル、すなわち読モ。そういえば2ヶ月ぐらい前に撮影に行くと言ってたっけ。

とは言っても雑誌というより小冊子、それも東京近辺でしか発行されていないフリーペーパーの1記事。それもこの雑誌の殆どを占める企業とのタイアップ記事で、

「赤ちゃんのデリケートな肌に触れるタオルや肌着はやさしく洗いたいものですね。そこで洗剤の○○…」

という感じで、何故かオムツいっちょうの姿のタクがタオルにくるまれた写真が載っていた。当然その洗剤ボトルもしっかりと一緒に写っている。記事の最後にも洗剤の写真と紹介文。要はグーグル広告まみれのブログのような雑誌であった。

洗剤の名前は…なんだっけ。タクしか見てないから分からない。実の親にこの広告記事は効果なし。

嫁はわりとミーハーで、娘・R(2才)の時もそうだったが、育児系雑誌の読者モデルにせっせと応募していた。しかし「たまひよ」などのメジャー系はやはり狭き門らしく、ようやくこのマイナー雑誌に引っ掛かったらしい。

イトーヨーカドーのチラシを眺めていて

「あら、『ドテラ1,800円!』だって」

と注目したら、1,800円の文字の横でドテラを着ている男が、良く見たら5年前「俳優になる!」と言って家出した息子だった、という時の親の気持ちがこんなもんなのであろうか、などと思った。

撮影の際の面白い話を嫁から聞いた。タクがオムツいっちょうになった時、突然雑誌のスタッフが

「あー!それ、まずいです!」

と叫んだのである。何がまずいのかと聞くと、

「オムツにあるミッキーマウスの絵が写ってしまいます…」

プロの雑誌編集者も恐れるとは、ディズニーの著作権保護に対する厳しさは本物であるらしい。急遽別のオムツに換えさせられたのだそうだ。たまたま嫁が持っていたものの、調達できなかったらどうなったのであろう。フルチンか。赤ちゃんのチンチンよりミッキーマウスが写る方を恐れているように感じられた。

嫁もそんな苦労してまでよくやるよ、と苦笑しつつも、実際媒体に載ったRやタクを見るとやはり可愛くてしょうがないので嫁には更なる読モになる機会ををゲットするよう頑張って欲しい。

読モ喰らわば皿まで。


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娘・Rは2才と10ヶ月。幼稚園をどこにすんべか、と考えているこの頃である。

といっても嫁に任せっきりなのだけれども、嫁が目星を付けているところは結構人気の幼稚園らしく、落ちたらどうしようなどと話していた。

「あ、そうそう、リトミック(お遊戯教室)で一緒の●●くんが行っている幼稚園(未就園児のプレ教室のようなもの?)、ってお受験幼稚園なんだって!」

「へえー」

「見学会に行ったらみんなで『福沢諭吉の言葉、天は人の上に人を作らず』って暗唱してたらしいよ!」

「うわー可愛くねー」

ギャグで教えているのだろうか。学歴至上主義に乗っかって、いち早く我が子を人の上に立たせよう、と考える親に送り込また子供達にそれを教えるのか?それとも建前を教えた上で後でホンネのところも教えるのだろうか?

「フフフ、どうだ嫁、Rもそこ受けさせてみるかい?」

「やだ。お受験コースが一番いい人生だとは思わないし、必要とも思わないし、私達の頃は団塊ジュニアで受験も就職もいつも倍率が高かったけれども、普通の大学に入れたし、今は少子化だからそんなムキにならなくてもそこそこのところには行けるんじゃないの?」

「まあ明日テポドンが落ちてきて滅亡するかもしれないしね」

という訳でRをお受験させることはなくなった。「天は人の上に…」などと諳んずるRなど可愛くないし。言われても

「ふーん。パパはママの上に乗ってお前を作ったんだよーん」

と返すだけだし。

見極めは小学生ぐらいになってからでも良いと思う。

「お、これは伸びる」

と感じる能力があって、またRも「中学受験したい!」という意志があれば全力で手助けしてやるし、

「ああこの子に勉強は無理だ。サルにアルゴリズム体操を仕込むぐらい無謀だ」

というのであればそれなりのヴィジョンで育てることとする。大学が無理でも女の子だから短大もあるし。僕が受験の頃、幼なじみのタカコちゃんと一緒に日本史の勉強をした時の会話を思い出す。

「タカコちゃん、僕××大学受けようと思うんだ」

「私は六波羅探題、ダメなら短大」

「阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)…」

「なにそれ」

「般若心経」

「あ、そう」

しかしRを名門お嬢様女子校に入学させるのも悪くない…と思ってもいたり。別にRをお嬢様に育てたいという訳ではない。授業参観の日に堂々と女子校に侵入できるではないか。それだけが楽しみである。ついでに制服も可愛ければ娘を持つ父親冥利に尽きる。

「あれーRの教室はどこだろうー?ここかなー?わあ、ロッカーがいっぱいあるぞー。開けてみよう。ガチャ。クンクン…」

次の日新聞に「女子校更衣室に父兄進入、逮捕」の見出しが。

娘お受験、父お受刑。なんつって。


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「はんばーぐ」

娘・R(2才)との会話の中で、「どんな食べ物が好き?」と聞いたらそんな答えが返ってきた。

「こないだのぴよちゃん教室でもそういう質問されて、ハンバーグって答えてたよ!」

と嫁が言う。ぴよちゃん教室とは幼稚園に入園できる年齢未満の幼児のための教室である。

「他の子はなんて答えてた?」

「○○ちゃんはキャベツって言ってて、●●ちゃんは枝豆って言ってた」

「ぴよちゃん教室ってイモムシとか酔っ払いオヤジがいるのか…」

今の子供達だから、僕の時代とは比べ物にならないぐらいの高級な食べ物の答えが出てるのではと思ったが、2才児に限ってはそうでもないようだ。野菜が好きだなんてヘルシーである。中トロとか言う子がいたらその肥えた体を埋めてやって北京ダックにしようかと思った。

Rはちょっと前までは野菜でも好き嫌いなく何でも食べ、野菜ギライの僕に似ずいい子であることよ、と思っていたのだが、最近だんだんと野菜を除けて食べるようになって来て、ああやっぱり僕の子だと嬉しいような悲しいようなことになっている。食べさせようとしても

「めっ。いやー」

と拒否されてしまう。

「野菜もちゃんと食べなさい」

とは言うものの僕も苦手なので、Rと食べる時はその手前上まさか僕も食べないわけにはいかない。Rと共に覚悟を決めて、「はっ」と腹に気合を入れて勇気を振り絞って食べる所存である。

これを勇気野菜といいます。


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「ぱーぱー。おいでー」

娘・R(2才)に呼ばれたからには行かねばならない。やれだっこしてだのおんぶしてだの馬乗りさせろだの遊びのリクエストから、今から歌うから座って聞いていろ、というジャイアンリサイタルばりの命令まで様々である。

逆らえない僕はRの愛の奴隷。さて今日の命令は…

「ぱぱの、まね、するの。みててね」

「僕のマネ?」

うん、とRは頷くと、コロンと寝転がって

「がー。がー」

いびきをかいて寝るマネをするのであった。なんということだ。

「嫁、僕はそんなにいびきをかいているのか?」

「うん」

Rがモノマネするほどひどいいびきをかくとは、自分自身分からなかった。夜「かく」のはマスター・オブ・べーションだけかと思っていた。

「あなた、みんな一緒に寝る時は子供達よりも早く寝落ちしたり、昼寝してる時あるからねー。でも私は絶対そんなことはないから、寝ている姿は見られてないし」

嫁はそんなことを得意気に言う。本当にそうだろうか。嫁だって子供達より先に眠りに落ちている時もあったぞ…。いびきこそかかないが、沸騰寸前のヤカンみたいな、ぷしゅー、という寝息を立てて寝ていることもある。

