足たのためにその1。

「あなた、今日のR(1才の娘)を見せてあげましょう」

夜、嫁が嬉しそうに携帯ムービーを見せてくれた。
そこには公園でチョコチョコと歩き回るRの姿があった。

ようやく靴を履いて歩けるようになったのだ。

Rは最近立って歩けるようになったのだが、靴が大嫌いで
履かせようとすると大泣きに泣いて拒否していたのだ。

それがこの間の土曜日、大きな公園で嫁の高校時代の
友達一家と遊んでいたところその家のチビちゃん達に
刺激されたのか

「だー、だー」

僕に手を引っ張れ、とばかりに両手を広げたかと思うと
エッチラオッチラと芝生の上を歩き出したのだ。
そしてこの携帯ムービーでは更に速くしっかりと歩いている。

「もう完璧だな」

「やっと、やっと歩くようになったわウウウ…」

Rが歩き出したのは周りの子よりも随分と遅かったため、
心配していた嫁は感慨無量だ。

朝は四本足、昼はニ本足、夜は三本足。

オイデプスが解いたとされる、今はピラミッドの傍らに座る
スフィンクスが出した謎々。

これを引用すればRはようやく「昼は二本足」に成長したことになる。
僕らと同じ「昼」になったんだね、と僕もRの成長を愛しく思い、
よしよしとRの頭を撫でた。

さて次の問題。朝と昼は二本足、そして夜は三本足、
これはな〜に?

答えは僕である。座ると膝が三つあり、という状態であり
夜のピラミッドである。

そして嫁を寝床の上で「四本足」にするのだー!

僕がピラミッドならお前はスフィンクスじゃー!
もっとこっちにオイデプス〜!

…今夜も例によって失敗した。

ま、足たがあるさ…。
.

娘はZOOでZZZ…。

娘・R(1才)は犬が歩いているのを見たり
テレビで動物が映ると指を差して

「あ!あ!」

と反応する。動物に興味があるらしい。
そんなわけで上野動物園に行って来た。

実は僕は動物が苦手である。幼い頃親戚のコリー犬に
タックルをかまされた上に舐め回されて以来トラウマに
なっている。嫁にも過去何回か動物園に行こう、と
誘われたことがあったが

「獣の臭いがどうしても嫌」

その都度突っぱねて来た。しかし今や一児の父である僕。
Rの情操教育のため、と重い腰を上げた次第である。

覚悟を決めた僕とは対照的に、動物園解禁となった嫁は
電車の中からはしゃいでいた。

「私はパンダが見たいなあ〜」

「僕はオッパイが見たいなあ〜」

急に黙り込む嫁。そしてそのまま上野に到着。

動物園に入る前に昼飯を食ったら、なんとRが既に眠そうな
顔をしているではないか。これでは来た意味がない。

「こうなったら大物から回っていこう!」

こうして真っ先にパンダ舎に向かったのであった。

「R、パンダだよー!」

意気揚々と向かった僕らを待ち受けていたパンダは、
昼寝していた。しかも背をこちらに向けて…。

「…愛想悪いわね」

「Rのリアクションもいまいちだのう」

「写真撮っておく?」

「こんな中年サラリーマンみたいな哀愁漂う背中、いらん」

動物を見たRがキャアキャア喜ぶさまを想像していた僕らで
あったが、動物達もノッソリしていたり遠かったりで
インパクトのあるヴィジョンに欠け、何よりもRは眠かったのだろう、
ボーっと見ていることが多く、やがて寝てしまった。

僕もたくさんの動物を見てクラクラして来た。
喫煙所を見つけたので

「ちょっとタバコ吸ってるから…」

嫁と離れてベンチで一服することにした。

しばらくの時間が過ぎた。2本目のタバコを咥えていた。
嫁の姿が見当たらない。もしかしてはぐれた?

サッと別れて来てしまったので嫁はこの喫煙所を
確認してないのかも知れぬ。まずいことになった。
電話しようとも思ったが、嫁はどこに携帯を入れているのか
知らないが、いくらかけても絶対気付いてくれないのである。
意味のない携帯電話…。

こんなところではぐれメタルとなってしまっては

「ウサギの絵のパーカーをお召しの、かじりんちゃんという
 三…十三才の大きなおぼっちゃまをお見かけの方は…」

などという迷子放送を嫁にやられてしまう恐れがある。

やられる前にやれー!とタバコをもみ消して走り出したが
案内放送をどこでやってもらうかも分からぬ。
これはもう八方塞がりのピンチである。

折りしも目の前には僕のピンチの焦りをよそに、悠々と歩く
キリンの姿があった。

これぞまさに、危機キリン。

なんつってジュリー!(嫁はサルを見ていた)
.

中国四千年の溺愛。

立川中華街というところに行って来た。

ビルの1フロアが全部中華料理店なのだが雑貨屋もあった。
そこには僕を待ち受けていたかの如く、きらびやかな
チャイナドレスが陳列されていたのであった。

注目すべきは子供服。子供用にもピンクやブルーのチャイナドレスや、
髪をお団子に結った「ワタシ、ミンミンアルヨー」みたいな中国美少女に
似合いそうな可愛い中国服がたくさんあり、これを娘・R(1才)に
着せない手はない。

目指せお色気チャイナ美人。目指せ中華系ロリ美少女。
末は李香蘭か春麗か。うふふ…うふふ。

しかしサイズが分からなかった。「L」とか「4」とかタグが
付いているのだけれども、それがどのくらいの大きさを
指すのか分からない。

僕はこれまたチャイナドレスを着た可憐な美少女店員を
捕まえて

「君が欲しいんだけど…」

じゃなかった

「この服が欲しいんだけど…サイズいくつ?」

と聞いてみたところ

「えーと、1〜2才ぐらいのサイズです」

何と言うアバウトな答え。1才と2才じゃかなり幅があるではないか。
身長でいうとどのくらいなのか、と更に聞いてみたところ、よく
分からないのだという。これが大陸的おおらかさなのだろうか。
聞くところによると、中国の小さな子供のズボンには、お尻に予め穴が
開いているのだという。すぐさまうんちができるように…。

僕は嫁とウームと唸ったまま、中国の大いなる国土と歴史の前に屈し
諦めざるをえなかった。

中国歴史四千年。
僕の白髪三千丈。

肩を落としてショボくれて、夕焼け小焼けで日が暮れて、
更に店内をうろついていると、これまたとんでもないものが
目に入った。


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乳がバイーンと張ったトルソーに着せられた、おとな用金太郎!

これはいかなるシチュエイションで着用するものなのだろうか。
言わずもがなエロス時であろう。素肌に直に着る金太郎。
そのわずか一枚下には乳がはちきれんばかりに格納され、
すぐさまノーブラボイン撃ち(※)も可能である。

そして金太郎だから当然アンダーレス。

なんといういやらしい。裸エプロンよりみだらなウェア。

これも中国四千年のエロス知恵なのだろうか。
世界一の人口を生み出した底力はここにあるのかもしれない。

しかし僕は、これを嫁に着せない手はない…
とは思わなかった。何故ならば嫁の胸のサイズは

「えーと、1〜2才ぐらいのサイズです」

このことなのであった…。
.

ピンポンダッシュの嫁。

僕と娘・R(1才)が風邪を引いて一週間ぐらい経っただろうか。
わりと長引いている感じである。それを憂いた嫁が聞きなれぬ
言葉を吐いた。

「ピンポンカンセンなんじゃないの?」

別に卓球少女愛ちゃんの観戦なぞしたくないなあ…と
思ったら「ピンポン感染」と書くのだそうだ。
初めて聞く言葉だがニュアンスは大体見当がつく。

例えば僕が性病になって、誰かに伝染したとする。
お互い治りきらないままリビドオの赴くままに
まぐわってしまうと何時まで経っても伝染しあって
いわばエンドレス性病状態。こういうことを言うのであろう。

「うふふ…僕とRの愛のラリー…」

僕はRと同じ風邪を共有することに血の繋がり以上の一体感を覚え
ひとりで感激し悶絶していたら

「はあ?何言ってんの?」

嫁にそういうことじゃないとたしなめられたので

「じゃあ…お互い治るまでお前とRで実家に戻っているか?」

ピンポン感染を止めるにはこれしかないではないかと
まじめに提案したところ嫁は目を輝かせ

「え、ほんとに?R、許可が出たわよ!じゃあとっとと帰りましょう!」

嬉々として今にも身支度を整えようとするではないか。
風邪引きの僕をひとり残すのは心配だわ、とか
アナタと離れ離れになるなんて寂しいわウフーン、とか
ちょっとはそれぐらい言ってくれてもいいじゃないか。

それなのにピンポン玉どころか鉄砲玉のごとく飛び出す勢い。
このどうしても解せない僕の胸の内、どうやって晴らしてくれよう。

そのいち。すぐさま嫁を押し倒して熱いベーゼをお見舞いし
嫁にも風邪を伝染させる。

これをピンポイント感染といいます。

そのに。すぐさま嫁を押し倒して実家に帰る前に最後のまぐわいを、
と称しみだらな行為を強行する。

これをチンポン感染といい…。

嫁にとって僕は最早、ヴィールスと子種を撒き散らす
害獣でしかないのだろうか。

実家に帰ってもいいから必ず戻ってきてね。
.

