ホームあぼーん。

ホームアローンな僕。

嫁と娘・R(11ヶ月)が実家に帰ってしまった。
これは先々週に僕が「WIRE」というレイヴパーティーにひとりで
遊びに行ってしまったための交換条件である。

ひとり暮らしは10年以上やってきたくせに、一旦同居者が
できてそれに慣れてしまうと、たまにひとり暮らしに逆戻り
させられた時には寂しくて怖くてしょうがない。
ここで甲斐性があれば愛人のひとりでも潜り込ませるのだろうけど。

本来僕は怖がりなのである。子供の頃、ひとり暗い部屋で
寝る時の恐怖が甦って来てしまった。年甲斐もなくホームアローンの
マコーレーカルキン坊やのようにオドオドしてしまう。

まず仕事から帰って来た時、真っ暗な扉の前に何か
黒い物がうずくまっている。

ギャアアーーー。何?何なの?

…よく見たら洗剤が三つほど積み上げられていた。
おそらく新聞屋の仕業だろう。紛らわしいことしやがって。

洗剤を放り込んで家の中に入るやいなや、突然
「かちょーーーーん」と大きくて乾いた音が響いた。

ギャアアーーー。何?何なの?

炊飯器の、ゴハンが炊けた音であった。おそらく嫁が用意して
くれたのだろう。ガスコンロの上には、これも嫁が仕込んで行った
カレー鍋が乗っていた。普段は何だかんだ言ってもこういうことは
しっかりやってくれる嫁。へへっ。おいらに惚れていやがるな。
早速その愛情がこもったカレーを温めて食べることにした。
いただきマドロス。

ギャアアーーー。何?何なの?

辛い。辛いってもんじゃない。痛い。口から胃までが
焼けただれるような思いで食べなければならなかった。
愛情どころか殺意とか呪いとかそういうオドロオドロしいものが
入ってるんじゃなかろうか。

怖い思いも辛い思いも伝えることが出来ない
ホームアローン。

悲しくなったので普段は見れない秘蔵ビデオを見て
いかがわしい部分をいじくって寝た。

マコーレータマキン。
.

娘を抱けずに嫁を抱く。そして汗だく。

深夜・仕事から帰って来ると、その物音で娘・R(11ヶ月)が
起きてしまった。

夜中に起きてしまうと再び寝付かせるまでが大変である。
朝までノンストップで寝てくれるのが理想的なのだが
そうすると仕事に行く僕は朝しかRに会えないことになり
それはそれで寂しい。

なのでRが夜中起きてしまうことはちょっと嬉しかったりもする。
しかもRは僕に擦り寄ってきて

「抱っこしてえ」

とばかりに僕に手を掛けてきたので

「うををん。Rちゃん可愛い〜」

着替えもしないまま飛びついて抱き上げたら

「ぎゃわああああああん」

泣き始めてしまった。何なんだっ。

それを見ていた嫁が

「はいはい、おっぱいあげましょう」

Rを奪い取って授乳を始めたら、Rはぐっすり寝てしまった…。
ひとり取り残された僕に

「ふふ。アナタが今日抱っこできたのは正味3分」

嫁が意地悪な笑みを浮かべた。じゃあ代わりにお前を
抱かせろー!と、いつもおなじみのパターンで嫁を
押し倒した。どうせ嫁は

「イヤー!眠い!」

と、これまたおなじみのパターンで断わるのだろう、と
踏んでいたのだが別に嫌がる雰囲気はなく、
むしろいらっしゃいといった感じで…。

あれ、いいんですか。じゃあ、すみません。失礼をば…。

久しぶりに燃え上がってしまった。いつもこうだったら
いいのに…。燃え尽きた頭の中でそう思っていたら

「明日、Rと実家に帰らせていただきます。
 帰ってくるのは日曜日です」

なんですとー!聞いてないよ!

嫁の甘い素振りの裏には罠があった。

試合に勝って勝負に負けた感じである。
.

もうすぐ1才とそろそろ33才。

だんだんと迫って来ている娘・R(11ヶ月)の誕生日。
もうすぐ1才。

僕のように今年で32だか33、という哀愁漂うおじさんの
誕生日とは違う。最初の誕生日なのである。気合を入った
プレゼントを贈らねばなるまい。嫁からも

「プレゼント考えておいてよ!」

と言われ、結構迷ってしまっている。
女性にプレゼントを贈るのは苦手だ。かなりセンスを問われるので
相手を思う気持ちが強いほどそれがプレッシャーになって、
なかなか選べない。

僕が惚れまくっている近所の美少女・Rちゃんの誕生日に、
苦し紛れに「米」を贈った事があったなあ。
「愛を米て」とか言って…トホヒ思ヒ出。

おおそうじゃ。よく漫画である「年の数だけ薔薇の花を贈る」
というのをやってみたらどうだろうか。

…たった一本だし。

会社帰りにおもちゃ屋に寄ってみても「これは」という物は
なく…。

そういえば、Rに本格的なプレゼントをしたのは去年のクリスマス
が最初だった。それよりはいいものを贈ることにしよう。
僕はとりあえずの判断基準を決めた。

では去年のクリスマスプレゼントは何だったかというと…。

…ぷ、ぷらちなねっくれす!

しまった。最初から飛ばしすぎてしまった。
気合入りまくりで浮かれまくっていた過去の自分が憎い。

この調子だとハタチぐらいの誕生日には
マンションとかを買うハメになりそうな勢いである。
娘に全てを貢ぐ父。それが僕。

1才の誕生日だけに、一才合財…。
.

踊り踊るなら、ちょいと酔狂音頭。/酔生夢死…中島らも死去。

■踊り踊るなら、ちょいと酔狂音頭。

これも日曜日の話。

以前隣に住んでいたエゲレス人ジェームス君と奥さんの
モモミさん、そして娘・R(11ヶ月)と誕生日が一週間しか
違わない赤ちゃん・サリーちゃんが我が家にやって来た。

町内の盆踊り大会に参加するためである。ジェームス君が
殊の外好きらしい。量産型ザクのような色の甚平も着ており
気合充分。

「ジェームスが着て日本人が着ないわけいかないでしょ!」

熱い大和魂を持った嫁に叱咤され、僕も浴衣を着るハメに。
僕は体が貧相で胸板も薄く、色も白いので粋な着流し姿と
いうよりも脱走した入院患者のような有様になってしまう。
点滴台のオプションを付けたら完璧である。
なのであまり好きではないのだが止むを得まい。

「ジェームス君はワインが好きだったよね」

予め買っておいたワインをジェームス君とサシで飲み、
あっという間に1本空けた頃、ちょうど祭囃子が聞こえて
来たので、いい酔っ払い加減で盆踊り会場へ向かう。

早速サリーちゃんを抱きかかえ踊りの輪に入っていく
ジェームス君。

「え、近頃はわが町内も国際化が進み、外国の方の
 姿も見られます」

早速アナウンス係のオヤジにネタにされるジェームス君。
確かに彼がサリーちゃんを連れて歩くと目立つ目立つ。
見知らぬ爺さんに写真を撮られたり、おばちゃんが寄って来て
ジェームス君に東京音頭の踊りを教えたり…。