ツタンカーメンのような寝相で、眉間に皺をよせて寝ている姿をマネしてやろうか、とも思ったがイマイチインパクトに欠ける。こうなれば嫁が寝静まった後で枕元に立ち、じっくり観察してやろうか。寝っ屁などかましていればベターだ。

「R、見て見て。昨日のママのマネ。おならプー」

尤もそんなことをしたらイビキどころか寝首を掻かれるかもしれないので要注意である。そこまではいかないけれども、寝ている間に額に「アキバ系」と書かれるとか。

そんな命がけのモノマネはわざわざすることもないと思い、Rのいびきをする様を苦笑して眺めるしかないのであった。

命あってのモノマネ。


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昨日の日記と話は前後するが、日曜日の朝のことじゃった。

明け方からガン降りの雨で、10時ごろになってようやく止んだか、いや、まだほんのわずかポツポツ落ちてくる、といった天候になっていた。

梅雨(ツユ)であることよ。

娘・R(2才)は遊びたくてうずうずしていた。しかし今雨が上がったとしても、公園はびしゃびしゃであろうからあまり連れて行きたくない。体を動かしたいRに何をしてやれるかイン・2006年ツユ。

何物も君には代えがたいナッシング・コンペアー・ツーユー(Sinead O'Connor)
あなたに夢中なのクレイジー・フォーユー(Madonna)
特選丸大豆・ショウユー(Kikkoman)

「嫁、どこか屋内でも遊べるとこ行く?」

「こないだRに何したい?って聞いたら『でんしゃにのりたい』って言ってた」

「じゃあ僕が連れて行こう。定期あるし。R、行くかい?」

「いくー!!」

そういうことになった。

「タク(8ヶ月の息子)も連れて行くか」

「いえ、ハナタレがひどいからやめて」

「そうか。タクごめんな。ママと留守番していてくれよ…」

Rとふたりで乗る電車。乗り換えのある駅で降り、

「ほら、黄色い電車、青い電車、オレンジの電車もあるよ」

何種類かの電車を見せたところ、Rは満足したようだった。雨は上がっていたので、駅前も少し散策してみた。Rは僕の手に引かれてちょこちょこ歩く。時々顔を覗き込むとニコニコしている。楽しいらしい。おもちゃ屋や洋菓子屋の前を通っても全然駄々をこねないところが手前味噌だが感心する。

尤も昼飯前には帰ろうと思っていたし、買い食いしたからゴハンを食べられない、なんてことになったら嫁が怒り狂うであろう。だからいつもは長蛇の列が出来ているのに、時間帯と天候のせいか全然並んでいない某有名ラーメン店の前を通った時は、余程入ろうかと思ったが堪えた。

しかし強烈な誘惑がもうひとつ待っていた。とあるビルの入り口の看板に

「メイド喫茶」

と書かれていたのである。こんなところにあるとは。僕はかつて近所にいたRちゃんという、Rの名前のルーツになった美少女をこの上なく好いており、彼女が働いていたこともあり、メイド喫茶に対しては大いなる夢と失われた美少女の幻想を抱き続けている。

Rの手を握ったまま蛇を前にしたガマガエルのようにしばし唸り、

「Rも結構歩いて疲れたかもしれないし、ここでティーをドリンクしても…無理はないな!」

と、足を踏み入れようとした刹那、

「あはは、メイド喫茶だって」

「やだー。アキバ系ー?オタクー?」

後ろから声が聞こえたので、心臓が飛び上がるかと思った。わりかし爽やかげなカップルがケタケタ笑いながら通り過ぎて行ったのである。

「じゃ、か、帰ろうか…」

カップルが視界から消えるのを待ち、そそくさと再びRの手を引いて帰ることにした。

「R、どうだった?」

「おもしろかった!」

父と手を繋いで歩くだけで楽しいR。いつか手を繋ぐ役は僕ではなくなる時が来て…と、ついRの笑顔を見ながら考えた僕の心には、妙に長い乳毛より更に長い梅雨前線が停滞してしまったのであった。

「ただいま。ひたすらぶらぶらして来たよ」

「え、何も食べなかったの?」

嫁にはそれが逆に意外なようであった。外でゴハンを済ませるならそれはそれでよし、という考えだったらしい。ぎゃふん。

そんなことなら有名ラーメン屋で食べておけば良かった。勿論食べた時に言うセリフは

「ばいうー」

であったのに。


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「お父さんにビールでも贈ってあげるか」

嫁がそう言っていたので今日は父の日だと気付いた。

「じゃあ僕が酒屋で買ってくるよ」

「確か父の日詰め合わせ、とかそれっぽいのがあったはずだから買ってきて」

と言われて近所の酒屋に行ったのもの、父の日当日のじかも午後6時には既にそんなものはなかった。仕方がないので普通のビール6本パックを買い、あとオリオンビールを2本買って帰った。

「そんなもんなかったよ!」

「あらそう」

クールに夕飯の支度を続ける嫁は放っておき、僕はさきほど買ったオリオンビールを娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)に持たせ、

「さあ君たち、コレを1本ずつ持って『お父さんありがとう、これどうぞ』と言いなさい」

父の日自作自演を試みた。先月の母の日、嫁は

「子供達が自分で考えて自分で何かしよう、っていうのじゃない限り、そういうヤラセをやってもらっても嬉しくないし意味がない」

と言って何もしなかった。ヤラセが嫌いだからなかなかヤラセてくれないのだろうか。しかし僕は違う。ヤラセ万歳。やらせて番台。ホモでパンチラのロボ飛脚。

「ぱぱありがとう~どうじょ~」

Rは素直に缶を持って僕に差し出した。

「ああっ。いいね。可愛いね。はいこっち向いてにっこり笑って」

すさかずデジカメをRに向けて、父の日おおヤラセ写真を撮影しようとした。なかなか笑ってくれなかったりアングルが悪かったりして何度かダメ出しをしていたら

「ぱぱ!どうじょ!どうじょ!」

とっとと受け取れ、と怒り出してしまった。

「缶が冷たいんだからいつまでも持ってられないのよ!」

嫁もケラケラと僕を嘲笑う。

「私もあなたに何かあげようと思ったんだけど、よく考えたらあなたは私のお父さんじゃないし」

当たり前だ。

タクに至っては持つ気すらなく、ダイレクトに口を付けて今にも飲みたそうな感じでガフガフと舐めまくっていた。お前が酒を飲むにはあと19年4ヶ月早い!

「まあそんなわけで」

誰が缶を開けてくれるわけでもなく、コップに注いでくれるわけでもなく、ひとりでポチッとプルタブを開けて飲むビールの味は、昔好きだった子に振られて飲んだ涙交じりの味に似ていた。あの時僕は血の涙を流していた。血だから赤だね、じゃあビールにトマトジュースを混ぜてみようか、僕だけのオリジナルカクテル、名付けて「ブロークンハート」だね、とか言っていたあの時の自分を自分で火葬してやりたい。レッドアイだバカ。

嫁よお前は正しかった。自作自演なぞするものではないね。オリオンビールだけに、夜空のお星様も笑っているさ。冬の星座だし、雨降ってるけど。

自虐自怨。


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うちの嫁は大変よく出来ており、毎晩必ず夕飯を作っていてくれる。

仕事で遅くなって帰って来ても、温め直すだけで食べられるようになっている。鍋だのフライパンだのを開ければ料理が出来ているし、要冷蔵のものは冷蔵庫の中に皿ごと盛り付けられて入っているし、ゴハンも保温中。

