ハリー打ッターと恍惚の鬼嫁

妊娠中の嫁の肩凝りが尋常ではないらしく、担当の
助産師から針治療を勧められ、針灸院に行く事になった。

「やったことがないから怖くてさあ」

僕も未体験であり針師も見たことがない。偏見を承知で言うと、
針師のイメージはゼンジー北京のようなニセ中国人で、

「あいやー。ツボかと思ったら経絡秘孔に刺しちゃった
 あるよ。ポコペン」

ひでぶ、的な想像ばかりが浮かんでとても怖い。嘘付いたら
本気で針千本飲まされそうだし。しかしやられるのは嫁なので

「ま、何事も経験であることよ」

と適当に励ましておいた。

「で、どうだった?痛かったか」

嫁の針治療が済んだ夜、聞いてみた。

「うーん。痛いというか、痛キモチいいって感じかな」

「なるほどそれはアナルセックスのようだね」

昨晩の嫁とのめくるめく思い出を反芻しながら言った。

「いや違うから」

嫁が反論した。ちっ。その針師が言うには嫁の体は

「明け方までお菓子かじりながらネットやっているダメ妊婦
 がいたけど、それに匹敵する凝りようだねえ」

ということだそうだ。ネット漬け夫婦の我々にとても分かり
易い喩えである。もっとも嫁は娘・R(2才)の昼寝の時間に
しかネットはやってないし、肩の凝りの大部分はRの世話による
ものと思われる。

「でも針を打ってもらって体が軽くなったわあ」

「なるほどそれもアナルセックスのようだね」

「いや違うから」

それほどまでに効くというのなら、僕もやってもらおうかしら。
肩は全然凝ってないが、血でも抜いてくれないだろうか。
下半身の一部に血が集まりすぎだから。

でも保険が効かないそうなので、やっぱり針治療は
丁重におこと針することにする。

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ダディ・ゴー!

娘・R(2才)と一週間違いの生まれのサリーちゃんとの
誕生パーティーということで、家で飲み食いした後、
僕とジェームス君(サリーちゃん父:イギリス人)で、
子供たちを公園に連れて行った。

Rはすっかりジェームス君に慣れ、サリーちゃんも僕に
なついて来ていたので、それぞれ子供を交換する形で
遊ぶようになってしまった。

僕はサリーちゃんと追いかけっこをして遊ぶ。日本人の僕と
金髪のハーフっ子サリーちゃんでは絶対親子には見えず、

「オタクっぽいおやじが欧州幼女を連れ去ろうとしてます!」

などと誘拐犯に間違われて通報されないだろうか、と脂汗を
流して必死に追っていたが

「わーわーわー。まてー。まてー。」

やがてRも合流してきたので些か安心。しかしあれ?Rが
ここにいるということは、ジェームス君はどこに…?

公園を見回すと、彼は公園の隅で何故かサリーちゃんの
ピンクのヘアピンを前髪に付け、変な七三の髪型になり
ながらボーッと空を見上げていた。ポギー司郎並みに怪しい。

ちょうど公園に到着したサリーちゃんの奥さんが一言。

「あれが旦那じゃなかったら『変なガイジンがいます』って
 通報してるところね…」

ジェームス君は奥さん公認の怪しい外人になってしまった。

Rとサリーちゃんは相変わらず公園を駆け回っているので、
僕は彼女らの目を盗みベンチに腰を掛けたのだが、あっさり
サリーちゃんに見つかって

「ダディ!ダディ!」

こっちに来い!と怒られてしまった。ていうか、僕、ダディ?

「あはは!サリーに父親だって認知されちゃったよ」

ケラケラと笑う嫁とサリー母。確かビートたけしの本に、
長嶋茂雄が寿司屋の板前を

「ヘイ、シェフ!ヘイ、シェフ!」

と呼ぶのだが、当の板さんは自分のことだと暫く分からず

「もしかして、あっしのことで?」

と返事をしたというエピソードがあったが、この時の僕が
まさにそれだ。Rなぞ未だに「パパ」と呼んでくれないのに
それを飛び越えて「ダディ」である。呼ばれて結構ゾクゾク
するものがあった。ウチもRに「ダディ」と呼ばせるよう
教育しようかしら…。って郷ひろみかよ。

しかしサリーちゃんもよりによってこんな僕をダディとして
認知してしまうとは…。

ダディ食う虫も好き好き。

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日出処の天使。

元隣人のジェームス君一家が我が家にやって来た。

ジェームス君はイギリス人、奥さんは日本人、そして
娘のサリーちゃんは僕の娘・R(2才)と一週間違いの
生まれのハーフである。

今日は合同でサリーちゃんとRの誕生パーティーをする
のである。嫁はその為にモールや「HAPPYBIRTHDAY」の
ポップやらで家の中を飾り付けをしたが、その結果、
中学校の文化祭の喫茶店のような、何とも言えない
チープなデコレイトな様相になってしまった。

「…お前って変なところにだけ情熱を傾けるよな」

「あらそう?ほほほ」

そしてジェームス君一家が到着。半年ぶりに見るサリー
ちゃんは、ブロンドの髪が伸び、顔も大人っぽく成長し、
養子にしたいくらい可愛くなっていた。

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ケーキを目の前にしてニタニタするR。

この日の為に僕と嫁は、Rに天使のコスプレをさせるべく、
羽根とお姫様のようなティアラ(輪っかの代わり)を用意
していた。しかし

「めーーっ!」

Rは激しく拒否。まだこの世に生を受けて2年。世俗に染ま
らず、僕らの中で誰よりも天使に近い存在だというのに。

「じゃあサリーちゃん着るかい?」

Rがダメならサリーちゃんである。幸いなことに彼女は喜んで
羽根とティアラを付けてくれた。すると見よ。まるで宗教画の
天使がそのまま抜け出て来たかのようではないか。

ハーフだけれども金髪で、見た目も殆ど英国人のサリーちゃん。
流石本場モンは違う。日本本場モン協会(NHK)が何時嗅ぎ付けて
来てもおかしくない美しさ。

さすが大英帝国のクリスチャン。所詮東洋の島国・真言宗豊山派
の血を引く我々がやっても紛い物でしかなかったのだ。しかし
バッタ物であっても愛娘が一番可愛いのが親である。なので

「Rー。ちょっとだけでも着ようよ、ね?」

僕はしつこくおねだりしてみたのだが、

「いやーーー!めーーーっ!」

泣きながら暴れ回り、僕に容赦なく蹴りをガスガス入れるので
あった。これ、親を蹴る奴があるか。

この子は天使などではなく悪魔っ子なのかもしれない…。

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失敗は性交のもと。

大切にしたい夫婦のまぐわい。

しかし現在僕と嫁の間では以下のような問題がある。

・嫁が妊娠中である。
・嫁の性欲がない。
・嫁が娘・R(2才)と寝る時間が一緒になってしまい、
 僕が仕事から帰ってくる頃には既に寝ている。

僕の方は北朝鮮のテポドンミサイルの如くいつでも
節操なくピンポイント爆撃が可能であるが、嫁が
このような現状では性交は到底できない。略して
性交到底。冬型の気圧配置のような状況である。

妊娠中にまでやらなくてもいいではないか、と思うかも
しれないがそこは男の性であり、更に嫁の担当の助産師が
唱える

「体の触れ合いは大切です。妊娠中でも問題ありません。
 どんどん致して下さい」

との言葉を錦の御旗にして僕はいつでも嫁を求め続ける。

妊娠中できないがために浮気に走る男が多い世の中、僕も
池袋西口のヘルス「陰毛の恋」や、東口のクンニ専門店
「クン肉マン」などに行かないだけ偉いと思う。

そこで色々と鬼謀の限りを尽くし嫁という難攻不落の城を
落とそうとしているのだけれど、うまくいかぬ。

鬼謀1:夜襲

寝ている嫁を無理矢理お越し、有無を言わさず夜這いする。

結果:

嫁の肩に手をかけて起こそうとしたが、僕はそこまで悪に
なれなかった。何より叩き起こした時の嫁が恐ろしすぎる。

失敗!

