叩けボンゴ、響けヤマンバ。

嫁を激怒させた前日の無断酒飲み。

言い訳になるが、最初から飲みの予定ではなく、
軽くお茶をするのみで、娘・R(1才)を風呂に
入れる時間までには帰ろうと思っていたのだが、
その辺は僕の意志の弱さに全てに責がある。

東京に初めて来たというそのインターネッツのお友達を

「え、ここがヤマンバがいることで有名な、渋谷センター街で
 ございます」

などといい加減に渋谷案内をしていたところ

「ヤマンバ見たいです!どこにいるんですか!」

と、あらぬ期待を持たせてしまったので申し訳なく思い、

「すみません、実はもうヤマンバは2年ほど見てません。
 多分絶滅したんじゃないかと…」

時代はヤマンバよりマツケンサンバであり、正直に謝った。
それでも一度センター街を歩いてみたいとおっしゃるので
ぷらぷらと雑踏の中を泳いでいたら…

…いた。某ファストフードの入り口付近の客席に、
今時珍しい絵に描いたようなヤマンバがふたり。

顔は汚く黒ずみ、髪もボサボサのメッシュ。口にピアスを下げ、
足をだらしなく組み、ハンバーガーを不味そうにくちゃくちゃと
食べている。細かいことを言うと、彼女らはヤマンバではなく、
その第二世代と言われている「マンバ」かもしれぬ…などと考えたが
おじさんには区別つかないのでヤマンバと見做すこととした。

「…ちょっと、さりげなく前方を見て下さい」

そしてこっそりとお相手の方の肩を叩いて教えると

「キャー!あれですね!あれがヤマンバですね!」

ヤマンバ・イズ・スティル・アライブ。
ああ、喜んでもらってよかった。

ヤマンバを見た時には、家に帰ったら嫁がヤマンバより怖い
形相で待ち受けているとは思いもよらなかった。

まさにヤマンバより恐ろしいオニ…(自粛)

こういうことを書いていると全然反省してないように見え、
嫁の怒りは収まるどころか、それこそ出刃包丁を研ぎそうな
気配である…。

反省してます。でも怖くて口が利けません。
修羅場ラバンバ。修羅場が山ん場。
.

どんぐりころころどんぶりこ。ドツボにはまってさあ大変。

眠りから覚めたら、音楽が流れていた。

嫁が娘・R(1才)のためにCDをかけている童謡。
そして僕は前日のことを思い出して激しく動揺。

昨日は少しだけ会社に行って仕事をした。その後
インターネッツのお友達と会えそうな気配だったので、

軽くお茶して、Rを風呂に入れる時間までには帰ろうと
思っていたのだが…。

つい酒が入ってしまい、帰って来たのは午前1時。
そのまま爆睡して起きて、時計を見たら午後1時。

途中で嫁に「やっぱ遅くなる」旨をメールしたのだが

「ゴハンいるかどうか分からなかったからずっと起きてた」

「あなたは娘より女の子を選んだ」

などの呪いの言葉をかけられ、またもやダメ亭主っぷりを
発揮してしまった。嫁がRを連れて実家に帰る時は着実に
迫っているようだ。

ささくれ立った雰囲気とは裏腹に、家の中ではホノボノとした
童謡が流れ続ける。

お母さん。なあーに。お母さんっていい匂い。

僕も「お母さん…」と呼びかけて、多少の言い訳でもして
弁明に努めようと思ったが、部屋のフスマをぴしゃりと
閉められて、完全断絶状態となってしまった。

こんな扱いって童謡ー!
.

おかしな名前で出ています。

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おかげ様ついでに、このごろ滞りがちだった嫁との
子孫繁栄業務も遂に実行することが出来た。

この時の僕は大いなる生命の小宇宙(コスモ)を
嫁の胎内に吹き込んだような達成感があった。
単に溜まっていたのですっきりしただけとも言う。

「これで、ひょっとしたらR(1才の娘)の弟か妹が
 出来たかも知れんなあ」

という手ごたえを感じ、寝っ転がりながら嫁に言って
みたりすると、想像はどんどん先に飛び、

「今度は男の子がいいよなあ。名前は何にする?」

先走ったことまで口に出していた僕であった。
男の子が生まれた場合、命名権は嫁にある。

結婚した時に予め僕と嫁との間で決めていたことである。

女の子が生まれた場合には、僕が愛して止まない、当時
近所に住んでいた超美少女Rちゃんの名をそのまま付ける
ことを約束したのである。有無を言わさずに決めた。
だからRはRである。

そしてもし今度子供が出来て、それが男だったら…。

「そうねえ…」

嫁が考え出した。寝ていた僕も亀頭をもたげて、もとい、
それはさっきやったことだ、頭をもたげて嫁の答えを待った。
やがて嫁の口から出てきたのは

「やっぱ、拓哉かしら」

であった。なんということだ。嫁はずっとキムタク
ファンなのだ。しかしその名前は新たに命名するものと
しては既に旬を過ぎているように思われた。

「確かにちょっと前は人気があった名前だけどさ、
 なんか今更って感じがしない?」

「いいの!拓哉なの!」

残念ながら嫁は考えを変える気は全くなかった。

僕が惚れた女の子の名前を付けさせてくれた
嫁の寛大さを顧みれば、僕にそれを拒否することは
できない。本当に男の子ができても、結局は嫁に
押されて拓哉と名付けてしまうだろう。

しかし嫁も僕も、こんな安直な名前の付け方で
いいんかね。
.

子供の画像をネットに載せるなんてバカですか?

「子供の画像をネットに載せるなんてバカですか?」

僕は娘・R(1才)の写真をブログに載せていることに対して
このようなメールをもらったので考えてみる。まずネットに
顔画像を載せることの問題点を思いつく限り挙げることにする。

1…画像を無断で使用される危険。

特に女性の場合、いつの間にかエログの管理人とされていたり、
アイコラを作られ、全裸で南京玉簾をしている画像が全世界に
ばらまかれたり、ネカマの偽プロフィール用画像として使われたり…。

2…身元を割られる危険性。

これも特に女性の場合、個人サイト内情報から住所や生活パターンを
絞り込まれ、ストーキングや誘拐に繋がる恐れがある。特にネットの場合
実社会では女性と喋ることすら出来ないけどネットでなら、というような
男性が跳梁跋扈しており、しばしば常識外の行動を取ることがある。

ウチの嫁の例で言うと、うっかり住所を教えたメル友が早朝いきなり

「お、お菓子持って来ました」

と家までやって来たという。

3…肖像権

自分ではない人の画像をアップする際は許可を得ることが必要である。

こんなところだろうか。これらの問題点が僕の場合に当てはまるかどうかを
考えてみる。

1について。幼女に対してでもボッキング王となり、思わず誘拐してしまう
大きなお友達は確実に存在する。しかし1才児ですらもその対象になり
得るのかというと…疑問である。というか考えたくないのが本音である。

2について。現在Rはひとりで外に出ることはないので、その心配はない。

3について。R本人が快く思っていないなら肖像権を侵害していることになる。
しかしRはまだ言葉が喋れないので確認することが出来ない。今のところ
モニタに映ったRの画像を見せてやると、指差して喜んでいるように見える。
Rが好きな動物を見て、興奮している時と同じ反応だからだ。

以上のことを考慮すると、

・Rの画像が無断で使われる可能性はないとは言えない。しかしRが直接
蒙る害があるかというと、今のところ思い浮かばないので続ける。
・Rがひとりで外に出るようになったらやめる。
・その前にRがお父ちゃんやめてと言ったらやめる。

このような判断で行なおう、ということに決めた。
そして文頭のメール内容に戻る。

「子供の画像をネットに載せるなんてバカですか?」

親バカであることは確かである。
.