アナタもエクボ。

風邪がだんだん治ってきたのを見計らって嫁が

「これをきっかけにタバコやめたら?」

と言ってきた。僕の喫煙については嫁は遠慮しているのか
あまり面と向かってやめろと言われたことはなかったが、
遠い昔、嫁と付き合い始めた頃のことを思い出した。

僕も嫁も学生だったあの頃。嫁の友達が僕のところに
やってきて告げたことがあった。

「あの子(嫁のこと)、あなたのことをタバコさえ吸わなければ
 完璧なのにな、って言ってましたよ。他は欠点がないって
 言ってたんですよ。これは凄いことですよ。だからタバコ
 やめましょうよ」

これを聞いても僕は確か

「そりゃ随分と買われたもんだなあ」

とまたタバコを吸っていたような気がする。付き合い始めから
いきなりそんな好印象の高得点をマークしてしまっていては、
あとは減点法で下がるばかりだからこりゃ長くは持たないかな、
などと思っていた。

その予想は全く外れ、10年以上たった今は一緒に暮らしていて
娘までこさえてしまっているが、現在嫁が僕をどう見ているかは
容易に想像つく。

家事はやらないわネットオタクだわ、2ケタ年の離れた美少女に
心を奪われていつまでも追いかけてるわ、風呂は入らないわ…。

減点法で確実にポインツは下がりまくり、臨界点は最早間近
のところまで来ているんじゃないかということは、嫁と一緒に
いると背中にピリピリしたものを感じている。

それはまあいいとして(いいのか)、では僕はあの頃、嫁の
何に惹かれて付き合い始めたのだろうか。

…。

…。

何だっけ。

…。

…。

アハハ、今日もいい天気だな。
.

お熱いのがお嫌い…冷戦中。

風邪が治らない内に油断して飲み歩いたため、
体調が悪化してぶっ倒れたのが一昨日。

それが嫁の逆鱗に触れてしまい、それ以来
逆鱗以外のみだらなボデーに触れさせてくれない。

それでも口ぐらいは聞いてくれるので、日常会話の中に
巧みな話術で殺し文句を織り交ぜ、契りまでいざなう試みを
することにした。風邪のせい、夜中異常にノドが渇くので

「ノドが渇いたから…お前の溢れるラブ液を飲ませろ」

北方謙三ばりのハードボイルド路線で迫ってみたら

「溢れてません」

ひき逃げされた猫の死体を見るような憐れんだ目で
凝視され、失敗。次に、嫁がひとりでいい匂いがする
カプチーノを飲んでいたので

「僕のもカプカプして欲しいの!カプチ○コー!」

今度は甘えん坊路線で迫ってみたら、嫁はやおら
長い棒を振り回して僕をばすばすと叩き、

「カプカプしません!」

またもや失敗に終わった。

懲りずに三度、今度は嫁がパソコンにとあるフリーソフトを
インストールして欲しい、と頼んできたので

「僕のDNAもインストールしないかい?」

一番僕のキャラに近いっぽい、パソコンオタク路線で迫り、
嫁のコネクタあたりをまさぐったら

「しなくていいの!お腹が痛いの!」

インストールどころかスカトールな状態のようで
これもまた断られた(どこが巧みな話術だ)

三度も頼んでいるのに断るとは何であるか。
中国の故事成語でも、まん…もとい、三顧の礼というではないか。

しかし頑なに嫁が拒むのも僕の日頃の行いが悪いからであり…と、
やむを得ず大人しく嫁の横にゴソゴソと床に就いたら

「じゃあいいけど…この時間、R(1才の娘)が夜泣きする
 かもしれないから、そしたらおしまいね」

なんと、嫁が温かい言葉をかけてくれた。嫁に僕の心が通じた。
一念勃起とは正にこのこと。いや、一念岩をも通す、だ。

そうとなれば嫁の気が変わらない内に…と、嫁の衣服に
手をかけた正にその時、

「ひえっ…ひえっ…うぎゃああん」

Rが計ったかのような絶妙なタイミングで夜泣きを始めてしまった。

「じゃ、そゆことで」

僕が吸うはずだった嫁の乳は、あと一歩のタイミングで
有無を言わさずRに与えられることとなった。

夫には冷酷で、娘には限りない母性愛を注ぐ嫁。
女の鑑。見事じゃ…。

これを恐妻賢母というのであろう。
悲しい、と言ったら負けになりそうなので言うもんか。
.

鼻ニ嵐ノ喩ヘモアルゾ。

勤労感謝の日。別に感謝されてなくても勤労している
つもりなので暦どおり休日の僕である。

蘇る勤労。なんつってぐへへ。

娘・R(1才)と一緒に遊べる日でもあったが、生憎僕もRも
風邪を引いており、どこへも出かけずじまいであった。

そして食事の後はRに薬を飲ませる。
子供用なのでオレンジ色の甘い飲み薬である。
一回あたりの量も大したことなく、R用の小さなスプーンに
すくって飲ませようとしたのだが…

「ふやああああん」

Rは虫の居所が悪いのかプイと顔をそむけて飲もうとしない。
それでもしつこくRの顔の方向を追いスプーンを近づける。

「Rちゃん、お薬飲みましょうねえ」

「んぎいいいいいい」

今度はマトリックスばりに全身を弓なりにしてかわす。
…勿論嫁が背中を手で抑えているのだけれども。
しかし、Rが仰向けになって口を開けているこの瞬間がチャンス。
そのまま薬を口の中にタラーリと入れてしまおうと思ったのだ。
しかし…手元が狂い

「あででででで!」

口の中に入れるつもりが鼻の上にぶちまけてしまった。
顔面にオレンジ色の液体が覆い、しかも一部は鼻の穴に
入ってしまった。Rは狂ったように泣き叫び、どうにも止まらない。

「ごめんごめんごめん」

これが本当の勤労顔射の日…という駄洒落が思いついて
その後激しい自己嫌悪に陥った。

汚れなき愛娘・Rをそんなみだらな駄洒落で卑しめるなんて!

Rの鼻をティッシュで拭いながら、そんなことは思っても
言わぬが鼻というもんだ、と戒めたのであった。ぽてちん。
.

かじ式ねじ式。

まさかこんな所にメメクラゲがいるとは思わなかった。
僕はたまたまメメクラゲに風邪を伝染されてしまったのだ。

熱が出て体の節々が痛い。鼻水と痰がとめどもなく流れ出した。
僕はこのままだと死ぬるかも知れない。
僕は一刻も早く医者へ行かなければならないのだ。

しかし財布に入っていた診察券の医者は、何年か前に一度だけ
行っただけであり、おぼろげな記憶でその医者を捜すことは
容易なことではない。

僕の言わんとする意味がだいたい見当がついただろうか?
僕はこう言いたいのだ。

「イシャはどこだ!」

診察券には住所が書いてあった。隣町の住所だった。
隣町へ行けばイシャが見つかるだろう。
おおそうじゃ。

「中野区江古田…」

昔の記憶と電信柱に書かれた住所を頼りに、大体この辺りで
あっただろうと思われる所まで辿り着いた。
しかしそこからがどうしても思い出せない。迷ってしまった。
しばらく道をうろうろとして、また電柱の住所を見ると

「練馬区豊玉中…」

アッ!ここはもとの町ではないか。

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photo
ちくしょう。歯医者ばかりではないか。

はからずも金太郎飴を売っていそうな和菓子屋を見つけた。
あそこで尋ねてみよう。ネッおしえて下さい。
イシャはどこだ!