鬼謀2:マッサージ

嫁の助産師が言うには、嫁の体は肩を中心に非常に凝っており、
僕もマッサージ方法を教わったのだが、これも性交と同じ理由で
あまりできないでいた。しかし僕が仕事から帰ってきたある日、
嫁はまだ寝床でまどろんでいたので、これぞチャンス、

「マッサージして体を密着させてたらムラムラしちゃったよーん」

と可愛く迫ってみようと思い嫁にマッサージを勧めてみることにした。

「嫁、マッサージしてやろうか」

「いや、今日はいい。眠いから」

…失敗!

本気で池袋西口のイメクラ「まいっちんぐ学園」に走ろうかと悩んだ。

翌朝、悶々としたまま着替えをしていたところ、娘・R(2才)が
僕の露わになった上半身を指差して言った。

「おっぱい!」

うん。君はおっぱいが好きだね。僕も好きだよ。

失敗だらけの人生じゃなくて
おっぱいだらけの人生だったらどんなによかったか。

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アンパンマン…わたしのライバル…!!

2才になる愛娘・Rは我が人生において最大の恋人である。

しかしそんな恋心を邪魔する強力なライバルがいる。小麦と
酵母の憎い奴。その名もそれいけアンパンマン。新聞のチラシ
にでも奴の顔が載ってようものなら

「あーんまん!あーんまん!」

舌足らずな口で精一杯力の限り叫ぶ。先日などはスーパーで
買い物をしていたら、やはりRが「あーんまん」を連呼して
いたのでふと見ると、なんといつの間にか奴の顔が描かれた飴を
持ち、ガリガリ齧っているではないか。止む無く買い取らざるを
得なかったが、あわや2才児にして前科者となるところであった。

何故アニメ如きが娘をそんなに狂わせるのか。既にRは二次元オタ
になっているとか…。この腐女子め腐女子め!父はその様に育てた
覚えは…なきにしもあらず。ゲーマーでネット廃人の父の血を引く
が故なのだろうか。血は水より濃し。将来ひとりゲーセンにおいて
ポップンミュージックをやっている、外見が谷亮子のような暗い同人
女になってしまうことだけは何としても避けたい。

このアンパンマン幼児まっしぐら現象は、Rに限ったことではない。
奴のキャラクターグッズが巷に溢れていることが何よりの証明である。
子供用食器を買おうと思ったらアンパンマンの顔があり、菓子を求め
てもアンパンマン。三輪車探してもアンパンマン。とぼけた顔して
バンバンバン。幼児とその親の行く先を全て先回りして奴は微笑む。

何が「愛と勇気だけが友達さ」だ。お金とも仲が良いではないか。何故
そこまで幼児に人気があるのか、子供を持ってみて最大の謎がこれで
あったが、その謎はあっさり解けた。嫁の担当の助産師が答えてくれた。

「アンパンマンっておっぱいに似てるから人気があるのよ」

さすがあまたのお股を眺めてきた助産師。おっぱいが子供のみならず、
全人類に愛され慈しまれ吸われ舐められているのは疑う余地もない。

なれば答えは簡単。娘を二次元オタになるのを阻止するためには、
アンパンマンより魅力的な非二次元キャラを作り出すことだ。この
ファティマ第三の預言並みのトップシークレットを手に入れた僕には
容易い事である。即ちアンパンマンより乳房に似せたものにすればよい。
となればアレしかあるまい。

「ほれ、これを見よ」

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僕が満を持して作り上げたキャラであったが…。Rはとっとと逃げ出して
しまった。

おいこら。ちょっと待て。おい、キタロー!

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ぎゃんぎゃん台風。

娘・Rが朝起きるなり

「あんまん…」

と僕のパソコン机に擦り寄ってきた。Rのいう「あんまん」とは
肉まんあんまんのことではなくアンパンマンのことである。パンが
言えないらしい。

「あんまん、あんまん」

どうやらアンパンマンのヴィデオを見せろということらしい。
Rはアンパンマンが大好きになってしまった。一説によるとこの
父より好きであるらしい。なんということだ。

いちど、朝どうしようもなくRがグズっていたため、アンパンマン
ヴィデオを見せたことがあるのだが…。

「嫁、どうしよう」

テレビやヴィデオを見せるのは夕方以降と決めているので嫁に
お伺いを立てたところ

「癖になっちゃうよ」

とやはりあまり見せたくない様子。しかし嫁と話しているうちに

「あんまーん!あんまーん!」

Rが怒涛のおねだりを始め、泣き叫んだ。

「しょ、しょうがないなあ…」

Rをパソコン机前の椅子に座らせアンパンマンヴィデオ上映開始。
僕は現在上陸中の台風情報を見たかったので、テレビがある隣の
部屋に行ったのだが

「あんまーん!あんまーん!」

Rがまたもや泣き出した。ちゃんとお望みどおりアンパンマンが
画面に映っているというのに。

「パパと一緒に見たいのよ」

冷静に新聞を読んでいる嫁が言った。あたしゃどーすりゃいいんだ。
結局ヴィデオが終わるまでパソコンの前に縛られた僕。終わったら
終わったでRはスタコラと僕から離れ、待ち受けていた嫁がトイレに
連れて行ってトイレトレーニングに入った。

なんて身替りの早い娘。

その後Rは下半身丸裸のまま「あんまん!」と点呼しながら家の中を
駆け回っていた。

Rよ、今の君はパイパンマンだ…。

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女心とアキバ系。

娘・R(2才)の心が分からぬ日々。

朝起きて、Rにじゃれつこうとすると

「めーっ!めーっ!よー!」

手をぶんぶん振り回し、寄るな触るなと僕を拒絶する。
かと思うと2分後に

「だっこー。だっこー」

とろけるような笑顔で僕にデレデレ甘えて法要を求める。
もとい、抱擁を求める、だ。僕は坊主か。

このRの極端な態度の切り替わりは何を意味するのだろう?
ここで僕はハタと思いついた。Rはもしかしたら「ツンデレ」
なのではないかと…。

「ツンデレ」とは普段はツンツン冷たいが、2人きりになると
急に態度を和らげデレデレといちゃつく、という女の子を指す。

(民明書房刊「萌えよドラゴン」より」)

例を挙げると

「気安くアタイに話しかけるんじゃないよ!」

というスケバン少女が(いつの時代だ)、実は2人きりになると

「アタイ、突っ張ってるけど、本当は寂しがりやなんだ…
 こんなアタイ、おかしいかナ?」

という感じである。多分。その落差がたまらん人にはたまらんち
会長であるらしい。そのような萌え心を巧みに突く、ツンデレ系
美少女ばかりを登場させるギャルゲー(エロゲー)もあると聞く。

そんなオタク方面から発している言葉なので、知らない人の方が
正常である。

僕もRに冷たくあしらわれる時はとても悲しみ、そして甘えられる
時には

「なんだかんだ言っても僕のことが好きなんだねえ」

恋しさが何倍にもなり、ますますR愛しやと身悶える。これぞツンデレ
効果といえるものなのだろうか。しかし僕とRは親子の関係であり、
絶対結ばれ得ぬ僕の恋心。

Rは永遠のツンデレラ。そして決して捕えることの出来ないツンデレラを
永遠にガラスの靴を持って追い続ける王子様が僕なのさ。

ところでRは当然僕だけではなく嫁にも甘えるのだが、嫁は結構シカト
して平然と新聞を読んでいたりする。冷酷にも思えるが、僕と違って
一日中Rと顔を突き合わせ、食事の世話から下の世話まで付っきりで
あるから、適当に流すことを心得ているのだろう。わりとクールな嫁。

娘はツンデレ。嫁はツンドラ?