カフェ・ド・鬼嫁。

夜、仕事から帰ってきて嫁に「ただいま」と言い、
奥の部屋でモソモソと着替える。

嫁はネットをしていて僕の顔を一瞥だけして
「おかえり」と言い、またネットの世界に戻る。

昨日もそうだった。昨晩との嫁との会話は

「ただいま」「うん」と「メシ」「はい」

たったこれのみ。これでは僕が毎晩狙っている
夫婦の営みどころか人間の営みすら希薄な状態だ。

これが色褪せた夫婦生活なのだろうかね…と
ため息をついていたら嫁が

「これ、飲まない?」

ぬう、と飲みかけの缶コーヒーを差し出してきた。

「なんだ、くれるのか?」

「うん。濃すぎて眠れなくなっちゃいそうだから」

などと嫁が言うので

「ウフフ…眠れないなら僕がいくらでも気持ちいい
 夜にしてあげるよ」

待ってましたとばかりに僕は嫁を営みに誘う。

「いや、それはいいです」

「夜は長い…。この缶コーヒーは深煎りブレンド。
 コーヒー、深煎り。僕、深入れ」

「いや、いいですったら!とにかくコーヒーだけは
 あげます!」

僕がいくらロマンティックな口説き文句をもってしても
相変わらずまぐわいレスな嫁。うちの嫁は鉄で出来ているのか?

嫁からもらったコーヒーをズズズと飲み干して、
また欲求不満と戦わなければならない夜だった。

コーヒーをトンと机に置いて、その隣にライターを
添えてみた。あとこれにヤッターマンがあれば完璧なのだが…。

ヤッターマン→photo

問い:僕は何をしようとしているか。

答え:今、僕の望むことを表していた。

やったーまん こーひー らい…。
.

疲労ピロートーク。

寝床の中での嫁との会話。
僕は間合いを計っていた。

「クリーニング屋にスーツのかけはぎ、頼んでくれたか」

「うん。結構お金かかるかも」

間合いはまだまだ。

「母さんから、氷川きよしのコンサートでテレビに映ってたって
 メールがあったよ」

「私見てたよ。客席、似たような顔ばかりだったからどれかは
 わからなかったけど」

まだまだまだ。

「R(1才の娘)は今日も鼻が出てたか?」

「うん。今日も鼻タレ子だったよ…」

まだまだまだまだ…ぬああ!とうとう僕は痺れを切らし

「ああそうか。Rも可愛そうに…

 ところで…やらせて」

「イヤ!ダメ!私は寝てないの!」

捨て身の切り込み攻撃を試みたが、やはり怒涛の勢いで
断られてしまった。Rの鼻タレは未だ続いており、夜中
苦しんで何度も夜泣きする。その度に嫁は起こされるので
睡眠不足なのであった。その思わぬ影響がここに。

僕もしばらく寝てないの!(意味が違う)
.

愛するーハナタレー贈るー言葉ー♪

鼻水が物凄い勢いで垂れてくる。

僕は子供の頃からハウスダストアレルギー
なのである。外に出ると鼻水は引っ込むので
花粉症ではないと思う。

しかしハウスダストハウスダストとそれを強調して言うと

「じゃあ何かい。あたしの掃除がなってないってことを
 遠まわしに言いたいのかい。だいたいあなたは掃除一つも
 しないくせに…(以下略)」

などと嫁の火薬庫を突いてしまいそうな雰囲気にあるので、
あまり口には出さない。ただ黙っておもむろに鼻紙を
鼻の穴に突っ込むだけである。

この姿を見ると嫁は必ず笑う。笑わば笑えと僕は毅然と構える。
死ぬ程みっともないが楽である。かみすぎで鼻がヒリヒリしたり
耳がおかしくなって地獄を味わうよりも、恥を晒してでも生き延びる
道を僕は選ぶ。それに山瀬まみの物真似も出来てトレンディである。

それに、僕のアレルギーは数日で治る。しかし間もなく嫁は
花粉症で僕の数倍の鼻水を出し、苦しむことになろう。
嫁は女としてのプライドが許さないため、鼻紙詰めはしない。
さすれば僕はここぞとばかりに

「ほ〜ら、君もやってごらんよ。女として何かを捨てることには
 なるけどとっても楽チンだよ〜」

三途の川の向こう岸へと誘う死神のように嫁に語りかけるのだ。
それが復讐。

そしてこの呪われた血を受け継いだ子がひとり。
娘・R(1才)である。僕と同様鼻水が垂れっぱなしであった。

つむじがふたつ。眉毛が濃い。便秘気味。そしてアレルギー。
つまらんところばかり似てしまっている。なんとかわいそうに…。

「R、お前だけはこの苦しみを分かってくれるよね。
 お父さんがどんな姿になろうとも君は裏切らないよね」

と、鼻紙ぶち込み顔をありのままにRに向けてみたら

「うぎゃー!」

ハエたたきの様にブンブン手を振り回して避けられてしまった。
ああ、なんて冷たい我が家の女たち。嫁はまたそれを見て

「あなたが伝染したんでしょ!」

と、全ての元凶をぼくのせいにする。

「アレルギーは遺伝はするかもしれないけど
 伝染はしないと思うぞー!」

腹いせに杉花粉に先駆け、僕の植物でいうところの花粉を
嫁に撒き散らそうとしたが、それも断られた。

鼻の水は 伝染りにけりな いたずらに…。
.