これがホントの007。ジェームス・オンド。なんつって。

あまり遅くならないうちにジェームス一家は帰っていった。
結構楽しんでいたようなので良かった、と安堵した。

ただし嫁はしっかりチェックしていた。

「アナタ!家で浴衣着てアグラかいてたでしょ!
 浴衣の間から見えてたわよ!モモミさんがいた
 位置からばっちりと!」

「まじでー!お嫁に行けない!」

慣れぬ浴衣を着るからこうなるのだ…。
ワインを飲んでリラックスしていたら、お粗末な物も
こんばんワインしてしまったようである。

これぞ後の祭り、というお話でしたとさ。

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団扇をもらってご機嫌なR。
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■酔生夢死…中島らも死去。

作家・中島らも、酒を飲んだ後階段から転落し、脳挫傷などで死去。
アル中でラリ中でロッカーの、らしいと言えばらしい死に方。

めったにはない、何十年に一回くらいしかないかもしれないが、
「生きていてよかった」と思う夜がある。一度でもそういうことが
あれば、その思いだけがあれば、あとはゴミクズみたいな日々で
あっても生きていける。


どんな本の文章や歌の詞でも「けっ」と、滅多に心を打たれない
僕であるが、この人の言葉だけは素直に受け入れることが出来た。

見たこともない人の死にここまで悲しくなるのは初めてだ。
せめて弔い酒を…と思ったら我が家には酒が何もなかったので
缶コーヒーにて合掌。
.

プールサイドに夏が来りゃ♪ワンサカワンサカギャースカギャースカ。

嫁が娘・R(11ヶ月)を週一回のペースで水泳教室に
連れて行っている。

日曜日は僕も自由に参加できるというので、嫁に付いて
練馬区ピカリが丘(仮名)にあるスポーツクラブに行った。
無論、最大にして唯一の目的、Rの水着姿を見るためである。

嫁&Rと別れて更衣室に入り、とっとと水着に着替えて
プールサイドで嫁とRが出て来るのを待ち侘びていたら

「ちょっとすみません!」

スポーツクラブのスタッフに呼び止められてしまった。
さては乳毛が長過ぎるが故に出入禁止か…(剃り忘れた)

「な、なんでしょう」

胸を隠して恐る恐る振り返ってみたら

「プールに入る際は帽子を着用して下さい」

なるほど。隠すべきは乳毛ではなく髪の毛であったか。
100円でゴム製帽子を借りてモソモソかぶっていたら嫁が
Rを抱いて登場。

ああっ。真っ赤でフリフリな水着に身を包んだRは
まるで水辺に咲く一輪の赤い薔薇。花言葉はジュテーム。
まさにラ・ヴィ・アン・ローズ…うぷぷぷぷ。

「Rちゃーん!ビキニスタイルのお嬢さーん!」

自分でも訳が分からない方向にテンションが高まって
愛しの娘を迎えに行ったら

「ぎゃわあああああああああん」

プール中に響き渡る声でぎゃーすか泣かれてしまった。
どうして、どうして父の愛が伝わらないのー!

「きっとその帽子が怖いのよ」

嫁がニヤニヤしながら僕の頭を指した。あらそお?
海坊主かなんかと思われているだろうか。
だからゴムの帽子なんか嫌いだ。生が一番である。

しかし水につかってしばらく、Rも慣れてきたようで
僕に抱かれても健気に水をぱちゃぱちゃ叩いて
楽しんだりしている。ああ…いいなあ。

大きくなってもお父さんと泳ぎに行こうなあ。
そして願わくばおっぱいぽろりを見せておくれ…。

娘・Rことリナは僕が思ってたほどたくましく、
プールで伸び伸びしていたのであった。

飛んでリナたんプール。
.

盆盆バカ盆盆ダンス。

町内の盆踊りがあった。
嫁が行ってみよう!と張り切っており、娘・R(11ヶ月)にも
甚平を着せてしまったりして気合が入っていた。更に

「授乳したばっかりだからお腹が空いているのよ!」

と、猛烈な空腹を訴えたので一旦盆踊り会場から離れ、
ラーメン屋でガツガツ食ったにもかかわらず、屋台で
食い物を物色する有様。

「フランクフルトが食べたい!」

と言うので買ってきたら嫁は嫁でバナナチョコも買っており、

「なんかその…卑猥なものを連想させる形状ばかりだね。
 僕の似たようなものも食べてくれるかい」

いささかみだらな気持ちになってきたが嫁は

「いらない。これだけでおなかいっぱい」

予想通りつなれい返事だった。ま、いいけどさ。

娘・Rはこの通り初の甚平デビュー。

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ババンババンバンバン♪といった感じである。

ババンババンバンバン♪風呂入れよ!
ババンババンバンバン♪宿題やれよ!

ババンババンバンバン♪子供寝てからにしろよ!

ということがしたいのに…したいのにッ!
.

忘れ難き恋敵。

「あれ、どうも久しぶりです」

駅前でバッタリ、友人のヅカ君に声をかけられた。

「ごめん。急いでるんで、さよならっ」

反射的に逃げたくなったが思いとどまった。
何故ならこのヅカ君、僕の永遠の憧れの美少女・Rちゃんの
元彼なのである。

Rちゃんとの付き合い自体は僕の方が長い。

かつて「ビートマニア」というゲームにはまり、近所のゲーセンの
通い詰めていた僕と、その店員だったRちゃん。

僕はその美少女っぷりに心を奪われたものの、当時僕には
結婚を誓った彼女、つまり今の嫁がおり、僕はRちゃんへの恋心を
必死に抑えつつも静かに燃やしながら健全な交際をしておった。
一年以上毎日のように会って文通もしていた…。

そこへどこの馬の骨とも分からないヅカ君が後からやって来て、
いつの間にかRちゃんの彼氏になっていたのである。
僕は面白いはずもなく…

しかし、これも過去のことである。

現在ヅカ君はRちゃんと別れ、Rちゃんはおそらくそれをきっかけに
この街を去った。僕はRちゃんの連絡先を半年以上知らされず
音信不通になっている。

美少女に捨てられた悲しい男ふたり。
わだかまりなく話すことにしよう。そう思った。

とはいっても「Rちゃんの今の連絡先分かる?」などということは
ヌケヌケと聞き出す度胸もなく、当たり障りのない会話が続く。

「ヅカ君、まだパチスロやってんだ」

「ええ。あ、かじりんさん、そういえばお子さんが生まれたそうで…」

「あ、うん。よく知ってたね」

なんと、ヅカ君は僕に子供が生まれたことを知っていた。
一年以上会ってないというのに、どこから聞いたのだろうか。

「で、お子さんのお名前は?」

「ごめん。急いでるんで、さよならっ」

反射的に逃げてしまった。

言えない…。君の元カノに憧れ続け、同じ名前にしたなんて
口が裂けても言えるものかっ。

もし口にしたとしても、ヅカ君の反応が予想できない。
呆れ…嘲り…怒り…それとも…?