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じゃぶじゃぶ。

先週娘・R(2才)をプールに連れて行ったが、Rが
水を怖がってしまいろくに水遊びできなかった。

「私と一緒に行く時は大丈夫なんだけどなあー」

半分嫌味に聞こえる嫁のチクリしたひとことを受け、
リベンジの意味も込めて再び中野区江原公園内にある
幼児向けプールに行った。

Rを水着に着替えさせ、シャワーを浴びさせる。

「うわあああん」

Rは顔に水がかかるのを嫌う。こういうところは嫁に
似ている。その証拠に嫁は1度も顔射をさせてくれた
ことがない。

さてそろそろいいだろうとシャワーのつまみを回して
水を止めようとしたら逆に回してしまい

「ぎゃあああ!うわあああん!」

僕もずぶ濡れなってしまい、Rと一緒に叫ぶ絶叫親子。

「ごめんごめん、今止めるからね」

と慌ててつまみを逆回しにしようとしたところ、つまみ
がポロッと外れてしまったではないか。

「ヒイイイイ!」

そこに髭面の監視員のやってきて

「すみません、そこ、とれちゃうんですテヘヘ」

「テヘヘじゃなくて直しといて下さいよオオ!」

親子水入らずのひとときなのに、とんだ水入りとなって
しまった。しかし最初にこのような不吉な出来事があった
ものの、今回はRも少しは慣れたようで、プールの中でイヤ
イヤすることもなくニコニコと水遊びを力の限り楽しんでいた。

「だっこ…」

2時間ほどしてとうとう力尽きたようで、僕に抱っこをせがむ。
じゃあそろそろ帰ろうということで、引き上げた。

自転車に乗せて、ものの5分もしないうちにRの首がガックン
ガックン揺れていた。とっとと寝てしまっていた。

「食う・寝る・遊ぶ」を地で行く娘。いいなあ。

僕もRにプールで散々引き回されたので腹が減った。何か食べた
くなった。おおそうじゃ。ケンタッキーフライドチキンが良い。

カー・ネル・サンダース。なんつって。

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セクハラ探題。

チョベリグに可愛いお洒落お嬢さん・羽奈ちゃんから、
以下のようなお洒落なTシャツがあるという情報を得た。

photophoto
性苦破裸(セクハラ)・猥褻婦隷(ワイセツプレイ)

素晴らしい。夜露死苦とか仏恥義理など比ではない位
イカす当て字である。2枚をセットで買い、嫁と1枚
ずつ着ればお盛んな夫婦に見られること請け合い。

僕は早速そのブランドの店に向かった。場所は原宿。
ファッショナボーな若者が一際多い最先端の街。
三十路会社員の僕には似合わぬ。

しかしまだ若者のセンスは持ち合わせているぜ。竹下
通りだって今風にアンダーバンブーストリートって
呼んじゃうぜ。

という訳でアンダーバンブーをハーイチャーンバブー、
ピロリロリンと効果音付きで足早に通り抜けてその店に
到着。黒が中心のパンク系ファッションの店のようだ。
BGMもギターとドラムが無駄にやかましい曲である。

「おや、この曲はどこかで…」

サザエさんの歌をパンク調にカヴァーした曲であった。

♪売春しようと街までー でーかーけたーらー
♪生理がー来ちゃってー ケチャマンサザーエさん
♪みんなが笑ってるー!マスオが怒ってるー!
♪るーるるるるっるー!きょーは排卵日ー!

…なんだこの店。

気を取り直して陳列棚を物色する。「性苦破裸」Tシャツ
及び「猥褻婦隷」Tシャツを陳列。つまり猥褻物陳列罪だな、
と原宿の若者なら口が裂けても言わないだろう親父ギャグを
独り言として呟きながら探したが、一向に見つからない。

「どうぞお手にとってご覧ください」

ちょうど店の女の子が寄ってきたので捕まえてみた。

「あのー。性苦破裸Tシャツあるかな?」

「すみません売り切れなんです」

なんと。これは想定の範囲外であった。

「じゃあ…もう1つ、ほら、似たようなのがあったよね?
 何だっけなあ…」

猥褻婦隷はある?とは聞かずに、僕はわざととぼけた。
何故ならばこのちょっと小悪魔的な可愛い女の子店員の口
から「ワイセツプレイ」という言葉を聞きたかったのだ!

恥ずかしがらずに言うてみいほれほれ…と耳と鼻の穴を大に
して待ち受けていたら

「あー!ワイセツプレイですね!」

何の躊躇いもなく言ってのけた。

…なんだこの店。

僕は少しがっかりイリュージョン。更にがっかりなことには

「すみません。それも売り切れなんです」

入荷予定もないと言われ、トボトボと店を後にした。せっかく
原宿に来たのに…。帰りは表参道をぶらついて帰った。表参道
だって今風に表参ドゥーって呼んじゃうぜ(もういい)

悔しいので僕も性苦破裸・猥褻婦隷に匹敵する「エロ系当て字」
を考えてみた。僕はコスプレをしながらナニガシを致すプレイ、
略して「コスプレイ」が好きであるからして…

股吸腐霊(こすぷれい)

…怖い!

エロじゃなくグロになってしまった。

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いまどきのプリクラにクラクラ。

娘・R(2才)が外に出たがっているようだったので
チャリに乗せて公園に連れて行ったのだが、

「だっこー。だっこー」

何が気に入らなかったのかものの5分で飽きてしまい、
再びチャリに乗りたがった。

もう家に帰るのも芸がないしどうするべか、と迷った後、
おおそうじゃ、Rの2才の記念にプリクラを撮りたいと
思っていたのだ、とゲーセンに一直線。

僕はゲーセン好きなのでここは勝手知ったるところなのだが
プリクラコーナーだけは別。異臭立ち込めるオタクが蠢く
ゲーセンにおいてここだけはギャルがキャアキャアしている
オタク除けの結界なのである。

さすがにこの年でプリクラを撮るのは恥ずかしい。
おっかなびっくりギャル達を掻き分ける。僕の隣に女子高生
ぐらいの女の子2人組みがいる。この子達が17才だとして、
2人で34才。

一方僕とRでは…合計35才。なんだ。大して変わらないじゃないか。
Rのお陰で平均年齢が大幅に下げられ、プリクラを撮っても何も
問題ないな!