至れり尽くせり諸人こぞりて主は来ませり、なのである。

今宵も家族全員が寝静まった後、ひとりもそもそと食べるべ!、とフライパンを覗いてみたところ、思わず悲鳴を上げそうになった。

めちゃくちゃにカリカリになった肉があった。おそらく料理の存在感からして、これがメインディッシュであろうことは想像に難くないが、これを食うのか。干し肉とかジャーキーというレベルを通り越して、黒ずんだ長いヘソの緒のような凶悪なビジュアル。

とても牛・豚・鳥などのメジャーどころの肉には見えなかった。もしかしたらこの肉の生前の名前はポチとかタマとかではあるまいな…などと考え、

「…どっか食べにいこ」

そーっと家を抜け出たのであった。どうせ嫁は爆睡中であり気付くはずもない。嫁の今夜の料理の手間隙と食材も無駄にはならない。そのまま翌日の飯として出されるだけだ。とりあえず何の肉か、どういう意図でこれを作ったかを聞かないことには…。

という訳で深夜営業のラーメン屋にしようか牛丼屋にしようか迷ったが、「なか卯」でザルソバを食べた。やはりラーメンにすべきだったかと少し後悔した。

ザルソバというものは、どこで食べてもザルソバであることよなあ…

このことであった。片やラーメンは様々なスープ、様々な麺のタイプがあり、今まで見たこともないようなメタモルフォーゼされたラーメンが日々生まれ、栄枯盛衰のラーメンバトルを繰り広げている。。

しかるにソバはどうだ。天ぷらソバや鴨南蛮ソバ他種類はあれど、それはトッピングの違いでしかない。遠い昔、「そばゲッティ」なる得体の知れないCMを見たような記憶があるが、実物は見たことがない。最近では「韃靼そば」というのを聞いたことがあるが、それもまだ見たことがない。僕にとっては「韃靼」といえば、

「よし来たおい来た、それごらんの通り。ダッタン人の矢よりも矢よりも速く!」

という北島マヤのセリフ(※)しか思い浮かばない。ダッターン。ボヨヨンボヨヨン。

韃靼
※北島マヤ(ガラスの仮面)

同じ麺類だというのに、進化を忘れた食べ物よ。

いや、たかがなか卯でザルを食べて思い付きで言っているだけなので「私は神田でソバを刻んで40年だが…」という通の人などは聞き流して欲しい。ただ脇にいた飲み会帰り風会社員3人組もザルを食べていたので、みんな同じザルを食っているのもなんだか芸がないことよ…と思った次第。

塩ラーメン、醤油ラーメン、味噌ラーメンではないけれども、ザルソバにも3種類ぐらいあればもっと楽しいのではないだろうか。

すなわち、見ザル言わザル聞かザル。わーまたダジャレだ。

【追記】

翌日、嫁が言うには

「脂がすごそうだったのでカリカリにした」

とのことだった。脂とカリカリの関係はよく分からなかったが、確かにラードを食ってるんじゃないかって位脂っこかった。

これが僕のソバにいる人。


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テポドン


テポドン来ませんように、との祈りをこめ、
今日はこのTシャツを着て過ごすことにする。

仕事から帰って来ると、我が家の者達は入浴中であった。

僕は当然それを覗くべく、カメラを片手に

「はーい。お父さんがデジカメでデバカメですよ~」

親父ギャグながらデジカメという当世最新テクノロジーのエッセンスを取り入れた革命的ダジャレを披露してみたが、皆に無視されて、嫁などは呆れ顔でテクノロジーどころかエロジジーを見る目であった。

「おお、我が家の天使たちよ…」

気を取り直して家族の衆に呼びかけると、タクは嫁に抱かれてニコニコと微笑み、Rは何故か拳を耳に当て

「もしもしい~。ぱぱでっか~?」

電話ごっこをするのであった。」

「もしもしー。パパですよー。Rちゃん、パンツ何色?」

全裸だっつの。

「ぱぱ、おふろ、はいるの。あそぶの」

Rは僕も風呂に入れという。しかし悲しいかな、我が家の風呂は狭い。4人で湯船に浸かるのは無理である。僕が入るには、嫁が出なければならない。

「今はママと一緒にお風呂に入ってるからいいじゃないの」

と言うと

「まま、でるの」

嫁はとっとと出ろ、と仕切るR。

「あはははは!嫁、どうする?」

「もう洗い終わったから出るよ!」

嫁はタクを抱えて出て行ってしまった。さあ邪魔者は消えた。速攻でスーツを脱ぎ捨て、ルージュを脱ぎ捨て、全てを脱ぎ捨て、僕は恋のストリッパー。俺の全てを見せてやる。お前の全てを見たい。

「さーお風呂で遊びましょうー」

全力でRとお風呂で遊ぶ所存であるところの僕のふたつの股間のふくらみは、何でも出来る証拠なの。タマキン全力投球。

「ぱぱ、みてみて~」

Rは1日ごとにと言っていいほど新しい遊びを覚え、僕にお湯をぶっかけて来たりする。僕もRを抱き上げたりして応酬するが、Rも随分と大きくなり、風呂が手狭になってきたことよなあ、としみじみ感じた。

「はい、じゃあパパはあわあわする(体を洗う)からねー」

湯船から出、全身バブル魔人になりながら考えた。本当なら嫁もタクも皆一緒にお風呂で遊びたいところであるが、前述したとおり狭すぎる。もしも僕に財力があったなら。もしもでかい風呂が作れたなら。もしもピアノが弾けたなら。

全員入ればイモ洗い状態になってしまう、と溜息をひとつ付きながら洗っているのは、Rとタクを作ったタネイモであった。心持ち右曲がり。甲斐性のない自分が憎い。貧乏が憎い。じっと手を見る。

タマキン洗うが如し。


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仕事から帰ってくると、嫁と子供たちは布団に入っていたが、娘・R(2才)がむっくりと顔を上げてニコリと笑った。

「あなたが帰ってくるのをずーっと待ってたのよ」

嫁もモッソリ起き上がって言った。なんだか最近Rは熱烈に僕の帰りを待っていてくれるようである。

「Rちゃん、じぶん、作ったの!」

Rは自分で作ったという、ビニール袋に細かく切った色とりどりの折り紙が入ったおもちゃ?を指差した。

「おお、可愛いねえ。ハサミちょっきん出来たの?」

「うん」

「幼稚園(のプレ教室)で作ったんだけど、それをあなたに説明するのを練習していたのよ。『こうやってーああやってー』とかずーっと言ってたの」

僕に見せて褒めてもらいたいといういじらしさに胸の奥がぎゅうっとなってしまった。

「はいパパ、ねんねするよ」

「はいはい、じゃあおやすみ」

練習どおり説明出来て満足したのか、じゃあ一緒に寝ようと言う。Rの隣に嫁が寝て、嫁の隣に息子・タク(8ヶ月)が寝て、そのとなりに僕が寝るのだ。僕もモソモソと寝床に入ると

「め!だっこしてよー。ふとん、いれてよー」

Rは布団の上に座っているくせに、僕が抱いて布団に寝かせてやらないとダメなのだと言う。

「ほら、お姫様だっこだよー」

「えへへ」

なんとラブラブな感じであることよ。久しく忘れていた、デートの時の「ふたりのために世界はあるの」的な甘ったるい匂いが漂ってきた。嫁と寝ているタクはいるけど。

「なあRちゃん、パパのこと好きか?」

甘い雰囲気には甘い言葉が出るものである。

「うん、Rちゃん、ぱぱ、すきー」

「じゃあチューしてえ」

甘い雰囲気にはバカな言葉が出るものである。

「ちゅ」

しかしRがちゅーしたのは嫁であった。Rはどんなに僕にベタベタしていても、ちゅーだけは滅多にしてくれない。結婚するまで処女なのよ、という貞操があるのかそれとも単にパパお口臭いのか。