かつての恋敵には言い難きことがあるものよのう。
.

ノーパンツ、ノーライフ。

「ノーパンタイム!」

隣の部屋から嫁の聞き捨てならない叫び声がしたので

「ノーパンですと?」

全速力で駆け寄ってみたら、嫁が娘・R(11ヶ月)の
おむつを取り替えているところであった。

以前Rのお尻やモモの付け根あたりが汗でかぶれて
真っ赤になっていたので、それ以来ウェットティッシュで
汗をぬぐって、しばらくおむつは履かせないで
うちわで扇いだりして風通しを良くしているのである。

「イヤー!エロオヤジ!来ないで見ないで!」

嫁が僕を警戒するので

「じゃあ僕もノーパンになるよ。これでおあいこだろう」

おもむろにぱんつを下げようとしたが嫁に止められた。
悲しかったが、僕もうちわでRのお尻をあおぐ。

赤かったお尻は今では元通りになっている。ああよかった。
きれいなお尻の穴も垣間見れて、あなうれしや。
ぼーっと見惚れていたらRにうちわを奪われた。

「R…お父さんにもパタパタしてくれないか?」

んー、とRに顔を近づけて僕は待った。

べしばしびしばし。

風ではなく、容赦ないうちわビンタが飛んできた。

「R、痛いよ、違うんだよ」

11ヶ月の赤子にそんなことを言っても分かる筈もなく。

これがほんとのうちわもめ…なんつって。
.

土用のウヒョの日。

昨日の晩ご飯はうなぎだった。
 
「土用の丑の日だからね」

と嫁が言う。そういえばそうだった。うなぎといえば精力増強。
僕は体力はないけれども精力は何故か無駄にあり、うなぎを
食べることによって更に凄くなってしまう恐れがある。

怒張の丑の日!

逆に嫁は娘・R(11ヶ月)を産んでからというもの、そういった
ウフーンな気分は全くなくなり、育児の疲れからか早く寝てしまう
ことが多い。なので夜のすれ違いも多い。

そのへんの僕の下事情は嫁も分かってるだろうから、そこで敢えて
うなぎを出してきたということは、これは

「今夜は獣のように襲ってよくてよ」

という嫁のOKサインであると解釈しても…無理はないな!
ウヒョヒョヒョ。

誇張の丑の日!

しかしうなぎを食べた後、すぐさま嫁を襲うのも無粋な気が
したので、わざとネットをやったり漫画を読んだりして
セルフじらしプレイに悶えていたら、

嫁、いつの間にかガーガー寝てるし。

あほなことをしてチャンスを逃してしまった。
軽く突っついてみたが既に深い眠りについていた。嫁は返事の
変わりに大きく寝返りを打ち、足をボーンと僕の寝るスペース
にまで投げ出す有様。

今宵も無視の日!

うなぎを食べた後はうなぎの寝床というわけね…狭いよう。

うーなーぎーおーいし、こーのーやーろー。
.

肉食嬢。

夕飯を食っていたら、娘・R(11ヶ月)がちょっかいを
出してきた。

ちゃぶ台につかまり立ちをし、隙あらば僕のオカズを
狙ってくるのである。皿に手を突っ込み、肉をわしづかみ
しようとするので

「これはまだ君は食べられないんだよぅ」

Rの手から逃れつつ食べなければならなかった。

そんな食事も終わり、寝っ転がっていたら
Rが暗くなった部屋の中で何やらモソモソしている。

手に何かを掴み、口をモゴモゴと音を立てている。
はて、何を舐めて遊んでいるのか…と、近づいてみたら
なんと肉の一切れを持ち、べろべろとしゃぶっているではないか!

しまった。僕が床に肉を落としてしまっていたようだ。
Rはまだ歯が生えていないのである。食べられるわけが
ないのである。

「R、返しなさい。ね。いい子だからね」

Rの手から肉を取ろうとしたが、

「うみゃああん」

Rは僕の手を振り切り、ふてぶてしくも肉をぶちっと
口で引きちぎり、ムグムグと食べてしまったのであった。

R…おそろしい子!(またかよ)

思ったよりワイルドに育っているようである。
明日、そのままお尻から出てくるさ。

肉を食わせて骨折れた…。
.

やらせて紅天女。

娘・R(11ヶ月)がなかなか寝てくれないので、
そばで少女漫画「ガラスの仮面」を読んでいたら
Rにひったくられた。

ページをパラパラめくって遊んでいる。

「お父さんに返しておくれ」

Rの手から「ガラスの仮面」を奪い返したところ

「あー!あー!」

怒りの表情を露わにして僕に掴みかかってきた。


R…おそろしい子!

それを横で見ていた嫁が、Rの動きに合わせて
こう叫ぶ。

「返ちてー!それはあたしの本なの!
 もっといじって遊んでたいの!」

嫁は…Rになり切ってるんだわ。完全に感情移入して
Rを演じているのよ!

…おそろしい嫁!

実は、Rに早く寝てもらいたかったのだ。
Rが寝た後、僕は「紫のまらの人」になり
久しぶりに嫁と契りたかったのだ。

しかしRはその後もなかなか寝付いてくれない。
ますます勢い付き、相変わらず「ガラスの仮面」を
ペラペラめくったり、パソコンのコードをいじったり
大忙しで遊んでいる。

僕は半ば諦めて、しばらくRの好きにさせようと放って
この日記を書いていたら

ぷちゅん。

パソコンの電源を引っこ抜かれた。

…まじでおそろしい子!

やがてRは力尽きて寝たが、僕は消された日記を
書き直さなければならず、更に読みかけだった
「ガラスの仮面」にハマって止まらなくなってしまい、
「紫のまらの人」どころではなくなってしまったのだった。
また嫁との契りが…。

ガラスの仮面夫婦、とかいうオチになってしまうのかね結局。
.

みだりに、みだらな行為。

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新しい椅子に何か求め訴える娘・R(11ヶ月)

さて、Rを抱っこして戯れていたら、お尻から
もわーんと大自然の芳しき匂いが漂って来たので
おむつを替えることにした。

女の子の場合、お股の構造上お尻のみならず
「前」まで柔らかうんちくんが入り込んでしまう。
成人女性のようにある程度使い込まれた「前」
であれば、それなりに扱い方を知っているので
適当にほじくってればいいが、Rのそれは前人未到の地。

誰にも踏み込まれたことのない新雪のような美しさ
なのである。文字通り処女雪。僕のような穢れたロリコン
おやじがおいそれといじくれない神々しさがある。

だから慎重かつ繊細な手付きにてウェットティッシュで
ぬぐうのである。僕のせいで形が崩れてびらびらに
なってしまったらRの一生が台無しである。
腹をかっさばくぐらいでは取り返しが付かない。

そこへ嫁登場。僕にとっては厳かな儀式も、単に手際が悪い
ぐらいにしか映らなかったのか、嫁もウェットティッシュを
手に取りRの神々しい部分をわしわしと拭き取り始めた。
ああ、そんなぞんざいに。

更に嫁は信じられないことに

「お尻の穴まで丸見えよ〜♪
 お尻の穴まで丸見えよ〜♪」

即興のあやしい歌を唄って、Rの足をがばがばと開きまくるという
わいせつな行為を働いたのである。
ああ、そっちの穴もそんなぞんざいに。

なんだか崇拝していた神だかアイドルをないがしろにされた
気分である。おのれ嫁…。

人を呪わば(Rの)穴ふたつ。
.