ということでパチリパチリと撮ってきた。Rは怖がって僕に抱き
ついたまま決して離れようとしなかったが、10年もすればやりたい
やりたいとおねだりするようになるんだろうなあ。

そうして出来た僕とRのプリクラは、僕の映りはどうでもいいとして
Rはとても可愛いものに仕上がった。

家に帰ると嫁がご飯を作って待っていた。

「お帰り。どこ行って来たの?」

「いやー。実はプリクラ撮って来て」

嫁に僕とRのラブラブプリクラを見せた途端に

「ずるい!あなた達だけ!私だって撮りたかったのよーッ!」

嫉妬に狂った嫁がものすごい勢いで叫んでいた。

「いえーい。僕とRのプリクラー。ラブラブー!」

「ひどいー!ムキー!」

…ごめんね。

晩御飯のハンバーグが異様にすっぱかったのは
そのせいかもしれない。

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ハードゲイのためなら女房も泣かす。

土曜日は娘・R(2才)のリトミック(お遊戯)教室の日なので
嫁が連れて行った。リトミックとは大まかにいうとお遊戯である。

「キャベツがきゃっきゃっきゃ。
 白菜くさいくさいくさい。
 人参にんにんにん」

というような一見とてもシュールな歌に合わせ「きゃっきゃっきゃ」
のところでは手を広げてヒラヒラさせ、「くさいくさいくさい」の
ところでは鼻をつまみ、「にんにんにん」のところでは忍者のように
智拳印を結ぶ、といった歌+ポージングのお遊戯を教わっている。

しかし帰ってきた嫁が溜息交じりで言うには

「R、なかなか踊ってくれないのよー」

なかなかお遊戯してくれないらしい。僕も子供の頃は野に咲く花も
恥らうような紅顔のシャイBOYであったから、その性格を引き継いで
いるのだろう。今は睾丸の美中年なのでランバダだって踊っちゃうが。

その夜。皆でテレビを見ていたらハードゲイが登場した。

余談ではあるが、このハードゲイを見るたびに僕はRight Said Fred
(ライトセッドフレッド)というイギリスのグループを思い出す。

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Right Said Fred(「I'm Too Sexy」のビデオクリップより)

12〜3年前にゲイでマッチョでスキンヘッドのボディビルダーという
とても強烈なキャラクターを活かして、「I'm Too Sexy」なる曲で
スケスケメッシュのシャツや、無意味に上半身裸の姿で腰をクネクネ
させて踊りながら

「オレはセクシーすぎる、俺はセクシーすぎるぜー」

と下から股間を舐め回すような低音ボイスで大人気を博し、瞬く間に
全英チャート1位になった後、瞬く間に一発屋として消えていった。
ハードゲイも同じ道を歩むのだろうと思うと目頭が熱くなるである。

話を戻す。恐らくRがハードゲイを見るのはこれが初めて。

photo

ハードゲイでーす。フォー!

例のポーズが画面に映ったや否や

photo

「ふぉー」

R、初見でハードゲイポージングをマスター(写真は何故かスリッパ
に手を突っ込みながらのもの)

「何故!こんなのはすぐできるのに何故お遊戯はできないのよ!」

嫁が悲しみの声を上げた。よいではないか。どんなお遊戯・踊り・
ポージングに拘わらず全てを吸収していく時期だと思う。

フォー!だろうが何だろうが色々な事を覚えて欲しい。それがきっかけ
となって何かの才能が開くこともある。昔の人も言いました。

ハードゲイは身を助く。
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出会い系エロチャットの今と昔。

spamメールがわんさか届く僕のネット環境。

現在は「Spam Mail Killer」というフリーソフトが、spamを
メーラーが受信する前に片っ端から削除してくれている。

プロバイダでも同様のサービスをしてくれるのだが、なんと、
有料なのである。spam業者と組んでるのではと疑いたくなる。
たまに削除記録を見ると、やはり圧倒的に多いのはアダルト系・
出会い系サイトの宣伝メールであることが分かる。

そんな迷惑サイトへは行かないが、ネット初心者だった5年ほど前、
ツーショットチャットのサイトを覗いてみたことがある。

「ネットではテレホンSEXならぬチャットSEXが盛り上がっている」

という情報をどこからか耳に挟み、文字だけで如何にまぐわうの
だろうと不思議に思ったからだ。WEBカメラなど聞いた事もない
頃である。

サイト上に設けられた「個室」に「使用中」だの「女性待ち」と
いった表示があり、参加するだけではなく第三者がチャット内容を
覗ける「覗く」ボタンもあった。僕は迷わずボタンを押し、噂に聞く
チャットまぐわいをライブで眺めることが出来たのである。

初めて目にしたそれは、想像の遥か上をいく恐るべき物であった!

男「ブラを素早く、ねっとりと乳首を舌で転がす。ぴちゃぴちゃ」

女「ああ〜ん」

男「手をスカートに伸ばし、○○をまさぐる。くりくり」

女「いやあああ」

眺めて30秒で大爆笑。必死に擬音付きで実況する男。そして女。
本当に感じているのか?男は一生懸命実況しているのに喘ぎ声だけ
では手抜きではないか?ツッコミを入れたいことが山ほどあった。
エロサイトだけにツッコミ所満載。って馬鹿。しかし二人は佳境に
入って行き、やがて

「ぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょ…」

延々と続く淫らな擬音で画面が埋まってしまった。このままでは
笑い死にあるのみ、と危険を感じた僕は早々に退出したのであった。

このような文字だけの疑似まぐわいは未だ残っているのだろうか。
今ならWEBカメラを付けて動画配信も余裕で出来るから、当時より
とてつもなく猥褻な行為が可能だろう。

こういう事を書いたからといって僕もやりたいという事ではない。
ネットをしている夜は、隣の部屋には嫁が寝ているので音声を出す
ことは不可能。WEBカメラも持っていない。取り付けたところで、
その辺の勘は無駄に鋭い嫁が

「女の子とライブチャットですか〜?やりますな〜」

僕の意図をすぐ悟ってしまうだろう。

ただ僕の娘・R(2才)と同じ名前の差出人がエロ系spamをよこして
来る事が何よりも腹立たしいのである。

---------------------------------------------------------------------

「差出人:R

 優しい素敵な男性と恋愛がしたいの…
 幸福な結婚の夢を見たいな♪」

http://(エロサイトURL)

---------------------------------------------------------------------

R!恋愛なんて20年早いわ!じゃなかった、うちの娘の名を汚すなあ!

というわけで僕はあらゆる手を尽くしてspamが我がパソコンに入って
来ないよう全力を尽くしているのである。

わーれはゆくー。さらばーspamよー。
.

