かしこみかしこみマウス。

嫁と娘・R(1才)がリトミックに行っている間、
ひとりで留守番しているのも芸がない。

そこで嫁のマウスが壊れたというので、池袋の
ディックカメラ(仮名)まで買いに行ってやった。

嫁の壊れたマウスは光学式である。最近僕は会社から
新しいマウスを支給されたが、それが光学式で、
一週間もしない内にいきなり暴走し出した。しかも
直しようがないので非常に腹が立つ。そんなわけで
僕は光学式が嫌いになった。

男たる者ボール式のマウスを使うべきである。
「玉なし」の光学式は男としてどうも抵抗がある。
そんな意見を嫁に言ったところ

・故障が少ないのならばボール式のマウスでもよい。
・小さいのがよい。
・ワイヤレスがよい。

という希望を出されたのでそれに合うよう物色開始。
しかし希望に沿ったものを見つけるのは難しく…。
ボール式もワイヤレスもでかい、小さいのは光学式、
ということで帯に短し襷に長し。矢切の渡しは細川たかし。

結局エレクト、じゃなかったエレコムというメーカーの
黒い小さめワイヤレス光学式マウスを買って帰った。

そのマウスを眺めながら思った。とある人から聞いた話で、
その人は左クリックは人差し指、ホイールは中指、右は
薬指という風に指を3本使っているとのこと。

それを聞いて驚いたのである。僕は左とホイールを人差し指、
右は中指、と2本しか使っていない。人差し指1本でキーボードを
ポチポチと打つ、パソコン不慣れのおっさんになったような
劣等感を感じたので、3本指で使うようにしたのだが、いつも
右手でやっているオナニズムを左手で敢えてやってみたような
やり辛さ、痒いところに出が届かないもどかしさを感じて仕方がない。
まだまだ訓練が必要だ…。

嫁は新しいマウスを気に入ったようである。さっそく使い始めたその
黒い楕円形のマウスを眺めながら再び思った。

「なんかそれ、マンクソみたいだな…」

「はあ?」

「いや、おらの田舎ではカブトムシのメスをそう呼ぶだ…」

決して女性の恥垢という意味ではない。

「ところで、マウスのお金払うよ」

「いや、いいよ。体で払ってくれれば」

嫁は無言だった。

マウスはワイヤレスの光学式。
我が家はセクスレスのオギノ式。

僕が欲しいマウスは娘・Rとのマウストゥーマウスである。
(今日はちゅーしてくれなかった)
.

踊る大妄想戦。

「ねえ〜リトミックやらせていい?」

嫁が娘・R(1才)に「リトミック」という習い事を始めさせたいと
言ってきた。

リトミックとは?

スイスの音楽教育家・作曲家であったエミール・ジャック=ダルクローズ(1865〜1950)に
よって提唱された音楽教育の考え方です。音楽と動きを融合した教育スタイルに特徴があります。


http://www.geocities.co.jp/MusicHall/1270/q_a01.htm#q10
より抜粋。

よく分からぬ。おそらく「お遊戯」がその範疇に入るのであろうか?
「おかあさんといっしょ」の

あわてたアヒルがあ、あ♪イカれたイルカがい、い♪とか。

「それとは違う」

嫁は否定した。では具体的にはどんなものであるか説明せよと
申したところ

「うーん。もっと規則的な音楽が繰り返しで勉強っぽい…」

ちっとも具体的ではなく、さっぱり分からぬ。不十分な知識であるが、
推測すると、しかし音楽を媒体として体を動かすことによって感性を磨く。
音楽に慣れ親しむ…。ということであろうか?

規則的な音楽といえばミニマルテクノ。僕がクラブでミニマルテクノに
合わせてズンドコ踊りまくるのもリトミックの延長上にあると言えない
こともない。違うと言われるだろうけど。さすればこの教育により将来
一緒にクラブに行ってくれるかもしれない。

「今夜は一晩中パパと踊るの」

なんていう将来像が思い浮かび心も躍る。
ダンシングオールナイト。
キスミーオールナイトロング。
タッチミーオールナイトロング。
金玉が右に寄っちゃったオールナイトロング。

しかし僕とは違った方向の音楽の嗜好になってしまう
恐れもある。ゴスロリに身を包みヴィジュアル系を追っかけ、
ライヴハウスでヘドバンしまくり、そしてライヴ後はバンドの
メンバーにガブリ寄りを掛け食われてしまう…という火の玉娘に
なってしまってはパパちょっとついて行けない。

ゴスロリは好きだがあれは高価な服なので、おねだりされると
ちょっと厳しい…。そして僕が知っているで、売れないバンド
マンの彼女になった女の子はあまり幸せな目に会っていない。

「ゴスロリ高いから、あと売れない音楽屋は金と女に
 だらしがないからダメ」

「は?」

「あ、いや…」

考えが飛び過ぎた。

「こないだ体験入学しに行ったんだけどね、普段は
 大人しいRがおおはしゃぎで暴れまくってね…」

あれは昨日までのRではない。Rは生まれ変わった。
ネオRよ…などと嫁も興奮気味にブツブツ呟いていたので
OKすることとした。

とにかくどんな教育でもいいから、早く僕を「パパ」と
呼んで欲しい。そのリトミックとやらで天才バカボンの
歌でもかけてくれればいいのだが。

パパだかーらー。パパなのだー。

どんな音楽をかけるのかとても興味があった。
そして今日第1回のレッスンが行われるという。

「僕も付いてって見ることができるんだよね」

「え、そんな人いないよ。留守番お願いね」

「ええ、そんな」

土曜の休日を娘の音楽も嫁もいないひとりぼっちで
過ごす羽目になってしまった。

ノーミュージック・ノーワイフ。
.