君の瞳にワカパイ。

池袋の超有名なラーメン店に、嫁と娘(1才)を連れて
食べに行った。初チャレンジの店だった。

大失敗だった。

「嫁〜。モヤシが入っているよう。やだよう」

「それぐらい事前に調べないのが悪いんでしょう!」

「インターネッツにはそんなこと書いてなかったよう」

店員にも聞こえるぐらいの声で夫婦紛争が勃発する有様だった。
僕はモヤシが嫌いである。僕自身がひ弱なモヤシっ子なので
共食いになってしまうからである(言い訳だが)

しかし嫁もチャーシューを共食いしていたので、僕も我慢して
食べた。(嫁の名誉のために書く。嫁は本当はサレンダーである。
違った。スレンダーである。服従してどうする)

ところが困難なのはモヤシだけではなかった。
油ギトギトなスープと、腹に重く溜まる太麺がダメで、
半分以上残して降参。こんなことは初めてである。

嫁も同様な状態で、夜になっても胃がもたれたまま、
夕食を食べる気になれずにテレビを見ていたら、故郷
栃木の佐野ラーメンが紹介されていた。

「私、やっぱりこれが食べたいよ…」

「そうだな…でも東京じゃ食べられない…」

嫁が嘆いて、僕が答えた。佐野ラーメンこそが一番美味い。
僕はそう思っている。栃木に帰った時に嫁にも食べさせたら
一発ではまっていた。

ウド鈴木と知らない女の子芸能人が食べているさまを
呪いが籠もった目で眺める僕と嫁。そのうち僕は
その女の子の服の下に隠されている胸が豊満で
あることに気付いた。

「なあ、この子、実は乳が大きいんじゃないか?」

同じ女性として嫁はどう判断するか、確認を取ってみたところ

「あなた『ワカパイ』知らないの?この乳アイドル知らないの?」

と、大層呆れられてしまった。

「は?何だ、そのうなぎパイの親戚みたいな名前は…」

僕にとってのアイドルとは、元近所に住んでいたお気に入りの
美少女・Rちゃんである。彼女こそが唯一無二のアイドルであり、
娘にもこの名前を付けた。

Rちゃんは引っ越してしまい現在普通であるが、未だに僕の
心の中で燦然と輝き続けているので、テレビの中のアイドル
風情などには興味がない。だから名前も知らなくて当然である。

乳にしてもそうだ。Rちゃんのネコ系童顔に釣り合わない、
はちきれんばかりのふたつの胸の膨らみこそが、僕の理想的
パーフェクトロリ巨乳であるが故に、そのワカパイとやらも
今まで目に入らなかったのである。

見よ、この一途なピュアマインド。褒めこそすれ、呆れること
などもっての外である。

ここで本日学んだことのまとめ。

ラーメンは佐野である。
ワカパイは乳である。
.

娘を追うものは嫁を得ず。

娘・R(1才)はピカチュウが好きである。
いや、好きになるように僕が仕向けたと言っても良い。

何故そんなことをするのかというと、僕がピカチュウ
好きだからである。

僕の家には数十匹のピカチュウがディスプレイされていて、
しょっちゅうRに見せていたのだ。

しかし最初から好きだったわけではない。過去、等身大のでかい
ピカチュウを初めて見せた時はびびりまくって大泣きしていたが、
努力の甲斐あって今では

「取って〜」

とばかりに手を伸ばすようにまでなった。

そして羨ましいことに、その膨大なピカチュウの中の、
Rが気に入っていると思われるひとつを、毎朝手にとって
チューしているのである。

「R…お父さんにもチューしてくれないかなあ」

僕はうむー、と唇を尖らせてRに迫ってみるのだが、
Rはぶんと手を振って僕のベーゼを避け、

「ぎゅむ」

そのピカチュウを僕の顔面に押し付けるのである。
何故に父をそこまで避けるのか。R、お前は父より
ピカチュウを選ぶのか。お前が愛するというのなら
この父に止める理由はない。しかしその電気ネズミは
お前を養っていけるのか。収入ないぞ。

いつかはRもこの父の有難さを分かって、自らチューして
くれることを期待する他ない。そう、今はピカチュウLOVEだが
この次は父LOVEになってくれることを願って。

とかなんとか考えて夜空のお星様にお祈りしていたのだが、
最近はアンパンマンにまでチューするようになった。

何で僕にはしてくれないの!

Rの今の好みのタイプはピカチュウとアンパンマン。
何か相通じるものがあるのだろうか…?

あっ。赤いほっぺた!これだ!

そんなわけで僕は今、志村のバカ殿のメーキャップ導入を
真剣に考えている…。

嫁には確実に逃げられるだろうが…。
.

狸オヤジ寝入り。

電車の中で簡単に眠りに落ちる。

ふと目を覚ましたときの僕は、頭はがくんと垂れ、腰は思い切り沈み、
座席の上にふんぞり返り、大股開きでいた。

ああ、なんというみっともない姿をしているのだ。
駅のポスターにも書いてあるだろう。
やめよう!迷惑行為!まったくもって怪しからん。

残った眠気と仕事の疲労と、嫌な事があったことの鬱とで
体だけでなく心もドロドロに濁っており、もう死んでしまってもいいや
とさえ思えてくる。

とりあえず姿勢を立て直そうと頭と腰を上げたら、僕の正面には
制服姿の女子高生がいた。

腰は思い切り沈み、座席の上にふんぞり返り、
足は大股開きで…まるで僕と同じ格好ではないか。

やめよう!迷惑行為!まったくもって怪しか…ら…ん?
スカートの奥に桃色の…何かが…見え…

明日も生きてみようと思った。
.

据え膳しか食えない男の恥。

僕は家事全般が苦手だが何よりも炊事が異常なほど嫌いだ。
台所に立っただけで憂鬱な気分になり、何も触りたくなくなる。
ちょっとおかしいかもしれない。

そんなわけで草木も眠る丑三つ時。嫁も当然寝ている。
ゴハンは出来ている。あとは僕が暖めるだけ…。

といった状況においてもどうしても台所に向かいたくはなく、
自室で空腹のまま寝てしまおうか、それとも覚悟を決めて
台所に立とうか、と煩悶していた。

…嫁を起こしたら怒るだろうか。当然怒るであろう。
飯を温めるぐらい自分でやれ。そんなことで私を起こすな。
そう言われるのが関の山である。

どっちにしろ、この時間はいつも熟睡している嫁。
声を掛けても絶対に起きないだろうと思い、ダメモトで

「嫁…嫁ぇぇぇ」

枕元に立つ先祖の亡霊のような、嫌な感じで呟いていたところ

「は?」

意外なほどにパッチリと目を覚ましてしまった。

「ママ…ゴハン食べたい」

「あっためればいいでしょ!」

「ママやってえ〜やってえ〜」

僕ちゃん君が作ってくれたご飯じゃないと嫌なの…と
返って嫁の逆鱗に触れそうな訴え方でアピールしたのだが

「しょうがないわねえ」

嫁はむっくりと起き上がり、台所でテキパキと僕の
食事を用意してくれ、

「はいよ」

ずい、と僕に差出した。なんて献身的な嫁であろうか。

「ありがとう…この恩は一生忘れないよ」

「何を言ってるの…」

拍子抜けしてしまうほど素直だった嫁はまたモソモソと
布団に入り、寝てしまった。こうしたわけで僕は深夜にも
かかわらず据え膳をおいしくいただくことが出来た。
持つべきものは嫁。ありがたや。

食べ終わった後に、嫁自身もレアでいただきたいと思ったが
さすがにそれは思い留まった。それこそ鬼畜というものであろう。

嫁を据え膳でいただく方が困難な今日この頃である。
.