おミズの鼻道。

夏の青い海。夏の白い雲。

夏と言えば稲川淳二である。もとい、海である。
海は遠くてなかなか行けないが、近場のプールに
もう3度も行っている僕は、夏☆しちゃってるBOY。

本当は娘・R(2才)を連れて行くためなのだけれども。
この前としまえんに行った時は水を怖がってしまい
全然ダメだった。

今回は近所の公園の敷地内にある、幼児向けの
プールに行った。ここは深いところでも15センチぐらい
しかなく、しかも区がやっているのでタダである。

その名も「しゃぶしゃぶ池」

ノーパンのお姉さんがプールサイドで舞い踊っていそうな
ステキな名前である。

風呂より浅いプールである。これなら怖がらないだろうと
期待したのだが、水に浸かったRはとても緊張していた。
少しでも水しぶきが顔にでもかかったらすぐ泣き出し
そうなしょぼくれ顔。風呂より浅いのに…。

あまり無理をさせないほうがよい、と遊泳を一旦止め、
プールのはじっこでジョウロやバケツで水遊びをして
いたところ、遅れて嫁が到着した。Rが嫁にじゃれつき
始めたので僕は一旦プールの外に出、煙草を吸う。

「わーん!わーん!」

人一倍でかいRの泣き声が聞こえた。フェンス越しに
覗くと嫁に抱かれたRが泣き狂っている。どうやら遂に
怖がりの限界を越えてしまった様子である。

「いえーい、お父ちゃんはここだよーん」

とRに手を振って見せたのだがそれが逆効果。更に
鼻水を垂らしまくり泣き声をでかくさせてしまった。

「外から声掛けたら余計にプールから出たがるに
 決まってるじゃないの!」

嫁がぶち切れたのでいそいそとプールサイドに戻る。

「まったく何やってんのよもー」

泣き叫ぶ娘。咆哮する嫁。うだつのあがらない夫。
こんな家族他にはなかった。皆ほのぼのと水遊び
しているのに。Rは僕に「だっこ」とせがみ、絶対
離れようとしなかったため、とっととRの水着を脱がせ、
早々にプールから撤収したのであった。

夏の青い空。夏の白い雲。
娘の青い尻。嫁の白い眼。
.

お丸いのがお好き。

会社から早く家に帰って来ると、ちょうど風呂から
上がった娘・R(2才)が全裸のまま抱きついてきた。

ああ、僕が帰って来て嬉しいんだろうなあ。いつも
遅い帰りでごめんよう、とまるでつきたてのモチの
ような素肌のRを抱きしめ、体をタオルで拭いてやる。

やがてこれも風呂から出てきた嫁がパジャマを着せると、
Rは居間の椅子に置いてあるピカチュウのぬいぐるみを
抱き上げた。

このピカチュウはRのお気に入りである。まだ我が腕に
Rの肌のぬくもりが冷めぬ間に、Rはピカチュウを抱いて
いる…。少しだけジェラシイを感じた僕は些か大人気
ない質問をしてみた。

「R、ピカチュウとパパ、どっちが好き?」

するとRは

「ぱーぱー」

と答えたではないか。

「嬉しい…。パパを選んでくれたか…」

「あーよかったねー」

横から冷たく棒読みのツッコミを入れてきたのは嫁だ。
嫁は今週機嫌が悪い。僕が日曜日ひとりで15時間ぐらい
寝まくってしまったせいだ。しかしそれに怯むことなく、
次なる質問を投げかけた。

「じゃあアンパンマンとパパ、どっちが好き?」

アンパンマンはRが今一番好きなキャラであり、難敵である。
さあどっちだろうか。少し考えたRの答えは

「あんまん!(アンパンマンのこと)」

非情であった。

「ちょっと待て!パパよりアンパンマンがいいの?考え直せ!」

「あんまん!あんまん!」

「さっきまでパパにべったりだったくせにー!」

たかが小麦粉と酵母の練り物に敗れてしまうとは…奴にあって
僕にない魅力って何だ?アンパンマンは頭をかじれるからか?
父は頭はかじれないけど脛ならいくらでもかじっていいぞ。
ていうか向こう20年ぐらいかじることになるんだろうが!
僕、かじりんだしね。野原りん、まるかじりん、みたいな。
(そういうAVタイトルが昔あった)

「R、人はアンパンマンのみにて生きるにあらずと言ってね…」

そんなことを教えても2才児には馬の耳に聖書。仕方がないので
僕自らが聖書の教え、「汝の隣人を愛せ」に従い行動しようと
とりあえず隣人である嫁に求愛したのだが、機嫌が悪いのに相手
をしてくれるはずもなく、嫁と娘からの愛が恋しい夜となって
しまった。

悲しくなったのでアンパンマンのテーマをひとり歌った。

AVと右手だけーがとーもだちさー。
.

背中が露出した服は、危険と背中合わせ。

娘・Rがこんな服を着ていた。

photo

ぱっと見メイド服のように思えたので僕は大いに喜び、

「Rよ、僕が息を引き取る時はメイド服を着て死に水を
 取って欲しい。冥土の土産に」

思わず遺言状を書きたくなるほど人生に悔いがなくなり、
幸せな気分で満ち足りた。

しかし後ろ姿を見てみたところ、どうもおかしい。背中の
ボタンで服を留めるようになっているのだが、そのボタンが
服の最上部、Rのうなじの下あたりに1箇所しかないのだ。
そこを頂点に服は背中で二等辺三角形にばっくりと割れ、
背中から下が丸見えなのである。

「嫁〜。この服、随分と風通しが良いみたいだけど…」

「夏だからね!」

嫁は僕の疑問をたった一言で論破してしまった。そういう
ものなのだろうか。僕はファッションヘルスには敏いが
ファッションには疎い。「月火水木金正日」とか書かれた
Tシャツこそがおしゃれ最先端であり渋谷系裏原系小椋佳〜
みたいな感覚にて駄目である。

背中を露出し、ちょうちんブルマーのようなアンダースコート
のようなものを、チラチラと見せパンの如くちらつかせる様は
池袋北口あたりに立っている南米系ビッチのよう。それとも
そういう目で見る僕が悪いのか。

露出度の高い女性の服は歓迎であるが、さすがに我が愛娘が
そのような服を好んで着るようになってしまったら

「お前はどこの立ちんぼだこらー!」

と怒鳴りつけてしまいそうでパピーちょっと心配。今回は嫁の
セレクションなので良しとしたけれども。

などと考えていたらRが

「だっこ…」

抱っこをせがんできたので抱き上げたところ見よ、言わぬ事
ではない、Rの背中に蚊が止まったではないか。早速悪い虫が
ついてしまった!

「お前如き双翅目に我が愛しき処女の血はやらん!」

直ちに叩き落した。そして

「父は君を守ったよ。さあ背中に何て書いたか分かるかナ?」

思わずRの背中に指で「スキ」と書いてしまった。可愛かったので、
つい…。このように背中露出度の高い服は、僕を限りなく危ない
親父にしかねない。だからお勧めしない。

僕の背中が煤けてしまう…。
.

デジカメをデバカメする娘。

親馬鹿なのでデジカメにて娘・R(2才)を撮りまくって
いる僕であるが、最近それが困難になってきている。

というのもRにカメラを向けるとすぐさま走って来て、
液晶画面でプレビューを見せろとせがむからである。

「Rがこっちに来ちゃうと写せないでしょうが」

良い子はカメラを向けられたらにっこり笑ってポーズを
とるのですって教わらなかったのか?

すまん、教えてなかった。

Rを振り解いてまたカメラを向けると、Rも再び僕の後ろを
取る。ぐるぐるとお互いを追いかけ回す。まるで海岸を円を
描いて追いかけっこをするカップルになったかのよう。
おのずと妄想も湧いて出てくる。

「パパ、どうしたの、早く私を捕まえて」

「フフフ、君と太陽が眩し過ぎて、よく見えないんだ」

「それはパパが昨日の昼間から朝まで寝まくっていたからよ。
 私より寝てどうすんのよ」

そう。それで嫁の逆鱗に触れて今朝からシカトされまくって
おり、もういっそのことぐるぐる回りまくってバターになって
しまいたいのだが、それはまた別の話。バター嫌いだし。

あまりRをじらすと泣いてしまうので、ひととおり海岸デート
ごっこを堪能した後、デジカメに収録された画像を1枚ずつ
プレビューしてやる。Rはニコニコとこの上ない笑顔を見せて
ご満悦。ほとんどがRを写した画像であり、時々別人物が写って
いるものに指を差して突っ込みを入れる。

「あ、まま」

いや、それは栃木のばあちゃんだ。嫁が聞いたら怒るぞ。

「さ、おしまい」

全ての画像を見せ終わったので、今度こそは写真を撮らせて
くれたまえとプレビューをオフにし、撮影モードにしたのだが

「めー!めーよー!」

猛烈に抗議して僕からデジカメを奪い返すR。

「もう1回見たいのか?同じのだよ?」

Rはふんふんと頷く。仕方がないので初めからプレビューの
やり直しである。

「あ、まま」

だからそれは君の祖母だ!