キス・オブ・ファイアー。

朝からキスの争奪戦。

娘・R(1才半)は、眠りから覚めると

「ちゅ」

嫁におはようのキスをする。何故このような
欧米人の風習を身につけたのであろうか。

Rよ。お前は100%大和民族の血が通っている。
ヤマトナデシコにあるまじき行為である。父を見習え。
夜もシコシコである。

お前の黒く太い眉はこの父の血がもたらしたものだ。
よって父にもキスするがよい。というわけで嫁にも
見せたことがない最高の笑顔でおねだりした。

「Rちゃん、パパにもちゅー」

「ちゅ」

しかしRは僕ではなく嫁にキスをした。

「いや、ママじゃなくパパにちゅー」

イヤイヤする僕にRは嫁から唇を離し、ニヤリと意地悪な
笑いを浮かべた。ひょっとしてRはわざと僕をじらして
楽しんでいるのではないだろうか。もう言える筈なのに
未だに「パパ」と呼んでくれないのもそのせいかもしれない。

「Rちゃん、ママって言ってみて」

「まーまー」

「よくできました。じゃあパパって言って」

「まーまー」

Rは再びニタリと悪女のような微笑を浮かべた。

「やっぱり分かってやってるんだこの子!僕をじらしてるんだ!
 …おそろしい子!」

「あはは、そうだねえ」

ノホホンと答える嫁が僕を嫉妬させる。僕は意地になった。
そろそろ会社に行く準備を整えなければならないのだが、
いま何分だろうか?と腕時計をちらりと見る。そして迫った。

「Rちゃん、ちゅー!」
「Rちゃん、ちゅー!」
「Rちゃん、ちゅー!」

嫁にも、人生最大に惚れた美少女Rちゃんにも見せたことがない、
残り時間あと僅かの怒涛のモーションを見せた。その願いは通じた。

「ちゅ」

Rはゆっくりと唇を寄せてキスをしてくれた。

「あら、良かったじゃない」

と嫁。Rよ…ありがとう。我が人生に一片の悔いなし。例え
これから会社に出掛けて、玄関を開けた途端ジェイソンに
叩き殺されても迷うことなく成仏できるだろう…って、
もう本当に会社に行かなければならない!

いま何分?

接吻。
.

沈黙の変態。

デュレックスという「今度産む」メーカーの調査によると、
世界で1番まぐわっている国はフランスで、年間平均103回の
まぐわいをしているそうである。3〜4日に1回は秘密の穴の中を
通過している計算となる。さすが穴の都パリ。

対して日本人はというと46回いう大変少ない数であり、更に
僕自身は嫁がいるというのに1ヶ月ぐらい致していない。
肉体的にはフランス人以上のペースで可能であるが、嫁が
なかなかその気になってくれない。これではいかんと思い
立ったある日、朝立ちと共に嫁に予約を入れた次第である。

「今晩よろしく」

「今日は飲むんでしょう?あなた酔ったらダメじゃないの」

しかし嫁は冷静だった。嫁の言うとおり僕は酒が入ると
家に帰るなり寝てしまう。

「いや、今夜は頑張る。絶対寝ない」

おフランス人には負けないざんす、という意気込みと共に
出掛けたのであったが、夜へべれけと化して帰って来て、
嫁より先に眠ってしまった。

翌朝、娘・R(1才)が嫁の脇にいたので、そーっと近付いて
あたかもRがやっているように嫁尻を撫でていたら

「何してんの!Rはそんなことしません!」

あっさり見破られた。ばれちゃしょうがねえ。単刀直入に
挿入願いを出した。

「今夜こそ…よろしく」

「あなた、今日も飲み会でしょう?ダメに決まってる」

「そうなんだけど。今夜こそは寝ない!」

今夜こそ僕のエッフェル塔は黙ってはいまい。酒に酔っても
そこだけは酔わない。酔うとすれば女体の海の中でだけ…。
そのような意気込みで再び出掛け、夜これまたへべれけに
飲んだ。しかし家に着いた時は酔いは醒め意識はシラフに近い。
大丈夫。今の僕はシラフ・ド・ベルジュラック。じゅらくよーん。

「うふふふ、Rの寝顔、可愛い〜」

Rの寝床に潜り込み、悦に浸る余裕もあった。しかしそれが
いけなかった。

気が付けば朝だった。

またしてもエッフェル塔は沈黙のまま…。しまった。
酒の酔いには勝ったのに、娘の寝顔に酔ってしまった。

フランス人のまぐわい回数に近付こうと努力したが、
娘の寝顔のトリコロールという結果でございました。
.

横浜のオフ会の秘話。

ヨコハマオフ会の更に続き。嫁とわたくし。

先週の日曜日からオフ会の前日まで、よんどころなき
ドロドロとした事情があって嫁にシカトを喰らっていたのだが、
「明日のオフ会は何時に出るの」とか「お店はどこにするの」とか
ぼそぼそと口を開いてくれたのでほっとしていた。

そしてオフ会の中では喫茶店でぴょんさんお奨めの「かぼちゃ
プリン」を食べることとなっていたが、嫁は妊娠中の太り過ぎで
甘いものを自粛しているという問題をどうするべかという時には

「あなた…かぼちゃプリンは食べていいかな…?」

「せっかくだから食べなよ」

「ありがとう!」

なんとなく優位にすらなったと錯覚するやりとりが
あったかと思えば

「その代わり、夜は寝床でカロリーを消費する運動を
 してもらうことになるが…フフフ」

「それはイヤ」

やはり全然劣勢であることを再確認されたりしたが、
とにかく当日はごく普通の家族として振舞うことが出来た。
しかし嫁が帰った後の飲み会において

「実は、昨日までずっと嫁が口利いてくれなくて…」

とこぼしたところ

「知ってるよ。だって奥さんの日記見てたもん」

ぴょんさんはしっかりチェックしていたのだった。

「えー!嫁、そんなこと書いてたの?どんな内容…
 いや、聞くのが怖いから…」

言ってもらわなくていいや…と冷や汗を掻いたのであった。
僕はこの日記では批判めいたことは書かないことにしているが
嫁は容赦ないようである。

このオフ会で分かったことは、他の皆様は
素敵な奥様だったのに、ウチのだけが
不敵な奥様だということだった。
.