秘め事と姫の事。

お下劣なる秘め事を、できるだけ綺麗に綴ってみむとて
するなり。

週1回あるかないかの契りのチャンスを掴むことができた夜。
嫁に言い寄り衣服の裾に手を掛けると

「好きにして…」

字面だけ見れば、とても艶かしい言葉が返って来た。しかしその後に

「私、寝てるから」

と付け加えられた。こんな投げ遣りな「好きにして」は初めてだ。
もののあはれが解せない嫁よ。男女の駆け引きも何もない。
あるのは男女の出し入れのみである。

それでも僕は気を落とすことなく、好きなように嫁を蹂躙する
こととした。ただ気をつける点は、側で寝ている娘・R(1才)を
起こしてはいけない。厳かに前半の山場を迎えようとしたその時

「ひーんひーん」

出来るだけ音を立てないよう、立てるのは必要最小限の場所のみと
充分気を付けてはいたが、Rが感付いて泣き始めてしまった。
Rを穏やかな眠りに導く為に、何か優しい言葉を掛けてやらねば…

「R、今、本番中ですからっ」

台無し。

ここ嫁が手際よくあやして再び寝入ったR。僕もそれを
見計らってワンモアトライ。だが…

「ひ…ひーん。ウキャアア」

しまった。まだ眠りが浅かった。抜き差ししようかと
していた所に、これがホントの抜き差しならぬ状態に。
またもやRをあやさなければならない。

「はいはい、じゃあ歌を歌ってあげましょう。
 むーすーんーで、ひーらーいーて、
 てーをーうって、むーすんでー」

子守唄代わりにRの好きな歌を歌ってやった。Rはこの歌に
合わせて一生懸命踊るのだ。

「まーたひらいて、てーをーうーって…って
 さっきお母さんも、まーた開いてたのよイッヒッヒ!」

台無し。

やはり綺麗に綴れなかった。
.

あなたの命を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう。

「ちょっくら煙草を買いに行って来るよ」

と嫁に言い残してコンビニへ。速やかに買って家に
戻ると娘・R(1才)がアキャキャと笑って出迎えてくれた。

「Rが大きくなったら、この父の煙草のおつかいを
 してくれたら嬉しいなあ」

煙草買ってきて、とRに頼むと、その代わりお釣りちょうだいね、
なんて言われたりして、と、ほのぼのとした将来像を想像して
いたら嫁が烈火のごとく怒った。

「Rにそんなことさせないでよ!煙草のお使いをさせられた子供は
 将来喫煙者になる可能性が高いのよ!」

「まじで!そんなことを調査した結果でもあるのか?」

「それは私が…えーと、保育士時代に…家庭を…見てた結果…
 そんな感じだったような…えと、4世帯ぐらい…?」

「お前、今4秒でデッチ上げただろ」

嫁の言うことは全く根拠のないものであったが、確かに
調べるまでもなく、何かしらの煙草に接するきっかけが
多い方が喫煙に繋がる可能性が高いに決まっている。
タイミングの悪い事に、こんな記事も見つけた。

たばこ多いほど自殺の危険

要約すると、一日の喫煙本数が多いほど自殺の危険性が
高まるという調査結果が出たという。これを見た嫌煙家は

「ご自分で毒吸ってご自分で毒吐いた上に、ご自分で死ぬなんて
 愚かな事ですこと。もっと沢山、もっと早く死んでくれれば
 私に煙がかからなくて済みますわ」

などと鬼の首を獲ったように喜ぶだろう。ますます喫煙者は
ダメ人間であると追い込まれていく一方である。

僕はヘビースモーカーだが、それでも娘・Rに対しては
気を使う。Rが側にいる時はなるべく吸わないようにして
いるが、誘惑に負けて家の中で吸ってしまうこともある。

こんな風潮と環境の中、僕も禁煙したいとは思うが、これまで
80回ぐらい失敗している。何か効果的な方法はないものか?と
考えあぐねた結果、

Rとしょっちゅうくっついていればいいのではないか。
そう思い付いた。Rの至近距離にいれば流石のヘビースモーカーの
僕も吸おうとは思わない。そして徐々に本数を減らせるのではないか。

Rがヨチヨチ歩いている後を僕もぴったりと付いて行く。

ヘビースモーカー解脱の後、
ベビーストーカーになるのである。
.

トイレの我が子さん。

大自然が呼んでいたので、トイレに籠もって
スーパーサイヤ人と化していたら、トイレの
扉が「ぎいいい…」と開くではないか。

ちょっと待て!そんなのありえない!
出るものも引っ込んで固まったままの僕。
やがて扉の隙間が徐々に開き、姿を現したのは…

「あちゃぷー」

娘・R(1才)だった。何ということだ。
嫁にさえ覗かれた事ないのに。これは恥ずかしい。
たとえ我が娘だろうが1才児であろうが一緒にお風呂に
入ってようが、トイレで産む瞬間だけは見られたくない。

「Rちゃんのエッチ!」

とりあえずRをくるりとUターンさせ、背中をトトトと
押してRを遠ざけて再びトイレの扉を閉め、腰を掛けた。

ここで僕は思い付いた。かねてからRには80年代の
アイドルのようなキャッチフレーズを付けたいと、
親馬鹿な故に考えていた。、

かつてのアイドル、中森明菜のデビュー当時の
キャッチフレーズは

「ちょっとエッチなミルキーっ子」

であったという(ミルキーっ何だ…)それを踏まえて
我が娘のキャッチフレーズ。

「ちょっとエッチなノゾキーっ子」

…Rが聞いたらグレて少女Aになりそうな予感。
.

ネット・ミリオネリア。

いつも当サイトをご贔屓にしていただきまことに
ありがとうございます。

おかげ様でカウンターが100万を越えるのも、そろそろ
時間の問題となってきております。

…という訳で、何となくサイトとして一区切り付くような
感じなので、何かイベントでもやった方がいいのだろうか、
などと考えております。見ていただいている方々にとっては
別にどうでもいいのかもしれませんが、一応ネット人として。
日頃のご愛顧のお礼として。

そんなわけで幾つか案が浮かんでおりますが、
どれもイマイチグッと来るものがありません。

その1:

飲み会を開く。ネット人風に言えばオフ会である。

欠点:

東京から遠い人は参加できない。

その2:

100万HITにちなんで、閲覧者の皆様からナース服に身を包んだ
写真を募集し、この場で発表する。勿論男性が着用してもよい。

名付けて「100万HITナースハンター」

欠点:

ナース服を持っている人が少ない。
本職と趣味がアレな人しかいない。

その3:

100万HITにちなんで男性自身の写真を募集し、この場で発表する。

名付けて「100万本のマラの華を あなたにあなたにあなたにあげる」

欠点:

発表できるわけがない。

…何か良いアイディアがありましたらmail下さい。

ひとまず僕は、今日は仕事休みであったので
娘・R(1才)の100万ダラーの笑顔がたくさん見れて
幸せでした。

嫁の笑顔は…100ペソぐらいであろうか。最近怖い。
.