しかし僕も一緒になってRの膨大な画像を見ていると、色々な表情を
出せるようになったと思う。笑顔。怒った顔。泣き顔。拗ねた顔。
ちょっと媚びた色っぽい顔。ハナクソほじってるマヌケ面まである。
R、恐ろしい子!

この子は千の仮面を持つ少女なのかもしれない…!

ガラスのデジ仮面。なんつって。
.

粘着1名様にプレゼント。

娘・R(2才)の誕生日プレゼントを遅ればせながら買った。

はじめは三輪車にする予定だったのだが、嫁とトイザラスで
いろいろと検討した結果、

「三輪車は乗ってる時期が短いから新品を買うのは勿体無い。
 自転車はまだ背が低すぎてちょうどいいサイズがない」

ということで散々迷った挙句アンパンマンのキーボードにする
こととした。ピカチュウやらおじゃる丸やらトロやら、僕自身が
好きなキャラクターグッズを溺れるぐらい沢山与えて剃毛、もとい
啓蒙しているにもかかわらず、不本意ながらRはアンパンマンが
一番好きである。

そして僕はなんとなくピアノを弾く女の子に憧れを持っており、
Rもその第一歩となればよいと思いキーボードを選んだのである。

晩御飯を食べ終えた後にRに渡してやると

「あんまん!(アンパンマンのこと)」

予想通り飛びついて鍵盤をぴろりんぴろりん叩き始めた。ここまで
はよかった。しかし嫁が

「そういえば、自動演奏の曲も入っているのよね」

と、デモ曲のスタートボタンを押してしまったが最後、

「ちゃん、ちゃん、ちゃららららん〜♪」

アンパンマンマーチが流れてしまい、Rは鍵盤を引く手を止め地蔵の
ように固まり、ひたすらエンドレスで聞くのみの娘となってしまった。

「R、そろそろお風呂はいるよ〜」

やむなくキーボードから離したらさあ大変。

「ギャアアアアア!あんまん!あんまん!」

風呂場の中でずっと絶叫し、取り付くしまもなかった。だいぶ遅れての
誕生日プレゼント、ここまで騒ぐのも止む無しと思わざるを得なかった。

翌朝もRはがばっと起きてから速攻でアンパンマンキーボードに一直線。
既に覚えてしまったデモ曲スタートボタンをポチっとなと押す。

「ちゃん、ちゃん、ちゃららららん〜♪」

嫁が言う。

「昨日寝言でね、『あんまん…あんまん…」って言ってたのよ」

「うわー。かなり思い詰めていたんだね」

既にデモ曲が流れて40分ぐらい経っていたが、Rは未だ飽きもせず
聞き惚れていたのであった。この粘着っぷりは誰に似たんだろう…。

「ま、好きにやらせてやるか」

2年目〜の誕生日ぐらい大目に見るよ〜♪

ヒロシ&キーボード(古いなあ…)

.

極道と女装のクール・ミズ。

今年2度目のとしまえんプールに行った。
ここは何度来てもいい。ギャルのオッパイが。

いつもは嫁の寂れた乳しか見ていないので、若くて
ダイナマイツな乳は夏バテ防止のよき滋養強壮となる。

今回は嫁のママ友達ミゲル君一家と一緒で、ミゲル君は
Rと同い年の2才だけれども、全然怖がらずにバシャバシャ
水を掻き分けて楽しんでいる。一方でRは浮き輪付きでも
おっかなびっくりで、僕が押さえててやらないと泣いて
騒いでしまうという有様で

「ほれー。せっかくお前のカレシーとの水着デートなのに」

と言っても僕から絶対離れず

「じゃあ波の出るプールに行ってみるか」

と連れて行ったら波を一撃顔に食らっただけで

「ぎゃあああああ!」

大号泣となり二度と水に近寄らなくなってしまった。仕方が
ないので気分転換に、と屋内のプリクラやらUFOキャッチャー
やらがあるゲームコーナーに連れて行ったところ、Rはボタンを
バチバチ押しまくってはしゃぎだし、ご機嫌復活の兆しを見せて
いた。

そこで不思議な光景を見た。僕はしゃがんでRの顔を見ていたが、
その横にビキニ姿の子供の胸がぬうっと現れた。ずいぶんデブ…
もとい、豊満な子供だなあと思って顔を見上げたら、角刈りの男の子
であった。

なんというか、横綱貴乃花の子供時代がビキニ着ているような感じ。
確かにビキニに収める胸はあるが、それは別物だろう!いやまて、
もしかしたらダンプ松本のような限りなく男に近い女の子かもしれない…
と考えを改めようとしたのだが、もうひとり

「おにいちゃーん」

これまたRよりもフリフリで花柄の可愛いワンピースの水着の…
丸坊主の男の子がやって来て

「なに」

返事してるし!何なんだろう。この女装兄弟は。

「おーい、お前たち」

そこに父親らしき男も現れた。子供たちよりもっと派手な花柄の
水着…かと思ったら刺青だった。なんなんだこの一家。

謎は深まるばかりだが少し推理してみる。この花札のような背中の
紋々の男は、対立する組だか家に滅ぼされた親分で、その対立組織に
命を狙われており逃亡中で、子供達にもその危機が迫っていた。

男の子だと跡継ぎ候補としてこれも命を狙われる恐れがあるので、
こうして女装して追っ手の目から逃れようとしているのだ…。

なんつって。戦国時代じゃあるまいし。逃亡者が呑気にプールに
来ているはずもないし。そんなわけでそういった感じの人達であった
ので詳細は聞くことはできなかった。

あとで嫁に熱っぽく語ったところ

「え。言ってくれれば速攻で写真撮ったのに!」

とても命知らずなことを言っていた。バレたらプールで泳ぐどころ
じゃなく東京湾の底でもがくはめになるだろう…。
.