横浜オフ会の娘と僕。

ヨコハマオフ会の続き。娘・R(1才)とわたくし。

チヨさんの息子君、ユウ君が僕に懐いてくれたので、
いろいろとおしゃべりしたりしてあそんでいたのだが、
それを見たRが何度も

「マーマー!」

と絶叫して僕を睨むのである。どうやら嫉妬しているらしい。
妬いてくれるのは嬉しいが、皆様の前で未だに「パパ」と
呼んでもらえないことが露呈されてしまって

「よそさまで恥かかせるんじゃないよー」

「マーマー!」

とても羞恥プレイとなってしまった。

Rには港ヨコハマということでセーラー服を着せていた。

何故か山下公園でうむこ座りをしていると
まるでヤンキーのようではないか。

photo

しかしそれを見ていたかめのさんがチェックを入れた。

「本当のヤンキー座りは違う。お姉ちゃんが
 教えてやろう」

「随分詳しいね…さすが元ヤン…」

「違う!私は違う!ほら、田舎にいっぱいいたから。
 それを見てよく知ってるのよ。私は違うのよ、うふ」

「ふーん」

ところで中華街を歩いている時に、子供用のチャイナ服が
たくさん売っていて、僕の制服好きに火が灯り、思わず
一着買ってしまっていた。

早くRにこれを着せたい。すぐにでも着せて悶絶いたしたい…
と思っていたところ、山下公園で駆けずり回っているうちに
いつの間にかスカートの裾が汚れているではないか。

「あーもう汚しちゃって。泥とかで濡れちゃってるじゃないか。
 しょうがないなあ。風邪でも引いたらいけないなあ。着替えなんて
 持って来てないなあ。さっき買ったチャイナしかないなあ」

このような状況なので、ここで着替えさせても…無理はないな!

photo

というわけで速攻着替えさせて、僕はハアハアしていたのであった。

これをやりたくなったらやっチャイナ、といいます。
.

横浜のオフ会。

おきらく極楽主婦の育児絵日記 のチヨさんと息子ユウ君(3才)

KAMENON45のかめのさん

ぽかぽかの絵日記のぴょんさん

の人達と横浜で遊んだ。ウチは僕と嫁と娘・R(1才)の3人である。
ぴょんさんは仙台から新幹線で到着。
中華街でご飯を食べて、山下公園で子供達を遊ばせて、ぴょんさん
お奨めの「かぼちゃプリン」を食べた。その後嫁とチヨサンと別れ、
東京駅に移動し、ぴょんさんの新幹線の時間まで飲んだ。

■チヨさんとユウ君とわたくし。

サイトの絵日記からすると、マンガっぽい萌え萌えな
可愛い奥様かと思ったらとんでもなかった。
モデルでもやってそうな美人で、うちの粗末な嫁と
見比べて大変悲しい思いをした。

絵日記の中では息子のユウ君とのほのぼのとした
やりとりが描かれているが、ピシッとしたしつけを
されていてさすがである。

ユウ君は人懐っこい子で、ずっとRの相手をしてくれ、
ご飯を食べている時は「あーん」とRに食べさせてくれた。
山下公園でもRの手を繋いでお散歩デートしていたので

「じゃ、あとは若いふたりに任せて…」

と見守っていたところにハプニング発生。
Rが転んだのである。ユウ君はRの手を引いて起こそうと
してくれたのだが、Rがなかなか起き上がれず

「ふあああああん!」

と泣き出してしまった。さあ、ユウ君はどうするか、と
見ていたところ…

…逃げてしまった。

すぐチヨさんが「ギャー!」と悲鳴を上げてユウ君も再び
助けに来てくれたが、R、「男に遊ばれ捨てられる」初体験。
いい経験になったと思う。

■かめのさんとわたくし。

かめのさんは元町あたりを歩いてればフェリスの女子大生に
見られるハマトラ風美人。僕がキオスクで見つけた
「青木さやか危機一髪」というおもちゃを指して

「ママ、これ買ってー」

と甘えたところ

「そんなもん欲しがるんじゃありません!」

僕にはとても厳しかったが、Rやユウ君には優しかった。

「おば…いや、おねえちゃんのところにおいで」

子供には慈母愛溢れる素敵な女性。ユウ君と最初から
打ち解けてじゃれあっていて、Rはずっとかめのさんの
膝の上に乗ってゴハンを食べ、嫁がとても助かっていた。
しかしかめのさんのズボンにボロボロと食べ散らかしを
落としてしまった。でも別にいいよね。

■ぴょんさんとわたくし。

「どこでもいっしょ」のトロに似た可愛い人である。
お土産に僕の大好きな「萩の月」をくれた。
ぴょんさんはちゃんと日記からユウ君とRの好きそうな
オモチャを品定めして、子供たちにもお土産もくれた。
さすが良く出来たお人である。

ぴょんさんの大好きな「かぼちゃプリン」を食べている時は
さながらおじゃる丸のように陶酔し切っていた。

夜、飲みながらかめのさんが

「旦那の写真見せてよー。携帯に入ってるんでしょ!」

と問い詰めていたところ

「ないよ!ないよ!」

と否定していたのだが結局しっかりあって、僕も見せて
もらったところかめのさん旦那共々かっこ良くて冷や汗を
かいた。オタク夫は僕だけのようである。

…他にもたくさん書くことがあるがひとまずこの辺で。
みなさんありがとうございました。また会いましょう。
.

親馬鹿にして馬鹿親。

ようやく娘・R(1才)と遊べる土曜日。
それでも半ドンの仕事があったので、夕方会社から
帰って来て

「Rちゃーん。遊ぼう〜」

と擦り寄ってみたのだが

「いやっ!めっ!」

手をブンブン振って鋭い目で睨む。何故か嫌われてしまった。
何か嫌なことでもしただろうか?いや、何もしていない。
朝会社に行くほんの30分程度しか顔を合わせないから何も
しようがない。

Rは嫁から与えられた煎餅を両手に1枚ずつ持ち、代わる代わる
ボリボリと貪っていた。1枚ずつ食えないのだろうか…。

「そのおせんべい、お父ちゃんにもちょっとちょーだい」

「いやっ!めっ!」

やはり拒否されてしまった。僕に触られることすら嫌いなようだ。
小学校の時、クラスのムカつくブス一団が何かにつけ

「あんたなんか嫌いよ、顔も見たくない、ふん!
 触らないでよ、ふん!カビが生えるわ、ふん!」

日本語ラッパーのように見事なリズムをつけたライミングで我々
男子一同を罵っていたのを思い出す。もう顔にカビ生えてるだろ、
みたいな感じで別に痛くも痒くもなかったが、実の娘に拒絶される
のはさすがに心が痛む。

そうして僕は心を閉ざし、ひとり寂しくインターネッツなどを始めると

「てぃ?てぃ?てぃ?」

Rは僕の手を引っ張って遊べだの絵本を読めだの要求する。
何なんだ。結局いいように弄ばれているだけなのか?