WIRE04〜踊るアホウは踊らされ〜

「WIRE」という日本最大のレイヴパーティーに
行って踊って帰ってきた。

レイプパーティーではない。(毎年同じこと書いているなあ)

ではレイヴとは何か?と聞かれれば大体こんな感じである。

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撮影禁止だったかもしれないがまあよい。
ボデーチェックされなかったし。

テクノミュージックにおける有名DJが世界中から集う
このイベント、毎年嫁と一緒に行っていたのだが、
去年は嫁が孕んでいたため、今年は娘・R(11ヶ月)が
いるためにそれができなくなった。僕だけが出かける今回、

「じゃ、行ってきます…ごめんね」

後ろめたさと恐ろしさに震えつつ嫁に声をかけたら
嫁は相当機嫌が悪く、目も合わさずにこう言い捨てた。

「早く行きなさいよ。さよなら」

さ…小夜奈良?まさか、帰ってきたら誰も家にいなかったりして。
本来翌朝まで踊り続けるイベントであるが、どうやら
早く切り上げて帰ってきたほうが良さそうだ、と本能で
感知したのであった。

さて、それはともかく現地に辿り着き、美人な友達ちあきちゃん
合流した。既に最初のDJ、ゲルマン金髪&元デルモという
反則モノの美人DJ、Monika Kruse(モニカ・クルーゼ)のプレイが
始まっており、初っ端から踊りまくる連休ナイトフィーバー。

ちあきちゃんがこういうアクセサリ(↓)をくれたので、

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わっかを外して股間に当てて

「血尿〜」

とやったら嫌な顔をされた。連休セクハラフィーバー。

ひと休みしてダンスフロアを離れ、BARでビールを立て続けに
飲んでいたら、ちあきちゃんの彼氏君が寄って来て

「いいものありますよー」

マジックで「スピリタス」と書かれたペットボトルを
差し出してきた。キャップを開けると紛れもない
エチルアルコールの臭いが…。君、スーパーフリーか
なんかですか。

フロアはやがてWIREのレジデントDJ、石野卓球が登場し
前半のピークを迎えた。WIREはこれから朝まで盛り上がるのだが、
僕はそれを見届けてちあきちゃんに別れを告げ、家に帰った。

嫁の出かけばなの一言が引っ掛かっていたのだ。
妻子持ちでありながら夜通し踊ることは僕には不可能だ。
WIREにも別れを告げた。もう来ることはないだろう。

0時前に家に着いた。嫁は寝床で起きていた。

「これ…お土産です」

WIREグッズのTシャツやらを枕元に置いたら

「お気遣いありがとうございます」

寝たまま見向きもせずつれない言葉。空気が重かった。
場を和ませようと思い、ちあきちゃんからもらった
アクセサリを再び股間にあてて

「血尿〜」

とやったが嫁は

「寝る」

一瞥くれただけであった。

踊れる夜はもう来ない。嫁と娘に踊らされる人生が
残ってるだけ。僕はそう思った。

「WIRE」という日本最大のレイヴパーティーに
行って踊って帰って来た。

レイプパーティーではない。(毎年同じこと書いているなあ)

…それも今回で終わりである。

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「小さく載せてくださいよー!」という
ちあきちゃんぐへへ。

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Monika Kruse(モニカ・クルーゼ)のサイン。
握手までしちゃったぐへへ。
.

椅子かんだる。

仕事帰り、娘・R(11ヶ月)用の椅子を買いたいと思い、
「トイザまス 年増園店(仮名)」に赴く。

イメージどおりのちっちゃくて可愛い椅子が
あったのだが、どれもキャラクターの絵が
付いているのが気に入らなかった。

ひとつは獣のくせにリボンをつけてて
口がない「ハローな猫」

もうひとつは獣のくせに「さん」付けで
呼ばれている「黄色い熊」

…どっちもやだなあ。

店内を見回しても子供用品やおもちゃには、半ば
強制的にキャラクターの絵が付きまとっていることに
ウンザリする。

キャラクター版権料が上乗せされてそのぶん高くなってる、
というケチ臭い文句が言いたいわけではない。
キャラクターものは僕も好きである。

問題はそのキャラクターのほとんどが、先ほどの「ハローな猫」か、
「黄色い熊」も所属する「舶来ネズミーマウス一派」か、
頭が非常食になる「残飯マン」などで占められており、
それらは僕にとってどうでもいいものばかりなので
買う意欲を削がれてしまう。

どうせキャラクターを付けるのならマニアックな親にも
対応するよう細分化して欲しい。

要は、おじゃる丸かトロかピカチュウの絵が付いた
椅子が欲しかったなあ、と言いたかったのである。

しかし現実はふたつにひとつ。「ハロー猫」か「黄色い熊」
この世に女が山田邦子か山田花子しかおらず、
どちらかを選ぶしかないような絶望的な選択だ。

僕は悲しくなって判断を放棄、嫁に電話したら
「黄色い熊にせよ」とのことだったので
仰せのままにそれを買って帰った。

試しに僕が座ってみた。子供用の椅子でも
おヒップ86センチの僕ならなんとかいける。

「プーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

座った途端、音が鳴った。しかもムカつくほどの長い音。

い、いくら熊のプーさんだからって!(とうとう言っちゃった)
.

泳ぎたいだけ君。

嫁が娘・R(11ヶ月)を連れて近場のスイミングスクールに
泳ぎに行ってるんだそうだ。泳ぎといっても、当然嫁が
Rを抱えて水面をぱちゃぱちゃする程度なのだろうけど。

全然知らなかった。しかしRの育て方とか、習い事とか、
育児のことは嫁が詳しいだろうし、僕は嫁の方針に従うだけだ。

僕は当面Rが一緒にお風呂に入ってくれること、
これだけを重きにおいて教育する。

「Rは水を怖がって泣かないか」

「初めのうちは誰よりも泣いたの。でも今は大丈夫。
 ただ、水着に着替える時にどうしても泣いちゃうのよ」

「何!水着だと」

ちょっと待て嫁。僕はRの水着姿なんて見たことがないぞ。
娘のそんなウヒョヒョな姿を見れないなんてどういうこった。

僕はRのセーラー服・体操着・水着姿を見ることが
人生最大の夢。

「でも、お相撲さんみたいないでたちよお」

嫁はそう言うが、嫁が見てて僕が見てないことが問題なのだ。
僕がRの水着姿を見れる方法…おお、そうじゃ。

「僕もスイミングスクールに参加できるのかね」

「日曜日なら…わりとお父さんもいるわよ」

「じゃあ僕も行く」

というわけで僕も赤ちゃんスイミングスクールに
参加する決意をした。プールなんて何年ぶりだろうか。

あ、乳毛剃らなきゃ(途方もなく長い)

それと、僕の水着。18の頃に買った海パンを
ずーっと使っているのである。この際一念発起して
オサレなものを買おうか。

あ、尻毛剃らなきゃ(途方もなく長い)

てか、どんな水着だよ。
.