食べる前に飲む!(苦汁を)

娘・R(1才)と嫁がガッチリ抱き合って眠っている。

Rには変な癖があり、仰向けになった嫁の胸の上に
抱きついていないと寝ないのだ。Rを寝かしつけている内に
嫁もいつの間にか眠りに落ちている。そんな毎日。

そして僕の夕飯は出されていない。まさか叩き起こす訳
にもいかず、僕は自分で用意しなければならない。
とはいっても飯自体は作ってくれており、後は暖めるだけ
なのだけれど、ひとり暮らし暦10年を誇りながら、炊事嫌いのため
全く台所仕事をしていない僕にとってはそれだけでも辛い。

笑う人もいるかもしれないが、ちょうど夏休み最後の日に
たまった宿題を片付けなければならぬような激憂鬱になり、
炊事するぐらいなら空腹のほうがマシ、と寝てしまうこともある。

嫁とRはガップリ四つであるので夜這いをかけることも
出来ないし、飯は食えないわ女体は食えないわ、
まったくもって僕の人生おあずけ人生。

深夜の台所でひとり嘆きながらゴソゴソ用意をしていたら
嫁が目覚めた。Rに抱かれるがまま、

「冷蔵庫の中に野菜があるから。」

小声で僕に指示を出す。言われるがまま冷蔵庫を
開ける僕。

「青いパックの中のやつもチンして食べて」

「僕のパンツの中のやつもチンして食べて欲しいナ」

「ボウルに入っている野菜も食べてね」

「あからさまに無視するなよ!」

しかし嫁は悲しそうな眼差しを向けるだけで、それは

「もうアナタだけの体じゃないの…」

もしくは

「あなたバカ過ぎ…」

と訴えているように見えた。ボデーだけじゃなく
マインドも食えぬ嫁であることよ。

僕は嫁の冷たい視線に耐え切れずに目をそらし、
再び台所に戻り、ひもじさをこらえつつ、馴れない
ガスコンロなどをおっかなびっくり使うのであった。

武士は食わねど火の用心。
.

赤子泣いてもWEB日記。

ある調べ物のために、やむなくえっちでグロい
ストリーミング動画を見ていたら(音なし)、
娘・R(1才)の夜泣きが始まった。

僕が抱いてあやしても全く泣き止んでくれない。
というのもRは嫁の乳が欲しくて夜泣きすることが
ほとんどで、乳に吸い付くと同時に泣き止むのである。

かといって放置するわけにもいかず、それに

「どうせ嫁が抱かないとダメだから」

などと諦め切ってネットを続けていようものなら
嫁のWEB日記に

「旦那はネットばかりでRが泣いても見向きもしない」

という恐ろしいことを書かれるので、とりあえずは
ある調べ物のために、やむなく見ていたえっちでグロい
ストリーミング動画を消して、

「Rちゃーん、よしよし」

たとえ余計に泣くことになろうとも僕はRを抱くのである。
しかし予想していたとおり、Rは泣くのを止めない。
一方で嫁はパソコンとにらめっこしている。

「ちょっと待ってね!待ってね!」

どうやらネットをしていて手が離せない様子。
何かは知らないが山場を迎えているようだった。

さては人妻ライブチャット実演中?
いや、WEBカメラないし…。
どうやら日記の更新中のようであった。

とにかく何らかのネットの呪縛を受けている僕と嫁。
パチンコに夢中になって子供を死なせる親のような
恐ろしさがあるのではないかと思った。

流石に放置ってことはないが…。つい熱中してしまうところは
同じようなところがあるのではないか…。

はじめエログロ 中バッファ 赤子泣いてもプロトコル。
.

酒の上の不埒な悪行三昧。

現在、家にエビスビールが大量にあるので
とっとと飲みつくしてしまおうとして
飲んだくれている毎日である。

「おお、我がいとしき嫁と娘よ」

ほどよく酔っ払ったので嫁と娘・R(1才)が眠る
枕元に顔を寄せ、良い酒の肴になるであろうと
ふたりの寝顔をじいと見ていたところ

「…あなた、酒臭い」

嫁がこちらを睨みあげた。しかし僕は酔っ払いであったので
可愛くおどけ続けることに徹底した。

「ふふふ、僕は酒臭い。Rは乳臭い〜」

「あなた、うるさい!Rが起きるでしょ!」

「えへへ、嫁は婆臭い〜」

「ムカァッ」

どうやら本気で嫁を怒らせてしまったようだ。
酔いも吹っ飛ぶほど恐れをなした僕は

「ごめん臭い…」

おとなしく寝床に入って眠りに付くのであった。

「あなた、うるさい…」

ごめん。本当はお前をイカ臭くしたかったんだ。
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実家に帰らせていただきます。何度でも。

娘・R(1才)と共に実家から帰ってきた嫁が
恐ろしいことを言った。

「これから月イチは実家に帰ることにするわ。
 だって楽だもん」

ああ、ついにこの時が来たか。

実家には育児や家事やら何かと手を貸してくれる
親がいる上、赤子より手が掛かってがさばること
この上ないダメ亭主はいない。

楽であるが故に実家に入り浸りになる嫁。よく聞く話である。

今まではこんなことを言わなかった。嫁は過去何度もR連れで
実家に帰ってはいる。しかしそのたびにRが「場所見知り」を
してしまい、少しでも嫁がいなくなると火が付いたように
泣き叫び、おちおちトイレにも行けない状態であったという。

それが先週末の実家帰りではRは「場所見知り」を克服したらしく、
嫁にとっては今までになく楽だったようである。それで冒頭の
ようなことを思い立ったというわけだ。

「月イチぐらいならいいけどさ。そのうち月3になって
 5になって10になって最後は31になっちゃったらやだよう」

僕は嫁にすがった。雨に打たれてずぶ濡れになった仔犬の
眼差しを演出して嫁を見つめた。

ここで少女漫画の世界であれば、優しいヒロインは白いワンピが
汚れるのも厭わず、ギュッとワンちゃんを抱き上げてくれようが、
嫁にそんな慈悲心は既になく、

「さあ…どうかしら…」

運がよければどこぞの誰かが拾ってくれるでしょうよ、とでも
言いたげな含み笑いをみせるのみであった。…おそろしい嫁!

