あなたーを待つの、ベッドルーム
仕事から帰って来たのは、午後11時近かっただろうか。
僕のパソコン部屋に入るには、眠る嫁と娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)が眠る寝室を通り過ぎなければならず、起こさないように真っ暗のまま手探り足探りでタクを踏まないようにそーっと歩くのが常である。
約30分後、タクの夜泣きの声が聞こえてきたので寝室のフスマを開けると、嫁が授乳しているところであった。
「あなたが帰ってきた時ね、Rまだ起きてたよ」
「え?こんな時間なのに?」
その時は暗闇に目が慣れてないので分からなかったのである。すさかずRに目を移したが、さすがにもう寝ていた。
「布団に入ってからずーっと『パパ来るよ~』って言ってて、待ってたのよ。さすがにあなたが帰ってきた時にはもう半分寝かかってたからボーっとしてたけど、それでも目が開いてたよ」
「それほどまでに僕のことを…ああ、すまないことをした」
帰った時に頭でも撫でてやればよかった。近頃、Rはやまだかつてない勢いで僕にベッタリである。朝起きた途端に
「あそんで~」
と僕に擦り寄り、休日ともなると1日中遊んで遊んで攻撃である。きっと僕が帰って来てから遊びたかったのであろう。しかし遅過ぎた。
「朝起きたら遊んでやろうなあ」
ということでむっくり起きた僕であったが、Rはまだ布団にくるまっていた。なのでまたパソコン部屋に閉じこもり、朝の一服をしつつネットでWカップの惨敗ニュースを色々見まくることにした。
「いやあ、なかなかよき乳房であった…」
Wカップ惨敗を見るつもりがいつの間にかFカップおっぱいを堪能していたため、気付いたら30分ぐらい経っていた。
再び寝室に戻ると、布団にくるまったRは起きていて、僕の顔を見るなり
「うわあああん!ぱぱー!」
泣きながら布団から飛び出し僕に抱きついて来るではないか。
「ど、どうしたどうした」
すると隣にいた嫁が言った。
「あなたが起きた時にRちゃんも起きたのよ。でもあなたすぐ隣の部屋に行っちゃったもんだから…。遊んで欲しくてずっと待ってたのよね」
「あああ、ごめんよー」
Rは僕を静かに待っていたのだ。フスマをがらっと開けて「ぱぱ遊んでよー!」とせかすよりも、Rはただひたすら待つ女。逆にその方が胸が締め付けられてしまう思いになった。僕は「待つ女」のシチュエイションに弱いのである。そのいじらしさにグッと来てしまう。夜に続いて再びすまない気持ちになり、絵本を読んでやった。
自分が愛する娘がこれほど自分を待ち焦がれているとは…。かつての新婚時代、嫁が僕の帰りを待ち侘びてくれていたこともあったが、今ではお互いいるのが当たり前で、下手すりゃなんでいるの、とすら思われてそうだが、それ以来忘れていた感動である。
このRとの蜜月もいずれは終焉を迎えるものであり、大きくなれば
「親父、キモイ」
などと、自分体の半分はそのキモイ親父の金玉から発生したのだということを棚に上げて言うようになるだろう。それだけにRが僕を待ち焦がれ、慕ってくることは僕の大きな心の糧になったのである。
あーあー 日本のーどこかにー 私を 待ってる 人がいるー
いい日朝勃ち(Fカップの影響による)
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