花火ら大回転。

今年も花火が見たくなった。

僕は毎年、どこかしらの花火大会に行っているのだ。
花火を見てこそニッポンの夏、キンチョウの夏。しかし、

「それはなりません」

嫁の待ったが掛かってしまった。11ヶ月の娘・Rにとっては
花火のドンドンパンパンする音は恐怖であり、泣いて
しまって花火鑑賞どころではなくなるだろう、というのが
その理由だ。確かにそうかもしれん。去年の夏に行った花火大会
の時は、Rはまだおなかの中だったなあ。

僕と嫁だけなら何でもないことでも、R連れで花火を見るには
他にも難題がある。

・トイレがない。(あっても超混み+汚い)
・授乳するところがない。
・蚊に刺されまくる。
・行き帰りの電車が超混みでベビーカーを乗せられるのかどうか。
・「悔い改めよ」などと書かれた看板を持ったおじさんがいる。

等、やはり諦めるしかないのだろうか。
Rに産まれて初めての花火を見せてやりたい。

音さえなければ、力強く瞬いて煌びやかに輝く花火は
Rの心に深い感激を与えるだろう。願わくば、
そんな花火のような感動を与える父親に僕はなりたい。

アイワナビーユアハナビー。

仕方ないので嫁をドンドンパンパンすることにした。

ニッポンの夏、怒張の夏。

勢い余り、いつもと違うアナザーな穴を攻める試みもした。

ニッポンの夏、浣腸の夏。

しかし「ちょっとやめてよー!」と、嫁にあっさり断られた。

ニッポンの夏、断腸の夏…。
.

踊る大夫婦戦。

今週末、WIRE(ワイアー)というイベントに行く。

横浜アリーナに世界の有名DJが集まって、夜通し
踊りまくるイベントで、3年前から毎年行っているのだ。
一昨年までは嫁と一緒に行っていたのだが、去年は娘・Rを
身篭っていたので僕だけ嫁の許可を得て参加した。今年も
まさかRを連れて夜通しフィーバーはできないので、

「僕だけ行っても良い」

と嫁が言っていたので、じゃあ行くべ、と単純に考えていたのだが、
実は嫁は心の底では良くは思ってないらしい。

「Rが生まれたらもう行かない、と言っていたくせに」

と恨み節が書かれた嫁のWEB日記をついうっかり、覗いてしまったのだ。
…そんなことを言った覚えはある。しかし、だったらそう言って
くれればいいのに…。

更に間の抜けたことに、僕がそのチケットを2枚買ったことも
嫁に見られてしまっている。きっと

「どこの女と行くんだか」

と思っているに違いない。更に更に、想像を膨らませて
夜通し踊るとか言って、実はその女と途中で2人で抜け出して

「オレというお勃ち台の上で踊るがいい!」

などと口説き新横浜ラブホ街に消えるんじゃないだろうか、
とまで勘ぐっているかもしれない。いや、しないけど。
チケットを2枚買ったのは事実だが、それはたまたまで実際は
数人と団体行動するのだよ〜。

と、嫁にあらかじめ弁明しておこうかとも思ったのだが
なんか怖いのでそれもできず、悶々と悩んでいたら

「あなたが夜通し踊る日は、Rを連れて実家に帰らせて頂きます」

嫁、突然の申し入れ。ひえー。やっぱ怒ってるー。

確かに僕だけ楽しむのは嫁に気の毒なことではある。
ごめんね。お土産買ってきてあげるから許してください。
そこまで言われないと分からない僕は、やっぱり
日本一のどあほうや…

踊るアホウで稀に見るアホウ。

盆踊りに行くぐらいのつもりで軽く考えていたが甘かった。
煩悩踊りにならないようにせねばなるまい。

嫁、ちゃんと戻ってきてね…。
.

親の顔が見たい!自分だけど。

娘・R(11ヶ月)がクウクウと寝ている。
寝顔を眺めていると、ぽよぽよーんというか
むちむちーんというか、かなり可愛くて魅入ってしまう。

「Rの寝顔、可愛いよう。お前も見てみろよう」

自分だけでは受け止めきれない程、強大な可愛さであったので
嫁も呼び寄せた。

嫁はしばらくRを眺めた後、ニンザリとした
何とも言えない苦笑いを浮かべて言った。

「可愛い…けど、あなたの寝顔そっくり」

なんですとー。ショックだった。僕そっくりの顔に
魅入っていたということは、僕はナルシストだったのか。
しかし、僕に似たRの寝顔が可愛いということは

「じゃあ僕の寝顔も可愛いんだね」

「いいえ。可愛くないわ」

冷酷に言い放つ嫁。なんだよそりゃどういうこったよ
理屈が通らないじゃないかよ、おじさんよく分かんねえよ。

ま、確かにこの年になって可愛いも何もないのだが、
考えてみると嫁は僕の顔を見飽きただけであって、
ひょっとしたら僕は可愛いのかもしれない。
最近自分の顔などまともに見ていなかったが、
あれだけRが可愛いのなら、元ネタの僕もちょっとは
可愛いのではないだろうか。

「Rは可愛い=僕も可愛い説」を実証すべく、
鏡の前に赴いて自分の顔を観察してみることにした。

じーーーーーー。…あっ!

は、鼻毛ボーン…。すげえなこりゃ。
可愛い以前の問題だった。

ナルシストというよりもエクソシストの方が
似合ってるわ…。
.

ガラスの勝手でしょ。

ベランダで煙草を吸っていると、娘・R(11ヶ月)が
興味深そうに追いかけてくる。

もちろん家の中に煙が入らないようにガラス戸を
閉めているので、Rはベランダまで来れない。
しかしRはガラス戸に手を当てて捕まり立ちをし、
僕が煙を吐く様子をじーっと見ているのである。

ガラス越しに見つめ合う僕とR。Rは触りたいのに触れない
もどかしさからか、ばんばんガラスを叩く。それが昔ドラマで見た、
服役している受刑者に恋人が面会に来たシーンを連想させた。

ここではムショにぶちこまれているのは僕だ。
Rは面会に来た恋人役。そしてこのベランダが面会室。

「僕はね、煙草吸っちゃいけないの刑で
 おつとめ中なんだよ。ごめんなあ…」

「あぱぱぱ」

「お前を一刻も早くこの手で抱きしめたいよ…」

「あぱ!(ばんばん)」

Rと面会ごっこをしている内に、僕は盛り上がって
来てしまい、感極まってしまった。それで、これも
ドラマのシーンにあったのを真似して

「R…ガラス越しにちゅーしておくれ…」

ガラスに唇をむちゅーと突き出し、Rが口づけしてくれるのを
待った。さあR。どうしたR。父に暖かいベーゼをおくれ…。
ガラスが曇るほど熱い吐息を吹きかけていたのだが

しゃっ。

なんと、カーテンを閉められてしまった。

娘の冷たい仕打ちにより面会打ち切り。
ベランダに取り残された僕の刑罰。

それは無視懲役であった。
.