巷では最近、三十路を過ぎて結婚できぬ女性を
「負け犬」と呼ぶらしい。

しかし三十路を過ぎて嫁に愛想を尽かされた男は
「捨て犬」と呼ぶにふさわしいであろう。

アイフルの仔犬のような可愛さも既にないだけに悲惨だ…。
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帰って来たの国から2005 再会。

昼間、一昨日から実家に戻っている嫁から電話があった。

「今電車に乗ったからあと1時間半ぐらいで帰るよ」

嫁が二度と戻って来ないという最悪の事態はなくなった
ようだ。さもあろう。これから娘・R(1才)のためにも
家族仲良くやっていかなければならんのだ。特にRには
弟か妹を作ってやりたいと思っている。僕だけ一人家に
残されてはそれも不可能ではないか。

これを単身不妊といいます。なんつって。

僕はRに一刻も早く会いたかった。Rの姿、声、
全てが恋しい。帰って来たらすぐさま抱きしめたい。
ああRよ、早く戻っておいで。ついでに嫁。

やがて外から足音と嫁の声が聞こえて来たので、
待ち構えてドアを開けてやると、ベビーカーに
乗ったRがちょうど正面におり、ばったりと目が合った。

「R!お帰り!お父ちゃんだよ!」

「…」

しかしRは僕を難しそうな顔でじいと睨みつけたままだ。
もしかしたら僕のことを忘れたのだろうか?

「R…?」

5秒ぐらいの間があっただろうか。

「けひゃひゃひゃひゃ!」

いきなり僕を指差して大爆笑をするではないか。
Rよ、父を思い出してくれたか。というかこのリアクション、
僕はお笑い芸人か何かと思われているのだろうか。

そんなことはともかく、久方に見るRは僕の目には殊の外
可愛く写り、我が家に帰って羽根を伸ばして歩き回る姿を

「ナイスですね」

とデジカメを構えて撮り、畳にゴロンと寝転がった姿があれば

「ナイスですね」

これまた追いかけて撮影しまくっていた。しかしそれを見た嫁が
「待った」をかけた。

「なんか、その撮ってる姿、エロい」

と言うのである。寝ている娘を上から撮る。言われてみれば
AVの撮影とかそんな感じのシチュエイションを連想させなくも
ない。だが嫁よ。あなたはむっつり助平な

ワイフですね。

photo

確かに少し淫靡な感じもする…のか?
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わたし待ーつーわ。飲みながら待ーつーわ。

土曜日から実家に帰っている嫁と娘・R(1才)

日曜日には帰って来てくれるのだろうかと思っていたが

「ごめん、やっぱ明日帰ります」

とのメールが入り、もう一晩寂しい夜を送らなければ
ならなくなった。きっと里心がついてしまったに違いない。

嫁はカレーを作り、ゴハンを炊いていてくれたが
やがてそれも尽き、こうなったら外で飲んだくれて空腹と
寂しさを癒すしかあるまい、と決意した。

そんなわけでネットのお友達、望月君が捕まったので
池袋の監獄居酒屋に行こうと思い立ったのであった。

ここは店の中が牢獄の設定となっており、入り口には
容姿端麗なミニスカポリスが待ち構えてい、

「ここに来るのは何度目ですか?」

といきなり尋問されるのである。

「あの…初めてですけど」

客がそう答えると手錠をガチャンとはめられ

「初犯1名連行しまーす」

手錠につながれた縄でミニスカポリスに引っ張りまわされて
独房という名の客席に連れて行かれるのである。

僕は今日来るのは2回目であるので

「前科1犯連行しまーす」

とミニスカポリスに引き摺り回されるのを
楽しみにしていたのに、監獄居酒屋の前には
連行待ちの人間が何十人と蠢いており、いつ
入所できるか分からない状態であった。

「日本の犯罪社会化がここまで進んでいようとは…」

僕と望月君は入所を諦めて普通の居酒屋に
入ったのであった。ここでは望月君が

「あなたのサイトは時々見るに耐えない時がある」

などという歯に衣着せぬことを言われ

「オヤジ…もう一杯」

という酒の酔いに身を任せたい気分で一杯に
なり、家に帰ってきた。

嫁とRは今日帰ってくるはずであるが

「ごめん、やっぱ来年帰ります」

というメールが入らないかどうかビクビクしながら
待っているのである。

父帰る。嫁も帰れ。
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せっぷん侍。

娘・R(1才)が両手を上げて

「ん?ん?」

と僕に声を掛ける。これは「ダッコしてチョ」の
ジェスチャーである。Rはまだ喋れない。

関根勤が真似する水森亜土のような、タピタパーとした
意味不明のつぶやきはしょっちゅう発しているのだが、
人語を喋るようになるまでにはまだ時間がかかりそうだ。
しかしそのRが

「はいはい、だっこか」

と僕が抱き上げようとした瞬間

「だいて」

と言ったのだ。いや少なくともそう聞こえた。

抱いて、とは。エロティークなヴィデオではよく耳にするが、
現実世界では滅多に囁いてもらえない甘美なセリフ。
言われてみたい言葉ベスト3に入ると思う。
まさか実の娘から言われようとは思わなかった。

ちなみに言われたくない言葉ベスト3は以下の通りである。

・一万円からでよろしかったですか。
・テンチョーイチマンエンハイリマース
・一万人の中から選ばれました。

さて、Rの言葉に感極まった僕は

「嫁!聞いたか!今抱いてって言ったぞ」

そばで飯を作っていた嫁にわめいたのだが

「言ってないわよ。たまたまそう聞こえただけ」

何とも冷たいことを言う。きっと嫉妬しているに違いない。
しかしRは僕に抱かれたいことには間違いはあるまい。
僕の胸の中で嬉しそうにニタニタしているRに向かい

「それじゃな、お父ちゃんがチューしてあげる。ちゅー」

可憐な唇にくちづけをしようとしたのだが、何故か

「ウギャー!」

ものの見事に拒否されてしまった。抱かれるのはよいが
接吻はいや。お前は風俗嬢か。

そんなRは今嫁と共に実家に帰ってしまっている。
しばしの別れであると思ってRにお別れのチューを
しようと思ったのに。しかしRには拒否されることも
あるだろうと思い、前の晩嫁と契っておきました。

ダッコして愛撫してまた明日。

…明日本当に帰って来るのだろうか。
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ネクタイ疲労時の栄養補給に。

明日、泊りがけで嫁が娘・R(1才)と共に
実家に帰ってしまうという。寂しい。

嫁父の還暦祝いがあるのだ。しかし僕は仕事のため
行くことが出来ない。せめてプレゼントでも買って
おこうと思い立った。どんな贈り物にしようか、と
あまり考えるのも面倒なので、

「3,000円ぐらいのネクタイとかでいいか…」

極めて安直に買うものを決め、ぎっくり腰百貨店
(仮名)に入った。中にはババーリー(仮名)だの
ヴァレンチノタラバガニ(仮名)その他諸々煌びやかな
ショップが入っており、