「まあ、分かっていたことだ…」

このラブリーな雰囲気ならもしや…と思ったのが浅はかであった。もう眠ろう。眠りの中でその叶わぬ夢を見よう。と、目をつぶった途端

「ちゅ」

唇に柔らかい奇襲を受けた。目を開けるとどアップのRの顔が笑っていた。

「あ、ありがとう」

パパ嬉しい。もう死んでもいい。僕はラブラブの頂点まで極まった。

「ぱぱ、ままにちゅーしてえ」

浮かれていると今度は僕が嫁にちゅーしろと言う。参ったなあ。

「じゃあ嫁、失礼をば…」

勝手知ったる嫁の体とばかりに押さえかかろうとしたら

「いや、いいですから」

手を広げて全力の拒否をした。

「まあそう言わずに」

「いえマジ勘弁」

その嫁の姿に手を広げ憤怒の表情の金剛力士像が重なった。なにマジ切れしてんすか。このラブラブな空気が読めないんすか。せっかくベタなホームドラマのような雰囲気になっていたのに。一気にサスペンスドラマで血を見る2分前のような殺伐とした空気になってしまった。

ひょっとしたら妬いてるのか。まさかね。


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朝、ヒゲを剃っていると、息子・タク(8ヶ月)がちょこちょことハイハイで追い掛けて来た。

このちょこちょこと僕の後を付いてくる息子は、まるで仔犬かウサギのような小動物の趣があり、思わず抱き締めたい感に襲われる。

片手でタクを抱いて、もう片方でヒゲソリを動かしていると、タクの手がそれを掴もうとするので

「こら、危ないからよしなさい。パパに謝りなさい。アイアムソーリーヒゲソーリー!」

慌ててタクを降ろしてやると、ニコニコ笑っている。

「お前もヒゲソリしたいのか?でも、もっと大きくなってからだなー」

すると横にいた嫁が「ええええ」と悲しみの叫びを上げた。

「この可愛いタクに…今はちゅるちゅるの肌のタクに…ヒゲなんてイヤアア!!」

なんだか美少女の写真を眺めつつ、大人になって欲しくないよう…と嘆くロリコンおじさんのようなキモさを感じさせた。

「でもしょうがないでしょうよ…いずれそうなるんだから」

今はウサギのような小動物のタクでも、やがてはヒゲのみならずありとあらゆる剛毛が生え、夜な夜な人妻を襲う野獣に成長するかもしれないではないか。しかしそれも宿命なのだ。

そして乳毛の1本がが異様に長くて気持ち悪くなったり、足が臭くなったり親父臭いダジャレばかり言うようになったり加齢臭も漂ってきて…あ、それは僕か。いや、加齢臭はない。僕の体臭はプロヴァンスの南風の香りである。

「そりゃそうなんだけどさあ」

と諸行無常を悲しむ表情の嫁であったが

「それに声変わりもするしさ」

「それは別にいいのよ」

「オカアサン、夢精シチャッター、とか。野太い声で」

「タクはそんなこと言わない!」

嫁がイヤなのは体毛だけなのだろうか。僕の夜の誘いを徹底的に拒むのも、乳毛が原因のひとつなのだろうか。しかし毛が薄かろうが濃かろうが、愛して欲しい。

僕だってタクがどんなに毛むくじゃらになろうが愛しいことに変わりはないのである。さあみんなで歌おう。

悔しいけれど、お前に夢中、ギャランドゥ。


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仕事から帰って来たのは、午後11時近かっただろうか。

僕のパソコン部屋に入るには、眠る嫁と娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)が眠る寝室を通り過ぎなければならず、起こさないように真っ暗のまま手探り足探りでタクを踏まないようにそーっと歩くのが常である。

約30分後、タクの夜泣きの声が聞こえてきたので寝室のフスマを開けると、嫁が授乳しているところであった。

「あなたが帰ってきた時ね、Rまだ起きてたよ」

「え?こんな時間なのに?」

その時は暗闇に目が慣れてないので分からなかったのである。すさかずRに目を移したが、さすがにもう寝ていた。

「布団に入ってからずーっと『パパ来るよ~』って言ってて、待ってたのよ。さすがにあなたが帰ってきた時にはもう半分寝かかってたからボーっとしてたけど、それでも目が開いてたよ」

「それほどまでに僕のことを…ああ、すまないことをした」

帰った時に頭でも撫でてやればよかった。近頃、Rはやまだかつてない勢いで僕にベッタリである。朝起きた途端に

「あそんで~」

と僕に擦り寄り、休日ともなると1日中遊んで遊んで攻撃である。きっと僕が帰って来てから遊びたかったのであろう。しかし遅過ぎた。

「朝起きたら遊んでやろうなあ」

ということでむっくり起きた僕であったが、Rはまだ布団にくるまっていた。なのでまたパソコン部屋に閉じこもり、朝の一服をしつつネットでWカップの惨敗ニュースを色々見まくることにした。

「いやあ、なかなかよき乳房であった…」

Wカップ惨敗を見るつもりがいつの間にかFカップおっぱいを堪能していたため、気付いたら30分ぐらい経っていた。

再び寝室に戻ると、布団にくるまったRは起きていて、僕の顔を見るなり

「うわあああん!ぱぱー!」

泣きながら布団から飛び出し僕に抱きついて来るではないか。

「ど、どうしたどうした」

すると隣にいた嫁が言った。

「あなたが起きた時にRちゃんも起きたのよ。でもあなたすぐ隣の部屋に行っちゃったもんだから…。遊んで欲しくてずっと待ってたのよね」

「あああ、ごめんよー」

Rは僕を静かに待っていたのだ。フスマをがらっと開けて「ぱぱ遊んでよー!」とせかすよりも、Rはただひたすら待つ女。逆にその方が胸が締め付けられてしまう思いになった。僕は「待つ女」のシチュエイションに弱いのである。そのいじらしさにグッと来てしまう。夜に続いて再びすまない気持ちになり、絵本を読んでやった。

自分が愛する娘がこれほど自分を待ち焦がれているとは…。かつての新婚時代、嫁が僕の帰りを待ち侘びてくれていたこともあったが、今ではお互いいるのが当たり前で、下手すりゃなんでいるの、とすら思われてそうだが、それ以来忘れていた感動である。

このRとの蜜月もいずれは終焉を迎えるものであり、大きくなれば

「親父、キモイ」

などと、自分体の半分はそのキモイ親父の金玉から発生したのだということを棚に上げて言うようになるだろう。それだけにRが僕を待ち焦がれ、慕ってくることは僕の大きな心の糧になったのである。

あーあー 日本のーどこかにー 私を 待ってる 人がいるー

いい日朝勃ち(Fカップの影響による)


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家族4人で電車に乗って、わが街の駅で降りた時のこと。

この駅は古くて昇降機がなく、嫁は娘・R(2才)がヨチヨチ階段を降りるのを見守り、僕は息子・タク(8ヶ月)を乗せたベビーカーを持ち上げながら一足先に降りて改札を出て待っていた。

やがて階段を降り切ったRは、自分で階段が降りられたことに得意になるお年頃。改札の外にいる僕を見つけ、

「ぱぱー!じぶんでおりたよー!!」

嫁の手が離れた隙にだだだっと駆けて来てしまい、自動改札をそのまま通ろうと突っ込んで来た。自動改札はこの時開いていたが、Rが通ろうとすればバタンと閉まるのではないか、と一瞬にして思ったが

「危ない…」

と言うヒマもなくRは自動改札を駆け抜けてしまっていた。幸いなことに自動改札は閉まらなかったが、小さい子供だったらセンサーが感知せず、スルーになるものなのだろうか?とすると大人でも身をかがめてマサルガリレイ(※)のように歩けば理論上は切符無しで通過出来るということになる(但し人間としての尊厳は失われる)