赤いパンツ着せましょか…。

うちの母が還暦を迎えるにあたり、

「赤いパンツでも買ってもらおうかしら」

などと言っていたので嫁と娘・R(11ヶ月)を連れて
池袋臀部百貨店(仮名)下着売り場におもむく。

そこはたくさんの若い女性と色とりどりのブラジャアだの
パンツが溢れるお色気むんむんの場。嫁がいなければ
とても僕のような純情三十路おじさんが入れる場所ではなかった。

眼福眼福、とばかりに辺りを見回すが、どう見ても
若い人向けの勝負下着みたいなのしかない。

勇気を出して店員を捕まえ

「還暦に贈る赤いパンツが欲しいのです。サイズはLL」

決して不審者ではないことをアッピールすると、
店員の女の子は快く持ってきてくれた。

さすがLL、びろーんと横に広がった貫禄がある赤いパンツ。
いくつかの候補の中から嫁に選んでもらって、
実家の母まで宅配してくれるように頼む。

「少々お待ちください」

包装と宅配の手配をするために店員は場を離れていった。
改めて店内を見渡すと、男は僕しかいない。
いつの間にか嫁とRもいなくなっていた。
あやつめ、いつの間に僕の側を離れたのか。

こ、心細いじゃないか。ひとりで店員を待ち、下着売り場の
ド真ん中でぼーっと突っ立っている男。それが僕。

あ、怪しいもんじゃないよ。おいらベロってんだ…。

僕には還暦の母にプレゼントを贈るという大義名分がある。
孝行息子なのである。

しかしなかなか店員が戻ってこないので、すぐ近くにある
ブラジャアなぞ見てみたり。仏壇に添える茶碗のような、
派手だか地味だか分からない花柄…。今時の子はこんなの
付けてるんだろうか…僕にとっては単に剥ぎ取るものとして
しか見てないのでデザインまで目を配ったことはない。

それに、Rもあと十何年したらこんなものを付けるんだろうか、
などと考えていたら鼻血が出て来そうになった。
お、お父ちゃんと一緒に買いに来ようね…(そんな親父いねーよ)
早速将来のRに似合うのはどんなものか、商品やタグを手に取って

「むう、70のBカップか」

などとやっていたら

「あなた、浮いてるわよ、怪しいわよ」

背後から嫁の声がしてはっとなった。

「お、お前がいなくなっちゃうから僕だけ
 浮いちゃうんじゃないかよ!」

「そうよ〜だからあなたをひとりにして観察してたのよ〜」

おのれ嫁、わざとであったか。たばかったな。
お前に勝負下着は買ってやらん。

そんなこんなでようやく店員が戻ってきて手配完了。
ようやく場違いな下着売り場での買い物は終わったのであった。

カズキ、カンゲキー。
母は、カンレキー。
.

はらほろひれカレー。

8日の夜…会社の飲み会であった。

それをすっかり忘れていた僕は、飲み会が始まる直前に

「今日、飲み会だった!ごめんよ」

慌てて嫁にメールを打った。嫁がゴハンを作ってしまわないように
するためである。しかし時既に遅し、ヘベレケになって家に帰って来たら

「もう作っちゃってたわよ!」

嫁が悲しそうな顔で出迎えたのであった。

「ごめんよ。明日食べるから」

「そうはいかないのよ!明日はRカレーなのよ!」

Rカレーとは!

僕の娘・Rが産まれた8月9日を記念し、毎月9日に
必ずカレーを食べることにしている我が家の習慣である。
吉兆ごとにカレーを食べる習慣の歴史は古代インドに
遡ることができ、大叙事詩「マハーバーラタ」にも
その記述が見られる。女神アサオーカメグミパティが良いことを
祝って東の方角を向いてカレーを食べるさまを歌った
「私のカレーは東向き」の場面は有名である。

(民明書房刊「インド人もポックリ」より)

そんなわけで、一回分の晩御飯を無駄にしてしまったことを
侘び、ありがたくもおいしくいただいたRカレー。

今回で11回目にあたるRカレー。
来月はもう1才になるんだなあ。

Rは僕がカレーを食べているのを興味深そうに眺めている。
ごめんね。君にも食べさせて一緒にお祝いしたいけど、
君が食べるにはまだ早いと思うんだ。
めちゃくちゃ辛いと思うんだ。

その代わりお父ちゃんがチューしてあげよう。

カレーがRに付かないように、口を拭いて
ぶちゅー、としたにもかかわらず、Rは青汁でも
飲んだかのようなシカメッツラになってしまった。

11ヶ月目の日のチューだからきっと嬉しいはずなのに。

接吻イレブンいい気分と言うではないか。

最近ちゅーを嫌がられる傾向…。
.

ギブミー父の日プレゼント。

父の日に貰ったプレゼントをまだ開けていない。
細長い包装された箱から想像するに、おそらく
ネクタイなのだろうが、もったいなくて開けられない。

このプレゼントを貰った日…。僕は父の日のことなど
すっかり忘れていて友達と遅くまで飲んでいたのだった。
翌朝、うらめしそうな顔をした嫁が

「昨日渡したかったのに…Rちゃんから贈り物よ!」

と、娘・R(10ヵ月)にプレゼントを持たせて
僕にくれたのだった。その時はもう会社に行く時間だったので
慌てて受け取って出かけてしまったので、
もっと余韻に浸りたいのである。

形式上とはいえ、Rが初めて僕にくれたプレゼント。

Rが「お父さん、ハイ」と、僕に渡す儀式をきちんと
楽しみたい。そんなわけでRにプレゼント箱を持たせ

「Rちゃん、『お父さんハイ!』ってやってえ〜」

と、デジカメまで用意して(Rが僕に手渡すヤラセ写真を
撮りたいのである)Rにリクエストするのだが、
Rは僕に箱を差し出そうとはせず

「あぱ」

箱を床に叩きつけてしまう。何度やってもダメである。
親の仇のように(親は僕だが)ぶん投げてしまう。

父の日に飲み歩いていたことを恨みに持っているに
違いない。

中身がネクタイなだけに、こういうことを
自分で自分の首を絞める、と言うんだろうなあ。
.