「こういうブランド物を買って行けば嫁父にも
 ハクがついていいかな…」

などと考え、よさげな色のネクタイを一本掴み、

「これ、贈り物用に包んでください」

と店の兄さんにお願いした。

「ではお包みいたしますので…」

店員にネクタイを手渡す瞬間、それまで裏に隠れていた
値札がはらりと下がって、ちらりと数字が見えた。

い、いちまんはっせん…えん。

しまった。値札なぞ見てなかった。ババーリーだろうが
タラバガニだろうがネクタイの値段なんてタカが知れていると
侮っていた。考えてみたら自分でこんなブランドもんの
ネクタイなぞ買ったことがなかったものなあ。

人に贈るネクタイで、自分の首を絞める羽目になるとはこれいかに。

背筋が寒くなって懐も寒くなった。一人身になる明日の夜は
寝床までも寒くなるであろうよ…。

しかしこれだけの物を贈れば嫁父も喜んでくれるだろう。
このネクタイをプレゼントすることによって、僕と嫁父の
間にもより深い絆が生まれるはずである。

これをネクタイ関係といいます。
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学校へ行かせよう!

正月に栃木の実家にいた時、娘・R(1才)を
散歩に連れて行った。ようやくひとりで歩くことを
覚えたRは嬉しそうにヨチヨチと歩く。

まだ足取りが頼りないので手を繋いでやると

「でへへー」

更に嬉しそうにバタバタと足を早める。

車が多い道路や、雪解けで足場がブヨブヨした田んぼを
避け、小学校の校庭で遊ばせることにした。

僕が通っていた小学校である。

20年以上も前に遊んだこのグラウンドで、今こうして
自分の娘が同じ土を踏んでいる。とても奇妙な感覚に
襲われた。何と表現したら良いのだろう。

放流した鮭が川に戻ってきた…?いや、何かが違う。
最後の日本兵、40年ぶりに帰還…?いや、これも違う。
オカマの日出郎、オカマになって初めての帰郷…?いやいや、
だんだん遠ざかって行くので考えるのをやめた。

しかしRがわが母校に入学することはまずあるまい。
するとこの子はどの学校に入るのだろうか。いや、
親としてどんな学校に入れさせたいと思うだろうか。

Rには淑女たる教育を受けて貰いたい。僕はそう考える。
となるとここをおいて他はあるまい。実家の隣の市にある、

その名も乙女小学校・乙女中学校。→地図

なんという素敵な響きであろうか。立派なレデーになって
くれそうな期待で胸が高まる。小さな女の子が大好きな
大きなお友達が学校周辺を徘徊そていそうな心配もあるが。

他にはやはり、それなりに名の通った学校に行かせたいという
親心もなくはない。例えば

光中(ひかりちゅう:略称ピカチュー)→地図

青海中(せいかいちゅう:略称セカチュー)→地図

小名浜第二中(有名なオナニ中)→地図

荒井中(なんだバカヤロウ)→地図

…単なる名前が面白い学校調べになってしまった。
ま、クロマティ高校とかそういうのじゃなければ特にどこでもいいか。
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娘の服はセーラーメイド。

仕事始めが始まって二日目。
早くも息切れがして、まったりと過ごした正月が懐かしい。

嫁と娘・R(1才)とゴロゴロと過ごした元旦。
Rには僕がクリスマスプレゼントに買ったセーラー服を
ここぞとばかりに初めて着せてみた。

photo

…Rよ。父は感慨無量である。またとない自分の愛しい娘に
これまた愛しくて止まないセーラー服を着せることの喜びよ。
これこそ男の浪漫である。娘を持って本当に良かった。

この感動を大切にせんがため、これから毎年元日には着物
などではなくセーラー服を着せることにしようと思った。
いや、思ったがやはり晴れ着も捨てがたいと思い留まった。

いっそのこと元旦にはセーラー服や着物のみならず様々な
コスプレする、という風習を我が家で作り上げてみたい。
聞くところによると、元旦には一家全員が全裸で過ごすという
奇習もあるくらいだから、無理はないな!

やがて物心が付くRは「何故自分だけ」と嫌がるかもしれないが、
そこはお年玉をちらつかせたり

「これは明の時代に黄・素扶礼という貴族が始めたもので…」

などと民明書房風にでっちあげてみたり

「お父さんはな、お前の晴れの姿を見るのが何よりの幸せなのだよ。
 きれいや。ほんまにきれいや…ううう…」

とお涙ギブミー作戦に出てみたりで努力してみる。

コスプレ候補にはチャイナドレス、巫女、ナース服等色々、
来年はメイド服にしてみたいと思う。来年の元旦までに
メイド服の子供服を全力で探すことにしよう。

正月や メイドの道への 一里塚。
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嫁の初ボケ。

滅多に体の繋がりを持とうとしない嫁が、珍しいことに
白昼堂々僕に腕を回してベタベタと体を摺り寄せてきた。
何か悪いものでも食べたのだろか。

訝しがる僕をよそに嫁は不敵な笑みを浮かべ、

「よいしょ、よいしょ」

更には胸を寄せて上げようとしているではないか。
いよいよ黄色い救急車を呼ぼうかと思った。

娘・R(1才)を産んだことによる「出産特需」により
劇的にたわわになった嫁の胸ではあるが、現在は
Rに吸い尽くされ、どんどん元の小さな胸に戻ろうと
している。

それでも絞るように胸の肉を集める嫁の姿は、まるで
空になったハミガキのチューブをぎゅうぎゅうに
絞ってもやはり出てこなかった時の虚しさに似た、
絶望的な光景であった。

これ以上見てることが辛くなり、たまりかねて
嫁に声をかけた。

「何だ。一体どうしたというのだ」

「うふふ。今年もよろ乳首」

「…」

「…」

このギャグの為に何と長い前フリであったことよ。今年の干支は
ニワトリだと思っていたが、どうやらトリはトリでも
しらけ鳥だったようだ。

せめてハト年だったらそれにあやかって嫁の胸も
ハト胸ぐらいにはなろうと志したものを…。
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やだねったら、やだよ。

故郷の栃木での買い物の帰り道、

「ちょっとCD屋さんに寄っていいけ?」

ソワソワとした母が言った。母が聴く音楽といえば

「きよし、だね?氷川きよしなんでしょう?」

「うん。お店の人からポスター貰う約束してるのよ!」

「母さん、アイドルオタクだよそれじゃ…」

しかし還暦を過ぎた母の数少ない楽しみに水を差す訳には
いかない。母が店から出てくるのをじっと車の中で待っていた。
5分後、まるで熊を仕留めた猟師のような勇ましい足取りで
きよしポスターを手にした母が戻って来た。

実家には氷川きよしポスターが至るところに貼られている。
居間・応接間・台所と、どこにいてもきよしの熱い視線と
ぶつかるよう配置されている。

僕は初め、あまりの実家の変わりように驚き、

「ここにもきよしかよ!」

次いで呆れ果てたが、今はもう慣れつつある。
母はああやってきよしポスターを収集し、
やがてもっと増えて行くのだろう。
やれやれ、とトイレに入ったところ…

いきなり瀬戸内寂聴のでかい顔があってギャース!