「馬鹿にされてるんだろうか」

と思わず口に出すと

「馬鹿にされてるのよ」

嫁がすさかず断言した。嫁、お前はRの口を借りて自分が思っている
ことを言っているだけだろうがー!全くどいつもこいつもウチの
女どもは!噴火寸前のボルケイノと化した僕であったが

「ちゅ」

いきなりRがちゅーをしてくれた。ふ、ふふふ…。R、1才半にして
飴と鞭の政策をこの父に試みるか…。

…馬鹿なので3歩歩いたら怒りを忘れることにした。

余談だが今週の嫁は鞭のみであった。
細かいことは言えん。
.

吉野家の生姜焼き定食。

吉野家が牛丼を販売休止して久しい。

代替として豚丼や牛焼肉丼といったメニューを
打ち出しているが、どれも丼物である。

しかしごく一部の店舗では「生姜焼き定食」や
「鶏のなんたら定食(正確に覚えてない)」といった
定食物が食べられることをご存知だろうか。

生姜焼き定食は安いわりに(480円)味がよいので
僕はよく利用している。吉野家で生姜焼き定食、
という新鮮なミスマッチが美味さを更に増している
気がしないでもない。

というわけでハクいスケをハントしようとしている
イカす太陽族な殿方は、是非婦女子をこの吉野家に
連れて行ってみるといいだろう。

「えー?吉野家なのに生姜焼き定食ー?
 ウソーヤダーカワイイーまいっちんぐ」

とあまりの意外性にポテチンと落ちてしまうこと
うけあいである。彼女の愛を特盛でゲットでき、
そして夜はツユダク。なんつってうひゃひゃ。

早(くやりた)い!
うま(くやりた)い!
安(くやりた)い!

そんなあなたは今すぐレッツラゴー!

…。

なんて馬鹿なことを考えながら今日も生姜焼き定食を
昼に食べた。

夜、家に帰ったら夕食も生姜焼きだった。

昼カレー食ったら夜もカレー、というパターンは
よくあるが、そんな罠が待ち受けているとは。

いや、文句を言っても仕方がない。と言うより
僕が昼に何を食べたかなど嫁は知りようもないので
文句を言う筋合いすらない。

毎日ゴハンを作って頂いているだけでありがたいので
ある。嫁よ今夜もありがとう、と生姜焼きに向かって
ポンポンと二礼二拍手一礼の作法で拝んだのであった。

生姜だけに神社ー。
.

親子生返事問答。

とあるおもちゃ屋を通りかかった。

ショウウィンドウには動物やディズニーもののぬいぐるみや
ロボットのおもちゃが陳列されていた。

そこに父親に手を引かれた小さな男の子が駆け寄り、

「わんわん」

などと言って指差しており、父親は

「ホントだねえ」

と相槌を打っていた。

ああ、どの親子も同じことをやっているのだなあと僕は
その光景に足を止めた。男の子はちょうど僕の娘・R
(1才半)と同じぐらいの年頃。簡単な単語を少しずつ
覚える時期である。

僕もRに動物の絵本などを見せると

「もーもー」「ぶーぶー」

やはり徐々に覚えてきた言葉を言うようになって来ているので

「おーそうだねえ」「いや、それはメエメエだよ」

などと相槌を打ったり教えたりするのである。しかしこの
父親はひとつだけ違ったところがあった。いちいち相槌を
打つのだけれども、男の子が指差す方など見ておらず、
ケータイ画面なぞを眺めていたのだ。要は生返事である。

喋り始めの子供が話すさまというのは見ていてとても
嬉しいものだと思っていたが、この父親は違うのだろうか。

男の子はミッキーマウスを指差して言った。

「ちゅーちゅー」

「ホントだねえ」

父親はケータイ見ながら生返事。男の子の指差し言葉と
父親の生返事のやりとりは飽きもせずまだ続く。

次にドナルドダックを指差しては

「がーがー」

「ホントだねえ」

そして猫のぬいぐるみ。

「にゃんにゃん」

「ホントだねえ」

馬のぬいぐるみ。

「ヒヒーン」

「ホントだねえ」

マジンガーゼットのおもちゃ。

「ママー!」

「ホントだねえ」

ホントなわけねえだろ!!!!

生返事のせいで
ママ変人になってしまった、
というお話。
.

坊主憎けりゃ袈裟までmixi。

僕ちんは一途な男であるため、音信不通になって久しい
元近所の超美少女・Rちゃんの行方を探していた。
といってもネットでコスプレ写真でも紹介されてないかなー、
ぐらいであるが。

Rちゃんはコスプレイヤーであり元メイド喫茶店員であり、どちらか
といえばネットをやってそうな趣味・行動範囲にあるからだ。

さて、「mixi」というWEBサービスがある。ソーシャルネットワーキング
とかいう、分かりやすく言えば会員制ブログのようなものである。

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僕はここにアカウントを持っていて、どーでもいい日記を時々
書いているのだが、ふと思った。

もしRちゃんもここに登録していてアカウントがあったりして…?

現在会員数60万人以上という日本で一番大きなサービスで
ある。一縷の望みを持ってRちゃんの苗字とか入力して検索して
みたら…

見つけた!Rちゃん…の、お兄様!

ヒイイイイ!いつもお世話になっております。
会ったことはないが名前だけは知っているお兄様。

何故ならばこのmixiにはRちゃんから借用したRちゃんの
画像をUPしていたからだ。もしこれをお兄様に見られたら…。

更に悪いことにmixiには「あしあと」というアクセス解析機能が
付いており、誰がいつアクセスしたかすぐ分かってしまう。
そして「あしあと」と辿ってこちらにアクセスする人は非常に多い。

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僕は速攻でRちゃんの画像を消した。

「妹の画像を使っているお前はどういう関係の者であるか」

と聞かれたら何と答えよう。

えーと、恋人以上友達未満?100パーセント片想い?
万年ストーカー?

ともかく、ネットをやっていてこれほど恐ろしい体験は
やまだかつてないものであった。
.

今夜はパイポー!