マサルガリレイ
※マサルガリレイ

また、改札の脇には駅員室があり、そこにひとり駅員が立っていた。もしかしたら駅員の手元に操作盤があり、Rが走るのを見てスイッチをオフにしてくれた…とか。いや、自動改札が止まってピンポンピンポンうるさい時があるが、その時は駅員が駆け寄って直にリセットさせてたなあ。するとそんな遠隔操作は出来ないのかもなあ…。

などと家に帰ってから色々考えてしまった。もしまたRが自動改札を駆け抜けようとして板が閉まったら激突してしまう。Rは軽いので後ろに転がってしまうだろう。

閉まるか閉まらないか、その事実を確かめておきたい…。今日会社から帰る電車の中で思い立ち、降りてから駅員を探すと、なぎら健壱似の駅員がいたので捕まえて聞いてみた。

「あのー、つかぬことをお伺いしますが…」

「は?」

露骨に不信人物を見る目で睨むなぎら。お、おいら怪しいもんじゃないよ。おいらベロってんだ…。

「(腰の高さに手を当てて)これぐらいの子供が自動改札を通り抜けようとした場合、閉まってしまうものなんでしょうか。こないだ僕の子供が駆け抜けてヒヤッとしたものですから」

「ふーむ、なるほど」

「…どうなんでしょう?」

「…どうなんだろうねえ」

なぎらアァァッ。ダメだこの人。

餅を餅屋に聞いてもダメであった。かくなる上はインターネッツで調べるしかない。その結果、自動改札機メーカーのひとつ、東芝のサイトに「東芝レビュー」というページがあり、そこに「複数処理機能を持つ新型自動改札機」

という論文(PDFファイル)が見つかった。そこには

「人間検知は従来、高さ1,220mmに配置された上部センサと700mm付近に配置された下部センサから構成されていた」

とあった。この後改良して上部センサを1,005mmに下げることが出来た云々、と書かれているが、下部センサはそのままのようである。Rの身長は余裕で700mmを超えている。尤も上部下部両方のセンサーが働いて初めてパタンと閉まるのかもしれないし、メーカーは東芝以外にもあるので違う構造のものもあるだろう。しかしそこまで調べられなかった。結局はっきりとは分からず。

いずれにせよ自動改札の危険のみならず、人でごった返す駅では子供の手を離してはいけない、ということであるな、と改めて気を付けなければならないと思った次第である。ご存知の方教えて下さい。

それにしても自動改札でパタンとやられるのは結構腹が立つ。颯爽と通り過ぎようとした途端板で阻まれ、ごめんよ、うっかり精算し忘れたんだよ、と言おうとしても相手は冷酷なメカ、ピンポンピンポンと無情なアラームを鳴らすばかり。

ここは峰不二子のような、みだら且つ艶のある声優を雇い、

「ウッフーン。まだあなたを帰すわけにはいかないの。ウフフ、せっかちさんね。まだあなたとの精算が済んでないわ…」

というエロティックなアナウンスでも出て、通せんぼするのは固い板でなく、乳房型の柔らかいクッションであれば、

「フフフ、君も困った子猫ちゃんだね」

と気持ちよく回れ右出来ようというもの。メーカー様、是非ご検討お願い奉る。

自動ワイセツ機。


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雨が一日中降っていた日曜日。

娘・R(2才)はそれでも外で遊びたがってしょうがない。

「今日はおうちで遊んでいようね」

と言っても窓に擦り寄り雨が振る光景を眺めていた。

「おそと行く?」

「うん」

「傘さしたいの?」

「うん!」

Rの本意はこれであった。何の変哲もない、ぼろいコンビニで買った緑のビニール傘があるのだが、何故かRはこれを僕がRに買ってやった傘だと思い込み、

「Rちゃんの!」

と言って憚らない。この傘を使って外に出たいようだ。しかしRはまだ自分で傘をさして外を歩いたことはない…。

「じゃあパパと初めての雨のお出かけに行くか」

「いくー!」

傘持ちR


そんなわけでRに雨ガッパを着させ、緑の傘を持たせて外に出たところ、初めて自分で持つ傘の重みと、意外に強い雨にRはびびっていた。甲子園の入場行進の、緊張しまくってぎこちなく歩くプラカード持ちの女子高生のよう。

「どうする、おうち入るか?」

「いや!」

「じゃあ傘はこう持って…」

ガチガチになっているRに傘の楽な持ち方を教えてやると

「こう?」

「そうそう。上手です」

「こう?えへへへ」

ようやく緊張が解け上機嫌になって歩いて行った。

しかし端から見てると小さなテルテル坊主がヨチヨチ歩いている姿にしか見えず、なんともおかしみのある姿であり、すれ違う人達から

「カワイー」

などと言われる雨ガッパの娘とエロガッパの父であった。雨に乗じての誘拐犯に見られていないだろうか…とこちらがビクビクしつつ、近所のスーパーに着いた。

「じゃあここで買い物して帰るよー」

雨ガッパを脱がせたRと店内を歩いていると、NHKでワールドカップのニュースになるとよく流れている曲がかかっていた。曲名も歌っている人も知らない。光GENJIみたいな複数の男の歌声で、

「なーななっなっなー、ヘイ、ゲシュタポー」

と聞こえる曲。う、うまく表現できない…。Rはこの曲を聞いた途端

「あ、さっかー」

すぐに分かってしまった。ニュースなどはボーっと見ているようで、分かっているのだなあと、2才児の意外な知能の高さに驚いてしまった。

「そうだね、サッカーだね」

「さっかー!さっかー!」

「うわああ走り回るな!」

買い物を終え、再びRに雨ガッパを着せて傘を持たせる。

「ぱぱ、さっかー?」

「いや、これはかっさー」

やばい、僕のダジャレ癖が伝染ってしまった…。


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「あなたに言うことがあったんだけど…なんだっけ…」

嫁が迷いながらうろうろしていた。思い出せない程度のことなら大して重要な話ではなかろう。これでもし

「あ、思い出した。離婚して」

とかいうギャグだったら悲し過ぎて笑うしかない。

「あ、思い出した。今日の『アド街』は『乙女ロード』だって」

実際思い出したことは、やはり全然大したことではなかった。

「アド街」とは「出没!アド街ック天国」という、街の名物を紹介する番組で、テレビ東京が作っているので東京近辺の街を取り上げることが多い。司会は愛川欽也で、「なるほど!ザ・ワールド」なき今、キンキンの「おまっとさんでした」が聞くことが出来る貴重な番組である。

そして「乙女ロード」とは池袋東口にある特殊なエリアを指す。別に純情可憐な乙女がたくさんいるのではない。むしろ乙女の対極に位置する、いわゆる「腐女子」と呼ばれる、または自虐的に自らをそう呼ぶオタク女性が闊歩する。彼女達が好むホモ系同人誌が売られている店が林立している通りがそうなのである。「乙女」は褒め殺しで名付けられたものと思われる。

嫁よ。僕がそんな番組を見ると思っているのか!