これも母の仕業だ。母が瀬戸内寂聴のポスターを
いつの間にか貼っていたのだ。何故寂聴!?
とにかくあわや漏らしそうになるほど驚いた。

便器の中から青白い手が出て来て「赤い紙いるかーい」
などと聞かれてもこれほどは驚かないだろう。
それだけ怖かった。母も女である。トイレの中の姿を
きよしに見られたくないのだろうが…だからって、だからって。

思えば亡き父も、僕が小さい頃、縁日の夜店だか
どこかで買った山口百恵のばかでかいポスターを
いきなり僕の部屋に貼り、困ったことがあった。
どうして父の部屋に貼らなかったのか、とうとう
聞かず仕舞いであったが…。

そう考えると、あの父にしてこの母なのかもしれないなあ、
などと過去を懐かしんでみたりするのであった。

これをポスタルジーといいます。
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おとし玉の、おとし穴。

娘・R(1才)にお年玉をあげたのだが
見向きもされなかった。

金の価値なぞまだ分からないのは百も承知なので、
可愛い動物の絵が描いてあるポチ袋にしてRの目を
引こうと思ったのだが、手に取ってすらくれなかった。

父の愛は無念にも踏みにじられてしまったので
夫の愛を嫁に注ごうと思った。

要は嫁にもお年玉〜とか、いつものお下劣な
アレである。

嫁を相手に実家で致すと、恥ずかしい染みを作ったり
母に現場まで突撃されたりと過去ろくなことがなかったが、
姫初めという縁起物であるのでこれを怠る訳にはいかぬ。

しかし…嫁に抱きつくことすら出来なかった。

というのもRは寝る時に必ずグズり、嫁に覆いかぶさりながら
でないと眠らないのである。僕が嫁にやりたいことをRに既に
やられてしまっている。かといってRをひっぺがそうとすると
途端に泣き叫ぶので、手のつけられようが無い。

チャンスがあるとすれば、Rが寝返りを打ち、自主的に
嫁から離れてくれる時のみである。

この夜も嫁の隣に寝そべり、虎視眈々とタイミングを
計っていたのだが、Rはとうとう離れることは無く、
時計は既に午前2時。もはやこれまでであった。

我が家の姫のために姫初めを阻害されるとは、
明るい家族計画でも盛り込まれておらぬ大誤算。

熱い抱擁のまま眠るふたりに反し、ひとり寒気を感じた僕は
熱い放尿をして仕方なく眠りについたのであった。
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一年の計はアンポンタンにあり。

実家にはコタツのある部屋に父の仏壇がある。

そこに飾ってある父の写真を娘・R(1才)が指差して

「んでゅ?んでゅ?」

取ってくれ、という意味のジェスチャーをしていたので

「おおそうか、じじ様に挨拶したいのか」

Rに手渡してやったのに、すぐ

「ぽい」

ぶん投げてしまった。あああお前はなんということを。
お父様御免なさい。

その後、僕とRがコタツで丸くなっていたら、
異様にハイテンションな嫁がやって来て

「私、着替えマース」

と、尻を振りながらズボンを脱ぎだすではないか。
朝でも夜でも真昼でも恋はストリッパー、という
沢田研二の訳の分からない歌の再現を見た思いがした。
今更嫁がどんな悩殺ポーズをしてきても感動も興奮も
全く生まれないのであるが、僕は大いに慌てた。何故なら

「仏壇にケツ向けんなバカー!」

このことである。ちょうど父上様の仏壇のまん前で、
屁の一発でもかませば線香立ての灰も吹っ飛ぶであろう
至近距離。位牌がストリップ小屋のかぶりつき席になった
ような有様だ。

「あら、これは失礼オホホ」

しかし嫁は悪びれることも無く、揺れるダンシング脱衣尻を
隠すことも無かった。このアンポンタンな行為によって嫁が
何をしたかったのかは未だに分からない。2005年の初謎である。

父上様、うちの女どもはおおよそこんな感じです。
知らぬが仏のままでいて欲しかったのですが…。

仏壇における言語道断なお話であったことよ。
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大晦日なのに、きよしこの夜。

栃木の実家にいる。

夕飯を食べ終わってから母の動きが慌しくなった。
テレビを見ていたかと思うと電話をし、すぐさま戻って
来るとケータイでメールを打ちまくったり。太った体を
しているので余計ドタバタしている風に目に映るのだが、
やがて僕の脇にドカっと腰を下ろして

「なんで氷川きよしがレコ大じゃないのよ!」

と吼えた。どうやらレコード大賞を観ていたらしい。
氷川きよし好きである母は、今時のヨン様フリークなど
足元に及ばぬ程の猛烈なファンである。しかし如何に
熱狂的であろうと単なる一ファンに過ぎないのに

「私がこの一年でしてきたことは一体なんだったの…」

「事務所が悪いのよ事務所が」

などと電波的なことをブツブツ言っており、僕の知ってる
ママじゃないよ…と恐ろしくなってきた。

「ま、母さん、抑えて。ところで大賞は誰だったの?」

「え?何だっけ?確か、アダルトチルドレン?」

「…ミスターチルドレンだと思うよ」

氷川以外は全く目に入っていないバーサークぶりがやはり恐ろしい。
母の怒りはなかなか収まらなく、なおも吼え続ける。

「さっきもいろいろと話してたんだけどさー。 きよし君
 だって今年は凄かったんだから例えば…(以下略)」

「ちょっと待って。話したって、それってさっきの電話やメール?」

「そうよ!みんなと話してたの!お母さんの『きよ友』は
 北は栃木から南は大阪までいるのよ!」

母の言う「きよ友」とは、すべて氷川きよしのライブで
知り合った友達なんだそうだ。全国を駆け回ってライブを
見に行く剛の者もいるらしい。もはや一種のフーリガンである。

その後母は紅白歌合戦にチャンネルを移し、またもや氷川きよしが
喋ったり歌ったりしているのを観る内に、怒れるオバサンから
心ときめく乙女に変貌し、大人しくなった。時々僕がネットを
やっているのを覗き見して

「私もネットやろうかなあ」

などと言っていたが、何をおっしゃいますお母様。
あなたは既にインターネットよりも熱くて激しい
ネットワークをお持ちでございます。

母は紅白歌合戦が終わってようやく平常な状態に戻り

「これが豚になる原因なのよね」

ケーキを一つつまんで隣室に去っていった。
今、隣の部屋からマツケンサンバが聞こえる。

おそらくケーキを食べながら、紅白歌合戦を
ビデオでもう一度観ているのであろう。

紅白豚合戦…。
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