禁煙することにした。

ただし家の中でのみ。仕事中はイライラするので
会社では喫煙とする。家の中はムラムラするだけなので
何とかなるのではないかと思ったのだ。

娘・R(1才)と妊娠中の嫁がいるため、吸った後の
後ろめたい気持ちにピリオドを打ちたかったのが
今回の禁煙の狙いである。

これまで146回ほど試みたが悉く失敗している禁煙。
しかし今回は会社では吸える、という逃げ道があるので
それを考えるれば幾らかは気が楽だ。

会社からの帰りにドラッグストアに寄り、禁煙の友である
パイポを求めた。

「ウチ置いてないんです〜」

なんたること。ひょっとして、これはまだ禁煙をする時期
ではないという神の啓示なのかも知れぬ。聖書にも書いてある。
「汝、禁煙するなかれ」書いてねーよ。

しかしふらっと立ち寄ったコンビニで見つけてしまった。

ちっ。なんであるんだ…じゃなくて、禁煙の準備は整い、
家に着いてから禁煙の傾向と対策を考えてみた。
まず、煙草を吸いたくなるタイミングというものがある。
それは以下の通りである。

1.この日記を書いている時。
2.飯を食った後。
3.まぐわった後。

1についてはパイポをガリガリと噛みながら乗り切った。
3については幸か不幸か嫁が全くさせてくれないので
問題なし。夫婦としては問題があるが。

というわけで、じゃあ残りの難関、飯を食ってとっとと
寝て逃げてしまえばいい…とゴハンを食べて満腹になると
予想通りムラムラと吸いたい欲が出て来た。

この危機もパイポを咥えて…と思ったら、なんとパイポがない。
ゴハンを食べる前、どこに置いたっけ?すわ、危機である。

「パイポパイポパイポー!」

探しても、ない!吸いたい欲はどんどん湧き出でてくる。
水を求める砂漠のさ迷い人のように体が煙を欲している。
僕はどんどん焦る。焦るが故に全然見つからない。

「パイポパイポパイポパイ助けてー!」

しかし、やがて落ち着くことが出来た。一句詠むことにしよう。

「静けさや 肺に染み入る ヤニ煙」

…我慢できずに吸ってしまった。4時間で挫折してしまった。

今日の敗因はパイポを手放してしまったことにある。
しかし裏を返せばパイポさえ切らさなければ何とかいける
自信はついた。だから明日こそは成功させたいと思う。

パイポさえ切らす愚行さえなければ…。

これをパイポカットといいます。
.

アキハバランチ。

メイド喫茶+秋葉原探訪の続き。

僕ら一家(嫁・娘R・僕)と嫁のママ友一家でメイド喫茶に
突入しようとしたら、行列が出来ていたことは書いた。

並んでも子供達はグズるので、僕だけ残ることにし、あとの
皆は公園で子供たちを遊ばせながら待機することになった。

僕が行列の最後尾につくと、何やらうるさい4人組がやって来た。

「ウソ?これがメイド喫茶?ギャハハ!」

「何こんなに並んでんの?超ウケるんだけど!ギャハハ!」

「記念記念!並ぼうぜギャハハ!」

秋葉原のメイド喫茶という、オタクの中のオタクの場所に来る
こと自体が既に己をオタクな存在にしてしまっているのに

「俺はお前らみたいな痛いオタクじゃねえぜ!
 単に気まぐれの興味本位で来たんだぜ!」

みたいな虚勢を張るこのような輩こそが一番痛いのである。
だから僕はせっかく秋葉原に行くのだからとここぞとばかりに



この服を着ていたのである。4人組はコレを見た途端

「うっ…」

笑いを堪えるのに必死になっておった。ふん、まだまだ
青い奴等であることよ、と蔑んでいたのだが、彼らは



こんなものが描かれたウチワを持っていたので、それを見た
僕も笑いを堪えるのに必死。っうぇwwwwwこいつら、
オタクで2ちゃんねらwww2冠キモイwwwオメガワロス!

4人組よ、安心するがよい。第三者が見たら僕もお前等も
立派なオタクに見えるであろうよ。

さて、メイド喫茶を出た後の、嫁のママ友旦那(南米人)は
おおはしゃぎであった。彼は大のゲーム好きで、秋葉原にも
ちょくちょく足を運んでいることが判明した。

「あ、あそこパーツ屋になったんだ。そうそうドンキの上にも
 コスプレカフェがあるんだよ」

我が庭のように活き活きと案内してくれ、

「あのゲーム屋によく行くんだ。海外のゲームを売ってるんだよ。
 日本語よりヒスパニックの方がやっぱりいいからね。でも日本の
 プレイステーションじゃ動かないから改造用のチップを買って…。
 ネットでエミュレーターもダウンロードして、それ用のゲームも
 いっぱい持ってるよ」

もうマニアックな話が止まらない。ロマンチックが止まらない。
絶対違法なことも話してるのであろうが、マニア過ぎてどの辺が
ボーダーラインかすらも分からぬ。

僕は彼こそが「アキバ系」の服を着るにふさわしい男、と思った。

「あ、あの露店で売ってるROM、ファミコンのゲームが百本ぐらい
 入ってるんだ。こないだ買ったよ」

きっと奥さんと息子のノブ君(1才)の目がなければ、ゲーム百本
どころか百万本ぐらい買ってしまいそうな程、彼は輝いていた。

百万本のアキハーバーラーをー。あなたにあなたにあたなに…。
.

メイド喫茶・イン・ジャパン。

僕と嫁と娘・R(1才)と、嫁のママ友一家と秋葉原の
メイド喫茶に行ってきた。

何故そんなことになったかというと、以前ママ友一家との
会った時に、僕とその旦那(南米人)が酔っ払って話をしていて

「今度メイド喫茶に行こう!」

ということになったらしい。僕は全然覚えてないのであるが、
多分ノリで言っていたんだと思う。しかしママ友奥さんから嫁に

「旦那がメイド喫茶に行く気満々なんだけど…是非一度
 行って見たいって言ってる…」

旦那が本気らしいので今日行くことになったのであった。
このラテン系の旦那に日本の偏った文化を教えるようで
気が引けるのであったが、行くしかない。

そんなわけで僕らとママ友奥さん+旦那+ノブ君(1才)とで
ゾロゾロ秋葉原に行ったわけだが、目星を付けたメイド喫茶は
めちゃめちゃ混んでいた。店の前に行列が!