「ポキン。金太郎」

「ポキン。金太郎」

ごきげんよう。達者でなァ。

やれやれようやく医者を見つけることができた。

でも考えてみればそれほど死をおそれることもなかったんだな。
死なんて、僕が明け方までネットをやり続けていたために
激怒した嫁の恐ろしさに比べたら、どうってことないんだから。

医者は大変混雑しており、2時間近く待たされて意識が朦朧と
なってきた時ようやく名前を呼ばれ、すがる思いで

「先生!シリツをして下さい」

「ここは耳鼻科ですから鼻水を吸い取ってあげましょう」

鼻を吸引され、喉に薬を塗られたおかげでようやく楽になった。
どうやら成功したようです。

家に帰ると、鍵が掛かっていた。嫁は出掛けて行ってしまったのだ。
僕は鍵を持っていない。早く布団で寝たい一心で戻って来たのに
またもや意識が朦朧とし、馬頭星雲あたりまで飛んで行きそうになった。

ヨメはどこだ!
.

赤い靴履いてくれない女の子。

小春日和な休日、メイド喫茶に行こうと嫁に申し入れしたところ

「せっかく晴れてるのに!」

何故そのような瘴気漂う怪しげなところに行かねばならぬのか、と
あっさり拒否された。

その代わりに行ったところは、ピカリが丘公園。広い芝の上で
娘・R(1才)の歩きの練習ができる。折しも駅前ではチャリティー
バザーが行なわれており、缶ビールが200円で売られていて思わず
買ってしまう。

Rは最近ヨチヨチと歩けるようになったのだが、靴をはくのが
大嫌いである。

そこで今日もトレーニング、とばかりに

「はいお靴をはきましょうねえ〜」

とあんよにはかせようとした瞬間から

「ぷぎええええええ!」

大暴れしてダメであった。嫁は落ちこんだ。そんな母を見てか
Rはずっとぐずりがちであったが、ようやく自分で動く気になったようで
靴下のままではあったがエッチラオッチラと歩き始めた。

「…ま、いいか」

嫁もなんとか機嫌を取り戻し、Rは落ち葉を気に入ったようであり
つまんでは投げたりして一生懸命歩いていた。
公園を見渡してみると、ちょうど紅葉のいいタイミングであり
紅葉の秋!

Rがちょっとふらついたが僕はすさかず抱っこして転倒を防ぐ。

抱擁の秋!

僕はビールを飲んでトイレが近くなってしまった。

放尿の秋!
.

ゲリピーバースデー。

今日は僕の誕生日だったので、嫁と娘・R(1才)は
どんなお祝いをしてくれるのだろうか、とほくそ笑んでおった。

「豪勢に高い焼肉屋でも行こうか」

などと宴の予定などを嫁と話し合い、朝起きた時から
燃え上がるぞハート・震えるほどヒート。

しかし、朝イチで床屋に出かけて髪を切ってもらっていたら、
本当に体が燃え上がるように熱くなり、そして震えるほど
寒くなってしまい、腹も下ってきて…

風邪引いてしまった。貧弱、貧弱ゥ…。

「何やってるのよもう〜、寝てなさい!」

嫁には呆れられ、頭が熱いのでおでこに冷えピタを貼って
寝ることにした。しかしそれがRにとっては

「あ、親父変なもの貼って何か面白いことやってる」

と映ったらしく

「あだだだー!あだだだだー!」

目を爛々と輝かせて僕にまとわり着くのであった。本当だったら
Rに愛のバースデーベーゼの嵐をお見舞いして今日の良き日を
過ごしたかったのだが、そんなことをしたら風邪が伝染るし、
それに僕は既に座っているのも辛くなっておりRと遊べる状態ではなく、

「年取ったついでに死に水も取ってもらおうか…」

という勢いで衰弱して行き、やがていつしか眠りに落ちていった。

夜…目覚めた時はRは既に寝ていた。一家で誕生日を祝ってもらうという
野望は打ち砕かれた。それでも嫁は起きていて、僕はいくらか食欲が
出てきたのでメシを出すよう頼んだら、

「こんなんしかないけど…」

昼飯の残り物を出された。

「ま、いいか…」

本当だったら焼肉でも豪勢に食ってたはずなのに…
とボソボソと食べた。しかし嫁が

「一応ケーキもあるよ、食べる?」

と言ってきたので、ちゃんと用意してくれていたんだなあと感激して

「えっ。どんなの?」

身を乗り出して答えたのだが、出てきたのはただのショートケーキ。
嫁は細いローソクも一本だけ持って来てくれたのだが、ケーキに
刺して火を灯すと、逆に仏壇に捧げた線香のような殺伐とした
感が漂ってきてしまった。

「ま、いいか…」

Rの誕生日には僕がでかいバースデーケーキ買ったのにな…
とボソボソ食べた。しかし嫁が

「誕生日プレゼントなんだけどね…」

と言ってきたので、ちゃんと用意してくれていたんだなあと感激して

「えっ。ナニナニ?」

身を乗り出して答えたのだが

「クリスマスプレゼントといっしょってことでいい?
 買ってないのよオホホホホ」

嫁は苦笑いした。

「ま、いいよ…」

僕はこう答える他なかった。

人生の中で一番しょぼい誕生日はこうして終わった。確かに
三十路をいくつも過ぎた誕生日なんてめでたくも何ともないけどさ…。

誕生日 冥土の道への 一里塚

焼肉屋に行けなかった代わりとして
明日はメイド喫茶にいくことにする(やけくそ)
.

酒を飲む前に煮え湯を飲まされた事。

この日記を見てメールをくれる人の中で

「実は近くに住んでるんですよ。酒でも飲みませんか」

ということが時々ある。初めてのメールで唐突に言われたら
「ちょっと待て」とさすがに引くが、何度かのやりとりの後で
こういう流れになった時、僕はこれを断る理由を知らぬ。
よって「いいですね。飲みましょう」ということになる。

あとは嫁の承認を得るだけだ。相手が男だったら気が楽だが
女性だった場合は深呼吸して気合を入れてから話を切り出す。

「…というわけで日曜日、ネットの人と飲みに行って
 よろしいでしょうか」

「一対一で?」

「うん。一対一で」

「どんな人?」

さあ、ここが正念場だ。僕は覚悟を決めて

「じょ、女子大生らしいよ…」

喉を振り絞って言った。ここで嫁に殺されるかと思ったら

「あそ。言っておいで」

あっさり承認されたので拍子抜けした。

昔は嫁以外の女性とサシで飲むことに後ろめたさを感じ、
隠れて飲んでいたらバレて怒られ、それ以降は事前に
嫁に伝えなければならなくなった。(嫁が知っている人は除く)

しかし伝えたら伝えたであーだこーだと揉めることが多く、
だったらやっぱりダマテンのほうがいいやと再び隠れて
飲んでいたらやっぱりばれて、修羅場がメビウスの輪のように
ループされていた時があった。

それが今は夫への愛も薄れ、関心もなくなってきたのだろうか。
嬉しくもあり、寂しくもあり。しかしその後

「でもあなたのネット繋がりの女の子ってみんな可愛いんだよね。
○○ちゃんとか×××ちゃんとか…」

読経のような低い声の呟きがブツブツと聞こえてきたので
やはり一抹の不安はあるらしい。

「大丈夫。かつてみだらな行為に及ぼうと思ったことはないから。
 いや、ないと言ったら嘘になるが実行したことはないから。
 というよりも酒でべろべろになるから」

「ほんとに〜?△△△さんとか※※※ちゃんとか…」

「マバンヤ様に誓ってもいい。その日の内に帰ってくるよ」

「■■■ちゃんとか☆☆ちゃんとか…」

…もういいよ。
.