…えーと、9時からだったよね…。

実は2月ごろ乙女ロード近辺にある「男装喫茶」でわざわざ娘・R(2才)も連れて行ってオフ会をやった。ビシッとしたスーツ姿の男装店員が、宝塚ばりの雰囲気でもてなしてくれるので、腐女子に大人気なのである。

もっともこの男装の麗人達は、Rの前では「カワイー」「いくつでちゅか?」などと素の女の子に戻ってしまっていたので、逆におじさんはときめいてしまった。ここがアド街で紹介されることは間違いない、と思った。

嫁がそんな話を振って来たのも僕を腐女子でこそないものの、腐ったオタク男として見ているからであろう。しかも嫁とこの会話をした後、たまたま池袋東口方面に用事があったので出掛けたのである。

サンシャイン通りを歩いていたら、オタク文化の象徴といえるメイドコスプレをした可愛い女の子がメイド喫茶のチラシを配っており、見惚れていたら前を歩く嫁を見失ってしまったり、ようやく追いついたら道を間違えて

「そっちじゃないよ!そっちは乙女ロードだよ!行きたいの?」

と天下の往来で大声で嫁に言われてしまったりした。よそさまで恥じかかせるんじゃないよ!とにかく僕の頭は池袋オタク文化と乙女ロードで満ち満ちてしまったようであり、結局アド街を見てしまったのである。

案の定、前述の「男装喫茶」が取り上げられていた。一緒に見ていたRが

「あ!Rちゃんも行ったでしょ!行ったでしょ!」

と叫び、驚いた。Rは覚えていたのである。

「そ、そうだね。でもあんまりほかの人には言わない方がいいよ…」

どうせすぐ忘れると思って連れて行ったのだが、2才児の記憶力は侮れなかった。

やがて番組は常連客である女性ふたり組を映した。ひとりめが男装店員に熱を上げる理由を

「見た目は男だけれども、中身は女だから、自分の気持ちを分かってもらえるところがいいんです」

こんな感じのことを喋っていた。フーン。次にふたり目の女性が映った。

乙女ロード
こんな感じの人だったのだが、こともあろうに

「(男装した女性だから)ナンパされることもないから安心ですしね」

と言っていたので、腰が抜けそうになってしまった。

乙女ロード
(キャプチャー画面)

いや、まあ、用心するに越したことはないですけど…。おそらくこのテレビを見ていた人全てが一斉にこうツッコミを入れたに違いない。

乙女ロード

僕がこの男装喫茶に行った時は可愛い女の子もいた。これが乙女ロードの乙女達すべてであるとは思わない。しかし全てではないが多数なのは事実…。テレビ制作側も、よくこんな濃いい乙女を見つけたものだなあ…。

命短し濃いぜよ乙女。

関連記事:にゅーあきば.こむ


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息子・タク(8ヶ月)が「掴まり立ち」を出来るようになったと嫁が言った。

掴まり立ちとはハイハイから2足歩行へ移行する間の成長過程。どこかに掴まれば立つことが出来る、ということである。タクは最近ハイハイの姿勢からお尻を突き上げてヘコヘコと胸騒ぎの腰付きをよくしていたので、いずれ出来るのも時間の問題だ、と思っていたがこれは早い。

娘・R(2才)が初めて掴まり立ちをした時はどうだったであろうか…と過去の日記を見てみると、ちょうど2年前の今ごろの記述にそれはあった。Rに比べ、タクは2ヶ月ほど早いということになる。

それと僕は当時「掴まり立ち」という言葉を知らなかったようである。嫁に教えてもらったと書いてあった。

あれから2年、Rは掴まり立ちどころか走り回っているし、どんどん賢くなって来ているし、タクなどその頃は影も形もなかったのにもうひとりで歩こうとしているし、子供の成長というものは目を見張るものがある。それに比べて僕は掴まり立ち、という単語と…せいぜいイナバウアーぐらいか、それぐらいを覚えたぐらいに過ぎない。

「あなた、ちょっと、写真撮って!」

今朝方、隣の部屋で嫁が絶叫していたので見てみると、タクが嫁の背中にへばりついて掴まり立ちをしていた。これを撮って欲しいらしい。

つかまり立ち
覆い被さるように嫁に縋り付き、腰をヘコヘコさせている。どこかで見た風景。

「これは、僕の動きだ」

僕が嫁に求愛している時の姿に他ならなかった。

「変なところを受け継いでいるなあ」

しかしタクよ。父はそうやって嫁に求愛し、その延長上の行為にて生まれたのがお前なのだが、その求愛のやり方は成功率及び性交率が低い、ということを経験上から教えておこう。あとはお前のこれからの人生経験より学び取って欲しい。

血の濃さというか遺伝の力と、それ以上に子が親から影響を受け、継いで行くものも大きな力があるものだと思い知った。

親の背を見て子は育つ。手垢の付いたフレーズながら、昔の人はよく知っていた。

嫁の背を見て子を作る…それは僕である。


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行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。

我が街も然り。街に浮かぶ泡沫は我々であり、かつ消えかつ結びて久しく留まりたるためしなし。

「トニーの弁当屋」という長く駅前にあったホカ弁屋が閉店してしまった。泡沫のひとつがまた消えた。店主がどこの国の人だか分からないがアラブ風な人で、彼がトニーという名前なのである。

この店を最初に教えてくれたのは、隣のゲーセンに勤めていた美少女Rちゃんであった。

「ここの焼肉弁当がおいしいんだよ!」

と言う当時17才だったこの美少女を僕は大好きであった。ふたりで弁当を買い、

「ほんとだ、おいしいね」

アラビアンな店主が作る弁当はトレビアンであることよ、と一緒に食べた幾度の思い出は、中学生のデートだってもっとマシなことしているだろうに、なんとも甘酸っぱいものである。

「僕についてくればもっとええもん食べさせたるで」

僕のいつものオヤジ口調の冗談でさえRちゃんに切り出せなかったのは、僕には彼女がいて、何よりもRちゃんもベタ惚れの彼氏がいて、僕がどうこうしてもどうにもならないのは明らかだったからである。

やがて年月が過ぎ、Rちゃんはこの街を去って行った。やがて連絡も取れなくなった。やはり僕はその程度の存在だったのだろう。一方で僕の彼女だった人は嫁と名を変えて今は隣の部屋で子供達と眠っているわけだが。

Rちゃんがいなくなっても僕はトニーの焼肉弁当をたまに買った。日曜日などに嫁が昼飯を作らなくていい?と言った時にはここぞとばかりに買って来て

「これはRちゃんとの思い出の味なんだよ」

と上述のメモリーを語りながら食べたこともあった。Rちゃんへの想いが冷めぬまま、彼女の名前をそのまんま付けた娘・Rにも食べさせたりした。尤も嫁にしてみれば中身ごとゴミ箱に捨てたかったかもしれない。

僕はこのようにRちゃんとの思い出にすがり付くようにこの街に暮らしている。思い出があり過ぎて離れられないのである。僕にとってトニーの弁当屋はその記念碑のようなものである。それがまたひとつ減ってしまった。Rちゃんと過ごした日々が遠くなったことを実感し、こんな寂しいことはない。

しかし分かっていることである。去って行った人との思い出は増えることはない。それよりもずっと付いてきてくれた嫁と、あの当時では考えられなかった愛すべき娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)達との思い出が今まさに作られている時であり、そのことに気付くべきだ、ということを。後ろばかり向いている夫もしくは父なぞ僕だったらいらん。

思い出は浸るものではない。作るものである。

ただ今夜だけは、寂しさに揺れる今夜だけは思い出に浸ることを許して欲しい。今いるこの部屋にもRちゃんの思い出は沢山あるのだ。デジカメで撮った写真や動画、1年間交換し続けた手紙…。

本棚を漁ったら、奥に最早存在すら忘れていた、カバーもない文庫本があった。

「絶対面白いから!」

とRちゃんが無理矢理貸してくれて、そのままろくに読まずに返しそびれた本だと思い出した。今夜このひとときだけは、甘酸っぱいノスタルジーの海に身をたゆたわせておくれ…と文庫本を開いてみた。