「どうする?やめる?」

と僕が旦那に尋ねてみると

「うーん。でも君がどうしても入ってみたいと言うなら」

ちょ、ちょっと待て!どうしてもって言ってたのはアンタじゃ
なかったのかー!

話を聞いてみると実はこの旦那はパソコン好きのゲーム好きで
秋葉原には超詳しく、メイド喫茶も何回も行っている猛者である、
ということをカミングアウトしたのであった。

「えっ!そんなこと初めて聞いた!」

ママ友もびっくり。結局30分待ちで入れたのだが、やはり
お互いの子供がはしゃいだり愚図ったりして飲み物を飲んだら
すぐ出ることになった。子供の教育にはよくないかもしれん…。
(いいわけないだろ)

「今度は男だけでゆっくり来ようよ」

「それだったら池袋にいいメイド喫茶があるよ。そこは
 なんとパンチラサービス付きで…」

「いいね!そこ行こう!」

旦那が奥さんにパンチを食らっていた。
.

嫁の神経を魚で。

好き嫌いが多い僕である。

そのため僕に出せる料理の幅が狭くなり、嫁が苦労している
のだと思われるが、どうも肉中心の、牛めしの松屋のような
メニューが日々繰り返しローテーションされているなあと
感じる今日この頃であった。なので

「たまには魚もいいかもね」

今は季節じゃないが、秋刀魚をただ焼いただけのものでもいい、
そう思って嫁にポツリと言ったのが悲劇の始まりであった。

翌日、鍋の中を覗いてみたらむわんと嫌な感じの匂いが。
中には煮魚が入っていた。

…しまった。嫁よ、そう来たか。

好き嫌いが激しくて重ね重ね申し訳ないことであるが、僕は
魚の料理のうち煮魚だけは嫌いなのであった。そこまで嫁に
指示をしなかった僕が悪いのであるが、

「何でよりによって煮魚なんだよ」

という悔しさもチロリと無くもなかったので、

「僕、焼き魚食べたかったんだなあ…」

今更言ってもどうしようもないことではあるし、嫁の
性格からして怒らせるだけかもしれないけれども…と
恐る恐るひと言申し上げてみると

「網がこげるから焼き魚は嫌いなの!」

と、よく分からないことを言い返されたので

「僕、焼き魚が好きなの」

もう一度繰り返し申し上げてみると

「じゃあ自分で焼け!」

ツンと寝床に入って行ってしまった。やはり怒らせて
しまった。僕の好き嫌いにいちいち付き合ってられん、
といったところだろうか。

じゃあ今度作ってあげるね、とか他に言いようはないのか、
などとも思ったが、これ以上突っかかっても嫁はとっとと
娘・R(1才)を連れて実家に帰ってしまい、

「焼き魚でも女でも好きなだけ勝手に作れ!」

ということになってしまうので、大人しく煮魚を
頂戴致した。

何とか魚は食べられたが、やはり嫁だけは煮ても
焼いても食えないようだ。

さかなさかなさかなーさかなーをーたべるとー。
よめがよめがよめがーよめがーこわくなるー。
.

可愛い子には何をさせよう?

娘1才可愛い盛り。
親父三十路のやりたい盛り。

というわけで親父の盛りは関係なく、娘・Rに
おしゃれ欲が出てきたようである。

ある日、外に出かける時に帽子を被せようとした。
これまでのRは帽子が大嫌いで、被せるなり投げ捨てて
いたのだが、この日は自らカポッと頭に乗せたではないか。
そしてにっこりとして叫んだ。

「かーいー!」

かーいー?…可愛い?

そうなのだ。この日から帽子を被っては「かーいー」、
カーディガンを羽織っては「かーいー」と連呼するように
なった。これはおそらく僕がRに服を着せるたびに、いや、
それのみならずRの顔を見るたびに

「R、可愛いよR」

絶えず念仏の如く唱えているのを聞き、覚えてしまったに
違いない。僕の真似をしているのだろうか。それとも本当に
自分のことを可愛いと思って言っているのだろうか。

「まずいわね…Rが自惚れ屋さんになっちゃうよ」

嫁がクスクスと笑っていた。だとすれば由々しき事態である。
いずれ成長し、小生意気になって

「やっぱアタシって可愛いしー」

みたいな超ベリーバッドな糞娘になってしまったらどうしよう。
自意識過剰な天上天下唯我独尊娘になってしまったらどうしよう。
そして「この世は私のためにある」などとのたまい、ウララウララと
夜通し踊り明かすような不良娘になったら…。

「R。心で思ってても口に出しちゃダメだ!謙虚に生きなさい」

僕は父として幼い娘に人生の心得を教えた。三つ子の魂百まで。
しかし1才のRには当然そんなことは分かるはずもなく。
帽子を取って僕の頭にポンと乗せて

「かーいー!」

と微笑んだ。え、僕が?

やっぱアタシって可愛いしー。
三十路の親父も百まで。
.

ひとりで斬るもん!

嫁の実家に泊りがけで行って来た。

嫁の父母に娘・R(1才)の顔を見せるのが大きな
目的であるが、先月嫁とRだけで帰った時はRが
場所見知りと人見知りを炸裂させ、嫁が少しでも
離れてしまうと大泣きしてしまったという。

「お父さんは機嫌悪くなって『泣くなら帰れ』なんて
 言い出すし…ひどいよ。今回は大丈夫かしら」

身内の男を厳しく斬ることで定評のある(僕だけ)嫁が
父を責めつつ一抹の不安を抱いて帰郷した。

しかし今回のRはよい子だった。嫁父のみならず集まった
嫁一族全員に、まるで千代田区江戸城跡にお住まいの
やんごとなきご一家のようにニコニコと笑顔とお手振りで
応え、喜ばせていた。

場所見知りもせず、家の中を嬉しそうに走り回っていた。
ちゃんと成長したのだろう。さすがに疲れたのか早めに
眠ってしまったが、

「よくがんばったねえ」

かつての嫁の部屋で眠るRの寝顔を眺めつつ添い寝していたら
僕もいつの間にか寝落ちしてしまった。ふと気付けば午前4時。
ちょうど嫁も寝返りを打って目を覚ましたところだった。

嫁が生まれ育った部屋で嫁と寝ていることに妙に興奮を
覚えた僕は

「なあ…よかんべ?」

と嫁の袖を引っ張ったが

「やだ!眠い!」

さすが身内の男を厳しく斬る嫁。さっさと僕の腕を振り払って
寝てしまった。まあこれは午前4時に誘う僕が悪いのであるが。

次の日、家に帰る電車での中、

「あっちゃん(嫁の弟)もRと楽しそうに遊んでたでしょう。
 女の子と遊べて嬉しいのよ。暗くてモテないから」

ここでも身内の男を厳しく斬る嫁。

嫁が3匹を斬る!