体臭事変。

娘・R(1才)は眠りに着く時、嫁に覆いかぶさって寝る。
まるで嫁を抱き枕にしているかのようである。

試しに僕が同じようにRを抱き寄せてみると、ぎゃーんと泣き出して
全力で僕の元から離れようと暴れてしまう。一体何が違うのだろうか。
この疑問を嫁に投げかけたらきっと

「コミュニケーションが足りない。せめて休みの日ぐらいネットと
 ゲームとマンガ読みの時間を減らし、その分Rと遊べ」

バッサリ斬り捨てられるだろう。どこぞにある嫁のWEB日記には
その様なことが書かれているらしい。甚だごもっともである。

しかし僕の言い分もある。が、今争うことではないので、これは
これとして事実として捉えておくに留め、他の要因を考えてみる。

…やはり男女差だろうか?母親のふくよかな胸を求めて嫁にのみ
抱きついてくるのだろうか。いや待て。嫁の胸はふくよかでない。
それどころか僕と大して変わらぬと断言してよい。
(これも嫁に斬り捨てられそうだなあ)

となると…やはり体臭か?と考えていたところにこんな記事が。

なぜ女性は男性の体臭が嫌か

Rも赤子なれど女である。これによると、女性よりも男性で多く発生する
アンドロステノンという物質が汗と混じって臭いが発生し、女性に不快感を
与えるのだという。

その臭いは「運動部の部室のような汗臭さ」(毎日新聞の記事)というから
ああなるほどと思った。僕は男子高であったから、学校中がそのような
臭いで充満していた。あんな嗅いだだけで妊娠しそうな男臭さは
僕だってイヤだ…と思ったら不思議なことに

「一方、男性はこの物質をかぐと、リラックスしたり、リフレッシュ
 したりする」(朝日新聞の記事

というから謎である。実は僕は、履き倒した靴下や足指の間の臭いを嗅ぐのが
好きなのだがそれと関係あるのだろうか(ねーよ)

もうひとつ謎なのが「アンドロステノン」を検索してみると、女性を惹き付ける
フェロモン媚薬の成分として出てくるのである。女性が嫌がる物質といわれる
一方で媚薬の作用ありという。その媚薬の効果自体も怪しいが、強さによっては
毒にも薬にもなるということであろうか。

しかし結局は、原因がアンドロステノンだろうがアンドロメダ星雲だろうが
嫁を抱くにしろ娘を抱くにしろいつも清潔にしておけ、ということなのだ。
風呂嫌いの僕にとっては耳が痛い結果であることには変わりがない。

それに加えて僕は30才をいくつか越えた、加齢臭も気になる素敵なお年頃。

体臭にナーバスになってしまって、食事も喉を通らないことよなあ…。

これを体臭食道といいます。
.

汁汁満ちる。

風邪を引いた娘・R(1才)が鼻汁タレ子のままである。
咳もひどい。タンが絡むようでノドがゴロゴロ音を
立てている。

そして僕も咳がゲホゲホと止まらず、Rと同様にタンが絡む。
ふたり揃って粘液が出て止まらない汁親子になってしまった。
僕はともかくRの具合が心配だったので、また嫁にRを
小児科まで連れて行ってもらうことにした。

「新しい薬をもらってきたよ…。今年はね、咳が止まらない
 風邪が流行ってるんだって」

会社から帰ってきた僕に嫁が教えてくれた。

「僕も咳が止まらないぞ。ということはRと同じ風邪か…。
 ムフフ…Rと同じ…娘と同じ苦しみを共有…ドゥフフ…」

「なに喜んでるのよ!あなたはあなたでチャンと薬飲んで
 とっとと治しなさいよーッ!」

などと嫁に怒られてからしばらく、

「ふやああん。げほげほ」

Rが起き出して来た。やはりノドや鼻が苦しいようだ。
一発くしゃみをしたかと思うとその勢いで鼻汁がどばっと
溢れ出し、ぐずって泣き出す始末。

「これは…吸うしかないな」

僕は赤ちゃん鼻汁用のストローを持ち、Rの鼻穴に突っ込む。
Rはギャアギャア叫んで抵抗するが嫁に押さえててもらい、
ジルジルと音を立てて吸い出した。

吸い取ったものはストローの途中にある容器に溜まるのだが、
見てみると結構な量であった。これだけの鼻汁が溜まっていた
のだから辛かったに違いない。

僕がストローを離した後、Rはスッキリしたのだろう、機嫌が良くなった。
しかし寝るどころかオモチャで遊び始めたり、寝ている嫁に抱きついて

「ふにゃあん」

などと甘えてしまっている。このままでは再びグズり出すことは
必至であるので

「ほーら、みんなねんねしちゃうよー」

僕も嫁も布団に入って寝る体制に入ったのであった。
とは言っても僕は寝ているフリをしているだけである。
何故ならば、僕は僕でなんというか、その、下半身のほうに
汁が溜まっており、Rが鼻汁を出してスッキリして寝た後は
後は僕も下汁を出してスッキリしたいと考えておったのだ。

しかしRは一向に眠ろうとせぬ。せめて前哨戦として乳でも揉んで
ちょっかい出そうとしたが、Rが嫁に覆いかぶさってじゃれているので
それも叶わぬ。そのうち眠気が襲ってきて僕は寝てしまった…。
翌朝目覚めた時の口惜しさといったらなかった。

僕ら家族の中で唯一風邪を引いてなく、鼻汁もタンも
下汁も溜まってない嫁。それならばおっちゃんのテクニークを
用いて嫁の奥深き箇所から汁を溢れさせてやろうぞと意気込んで
いたのに。

そうすればみんなで汁家族。

汁マニアファミリー。
.

入浴と性欲の関係。

夜中…。

娘・R(1才)の育児でに燃え尽き、泥のように眠ろうとする
嫁を口説いて夫婦の契り、いわゆるまぐわいを成すことは
ひとつの困難である。

一時でも離れたくない…というラブラブウフーンな蜜月期も
とうの昔に過ぎ去った今では尚更のこと。現在嫁は

「性欲は全くない」

きっぱり言い切っている。加えて、日々疲労困憊した嫁に
覆いかぶさり、更に体力を酷使させるのはさすがに酷である。
僕も自然に誘うことが減ってしまった。

それでも男として、雄として、maleとしてのっぴきならない
状態になることは必ずあるので、その時は

「お願いします。まじで。ほんとに」

家長の威厳も夫としての威厳もかなぐり捨て、ほとんど
土下座の勢いで頼み込むのだが、それでも許されることは少ない。

これを土下座性交といいます。なんつってうひゃひゃ。

とはいえ、わりとすんなり許されることもままある。
これは一体どういうことであろうかと察するに、
おそらく風呂に入った後に言い寄ると成功しやすい
のではないかと推測するようになった。

そこでしばらく統計を取ってみると、
風呂に入らなかった夜の場合、5回のうち4回は断られるが
風呂に入った場合は5回のうち3回はOKだった。

これで風呂に入った場合は受け入れられることが多いという
ことが分かったのである。ていうかそれぐらいすぐ分かれよ、
と思われるかもしれないが、僕は風呂嫌いなのである。

風呂と契りの密接な関係を発見したことを記念し、
表などにまとめてみた。



これを風呂ーチャートといいます。
.

カメラ小僧VSヤフー。

「YAHOO!」で募集されていた「赤ちゃんフォトコンテスト」に
応募した。むろん娘・R(1才)の写真である。

何も入賞しようとか思ったわけではない。いかにも親バカの
食指が動きそうな企画に、つい参加してみたくなっただけだ。

なまこクラブ(仮名)やあそこクラブ(仮名)に写真を送っては

「なんでウチの子が載らないのよーッ。ムキー!」

という鬼気迫る嫁のようなパッションがあったわけではないが、
僕には過去、身を焦がすほどの恋心を以ってお慕い申し上げていた、
お気に入りの美少女Rちゃん(現在音信不通)を臆面もなくバシバシ
カメラに収めていた実績がある。

女の子を被写体とする写真には多少の自負があった。
ただのカメラ小僧じゃねえかとか言わないように。

しかしそれでもおそらく多数の応募があって、入選はほんの僅かだから

「ま、ダメモトで…」

このことであった。

さてコンテストは予想のとおり、三国志におけるイナゴの大群の如く
全国の親バカからの応募が集まり、締め切りが過ぎた。
総応募数はおそらく万を超えていただろう。そのうち有名写真家だか
なんかが審査員の手によりノミネートされるのは30に満たぬ。

ノミネート作品の中には、うちのRの写真は、なかった…。

競争率が高いだろうということは初めから分かってたし、
選考された写真は皆可愛いし、これなら負けても仕方がないかナ…。

…。

…。

なんて思うわけなかろうがバカヤロー!
うちのRが一番可愛いに決まっとんじゃー!

なんでウチの子が載らないのよーッ。ムキー!

思わず嫁と一緒になってしまった。
昔は、例えば自分の子供の写真を年賀状にすることなどは
鼻で笑っていたのだが、いざ自分に娘ができたとなると、
自分の子供というのは恐ろしいほどに魔力を持っている
ことが分かる。

他人から見たらつっぱりを5・6発食らった相撲取りのような
顔をしていても

「我が家のアイドルで〜す」

などとコメントして年賀状を作ってしまう気持ちも今となっては
よく理解できる。ともかく落選した悔しさのあまり

「今後は検索する時はGoogleのみを使うこととし、ゆめゆめ
 ヤフーを使ってはなるまいぞ」

このことを家訓としようと涙を流しながらフテ寝したのであった。

おヤフーみなさい。
.