3年目のケーキぐらい大目に見ろよ。

7月7日。結婚記念日である。
ふふふ。僕は忘れていなかった。

朝、アウトルックエクスプレスを立ち上げたら
友達からおめでとうメールが入っていたので
気付いたのだ。(忘れてたんじゃないか)

何回目の結婚記念日だかはそれこそ忘れたが
多分3回目だと思う。ともかくよく続いたものだ。
籍を入れた日も今日のように暑かった…。

あれから3年(4年?)、ここまで続いて来れた
奇跡を祝い、ケーキなぞを買って帰ったら
甘いもの好きの嫁はまっしぐらでモンブランを
食っておった。

今日は七夕でもある。天上界の遠距離カップルのように
今宵は僕らも獣のようにまぐわろう、モンブランの後は
僕のちんちんぶらんを食べてもらおう、と風呂に入って
体を清めて出て来たら…

嫁はとっくに寝ていた。
つがって3、4年も経てばこんなもんであることよ。

僕はターゲットを変え、嫁の隣で寝ている娘・R(10ヶ月)に
寄り添った。結婚生活で一番大きな収穫であり宝物。それが彼女。

「今日はショボイけどお父ちゃんたちの結婚記念日なんだよ。
 あさってはRの11ヶ月記念日だね」

結婚記念日は忘れてもRの誕生日は忘れない。
ぐっすり眠るRの、珠のようなお肌を撫でていたら…
あっ。

Rの顔に赤い傷跡が!また自分で引っかいてしまったようである。

生傷が 絶えない 娘の顔だから
7月7日は 血痕記念日
.

裸の父様。

クソ暑い中、会社から帰ってきて
とっととスーツを脱ぎ捨てた。

家の中では娘・R(10ヵ月)がクウクウと
可愛い寝息を立てていたので早速襲いかかり、
ぶちゅう、とただいまのチューをお見舞いした。
Rの寝顔は汚れなき可愛さ。
僕はちょっとメルヘンな気持ちになって

「ほほほ。僕は白馬に乗ったRの王子様。
 王子様のちゅーでR姫は目覚めてくれるかしらん」

などと芝居がかったことを言って踊っていたら

「パンツいっちょうで何が王子様よ!」

横にいた嫁に冷静に否定された。
メルヘンの分からぬやつめ。

汚れなき心を持ったRにだけは、素敵なおべべを来た
王子様に見えるんだよ。

そう弁明し、白馬に乗った王子様から
裸の王子様に路線変更しようとしたが…。

あ、しまった。

パンツの横から裸の玉子様が…。
.

ドメスティック・ストリーキング。

娘・R(10ヶ月)を風呂に入れるためには、
まず自分が素っ裸になる。
それからRの服を脱がして風呂に直行する。

たとえ長年連れ添って毛穴まで知り尽くされた嫁で
あろうとも、もろ肌を見られるのは恥ずかしい。
体はおじさんでも心は乙女の僕である。

だからRを茶の間から風呂場まで連れて行く間は
全裸で全力疾走。時々カーテンも開いていることがあり、
その時はご近所向けの額縁ショーにもなってしまう。
この一瞬、我ながら間抜けな姿だなあといつも思う。

ふるちんや 風呂に飛び込む 水の音

僕が風呂に入ると、嫁が風呂場の前に着替えを置いて
くれることになっている。ただし忘れていることが多い。
そんな時はRの泣き声を真似して訴えるのである。

「うわーん。んまんまー」(訳:ママ。僕のパンツがないよう)

「あ、パンツ忘れてたわ!」

「んまんまー」(訳:さすが泣き声だけで分かってくれたんだね)

「ごめんね!」

「んま!」(訳:それだけかよ!)

「ごめんね」とは言ったものの、その後は沈黙の嫁。
それは「それぐらい自分で取って来い」という、
静かな無言の圧力であった。

静けさや 胸に染み入る 嫁の声

こうして風呂場から洋服ダンスまで、再び全裸全力疾走を
敢行する僕は、重ね重ね間抜けな姿だなあと思う。
しかしそのひとり羞恥プレイも最近まんざらでもないと
感じ始めてきた今日この頃。

奥のマゾ道。
.

イカして討論。

娘・R(10ヶ月)が産まれて以来、嫁はRに全ての愛を注ぐ
母となった。確か昔は僕に全力で愛情を注ぐラブラブ娘だった
記憶が微かにあるが、それも古き良き思い出である。

そのせいか夫婦の営みを断られることが多くなり、
たとえOKであっても地味にモソモソと行われるのみである。
どうしても嫁に付き合ってもらっている感が拭えない。

その辺のところをよく問いただすべく、嫁に直球の質問をした。

「お前はもうヤリタイとか、そういう気は起きないのかい?」

「うん。全く!」

直球の質問には直球の返事だ。嫁は自分の腹に手を当てて
言葉を続ける。

「Rが産道を通って産まれて来て以来…もう何者も私の体を
 出たり入ったりするのはやめて!って感じなの」

男の僕には理解しようがない感覚である。おなかの子供であるとか
僕の息子さんであるとか、自分の意思では制御できないモノ達に
自分の体を蹂躙されたくない、ということであろうか。

それとも可愛い可愛いRが通ってきた産道を僕の変なモノで
穢さないで欲しい、ということなのだろうか。

しかしここで反論せねば僕の、ひいては世の男の愛を振り撒く
活動(または種蒔き活動)が全否定されてしまう。僕は頑張った。

「でも、Rを一人っ子にさせる気はないだろう?
 兄弟が欲しいだろう?そのためにはまだまだ
 お前の体にいろいろと出入りさせる必要はあるぞ…」

僕のリビドォのやり場がねえじゃん、と言いたい気持ちは抑え、
あくまでもRに弟か妹が欲しいよね、という路線で説得を試みた。
嫁は「うーん」と考え込んでしまったが分かってくれるだろうか。

もうひとり子供を望むならば、夫による
定期的な「メンテナンス」が必要なのである。

定期的な「メンス」も必要である。
.

セーラー服ときかん坊。

栃木の田舎から母が遊びにやって来た。

「東京のオサレなデパートで、R(10ヵ月の娘)の服を
 買ってやるからさ」

という有難いばば心に甘えることにし、嫁と母とRを
引き連れ西部警察デパート(仮名)へ出かけた。

「いらっしゃいませ!サマーバーゲン開催中でございます!」

図らずもデパート内はバーゲン中であり、人でごった返していた。
人ごみが嫌いな嫁は一瞬にしてカリカリし出し、Rは興奮して
お昼寝の時間なのに全然寝ない。

服選びは嫁と母に任せ、早く済ませてとっとと帰ろう…と、
僕は適当にブラブラ見て回っていたのだが、
「コムサ・デ・主水」(仮名)の店のディスプレイが目に留まり、
はたと立ち止まった。

赤ちゃん用のセーラー服があるではないか。

僕は高校が男子高であったためにトラウマを負い、
セーラー服こそが女性の最高の衣服であると崇めている。
よって今はRにセーラー服を着せることが人生最大の夢である。

かつて大型子供洋品店「アカチャン奔放」(仮名)に行った時も
探したのだが、在庫がなく涙を飲んだが、さすが有名メーカー
コムサデ主水。

「これ欲しい!これ買う!これRに着せる!」

これだけは譲れない、と強引に買ってしまった。
これをRに父おん自ら着せ替えて…うへへ。
僕のそんな姿を見て嫁は呆れたのか

「この人、セーラー服が大好きなんですよ」

なんと母に説明しているではないか。待てこら。
勝手にカミングアウトするんじゃねえ!