僕はそんな貴女と娘に斬り斬り舞いなのです。
魔球はハリケーン。
.

湘南顰蹙ライン。

鎌倉からの帰りの電車の中で、僕は眠かった。
横須賀線経由の湘南新宿ライン。

うとうとと瞼が重くなって池袋までオヤスミナサーイ、
といきたいところであったが

「ちゃーちゃーん!」

娘・R(1才)が急に叫び声を上げた。目を開けるとRが
ニヤニヤしてこちらを見ている。ちゃーちゃーん=父ちゃん
であろうか?

「なんですかあ?Rちゃん」

とだけ答えてまた目を瞑ると

「ちゃーちゃーん!」

Rのハッキリした意思が伝わってきた。Rは僕が眠るのを許さない。
自分が寝る時はいの一番に眠るくせになんという身勝手な娘。
しかし若い娘に

「寝かせないわよフフフ」

とたしなめられるのはまんざら悪い気がせぬ。それにしても
僕のことを「ちゃーちゃーん」と呼ぶとは。そんな風には
教えていない。本当は「お父さん」と呼んで欲しいのだが
一向に覚えてくれないのでとりあえず「パパ」と呼ぶように
日々仕込んでいるのだ。しかしこれもうまく覚えてくれず…。

「Rちゃん。僕のことはパパって言ってみようよ」

僕が寝る意志を放棄したのを嬉しく思ったのか、Rはニヤリと
微笑んだ。そして…

「まま!」

ごーん。いや、ままじゃなくてね…。

「パパ!パパなの!お父さん!ちゃーちゃーんでもいいよもう!
 この父を認知してくれ!」

「まま!まま!まま!」

明らかに僕の言うことに逆らうことを楽しんでいるR。ムキー!
すると向かい側に座っていた、同じく鎌倉から乗ってきた上品そうな
ご婦人たちが

「あんなころもあったわねえ…フフフ」

僕らを笑いながら見ておった。ヒイイ恥ずかしい!よそさまで
恥をかかせるんじゃないよ!

「あっ!戸塚だ!」

と、それまで平静を装っていた嫁が声を上げた。

「Rちゃん。お父さんとお母さんはここで知り合ったのよ〜」

僕と嫁は戸塚という横浜の田舎で知り合い今に至る。
駅のところで当時の彼女、今の嫁と別れを惜しんで
いつまでもウダウダベタベタしていたことも今は昔。

「そんなころもあったなあ…トホホ」

この電車を使って大学にいっていたあのころ、まさか
約10年後の僕がこうしてまだ嫁と一緒に、しかも子連れで
同じ電車に乗っているとは思ってもみなかった。

過去の自分が歩んでいた人生の轍を、もう一度辿って
歩んでいるような気分になるこの横須賀線。

嫁とあの戸塚の街で知り合ったがゆえに今の僕があり
嫁がありRがある。これが因果である。

因果鉄道999である。

「パパと呼んでくれー!」

「まま!まま!まま!」

轍馬鹿よねー。お馬鹿さんよねー。
.

1192296(いいくにつくろう)鎌倉幕府。

嫁と娘・R(1才)でいざ鎌倉。Rにとって生まれて
初めての海を見せたかったのである。

九郎判官義経ブームなのか人がドッサリ溢れる
市街を抜け、由比ヶ浜海岸に到着。

「ほらR、海だぞ」

砂浜にレジャーシートを敷いてそこに座る。汚い湘南の
海ではあるが、目の前に広がっている、水平線が緩やかに
弧を描いているこのパノラマを見せてやりたかった。
しかしRはいつものマイペースで特に感動した風も見せず、

「ほら、波がざぶーん」

もっと海に注目せよ、とばかりに波打ち際まで連れて行き、
靴を脱いで足だけ海に浸かったところ

「フギャアア!フギャアア!」

大泣きして暴れまくり砂浜に足もつけようとせぬ。僕としては
波打ち際をかけっこして

「ウフフ。ほら、早くアタシを捕まえて」

というようなイメージを抱いていたんだけどなあ…。

「さすがに最初は無理でしょう。私はこうじゃないかって
 思ってたよ」

嫁は冷静にRを膝の上に乗せて座りRをなだめた。僕が
砂山を作ってやるとRはようやく平静を取り戻し、砂を
ひと掴みしてはサラサラと撒く、ひたすら地味な作業に
没頭していた。

ひとつ掴んでは父のため、ふたつ掴んでは母のため、海辺なのに
賽の河原のような様相を示し始めていたが、騒々しい鳥の声が
するのでふと後ろを振り返ってみると、

「ヒイイ!カラスがアアア!なんだ!どういうこっちゃ」

僕らのレジャーシートにカラスの大群が襲い掛かっていた。
走って戻ってみるとカラスはバタバタと飛び去って行き、
コンビ二袋に入れておいた未開封の「チー鱈」が袋ごと
破られ、食い荒らされた残骸が残っているのみであった。

湘南のカラスは何て目敏いのだろう。これも義経ブームの
影響なのだろうか。カラスだけにcrow判官義経。なんちて。

「大丈夫ですかあ?何があったんですかあ?」

いつの間にか僕らの隣にシートを引いていた水着ギャル2人組に
声をかけられた。まだ5月だというのにビキニである。乳が
たわわな果実である。掴み取れと言わんばかりに(言うわけない)
豊満である。九郎豊満義経。なんちて。

「ごめんね。びっくりしたよね。酒のつまみを襲われちゃったよ」

「そうだったんですか」

「…高校生?」

「はい」

湘南の海はいい!高校生の発育がいい!