娘・R(1才)が歩いた。

これまではひとりで立つことは出来ても2〜3歩ぐらいしか
歩けなかったが、今日、いきなりトテトテと転ばずに
歩きはじめた。しかも行き止まりになるとちゃんとエッチラ
オッチラとUターンもするではないか。

「ふおおおおお!デジカメデジカメ!」

「ヴィデオヴィデオ!」

僕と嫁は慌ててそれぞれのカメラを取り出し、あたかもコスプレイヤーに
蝿の如くたかるオタクカメラ小僧のようなかぶりつきで記録を始めた。

「わ、わたしは今、猛烈に感動しているわ…」

感慨無量な趣の嫁に、僕も頷き合う。Rが産まれて1年4ヶ月。
同じ頃に生まれた友達の子供達はとっくにヒョイヒョイと
歩き出し、またハイハイコンテストでも一歩も動けず号泣したまま
リタイアした苦い思い出などが甦る。

Rはその後もしばらく部屋の中をヨチヨチと歩いていたが、
やはり疲れてきたのか5歩ぐらいでコテンと転ぶようになってきた。
それでも何度も立ち上がっては歩き出すのだけれども、
もうへっぴり腰になっていてガクガクしている。

「Rよ、疲れたんだね。よく頑張ったねー」

もういいんだよ、と僕がRをダッコしてやると

「ひーん。うぎゃあああああ」

なんとダッコを拒否するではないか。仕方なく離してやると、
Rはデへへー、と、なおも歩き続ける。

い、今まで抱擁を拒否されたことなんてなかったのに。
これが成長というものだろうか。

自分で歩けるようになった今、この父の許をとっとと離れ、
一人歩きしていくR。やがて父を追い抜いて行き、思うがままの
ところに行ってしまうのだろう。それだったらずっと小さいままの
可愛い娘でいて欲しいような…。

泣ーくーのーがーいーやーなーら、さあ歩けー。

水戸アナルのテーマソングが頭の中を駆け巡りつつ
嬉しくもあり悲しくもあった娘の成長であった。
.

ホスピタルにてフクキタル。

娘・R(1才)の鼻風邪がひどいので、嫁がかかりつけの小児科に
連れて行ったそうだ。以下はその伝聞。

僕が連れて行った時もそうだったが、Rは大の病院嫌いで、
中に入っただけでギャアアアと大泣き。待合室にいる間から
怯えまくっており、Rの前に待っていた子が

「○○ちゃーん」

と呼び出されただけなのに

「プギャアアアアアア!」

まるで死刑宣告をされたかのような絶叫をあげ、

「Rちゃん、まだ早いよ〜」

苦笑いのナース嬢に突っ込みを入れられていた。
Rは既にこの小児科では「泣きっ子」として有名らしい…。

待っているだけでこれだから、本チャンである診察中の
惨劇を想像することは容易い。とにかく焼けボックリの
ような暴れっぷりで、ナース嬢が

「お姉さんはRちゃんのこと好きなのにナ。
 だから泣かないでね」

という何とも優しい言葉をかけてくれたにもかかわらず
焼け娘に水だったのことだ。なんという勿体無いことを。
確かあの小児科には可愛いナースがいたのだ(チェック済み)

僕だったらその一言でとろけてしまい

「あなたのようなナースなら〜
 ナースがままになりましょう〜♪」
 
であるとか

「あなたは僕のナースの与一。
心の扇を射抜かれた〜♪」

などというアーバナイズされたインテリジェンス溢れる都々逸を
見せしめた後、

「あなたのおかげで全身が燃え尽きるほどヒートなので
 診断してくれませんかドゥフフ…」

全力でモーションをかけてしまうであろう。

薬だけでなくナースの愛まで貰って来たRは、
おそらくそれに気付かないまま家に帰ってきても

「べひょーん」

豪快なくしゃみと共に、勢い良く鼻水を
ぶっぱナースのであった。
.

眠らぬ枕元の幼女

夜中…ひょっこりと起き出す娘・R(1才)

風邪を引いているので寝苦しいのかと思ったら
そうでもないみたいで、嫁が授乳をさせると

「あーははははは」

枕元にあるおもちゃで遊び出してしまった。

「もー。ねんねしなさい。ねんね」

嫁は「もう眠くてかなわない…」と、既に布団に入って寝る体勢だ。
その嫁の顔の真上から、Rはもみじのような手のひらを広げ、そして
手を高く振り上げてハエタタキのごとく

べちん。

嫁の顔面をぶっ叩いた。見事じゃ…。

「痛い!なにすんのよもう…」

嫁はたまらず悲鳴を上げるのだが、Rはマイペースに絵本なぞを広げ、

「あたー。うたー」

犬や猫の絵を指差しながら読んで(?)いるので、僕は付き合って
あげることにし、

「はいはい、それはわんわん、そっちはにゃんにゃん、
 こっちはちんちん」

などとさりげなく性教育を交えて話をしていたが、気が付くともう
午前2時を回ろうとしていた。さすがに僕も眠くなり、

「R、寝ようよ。宵っ張りになっちゃうと君の弟か妹が
 産まれなくなっちゃうよ〜うひょひょ」

などとRには高度すぎて分からぬであろう、大人の理由を告げて
寝るように催促するのだが、当然Rは遊ぶのを止めぬ。

「じゃあ、お父ちゃんも寝ちゃうぞ」

僕は布団に入って狸寝入りを決め込んだ。するとRは

「ふえ…ふえ…」

あ、僕も嫁も寝ちゃったから寂しくて泣き出すのか…と
思ったが一転、

「むきゃあああああああ」

いきなり怪鳥のような雄叫びを上げるないなや

べちん。

「いてえええ!」

僕もRに顔面を引っ叩かれたのであった。
そうか。さっきも嫁の顔を叩いてたのは

「寝るな。あたちと遊びなさい」

ということだったのだ。

僕は夜中、Rを起こさないようにできるだけ
物音を立てないように注意している。

親は「寝た子を起こす」愚行を致しますまいとしているのに
子は平気で「寝た親を起こす」ようである。

いつの間にこんなバイオレンス娘に
なってしまったのだか。
.

ラブラブモードでーっす。

オタク界隈で(どんな界隈だ)、「ネコミミモード」という
曲が流行っていると聞いた。なんでもアニメの主題歌で、
一度聞いたら耳に付いて離れぬのだという。さっそく聞いてみた。

ポヨーン、ポヨーンというBPM遅めのゆるーいラウンジっぽい
ハウスがバックグラウンドで流れ出し、

ネコミミモード、
ネコミミモード、
ネコミミモードでーっす

という、いかにもアニメ声優っぽい女の子の声が延々とループする。
なるほど、はまるといえばはまるであろう。

しかし、僕はこれにそっくりな曲のレコードを持っている。その名も
「ラブラブモード」という曲で、確か7、8年前に渋谷のCISCOという
レコード屋で

「女子高生の声をサンプリングしたアホ・アホ・ハウス!」

という紹介文が書かれていたのでつい買ってしまったのだ。
聞いてみると、やはりゆるーいハウスのオケに

ラブラブモード、
ラブラブモード、
ラブラブモードでーっす。

延々とループする女子高生声が…確かにアホだ、と
腰砕けになったものである。

このセリフの他にも「ウフフフ…」という笑い声や、
「オッケー」「大丈夫デース」「バイバイ」などといった、
いかにも口元がだらしがなさそうなギャルが発するダルダル声が
続き、なんだかハメ撮りしてサンプリングしたんじゃないだろうか、
と思ったものである。

クレジットを見たら、作者が一緒だった。
ディミトリ・フロム・パリというフランスのハウス系のミュージシャン。
ちなみにこの人は僕の好きな「ビートマニア」というゲームにも
曲を提供している。

僕はその後何をとち狂ったのか覚えてないがCDも買っている。
それだけ気に入ったのだろう。もはや遠い記憶だ。

遠い記憶ついでにもう1つ思い出した。「ラブラブモード」を
当時付き合っていた彼女に聞かせたのである。彼女は眉をひそめ、

「何、この曲…」

あやしげなものでも見るような顔で感想を述べていたが、
そういえばその時の彼女はよく

「ラブラブモードでーす」

などと言って、寝床で僕の体に絡んできたりしていたが、
今思い返すとこの曲のせいで彼女もこんな台詞を言っていた
のかもしれない。

この曲が頭にこびりついていたのかもしてない。

その時の彼女は今どうしてるかというと、
実は今でも僕の隣に娘・R(1才)と一緒に寝ているのだが、
もはやラブラブモードなどという言葉は口が裂けても
言わないし、自ら体を絡ませてくることもない。

たまさかに体を許すことはあっても、それは
ラブラブモードの「ラ」の字が「シ」の字に
変わっているのであった…。
.