「もっと、オレを感じて。オレも真吾を感じたいよ…あああっ」

…ホモ小説だった。

Rちゃん…これは思い出さないほうが良かったよ…。


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息子・タク(8ヶ月)はわりと成長が早いようである。

上の歯が生えてきた、とは昨日の日記にも書いたが、今日見たら下の歯茎にもうっすらと白いものが浮かんでいて、下の歯もすぐ生えそうな勢いである。

ただ普通は下の歯が先のことが多いし、振り返ればタクはハイハイよりもお座りの方が先に出来たし、どうも一般的な順序とは違う成長の仕方をしているのではないだろうか。

このままだと陰毛より先にケツ毛が生えてきそうであり、父としてはそうなったらどうしようと悩んだが、どちらが先でも別に生活に支障はないか、と思い直しどうでもよくなった。

しかしタクの下の話になると大真面目に心配する輩がいる。嫁である。常々タクの男性自身が小さい小さいと言っているのだ。同じ男の僕としては心配するほどの小ささではないと思う。それに背を伸ばしたければ牛乳を飲め、というような明確な手立てがあるわけでもなく、かといって生後8ヶ月の息子に金冷法を施すバカ親なぞいないと思うので、今この時点で心配してもどうしようもないではないか。

ひょっとして僕の強大なウタマロ伝説を見慣れてしまった為に、余計小さく見えるのか。すみません見栄を張りました。ともかく育児に関しては保育士の資格を持っているだけあって、いつも冷静沈着色素沈着に見える嫁であっても

「毎日長さを計って記録しておいた方がいいかしら」

このことになると真顔で暴走気味なことを言うので

「いくらなんでもやり過ぎだ。後々そんなことをしていたことがタクに分かったら、僕だったらトラウマになるぞ」

性的虐待とまでは言わないけれども、家庭内嫌がらせになるのではないだろうか。ドメスティックハラスメント。セクハラだのパワハラだのやたら増えている造語風に言うとドメハラ、になるのだろうか。勿論子供の受け取り方にもよると思うが、「柱の傷はおととしの…」というような朗らかさにはならないような気がする。

僕だって娘・R(2才)を毎日のように裸の写真を撮ってその成長の過程を記録に残したいけれども、

「私の父は変態親父でした…」

というように将来Rが心の傷を負わないように我慢しているのである。そんなことをしたらセクハラかつドメハラであり他にいくつの「ハラ」が付くか分からん。

そんなわけで子育てに関しては嫁の独壇場であり、いつもは及び腰である僕だけれども、今回は各種の「ハラ」防止の為にビシッといわせてもらった。

ワイが浪速の番長じゃー。

そりゃキヨハラだ。


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僕が会社から帰って来て、駅を降りると雨が降っていた。

傘がなく慌てて家まで駆け込むと、息子・タク(8ヶ月)がアウアウ言いながら僕の元にハイハイして来た。

しばらくタクと戯れていると、タクの歯茎に白いものが見えるではないか。

「あっ。歯が生えてる」

ついに1本目の歯が生え始めていたのである。

「あ、ほんとだ!」

嫁も駆け寄って覗きこむ。

「…でも、何故上の歯からなんだろう」

普通は下の前歯から生えてくるものであるが、何故か上の歯が最初なのであった。調べてみたらそういう場合もあるようである。

「タク、ちょっと噛んでみてー」

小指をタクの口元に寄せてみると、あむあむと父の小指を噛む。あなたが噛んだ、小指が痛い~などと歌ってみた。本当はたいして痛くない。

タクは娘・R(2才)と比べて成長が早いと嫁は常々言っている。身長などはまだ8ヶ月なのに、Rの1才半の時と同じである。

この調子であれば、嫁が唯一心配しているタクの男性のシンボルが小さい、ということも杞憂に終わるのではないだろうか、と僕は楽観視している。というよりも父である僕より大きくなってしまっては些か悔しいのである。それはまあ別の話で。

「あなた、帰ってくる時雨降ってたでしょう」

嫁が言った。

「うん。傘がなくてさ…」

これを雨天乳歯といいます。


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栃木の実家から帰って来た日は、嫁の18才の誕生日であった。

年齢は大サバ読みである。

誕生日プレゼントは何がいいか、と聞いてみたところ、

「いらない」

と言う。その代わり、この日の夕飯を作らないで良いことにしたい、とのことであった。成る程、嫁と結婚前の付き合いを含て十数年、何度もプレゼントをあげたりもらったりしてもうとっくにネタが尽きてしまった。

娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)の育児と家事に追われる嫁が一番欲しい物は、くつろげる時間なのだろう。

「本当はあなたが『じゃあ僕が夕ご飯を作ってやろう』って言ってくれるといいんだけどなー」

嫁の言葉がチクチク刺さる。僕はいかに腕によりを掛けて料理をしても、ペヤングかボンカレーぐらいしか出来ないのである。

「すまんねえ…」とかわしつつ、池袋のデパ地下でケーキを、そして近所のちょっと高いトンカツ屋でヒレカツをテイクアウトして祝うこととした。

「ママ、誕生日おめでとうって言いなさい」

と子供達に言うと、流石にタクはアウアウ唸るしか出来ないので無理だが、Rは

「まま、たんじょうり、おみぇでとー」

と何度も頭を下げて言い、嫁はその度に感動していた。さもあろう。僕もそう言われたら涙が出てしまうかもしれない。

Rにケーキを食べさせてやると、石塚(でぶや)以上の幸せそうな崩れた笑顔を見せていた。

「8月にはRの誕生日だからまたケーキを買ってやるよ。10月はタクで11月は僕で、ケーキ続きだなあ」

と教えてやったが、なんだか誕生日とは単にケーキを食べる日である、と理解してしまってそうで怖い。

僕の誕生日まであと5ヶ月か…と、ふと思った。僕も誕生日プレゼントはいらない。子供たちからはおめでとうと言ってくれるだけで良い。バースデーケーキすらいらない。嫁がひとときの家事を休み、息抜きの時間を求めたように、僕はまぐわいの時間を求める。それをバースデーケーキの代わりとして欲しい。

何が言いたいのかというと、すなわちバースデー性器である。


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昨日の日記の続き。

栃木の実家に帰ったのは、息子・タク(8ヶ月)の記念樹を植えるためであった。

区が産まれた子供全員に配っているので、ハナミズキの木を貰って来たのである。本当は「せかいじゅのき」が欲しかったのだが、ドラクエの世界にしかないようであった。

娘・R(2才)の時も梅の木を貰い、実家に植えてある。その近くにタクの木を植えた後、嫁が

「じゃあ記念写真を撮ろう!」

と言った。しかし木の葉っぱはずっと家の中に置いてあったせいか、今にも枯れそうな勢いでしょぼくれており、

「…ちょっとこれじゃあまりにも惨めだから、明日撮らない?」

「うん。明日なら少し元気になっているかもね」

そういうことになった。

しかし翌日になっても木の葉っぱは、味噌汁の椀から落ちたワカメのようにしおれたままで…。もうこの日の内に帰らなければならなかったので

「仕方ない。じゃあ撮ろう」

とタクを抱いて木の側に連れてくると何故か機嫌悪し。うにゃうにゃ愚図っており、

「ほらー、タクー、こっち向いてはいチーズ」

と、ようやく写真を撮ったものの、木はしょぼくれていてタクはいじけていて、なんだかこれからのタクの人生に暗雲が立ち込める暗示のような写真となってしまった。

「でもハナミズキってでっかくなるんだよねー」

と母が言っていた。おおそうじゃ。木がでっかくなるように、タクも大きくなれ。そしてこの父の老後は頼んだぞ。

そうハナミズキとタクに願をかけると、葉っぱが1枚はらりと落ちた。ふ、不吉な…。

ええい、頼んだぞ我が家の将来の稼ぎ頭!

