お丸いのがお好き。

会社から早く家に帰って来ると、ちょうど風呂から
上がった娘・R(2才)が全裸のまま抱きついてきた。

ああ、僕が帰って来て嬉しいんだろうなあ。いつも
遅い帰りでごめんよう、とまるでつきたてのモチの
ような素肌のRを抱きしめ、体をタオルで拭いてやる。

やがてこれも風呂から出てきた嫁がパジャマを着せると、
Rは居間の椅子に置いてあるピカチュウのぬいぐるみを
抱き上げた。

このピカチュウはRのお気に入りである。まだ我が腕に
Rの肌のぬくもりが冷めぬ間に、Rはピカチュウを抱いて
いる…。少しだけジェラシイを感じた僕は些か大人気
ない質問をしてみた。

「R、ピカチュウとパパ、どっちが好き?」

するとRは

「ぱーぱー」

と答えたではないか。

「嬉しい…。パパを選んでくれたか…」

「あーよかったねー」

横から冷たく棒読みのツッコミを入れてきたのは嫁だ。
嫁は今週機嫌が悪い。僕が日曜日ひとりで15時間ぐらい
寝まくってしまったせいだ。しかしそれに怯むことなく、
次なる質問を投げかけた。

「じゃあアンパンマンとパパ、どっちが好き?」

アンパンマンはRが今一番好きなキャラであり、難敵である。
さあどっちだろうか。少し考えたRの答えは

「あんまん!(アンパンマンのこと)」

非情であった。

「ちょっと待て!パパよりアンパンマンがいいの?考え直せ!」

「あんまん!あんまん!」

「さっきまでパパにべったりだったくせにー!」

たかが小麦粉と酵母の練り物に敗れてしまうとは…奴にあって
僕にない魅力って何だ?アンパンマンは頭をかじれるからか?
父は頭はかじれないけど脛ならいくらでもかじっていいぞ。
ていうか向こう20年ぐらいかじることになるんだろうが!
僕、かじりんだしね。野原りん、まるかじりん、みたいな。
(そういうAVタイトルが昔あった)

「R、人はアンパンマンのみにて生きるにあらずと言ってね…」

そんなことを教えても2才児には馬の耳に聖書。仕方がないので
僕自らが聖書の教え、「汝の隣人を愛せ」に従い行動しようと
とりあえず隣人である嫁に求愛したのだが、機嫌が悪いのに相手
をしてくれるはずもなく、嫁と娘からの愛が恋しい夜となって
しまった。

悲しくなったのでアンパンマンのテーマをひとり歌った。

AVと右手だけーがとーもだちさー。
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