鼻も恥らう32才。

風邪を引いてしまった。

鼻水がドバドバ、咳もドバドバ、神様助けて
ゲバゲバパパヤー、といった感じでどうにもならぬ。

おそらくこの風邪は娘・R(1才)からうつされたものだ。
Rは僕より先に、週末ごろから鼻水をデローンとたらした
鼻タレ子になってしまっていた。

咳もひどくなり、夜寝ている時でも苦しいのか泣き出してしまう。
今朝などは嫁がオムツを換えようとRを仰向けに寝かせて
目を離していたところ、

「へぐちょん」

クシャミをした途端に泣き出してしまった。

「どうしたどうした」

と、Rの許に戻ってみたら、なんと鼻水がどばっと飛び出て
口の中まで入り込んでいるではないか。大慌てでティッシュで
ぬぐった。鼻水で窒息するところだった。恐ろしいことだ。
はじめは僕もRと一緒に

「僕と君は鼻タレ子〜」

などとおどけていたが、だんだん洒落にならなくなってきた。
僕も鼻水が止まらないので家では鼻にティッシュを突っ込んでいる。
しかし嫁はその情けない姿を見て

「ぷぷぷぷっ」

と笑って馬鹿にする。怪しからんことだ。
敢えて生き恥を晒しているのも、それだけ抜き差しならない
辛さだからだということが分からないのであろうか。

しかも今日などは会社から戻ってきて早速またティッシュを
突っ込もうとしたところ

「まだ直らないの?」

などと呆れ顔に言うではないか。ひどい。何という仕打ち。
冷たい嫁であることよ。

僕もRも鼻タレ子なのを必死で耐えてるのではないか。
嫁だけがこの苦しみを共有してないのが恨めしい。

確かに僕は鼻タレ子だが、

「お前なんか腹タレ子ではないか」

こう言い返したいところだが殺されそうな気がするので
なかなか勇気がない。それとも

「お前なんか胸タレ子ではないか…あ、たれる胸もないか」

こんな憎まれ口はどうか…。いや。鼻水が真っ赤に染まるまで
殴られるに違いない。

僕、ヘタレ子。
.

証拠隠滅。陰々滅々。

実家に帰ってもやることはやる。
契りたい時は契る。

母が床に着いたのを見計らい、僕らも母にあてがわれた
寝室に入って嫁を押し倒したところ

「ちょ、ちょっと!この部屋ティッシュがないよ!」

先見の明がある嫁が言った。なるほど確かにティッシュは
必需品。全てが終わった後に気付いてもそれは悲劇でしかない。

しかしここで問題が。ティッシュを取りに行くには母が寝ている
部屋を通らなければならなかった。母に悟られてはならぬ。
バレバレではないか。僕は慎重に寝ている母に気付かれぬよう、

抜き足差し足、静かにティッシュ獲得に成功し、その後
抜いたり挿したり、静かに嫁と性交したのであった。

さて、速やかにまぐわったものの、後処理のティッシュが残った。
恥ずかしながら嫁も僕も、瑞々しくも溢れんばかりにほとばしったため、
使用した紙の量もコンモリとしたものになってしまった。
ゴミ箱に捨てても、ゴミ捨てをする母にこれまた
たちどころにばれてしまうに違いない。

かぐわしきコケティッシュなティッシュなのである。
誤魔化しようがない。しばし考えた末、トイレに流した。

まだ僕が実家にいた頃、女の子を連れ込んだ時によく使った手だ。
ていうか15年前と同じことやってんのかよ!と思うと
我ながら情けなくなるものがあったが…。

翌朝。母がドタドタを足音を立てて慌てているので
どうしたのかと聞いてみたら

「トイレが詰まっちゃってるのよ!」

「あら…それは…」

「なんでだんべ。おかしいよう」

母さん、ごめんなさい。でも言えません。
とにかく「ぐっぽん」を持って来てトイレに突っ込む。
しかし、がぼがぼと格闘している間にも母は

「何が詰まっちゃったんだろう。急におかしいなあ」

何度も首をかしげるのであった。
母さん、それは紙のみぞ知るのです。なんつって…。

それにしても故郷に帰って情事を行うことの難しさよ。

(同居してる人は如何に誤魔化しているか聞きたいものである)

これを「故郷情事難し」といいます。
.

静かな湖畔の森の陰から、オヤジと猿(ましら)の声がする

秋の日光といえば紅葉狩りである。

ノリヤス叔父が運転する車は、僕、嫁、娘・R(1才)、
そして僕の母と叔父の新しい奥様を乗せて峠を攻める。

「さあ、ここからの眺めが最高なんだ」

叔父が勧める展望台に登ってみたら…

周りの山は全て禿げ上がっていた。
紅葉狩り、一瞬にして完。

ま、天気はいいし…紅葉はなくとも眺めもいいし…
ということでそれなりに楽しんで中禅寺湖畔のレストランに入った。

photo

ガビ〜ン。店に入るなり度肝を抜かれたのがこの貼り紙。
あやしい〜。しかもピストルないし。

何となく「マサルさん」っぽいあやしげな雰囲気の店。
しかしウチには1才にして既にセクシーコマンドーを
体得したした娘・Rがいる。
昨日もまた「放課後キャンパス」をやっていたし。

photo
むっふーん。

恐れることは何もない!と店に入ってみると、それ以外は普通であった。
メニューも「猿鍋」とか怪しいものはなく、僕は蕎麦を啜った。
味も結構美味しく、満足して席を立とうとしていたところへ

どどどどどどどどどど。

店のおやじが猛ダッシュで客席まで走ってきたかと思うと、
コックリさんに憑依されたかのような狂った勢いでばん、ばん、と
窓を閉じていくではないか。

あやしい。あやしい。あやしいー!

一体何事だ、と僕ら客は呆気に取られ、しんと静まった。
店のおやじは一呼吸ついて僕らに向かって叫んだ。

「さ、猿です!猿が店の外に現れました!
 食べ物目当てに入って来ないように窓を閉めました!」

「ええー!?」

店頭の貼り紙はダテじゃあなかったんだ…と妙に感心して、
会計を済ませたのであった。

これがホントの猿マネー。なんつってうひゃひゃ。

僕らは帰途に着いた。先ほどの店の前を通り過ぎようとしたことろ、
母がその反対側の林を指して叫んだ。

「あっ!猿っ!」

全員で振り向くとそこには確かに猿が一匹、四つん這いで
走る姿が見えた。

「R!お猿さんだよーうきゃきゃきゃ」

「さっきの店の猿はアレだったんだよきっと」

「ケツ赤ぇー!」

たった一匹の猿の出現で大盛り上がりの僕ら。

真っ赤な紅葉のタイミングを逃しても
真っ赤なお猿のお尻が出迎えてくれる。

日光はとてもレッドでホットな観光地である、
というお話だったとさ。とっぺんぱらりのぷう。
.

冬のマロとソナタ。

土日、実家の栃木に戻っていた。嫁と娘・R(1才)も一緒に。

母の弟のノリヤス叔父が、還暦を迎えた母を祝して
母と僕らを日光に連れて行ってやりたい、と小旅行に
招待してくれたのだ。

母はこのノリヤス叔父を、昔から「ノンちゃん」と
呼んでいる。しかし

「最近、呼び方が変わったんだよ〜」

と母が言う。

「何て呼んでるのよ」

「ノン様!」

「…」

韓国ドラマブームは嫌な感じに遅れて辺境の地・栃木にまで
伝播していたようだ。

出発の朝、僕らは早くから仕度を整えてノン様、もとい
ノリヤス叔父が車で迎えに来るのを待っていた。やがて
ピンポーンと呼び鈴が鳴り「さあ出発だ」と玄関に走って
行ったら、叔父ではなく見知らぬ婦人が立っていて

「おはようございます」

挨拶をしてくるではないか。はて、母の知り合いだろうか…?と
思う間もなく

「はいはいはい、さあ行くベ行くベ」

母がドタドタとやって来て僕を促す。え、この人も一緒に行くの?
そんなこと聞いてないよ。ていうかこの人誰〜?