「何よ、お前はセーラー服が好きだったのかい」

母が怒涛の詰め寄りを見せる。あたかもエッチな本を母に見つかり、
なおかつ好みまで分析されてしまったかのような恥ずかしさ。
この年でこんな恥辱を味わうとは…。こうなっては

「ああそうだよ!好きだよ!」

僕はもう開き直るしかなかった。

「じゃあお母さんのセーラー服をあげようかね」

ぬふ、と母が笑った。筆舌に尽くしがたい、恐ろしいイメージが
頭の中に浮かび、血の気が引いた。分かりやすく言うと、
橋田寿賀子がぱっつんぱっつんのセーラー服を着ている姿を
想像するがいい。

「いや、死んでもいらないから!」

「親に向かってその口の聞き方はないでしょうが!」

サマー暴言開催中でございます。
.

四十八手。ちょっと待って。

子供が産まれると、夫婦の契りが困難である。

娘・R(10ヵ月)が起きている間は、まさか娘の前で
本番まな板ショーをやるわけにもいかない。そうなると
夜、Rが寝静まった時分に行うしかない。

というわけで先日、Rが寝ている間に嫁を口説き、
いそいそと始めた。次第に一心不乱になり、やがて
真っ白に燃え尽きた。ふと人の気配を感じた。
まさか。それはないよね…と念じつつ振り返ってみたら…

「だあ」

悪い予感は的中した。

寝ていたはずのRがいつのまにか目を覚まし、
アグラをかいて僕らをじいっと見ているではないか!
そのどっしりと腰を据えて凝視する姿は、さながら
大相撲夏場所、向こう上面の九重親方審判長。
僕らの「取り組み」は砂かぶり席で見られていた…。

「わーっ!見てたの?いつから?全部?」

僕らは大パニックとなった。見られてしまったのは
これで二度目だろうか。しかし、最後の場面まで
見られるのは初めてだ。精も魂も尽き、完全なる
無防備状態を見られるとはなんとも恥ずかしい。

ヤリ終わった後、ガマガエルのように突っ伏していた僕。
それをじっくり目にした向こう上面R審判長。
一体どんなことを考え見ていたのだろうか。
そんなことを考えると夜も眠れません。

ただいまの決まり手は、ヤリ切り。
.

欲しがりません、傘までは。

家を出ようとしたら雨が降っていた。
傘がなかった。僕は傘をしょっちゅう電車に忘れたり
会社に忘れたり、もしくは壊してしまったりで遂に一本も
なくなってしまったのである。

「嫁…君の傘貸して」

「あなたいつも失くすか忘れるでしょ!」

「ちゃんと持って帰るからさあ」

「じゃあ貸すけど…絶対忘れちゃダメよ!」

僕が借りようとしている傘は、嫁のお気に入りのようだ。
嫁の鋭い眼差しに僕は身の危険を覚え、悟った。
絶対にこの傘を家に持ち帰らなければ恐ろしいことが起こる。

もしこの傘を失くすようなことがあれば、
雨は夜更け過ぎに血の色へと変わるだろう。
バイオレンスナイト。ホラーナイト。

そんなわけでいろんな意味で「重い」傘を持って電車に
乗ることとなった。手摺りに掛けていたりすると、降りる時
つい忘れちゃうんだよね。あ、もう降りなきゃ、あれ、
乗った時よりも荷物が軽い気がする…。

って、うおおい。傘を手すりに掛けっぱなしじゃないか。

第一のトラップ電車を辛うじてクリア。

しこしこと仕事をして夜遅く。ようやく帰れる!
お先に失礼します!あれ、朝よりも荷物が軽い気がする…。

って、うおおい。傘立てに置きっぱなしじゃないか。

第二のトラップ会社も危うくクリア。

帰りの電車は殆ど傘を抱いたような状態で家に着き、
玄関に傘を立ててようやく安堵した。

「あなた、傘はどうしたの!」

待ち構えていた嫁が、口から放射能を吐かんばかりに詰め寄った。

「ち、ちゃんと持ってきたよ。玄関に置いたよ」

「ふふ。それならいいのよ。もし忘れたらどんな罰を与えようか
 考えていたのよ…」

嫁と連れ添って十余年経つが、嫁を怒らすたびにこれまで
僕の知らなかった恐ろしさが見えてくるなあ。

傘ね傘ねすいません。
.

ブロガーになれない日記廃人。

嫁が使っているWEB日記サービス、「メモライズ」が買収されて
終了するんだそうだ。嫁は移行先の「ライブドアーブログ」と
いうところで日記を続けることにしたらしい。

んま。ブログですって。

WEB日記とは違う、何となく最先端で流行ってるっぽいモノ。
嫁はそれを運営する「ブロガー」になる。
僕を残したまま嫁だけ一段上の人間にでもなったような
気がしてならない。

しかし僕はここのような単なる日記サイトは
別にブログに化けなくて良いと思っている。

ブログというのものをまだ分かってなく、ちらりと眺めただけの
感想だが、「トラックバック」と呼ばれる自動文中リンクのような
機能というか習慣は、見ていて楽しそうではある。

Aさんがブログに書いた記事をBさんが取り上げる。

するとAさんのブログに「Bさんのブログで取り上げてます」という
お知らせとURLが貼られ、BさんのブログにはAさんのURLが元ネタ先と
して貼られる。

誰が自分の記事を取り上げたかすぐ分かり、貼られ合ったURLによって
閲覧者の往来も増え、更に意見を発展させることも出来る。

こ、こんな理解の仕方でいいんだろうか…
トラックバックとその利点について。

顧みるに僕の日記である。

「今日も嫁がやらせてくれなかった。ポテチン」

とか

「娘が風邪引いた。ポコペン」

など。常にプライベート平々凡々自己完結型日記。他人がトラックバックし、
意見や言及のしようのない内容ばかり。せいぜい「そうでしたか」で
終わりである。

有用な情報や優れた意見などを発信するブログこそ、トラックバックでの
刺しつ刺されつのやり合いが生まれるのだと思う。
そうなると僕に残された道は、せいぜい立ちバックで挿しつ挿されつ
するぐらいしかない。

ブログ形式でもWEB日記は書ける。但しブログの有用な機能が無駄になる。
無駄な物は邪魔。よって僕は今までどおりのWEB日記を続ける。
嫁からブログの使い勝手を時々聞いてみて、良かったら考えよう。

惜しむらくは、嫁のバディがもっとナイスで
ウフーンでイヤーンでボイーンであったなら。

「うちの嫁はブログラマー」というギャグをかませたのに…。
.
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