帰り際、嫁が3人で写真を撮りたいと言うので、この豊満ギャル達に
カメラを預けてお願いした。

「はい。撮りますよー」

「ほら、R、お姉ちゃん達の方を見てー!」

嫁がよそ見しているRに声をかけた。僕もお姉ちゃん達を
じいーっと見ていた。特に胸の辺りを。

湘南の海はいい!波もでかけりゃギャルの胸もでかい!

ムラムラジェーンである。
.

嫁の体をマタイ伝。

ここ1カ月で3キロも太った嫁は妊娠5ヶ月。

「このままでは妊娠中毒症になりますよ!」

1ヶ月に1キロぐらいだったら大丈夫だが太り過ぎである、と
産婦人科医に怒られて以来、甘い物を控えている。

栃木の実家に帰った時も帰ったら必ず所望する

「マックスコーヒー」

(栃木・茨城・千葉でしか買えない練乳が入った狂ったように
 馬鹿甘い缶コーヒー)

「みかもの月」(萩の月のパチモン)

といった定番栃木スウィーツにも手を伸ばさず、じっと
耐える姿を見せていた。

「ていうか、何でそんなに太ったの」

「毎日1個は甘いもの食べてたから。えへ」

「えへじゃねえだろ」

今夜は寝かさないぜハニーとか、めくるめく官能の世界へ誘うぜ
モナムーとか、僕の甘い囁きには全く耳を傾けず、目の届かない
ところで貪り食っていた嫁の自業自得な気もしないでもないが、
さすがに僕がひとりだけ

「うまいにょー。甘いにょー。でも君は耐えるんだジョージアー」

ホクホクと飲み食いしているわけにはいかず、嫁に付き合って
控えることにした。

しかし嫁を甘いものに誘う罠は実家の中だけに留まらず、遊びに行った
公園ではまるで待ち受けていたかのように

「おいしいアイスクリームはいかがですかあ〜」

ワゴン車の流しのアイス屋が執拗に巡回していた。

「うあああ!アイス屋が追いかけて来る〜!」

嫁は誘惑にぐらんぐらんになり、だんだん苦行の様相を醸し出し、
このアイス屋もキリストを「石をパンに変えてごらんなさい」と
誘惑した悪魔に見えてきた。

がんばれ嫁。人はアイスのみに生くるにあらず。でも無理しなくて
いいんだぞ。だって僕も食べられないからね!

そんな忍耐の日が終わろうとした夜。嫁が風呂に入ってきた隙に
母がそっとマックスコーヒーとみかもの月を持って来た。

「…何?」

「お嫁さんが見てないうちに食べちゃえ」

母よ、お主もワルよのう…。いや待て。これぞ神の試練。この母こそ
母の仮面を被った悪魔。僕に嫁への愛が本物であるかを試そうとする
御霊の試み。ふん。鋼の意思を持つ僕にそんな猪口才なことは…

「うまいにょー。甘いにょー」

人目を忍んで食べる甘いものは格別の美味さがあった。
許せ嫁。体で返すから。

誰でも一度だけ 経験するのよ〜♪
誘惑の甘い母〜♪
.

乙女の祈りとオヤジの祈り。

実家で娘・R(1才)が遊んでいた時、父の仏壇の前で
Rがふと立ち止まり、じーっと眺めていた。

一体どうしたのだろうかと見ていると、なんと手を合わせて
頭を垂れて拝んているではないか。

「R、偉い!ちゃんとじいじに挨拶してるのか!」

確かに僕が線香をあげる時などに

「はい、Rもね、手を合わせてのんのんしてねー」

とRに教え込んだりはした。しかし自発的にやるとは何という  
感動であろうか。

「あらー。涙が出てきちゃうよ」

その様子を見ていた母も本気で涙ぐんでいた。Rをひと目父に
見せてやりたかったといつも言っている母には格別なものが
あったのだろう。

「Rはちゃんとお父さんのお父さんが分かってるんだね。
 じゃあ僕に『パパ』って言ってみて」

「まま!」

しかしRは冷酷にして無情であった。父の父は認知しているというのに、
父を認知してくれないとはどういうことだ。

ご先祖さまにはお手手のしわとしわを合わせて幸せの挨拶。

しかし父に対してはまだ挨拶の仕方を知らぬR。どうせだったら
父との挨拶は唇と唇を合わせて幸せ、と教え込むことにする。

…。

今日も拒絶された。道のりは遠い。
.

指圧の心、父心。押せば命のア・バオア・クー。

昨日、大自然溢れる栃木の大公園において娘・R(1才)を
好きなだけ、力の限り遊ばせた夜。嫁が

「肩が凝ってるのよねー」

腕をコリコリ回せていた。では夫である私めが揉ませて
いただきましょう。本当は乳を揉みたかったのだが、悲しい
ことに嫁の乳は揉むほどないので、せめて肩ぐらい揉んで
やろう、という運びとなった。

嫁の肩は本当に凝っていて、固かった。

「お前、いつもこんななのか?知らなかった」

「だって普段の夜はいつも私が寝てる頃帰ってくるじゃない」

肩を揉むような団欒の時間がほとんどなく、いつの間にか
嫁の肩に生活の負担を掛けており…すまないことである。

そして今日、またもやRを体力の限界まで遊ばせた夜、
再び嫁の肩を揉んでやった。

「昨日あなたに揉んでもらった翌朝、すごく気持ちが
 良かったのよー」

わりと嫁に感謝されてしまったので

「朝だけじゃなくて夜も気持ちよくしてやるぜ」

「揉んでやったんだから俺のも揉め」

などという最低低低の返事を思いついたのだが、それでは
あまりにも陳腐でワンパターンな切り替えしであるので
それは控え、昨日以上に丁寧に、長く、ねっとりと愛撫
するように嫁の肩をほぐす努力をしたのであった。

ところがその後の寝床でにおいて異変が起こった。
普段は中世コンスタンチノープルの城壁の如く、
鉄壁の防御にて僕の愛撫を拒む嫁なのに、この夜は
快く受け入れてくれたではないか。

一方的に求めるだけじゃだめなのね、ということを学んだ
結婚4年目の夜。

これを愛撫アンドテイクといいます。
.
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