このー木なんの木金のなる木ー。


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一家を引き連れて栃木の実家に帰った。

昼飯を食った後、些か疲れたのでソファに座っていたらそのまま寝てしまって、気付いたら近所の小学1年生の女の子・萌えっ子ノンちゃんが来て、娘・R(2才)とやかましく遊んでいた。

ノンちゃんはRのことが好きらしく、実家に帰るたびに遊んでもらっているのだが、とにかくイタズラ盛りの女の子なので、つい僕もこの幼女にイタズラ…じゃなかった、

「ノン、だめでしょ!」

と呼び捨てで叱ってしまったら

「えー。なんでRちゃんのお父さんがノンを呼び捨てにするのー」

小1とはいえ流石にその辺のところは見逃さず、すさかず言い返されてしまった。

「はっはっは、ごめんね」

「…で、でも、別にいいけどね」

何故か赤面していたノンちゃんにはツンデレ娘の素質があると思った。僕が萌えっ子と見込んだだけのことはある。

日が暮れて、皆で夕飯を食べていると母が

「ノン、Rと一緒にお風呂入っていくかい?」

とすすめていた。

「いや母さん、Rは僕と一緒に…」

「だからノンとRとお前で入ればって言ってるの。ね、ノン、そうしよう」

と言われると「えー」と顔が赤くなってしまっていた。

…僕が。

ちょ、ちょっと萌えっ子と一緒にお風呂に入るのはまだ勇気が要る。

飯を食い終わった後、ノンちゃんとRは何やら絵を描いていた。

「はーい、ここでクイズでーす。今、ノンは絵を描いてまーす」

「ほう、上手だね」

「描くは描くでも、夜に『かく』ものはなんでしょう?」

「いびき」

嫁が即答していた。

「ぴんぽーん。正解でーす」

マスをかくとか寝首を掻くとしか答えが浮かばなかった僕は答えられず、やはり萌えっ子と一緒にお風呂に入るには穢れすぎているのだなあと思った栃木の夜。


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昨日の日記の続き。

5月もあと1時間で終わってしまい、このままでは「やらずの1ヶ月」になってしまう瀬戸際、嫁に襲い掛かるかどうか、というところで終わっていたが、さてどうなったか。

結果を先に書くと、あっさりしっぽりうっふんであった。

嫁の寝床に忍び込む時は、それはもう決死の覚悟だったのである。赤いTシャツに身を包み、「赤備え」の意気込みを示した。

赤備えとは戦国時代、武田家の武将・飯富虎昌と山県昌景、徳川家の井伊直政、大阪夏の陣においての真田幸村などの軍隊が行っていた、甲冑から旗差物まで全ての武具を赤で統一することである。

戦場での赤一色は目立ち、手柄を立てんとする敵軍から狙われやすいことになるが、逆に「腕に覚えのある者はかかって来い」という精強部隊であることの象徴なのである。

「目指すは嫁の首ひとつ」

そんな意気込みであった。

更にはその赤Tシャツには「北の国から」というさだまさしが「あーあー」と歌うことで有名なドラマのロゴと、テポドンミサイルのイラストが施されており、これも

「金ちゃんのテポドーンとやってみよう」

という不退転の意志を表したつもりであった。僕は「北の国から」のテーマソングを口ずさむと、何故か途中から大岡越前のハミングになってしまう。しかしこのことは今とは関係のない話だ。

色々と決死の覚悟で嫁の寝床に忍び込むと、当の嫁は左に息子・タク(7ヶ月)、右に娘・R(2才)に挟まれ、窮屈そうに寝ていた。僕が近付くと幸運なことにその気配に気付いたのか目を覚ました

これ幸いとばかりに

「そこじゃ窮屈だろう。僕の寝床においで」

その後は言わなくても分かるだろう…?とねっちりと誘った。

「…じゃあコーラ買ってきて」

嫁はコーラ1本で承諾してしまった。そんなものでいいのなら10ダースぐらい買い置きしておこうか。

ようやく5月最初で最後の本番にあいなり、踏ん張りどころで

「そんな四つん這いでヘコヘコ動く姿がタク(8ヶ月の息子)と全く同じよ。血は争えない」

と嫁に指摘され、一時的に不能状態になったりしたが、何とか滞りなく執り行われた。

「いやー、今月全然やってないから、どうなることかと…」

安堵の気持ちで嫁に語ったところ

「あんたやってるでしょ!」

「うそお」

「覚えてないの?」

「うん」

嫁によると、どうも今月中どこかで致していたらしい。

…全く記憶にない。鶏の頭は3歩歩くと忘れるというが、僕の亀の頭もちんぽ入れると忘れてしまうようだ。

そんなわけで、始めは火の玉のように決死の覚悟で臨んだ夜這いであったが、終わりはなんともモニョモニョとした締りのない結末であった。

これを亀頭蛇尾といいます。


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もうすぐ月が変わろうとしていた夜のひととき。5月31日の11時PM。シャバダバシャバダバ。

僕は家のパソコン部屋において、モニタとにらめっこしていた。画面の中で、色黒い男とセーラー服の上着を捲し上げられた女の子が組んず解れつくのまぐわいを行っていた。ただ僕は映像そのものに釘付けだったわけではない。そのぶるんぶるん震える乳映像の向こうに、同じ乳とは思えぬ程貧相な嫁のそれを思い浮かべ、モニタの前で硬直していたのである。

というのもこの5月の晦日において、今月は一度も交わりを致していないことに気付き、愕然としたのである。端午の節句はあっても、ちんこのセックスはなかった。記憶が正しければ、確かゴールデンウィークが明けたあたりに嫁にまぐわい申請をしたところ、

「連休前にやったでしょ!!」

けんもほろろに断られたので、4月後半以来致していないことになる。

由々しきことだ、と愕然となった。結婚以来1ヶ月もしていないことなどなかった。これは予兆である。セックスレスへの始まりなのだ。1ヶ月が2ヶ月、2ヶ月が半年、半年が1年、1年が10年、というように雪ダルマ式にまぐわらず期間がどんどん延びていくのだ。

されば今こそ嫁に突入すればよい、のだけれども…。それが気軽に出来れば1ヶ月も交わりがないわけがない。嫁は隣の部屋で寝ていた。嫁は僕が仕事から帰ってくる前に、子供達ととっとと寝てしまうことが殆どである。育児に疲れ果て、泥のように眠っている嫁を揺り起こし、これからボクチンとポテチン、などと言おうものならどんなに怒り狂うか、火を見るより明らかである。

将門の首塚を掘り起こすに等しい。触らぬ神に祟りなし、触らぬ嫁に孕み無し、なのである。

そんなわけで夜這うことも出来ず、泣き寝入りするには体が火照り過ぎ、こうして蛇を前にした蟇の如く脂汗を流しながらパソコンの前で固まっているのであった。

だがいつまでも固まっているわけにはいかぬ。もう5月が終わってしまう。固まっていてよいのは股間のみである。6月がもうそこまで来ている。

6月は水無月という。しかし水無月が来る前に、5月は全く女体に触れられなかったということで、ひとりしこしこオナ月であった、という結果になってしまいそうなこの危機。

月次エロ決算において、実績ゼロにはしたくはない。何としても嫁の秘所に辿り着かなければならぬ。娘・R(2才)の秘所には毎朝のようにおむつ交換時に対面しているが、いくら少女趣味の僕でも実の娘の、しかも2才では欲情はせぬ。よく誤解されるが本当である。処女雪のように穢れ知らずのそれは神聖であり、感動で涙することはあっても邪な気持ちは抱かない。聖書の言葉にもある。

人はパイパンのみにて生きるにあらず。

かくして僕は嫁と刺し違える覚悟で寝室に向かった結果は…。

長くなったのでまた明日(すみません)


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今日は寝坊したので日記をお休みします。ごめんなさい

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