ピクチャーのレクチャーをしてくれるティーチャー希望。

娘・R(2才)が

「じーじ、じーじ」

と言う。これは僕に向かって「このジジイ!」という意味で
はなく「字を書きたい」ということを意味する。

もちろん字などはまだ書けないが、紙と鉛筆を渡してやると
ぐるぐると縦横無尽に線を書きまくる。初めは黒の鉛筆で
大人しく書いていたものであったが、最近は色鉛筆でないと
満足しなくなっている。文字通り色気づいてきたらしい。
それからもうひとつ、

「はい、はい」

と僕に鉛筆を渡してくるようになった。

「何か絵を描いて欲しいのよ」

と嫁が言うのだが僕は困ってしまった。

「えー。嫁、お前描いてよ」

「いえ…私もダメで」

僕も嫁も絵心がないのである。「かく」といえば僕は夜中破廉恥な
ヴィデオを見ながらするアレであり、嫁にしたって尻をかくのが
関の山だ。

絵心があればこのサイトも絵日記サイトにしているところである。
しかしエロ心しかないためエロ日記サイトなのだ。「ロ」があると
ないのでは大違い。

しかしRのおねだりを断ると泣かれてしまうので、僕が描ける
数少ないキャラクター、ドラえもんやらヒョータンツギやら
アンパンマンなどを描いてやる。

「あーんまん!あーんまん!」

特にアンパンマンはRのお気に入りであり、まだアンパンマンと
完全に言えないながらも大喜びする。

「はい、はい」

しかしRの「描いてちょ」のおねだりはまだまだ続く。僕はもう
描けるレパートリーがない。仕方なくそばにあったピカチュウの
ぬいぐるみを見ながら描いてみたが、ピカチュウだか荒井注だか
区別付かないほどの不気味な化け物が描き上がってしまった。

「ぴ、かちゅ!」

それでもRは分かったらしいが僕はもう自己嫌悪で紙ごと燃やしたく
なって来ていた。

「はい、はい」

しかしRは容赦ない。えーまだ描かせるのー!もう何でもいいやと
開き直り、丸を描いて赤いペンで真ん中にちょんと点を付けた。

「R、これなーんだ?」

「おっぱい!」

「大正解!」

これぞ「絵に描いた乳」でございます。
.

隣の人の、人となり。

夜、ピンポーンと家の呼び鈴が鳴った。こんな時間に訪問する
客などはヨネスケぐらいしか思い浮かばないので、用心して
ドアを開けてみたら

「こんばんわー。隣ですけどー」

隣室に住むお姉様であった。年の頃は20代半ば頃か。すっぴんに
メガネをかけた無防備ないでたちであったが、化粧など必要ない程
のモデル顔美人。サラリとした長髪とスラリとしたスレンダーボデー。
なおかつきちんと整ったふたつの胸のふくらみは、何でもできる
証拠なのと言わんばかりに自己主張している。

一人暮らしであったら壁に穴を掘ってでも潜入するところであるが、
残念なことに男と暮らしている。またその男がカッコいいのである。
ふたりで並んで歩いているのを見ると、どこぞの芸能人カップルの
ようである。

いちど夜に彼らが駅前商店街で手を繋いで歩いているのを見たこと
があり、きっとこれから飲みに行くんだろうなあ、彼らのことだ、
きっとオサレな店に入るに違いない、と大変興味をそそられ尾行して
みたところ(ストーキングは犯罪です)ただの「和民」だったので
大層がっかりした覚えもある。

話がそれた。その美人さんが言うには

「実家に帰ってましたので、お土産を持ってきました」

とのことだった。以前僕の親戚から新潟名物笹ダンゴが送られて
来た際におすそわけしたので、そのお返しであろう。

「あーすいませんねえ」

ふと後ろを振り返ると、娘・R(2才)が部屋の隅で怯えながら
じいっとこちらを見ている。ナマハゲが来た訳じゃないんだからと

「ほら、R、おいで」

声を掛けると素直にトトトと走って来たので

「はい、お姉ちゃんにありがとーって言いなさい」

と言うとペコペコと頭を下げた。よしよしいい子だ。お姉ちゃんの
ような美人になるんだよ。

「いつもこの子がうるさくてすみませんね」

「いえいえ、全然聞こえませんよ!大丈夫です」

などとやりとりがあって美人さんは帰って行った。その後お土産の
包装を開けてみる。彼女のことである。きっとやんごとなき清楚な
な生まれに違いない。松涛とか白金とか高級住宅街な感じの。それで
お土産も「シロガネーゼまんじゅう」とか(発想が貧困)そういった
類のものかと思ったら、中身は…

「愛媛県新居浜産:ちくわ」

だった。…渋い。ますます惚れた。こんなことだったら僕もこないだ
田舎に帰った時にお土産を買ってくれば良かった。そうすればまたお隣
を訪問できたのに。栃木名物イチゴとかブドウとかナシとか米とか
ガッツ石松とか。

それとも日光金精峠名物、男根の形をした飴(本当にある)で精を
つけてもらうとか。僕らと隣の部屋は、大家曰く「当り部屋」であり、
ウチも以前隣に住んでいた夫婦も子供ができた。

今の美人・イケメンカップルにも頑張って貰い、子を授かって貰いたい
ものである。さすれば僕はイヤーンアハーンな喘ぎ声が聞こえるよう
何とか対策を考えるよう努力する所存である。

ネイバー・ギブアップ。
.

ハースデー・バースデースーツ(誕生日の裸)

娘・Rの2才の誕生日の夜、少し早めに仕事から帰った
ところ、Rは嫁と入浴中であった。思惑通りである。

いそいそと僕も風呂に入り、Rと戯れる。Rのバースデーの
バースデースーツ(裸のこと)をこの目に焼き付けておこう
と思っていたのである。モザイクをかける必要がない娘の体は
なんと可愛いことであることよ。

嫁が先に風呂から上がり、ビデオカメラを持って来てRの入浴姿を
撮影し始めた。おそらく嫁も僕と同じ思惑であろう。

「でもほれ、あまりモロダシ動画にすると将来Rが恥ずかしがる
 から気をつけて」

そう、全て撮ればいいってモノではない。ここは脱ぎそうで
脱がないアイドル写真集のような、ていうかそこまで脱いでん
なら全部脱げよ、というギリギリのオブジョイトイ路線が良い
と判断し、そう撮影するよう嫁に指示した。

とは言いつつも

「お尻ー。モウコハンが可愛いお尻ー」

などと5秒でその路線を変更してしまったが。

その後僕もRも風呂から上がって、僕は夕飯を食べることにした。
我が家の恒例で、Rが生まれた9日は毎月カレーである。するとRが
チョコチョコとやって来て、僕のスプーンを奪った。既にご飯は
食べたはずなのにまだ食べたりないのか…と思ったが

「あーん」

なんと僕に食べさせてくれるではないか。お父ちゃん超感動。

「嫁、ちょ、おま、これもビデオに撮れ!」

慌てて嫁にカメラを回させた。遠い将来、このビデオはRの結婚
披露宴で「ちっちゃい頃の記録でーす」などといって上映される
こともあるかもしれない。そこでこんな「あーん」してくれている
映像が流れた日には、僕は確実に泣く。涙を隠しもせず号泣する。
そして泣いたままクライングフリーマンと化しケーキカット用の
ナイフを奪い、新郎を斬る。

今はお父ちゃんベッタリの蜜月の時期。しかしこれはいつまで続くの
だろうかと溜息をひとつついて首をうなだれると、僕はとある重要な
ミスに気付いて血の気が引いた。

いつも風呂から上がった後はTシャツにトランクスいっちょうに
なるのだが

「大変だ!トランクスの隙間から…ひとつはみ出てしまっている!」

ただちに撮影を止めるよう嫁に知らせたのだが

「…最初からそんなもん撮ってないわよ」

という嫁の的確で冷酷な判断が幸いし、Rのメモリアルビデオに汚点を
残さずに済んだ。…いや、済んではいなかった。

たとえ映っていなくても、声のやりとりはしかと記録されてしまった。
これでは結婚披露宴でお見せすることはできない。できるとしても会場
は限られている。玉を隠しただけに、玉秘め殿。なんつって。

こうしてR2才の誕生日の記録ビデオには

Rの生まれたままの姿と
Rを生ませた玉の姿の思い出が
残されたのであった。

.