僕が戸惑っていると母が「あ」と振り返り

「そうそう、この人はね、ノン様の…えーと、何て言ったらいいか、
 そう…お前の新しい叔母さんになる人!」

「は…?」

僕は一瞬母の言っていることが理解できかねていたが

「やだよもう、そんな紹介の仕方しないで!
 あ、かじりんちゃん、今日はよろしくね」

このご婦人はアハハと手をぶんぶん振って笑うではないか。

ノリヤス叔父:離婚暦1回の男ヤモメ。

えー。ということは、この人は叔父のニュー奥様になる人であり、
僕にとっては、ママ叔母(?)

それこそ聞いてないよ!いつの間に…叔父だって還暦に近い年
なのにやるなあ…。

呆気に取られながらも玄関の外に出てみると、叔父は車を
横付けして待っていた。僕と目が合うと、照れ臭げなのか
得意気なのか分からぬが

「ヌフフ」

と笑みをこぼした。何はともあれおめでとうござんす。
母が「ノン様」の称号を与えたのに習い、

僕は「ほくそ笑みの貴公子」の称号を差し上げましょう。
.

はっけよい、まぐわった。

部屋の中をパンツいっちょうで歩いていたら

「そのパンツ派手だよね…」

と嫁の視線が熱かった。だいぶ前に貰ったものだ。
確か会社同僚の海外旅行土産だったか。

それは金色の地に象が描かれていて僕の手持ちパンツの中で
一番派手。シルク製と書かれてあるので一番高いパンツでもある。

他のパンツは嫁が西友とかイトーヨーカドーでわざわざ
面白がって見つけてきたピカチュウ柄のパンツばかりなので
間違いない。

最もゴージャスなパンツ、即ちコレ勝負パンツ。

しかし僕はもう勝負できる身分にない。僕には妻と娘がいる故。
そう思うと無常なる遁世感が心に漂ってくる。

象さんパンツの中にはエレファントの鼻よりよりエレガントなものが
しまわれているというのに。勝負すること自体は可能なのに、
許されぬ身。

ここに来て一昔前、ちょんまげが結えなくなった故に引退したと
噂されたスモウレスラー・北勝海の気持ちが分かったような気がする。

相撲もアレも似たようなものがある。
両方とも肌と肌がぶつかりあい、汗と汗が入り混じる。

相撲のガチンコ勝負は素晴らしいし、
アレの時のナニも素晴らしく文字通りガチンコである。

相撲の取り組みの時は塩をまくが、
アレの取り組みの時は潮を吹くことがある。

相撲の取り組みの前にはシコを踏むが
アレの取り組みの時にはシコシコしてくれる時がある。

…書いててどんどんおやじになってきたので結論を急ぐ。

僕は勝負パンツを使うことによる「勝負」を今一度してみたいと
思うが。許される相手は嫁しかいない。

では嫁と勝負すればよいだけの話だがそうもいかぬ。
嫁とはもう付き合いが長いので、勝負までの盛り上がりというか、
かけひきや緊張がまるでないのだ。これでは勝負とは呼べぬ。

それとは別に、嫁とは同居している故に、相撲のような
ガチンコ勝負ができない理由がもうひとつある。それは何か。

答え:

相撲では同部屋対決はできないでしょう。なんつってうひゃひゃ。

嫁が取り組みを避けるので「不戦勝」が多い僕である。
.

親の親の顔が見たい!

第1回夫婦朝まで生討論。

お題:「娘・R(1才)は誰に似ているか」

口火を切ったのは嫁だった。

「今一番似ているのは、あなたのお母さんよね」

「やはりそうか。やだなあ」

「やだなあって、それじゃお母さんに失礼じゃないの」

「でも…」

嫁はいい子ぶりっ子なことを言う。確かに母の容姿を
どうこう言うつもりはないが…。

肉親である母。文字通り肉の親である母。
いや、多くは語りますまい。

その母に、僕が最強に可愛いと信じて疑わないRが
よく似ていることを認めることにはかなり抵抗があった。

「お母さん、若い頃は可愛かったって自分で言ってたよ」

「それは嘘だ!」

いつだったか、母の少女時代の写真を見たことがある。
ちびまる子ちゃんを実写版にしたらこんな感じなんだろうな…という
何とも微妙なセピア色の母だった。

確かに僕も嫁も大した遺伝子を持っているわけではないので
Rがまさか絶世の美少女になるとは思っていない。
それでも僕と嫁の平凡遺伝子がいい塩梅にブレンドされ、
10人並みぐらいになってくれれば、という小さな夢があるのだ。

しかし母にバッチリ似ているとなれば、先は見えてしまう。
そんな夢のないノーフューチャー遺伝子の所業を
認めるわけにはいかぬ。

ま…でも…。おそらく僕は、Rが母に瓜二つになろうが
マンドリルそっくりになろうが、娘が一番可愛いと
思っているに違いない。

何故なら男にとって長女は最大の恋人。そして恋は盲目。

僕は何となく討論の落ちどころが見つかった感じになった時に、
嫁がぼそっと呟いた。

「Rの顔を下から見上げてみると、耳からアゴのラインがこう、
 ぷっくりしててお母さんそっくりなのよね。ちょっとイヤ」

「何だよ!お前だってイヤだって思ってるじゃないか!」

「あら。そんなこと言ってな…あはは、口が滑っちゃったわ
 ぐーぐーぐー」

狸な嫁は狸寝入りを決め込んだ。こんなことならば
朝まで生討論なぞは早々に切り上げ、
朝まで生まぐわいに移るべきであったと思った。ぽてちん。
.

歯ブラシプレイ。

photo風呂の中で娘・R(1才)をデジカメで撮影。
うへうへ。

「そんなことしたらデジカメ錆びるし、
 落としたらダメになっちゃうよ…」

嫁は心配するが、それで躊躇する僕ではない。
デジカメの代わりなぞいくらでもある。

しかし、僕はいつまでRと一緒に風呂に入れるか、尚且つ
写真まで撮れるかは分かったものではない。娘の裸体を撮ることが
犯罪にならない内に、撮れるだけ撮ってしまえ!

このことである。

「まあいいけど…じゃあコレ」

嫁が呆れつつ僕に渡したのは、R用の歯ブラシであった。
乳児用に出来ており、取っ手が輪になっていて柄も短い。
なるほど、これならば掴みやすいし誤ってノド奥まで
刺してしまうこともない。

「はいR。君も歯が生えてきたのだからコレで
 きれいにしよう」

歯ブラシを渡してみたが、Rは手に取ってシゲシゲと
眺めるだけである。使い方が分からないのだ。

「ほら、こうやるんだよ」

Rから一旦歯ブラシを取り、歯を磨く真似をしてみた。
口の中に入れてしまうと僕の唾液や虫歯菌(?)が
移ってしまうのであくまでも真似である。そして
歯ブラシを再びRに戻した。

「さ、自分でやってごらん」

「あだ!」

Rはきっ、と歯ブラシを高く掲げた。そこまではよかったが

「げほおおおおお!」

Rは僕の口に歯ブラシを突っ込んできたのであった。

「いや…Rちゃん、自分の口に入れるんだよ」

速やかに歯ブラシを洗い、もう一度チャレンジ。
しかしRはまたしても僕に矛先を向け、僕の
乳首をゴシゴシ磨き始めたではないか。

「そこも違う…違うんだって…でもそこでもいい…」

なんともいえぬ感覚に身を硬直させる僕をよそに
Rは乳毛の毛並みまで揃え、にっこりと微笑んだ。

父をヨガらせて何が楽しいのだろうか。
何故僕にばかり歯ブラシを向けるのだろうか。

僕がまだ男としての磨きが足りない、とでも
言いたいのだろうか。手厳しい娘である。

不甲斐ない父を許せ。僕頑張るよ。しかしRに身を任せ、
隅々まで磨いてもらうのもいい。娘を持った父親が味わえる
幸せというものだ(ほんとか)

こうなったら徹底的に磨いてもらう。
いやこの場合テッテ的というのが正しい文法だ。

玉の裏まで、な…。
.