娘のバースデー。父のリバースデー。

娘・Rが2才になった。

「Rちゃん、何才?」

と聞いてみると

「あんしゃい!」

いくら教えても「にさい」とは言えず、単にオウム返しを
するのみではあるが、2才である。しかし「2」をあらわす
ピースサインはできる。この時期にこれができることは
嫁に言わせると凄いことなのだという。

Rは変なところが器用だ。足の指でハンカチをつまむことも
できる。僕も足の指で嫁の乳首をつまんで大いに怒られた
ことがあるが、無駄な遺伝を引いていると言えよう。

Rが生まれてもう2年。あっという間だった。言葉は単語だけ
しか発せられないが語彙が増えた。「これしまって」等こちら
から言うことには素直に聞く。素直だが異様に頑固に自己主張
することもある。ドタドタと走り回れる。階段は手摺りがあれば
昇り降りできる。ジャンプはもう少しでできる。握り箸だがご飯
をすくって食べられる。危なっかしいがコップで水を飲める。
人見知りはまだする。友達と一緒に遊ぶことはできない。トイレは
トレーニング中。初潮はまだ来ない。来てたまるか。

Rの成長した証を色々思い浮かべながら

「R、誕生日おめでとう。こんな物ですまんがプレゼントだよ」

前日の飲み会のビンゴ大会で偶々ゲットしたミッキーマウスの
腕時計を付けてあげた。今週先週の土日共それぞれ嫁と僕の
実家に行っていたため、プレゼントを買う暇がなかったのだ。
それでもご満悦そうなRの顔を見て

「じゃあ僕はちょっとトイレに…」

腰を上げた途端にRが泣き出した。

「うわああん!だっこ!だっこ!」

成長はしたが益々甘えん坊になってしまったようである。娘可愛し
トイレには行きたし。ああどうしよう。RやRや、汝を如何せん。
アンビバレンツなドツボ状態に陥った僕。それを見ていた嫁が

「Rちゃんもトイレに行けば?パパと一緒におしっこしーって」

助け舟を出してくれたのだが…すまん。
本当は固形物も排泄したいの。

未だ全ての恥を捨てきれない33才の夏。僕はトイレを我慢して
出勤の時間までひたすらRを抱き続けるのであった。

Rは2才。
僕はうんこく才。
.

恋のゴッタ煮定食。

嫁と娘・R(今日で2才)で栃木の実家から帰る電車の中、
既に夜の7時近くなっていた。

いつもならRの夕飯の時間である。Rにビスケットを食べ
させていたが、それも既になく空になった袋までがぶがぶ
齧っていて非常にひもじい様子であり

「どうする?途中で食べて行っちゃおうか。池袋の大戸屋で」

と乗り換えの池袋で外食してしまおうと嫁に提案した。何故
大戸屋かというと、嫁は妊娠しているしRもまだ小さいので
食べ物には気をつけなければならないが、

「大戸屋は体に良い食材を吟味しているのでお勧めよーん」

と嫁の担当助産師が一押ししていたからである。なので嫁も
ふたつ返事で同意した。

「でも池袋に大戸屋があったなんて知らなかったわ」

「大戸屋発祥の地だよ。それに僕は行った事があるし」

「ふーん。誰と」

「…Rちゃんと」

ここで僕は思い出した。かつて近所のゲーセンで知り合った
僕の人生の中で最高にして至高の美少女Rちゃん。僕は彼女と
この池袋の大戸屋で飯を食ったことがあるのだ。もっとイカス
超ベリーグッドな店はいくらでもあったろうに、何故ここに
入ったかはもう忘却の彼方…Rちゃんとももう1年以上会ってない。

「へえー。あの子と。こんなとこに来てたんだ。ふーん」

嫁が白けきった目で見るのをよそにとっとと店に入る。

Rがモグモグと食べている姿を見て、向かい側に座っていた
おばさんが

「かわいいわねえ。一生懸命食べてるからコレあげるわ」

とクマのプーさんのぬいぐるみをくれた。おばさんの手には
UFOキャッチャーで獲ったものと思われる沢山のぬいぐるみが
入った大きなゲーセンの袋があった。そういえば近所のゲーセン
には、病的な程UFOキャッチャーをやりまくり、いつも景品を
入れた大きな袋をぶら下げているおばさんがいた。さっきの
おばさんに似ている…。そして近所のゲーセンといえばRちゃん。

ああ、また思い出してしまった。恋焦がれるあまりそのまま
名前を付けてしまった娘・Rとまたこうして同じ店に入るとは
思いもよらなかった。店を出て、Rと「おじゃる丸」の歌を
歌いながら道を歩く。あの時も僕もRちゃんと歌を歌っていた。
僕の恋心を密かに乗せながら…確かあのときの歌は…

「ふっしぎなふっしぎな池袋ー。東が西武で西東武ー。たーかく
 そびえるサンシャインー。びーっくびっくびっくビックカメラ」

どこが恋の歌やねん。

「うう…Rちゃん…」

嫁は「また始まったよ」とどうでもよさげであったが、そんなわけで
大戸屋の定食は少しだけ甘酸っぱい味がしたのであった。

■お腹の子の性別を聞いてやろうと決意する。

1ヵ月ぶりの産婦人科の定期健診を前に、嫁と話していた。

「トロ(お腹の子の仮名)の性別、分からないかなあ」

「産婦人科の先生、無口なんだよね。健康、順調、ぐらいしか
 言わないしさ」

「あなた、聞いてみてよ」

「うーん」

という訳で今回は絶対性別を聞き出してやる、という並々ならぬ
決意を秘め産婦人科に向かった。その足で嫁の実家に向かうので
ちょっとした長旅でもある。

1時間待たされて診察室に入ると、産婦人科医はTシャツ姿で、看護婦の
おばさんもアロハみたいな派手なシャツを着ており、一瞬ポリネシア
辺りのウィッチドクターの家に迷い込んだかと思った。なんかゆるゆる
な雰囲気。

「はい…」

相変わらず無口な先生が嫁に診察台に寝るよう促し、僕は娘・R(もうすぐ
2才)と後ろから見守る。しかし映し出されたお腹の子のエコー画面より
先生のTシャツのプリントが気になってしょうがなかった。

photo

「日本ルイ・アームストロング協会」って…面白過ぎる。
ぷぷぷ…笑いをこらえるのに必死でいると、嫁が

「あのー。性別って分かるんですか」

と聞いたので我に返った。しまった。聞くの忘れてた。しかし先生は

「…分かる時もあれば分からない事もある」

そういうことを聞いてんじゃねえ!お前は即答をはぐらかす政治家か!
しかしその一言で僕らは腰砕けになってしまった。

結局診断はものの5分で終わり、無口な先生はどこまでも無口で、嫁への
回答と「うー」とか「ふーむ」とかの唸り声も含め、5語ぐらいしか
発してなかったと思う。

産婦人科医との問答勝負に敗れた僕らは、トボトボと病院を出た。

「何も言われなかったけど、異常なしってことでいいんだよね?」

「じゃないの?でも今度の診察は来月だし、もう出産直前まで性別
 分からないよ…」

そうこぼし合って今度は嫁の実家に向かう。

「手ぶらで行くのもなんだから、スイカでも買っていこう」

スーパーに入ってスイカを一個所望。

「うををを!重い!重過ぎる!スイカってこんなに重かったっけ?」

リュックに入れてから思いっきり後悔した。スイカの重さが腰に響き、
またしても腰砕けに。

スイカのせいで腰をやられる。

これをスイカん板ヘルニアといいます。
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