パソコン。鎮魂。

嫁のパソコンがまた死んだ。

今年になって3度目である。症状は皆同じ。
ハードディスクが認識されなくなってしまうのである。

その都度DELLのサポートに電話し、ハードディスクの交換を
してもらったのだが、最後の交換からまだ1ヶ月ぐらいしか
経っていない。

電源を入れても「DELL」のロゴマークが出ているだけで
ちっとも次の画面に進まない。僕は

「お前はもう死んDEぃLL…」

北斗神拳伝承者のように呟くしかなかった。嫁は

「まったくもう!何度も何度ももう嫌だ!
 ちゃんと直して返して欲しいわ!」

とおかんむりである。確かにそう思う。おざなりな修理だけで
済ませているのではないか、とDELLへの不信感が高まった。
DELLのサポートは顧客満足度でナンバー1だと宣伝している。

確かに対応は早いと思う。しかし故障自体は多く、そして
修理してもまた故障しやすいようにしている…

というわざとマッチポンプなことをしているんじゃないか…
一度不信を抱くとどんどんダークなことしか考えなくなってしまう。
 
「よし、僕が一度ガーッと電話してみるよ。
 部品交換じゃ埒があかないから新品と交換しろ、と」

「そんなことできるのかしら」

「1度ならずも3度目だぞ!僕がビシッと言ってやる!」
 
「確かに女だとナメられることもあるから、
 それじゃあアナタ電話お願いね」

そういうことになった。同じ故障が3度目である。多少怒っても
いいだろう。おたくのサポートは節穴か。またハードディスクの
交換とか同じこと言われてもそれでは納得しかねる。その対応では
解決できてないではないか。

僕は新品と交換させることを目標に交渉することにした。
大上段に構えてゴネまくってゴネ得を目指すのだ。
ワイルドに、そしてバイオレンスに。

…と思ったのだが

「はい。DELLサポートセンターの○○と申しますぅ。
 どうもこんばんは。よろしくお願いします」

ものすごく腰の低い、眼鏡かけてて顔色が悪そうなイメージが
湧いてくるひ弱そうな声の人が出たので

「あ、どうもよろしくお願いします」

ワイルド&バイオレンス路線は初っ端から脱線してしまった。
我ながらヘタレ。

「お客様の履歴を見させていただきますと、確かに
 同じ故障が頻発にありますね…あああ本当にすみません」

サポート人が申し訳なさそうに語るので

「そうなんですよう。その度にデータまっさらに
 なっちゃうんですよう。お願いしますよう」

僕もワイルド&バイオレンスどころか直訴する農民の
ような感じになってしまった。サポート人は続ける。

「今調べてみましたら、DVDドライブがおかしいと
 こういった故障が起きることがあるようです。ですので
 DVDを交換させて頂たいと思うのですが如何でしょうか」
 
これは今まで言われたことがなかったことである。
さては真の原因が見つかったか。しかしこれだけでは
僕は安心できないので

「ホントにそれで直りますか。実はもう丸ごと新品に
 取り替えてもらいたいぐらいなんですけど…」

こんな言い方じゃゴネ得も期待できないよ、と
我ながら思う下手な言い方で、それでもこちらの
最大の要求を伝えたところ

「すみません。まずDVDの交換を試させて下さい。
 その他についても私から今まで以上によく見させる
 ように指示しますので…」

と言うではないか。それじゃ何かい、やっぱり今まで
よく見てなかったのかい、とも取れるではないか。

ここで一転し、ワイルド&バイオレンスに
「ふざけんじゃねー全部とっかえろ!」と怒りを
露わにすればゴリ押しできるのでは…と怒る間合いを
計っていたのだが

「すみません、本当に、私が責任を持って…」

サポート人はもの凄いひ弱な声で謝る。
これ以上無理な要求を押し付けると、彼が裏で
親方にムチでぶたれそうな悲愴感が漂ってきたので

「ではお願いします…」

僕は受け入れ、電話を切った。ひとまずこれで様子を見よう。
しかしまた直っていなかったらどうするか。

今度こそゴリ押ししてやるんじゃあ。
と荒々しい男弁で怒鳴りつけてやるんじゃあ!
わしゃあ男じゃあ!

どんなっとんじゃワレえ!この落とし前どう付けて
くれんじゃあ!ガタガタ抜かすようだったら

DELLとこ出たっていいんだぜ!

電話口を離れるとワイルド&バイオレンスな僕であった。
.

泣く娘。怒鳴る嫁。

娘・R(1才)は赤ん坊だからよく泣く。

それは生まれたときから変わってないが、嫁がちょっと
変わってきた。おそらく虫の居所が悪い時なのだろうが、時々

「うるさいのよ!もう!」

Rを叱ることがでてきた。以前嫁の父がウチに来た時に、
人見知りして泣くRに向かってやはり

「うるさい!」

詩吟で鍛えた張りのある声で怒鳴ることがよくあった。

「こんな小さな子に怒鳴ってもしょうがないじゃないの」

と嫁もそれを嫌っていたはずなのだが…と、そんなことを
夜の寝床で話し合っていたら

「あら。それはいけないわ。反省しなくては…」

「おお、分かってくれたか」

嫁は理解したようだった。ハレルヤ。

「でも、実際のところRの泣き声はうるさいでしょう?」
 
「いやー…僕は泣き声ですらカワイイと思うぞ。君はRと一日中顔を
 付き合わせているからウンザリすることもあろうが…」

「そうかなあ」

などとボソボソと語り合っていたところ

「あばー!」

隣で寝ていたRがいきなり起きて立ち上がってしまった。

「うわ!今の話聞いてたのかもしれないぞ」

嫁はRをにっこりと抱きしめ

「泣きじゃくるRちゃんもカワイイってお話してたのよ〜」

「お前は言ってねー!」

「いえ、私もそういう結論に持ってこうと思ってたのよ」

「調子いいんだなあ」

僕も嫁に甘えてくなったので

「ママー。ママー」

と嫁に寄りかかってみたら

「あなた、うるさい!」

今度は僕が怒鳴られてしまった。

僕に怒鳴る分にはいくらでも怒鳴っていいのよ…。
.

カボチャのパレードと娘のカボチャパンツ。

川崎のハロウィンパレードに行って来た。

嫁と娘・R(1才)を連れ、友達のちあきちゃん&前田君と合流。
しかし、来る予定だったちあきちゃんの友達、フジモリ氏は
ドタキャン。

2年前にフジモリ氏と会った時、彼女は丸坊主であった。
袈裟を着せればそのまま瀬戸内寂聴のような濃いキャラは
そうはいないので残念である。

パレードのスタート地点に着くと、すでに仮装した
人たちで溢れていた。彼等が街を練り歩くのだが、
先導するのはド派手にデコレイトされたトラックである。

トラックから大音量のテクノやトランスを流し、設けられた
お立ち台にはレイヴっ子達がのぼり、激しく踊ってパレードを
盛り上げるのである。

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パレードが始まる前から踊りまくるドラァグクイーン(男)

ちあきちゃんが突然僕に叫んだ。

「あ!あそこにかじりん好みの格好した女の子がいますよ!」

「え!どこ!」

「ほら、あそこ!語尾に『にょ』とか言いそうな女の子(※1)。
 そういうの大好きでしょう!」

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※1:語尾に「にょ」とか言いそうな女の子

えらい言われような僕。あたしゃアニメロリオタクか。
ともかく、パレードは始まった。

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わあ〜。ずんどこずんどこ(テクノ曲)

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わあ〜。どぱすかどぱすか(テクノ曲)

さて、うちのRもちょっと仮装っぽいことをさせてみよう
ということで、お姫様っぽいフリフリドレスにカボチャパンツ、
小物としてティアラやら天使の羽根やら、親父の趣味丸出しで
コスプレさせてみた。

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しかし大勢の異形の者達を目の当たりにし、びびっていた。
娘よ、お父ちゃんが悪かったよ。

パレードが終わった後は、仮装コンテストが始まった。
イカす仮装をした人達が次々に表彰されていた。
驚いたことに、その賞品が豪華なのだ。何万円の商品券や
ディズニーシー招待券、そして最優秀仮想賞にはなんと、
ペアのイタリア旅行+10万円!

僕らやちあきちゃん達は何も仮装をしていなかったけれども

「来年は気合入れて仮装しよう!」

ということになった。

「フジモリ氏も参加させて、みんなでやろう!」

と、ちあきちゃんが乗り気になった。そこで僕も考えた。

「フジモリ氏を入れるとなると…彼女、瀬戸内寂聴みたいだから
 みんなで瀬戸内寂聴やろうよ。5人でやろう!」

「え、5人で?」

「うん。寂聴ファイブと名付けよう」

イタリア旅行はもらった。
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