2004/2/14 土 | 日記
一語100%
一風変わった慶子の誤解を解くのは大変である。
去年のバレンタインの日、彼女に校舎裏に呼び出されたら告白された。その時の彼女はでかいハート型のチョコを持っており、よく見るとホワイトチョコで大きく「義理」と書かれていた。なのにそれを手渡しながら僕に「付き合って下さい」と言うのだ。頭が混乱した。
「ちょっと待ってよ。これ、義理チョコなんでしょ?」
「だがそれがいい」
訳が分からないまま慶子の不敵な笑みに惑わされ、それから付き合いが続いている。はじめのインパクトほどの奇行がないので幸いしているが、最近は制服に羽織るコートの背中に
「大ふへん者」
とでかでかと刺繍をしている。彼女なりのお洒落プラス痴漢対策なんだそうだ。女性専用車両に乗ればいいのに。
さて今年のバレンタインデー。僕らが付き合って1周年の記念日である。慶子は特に何も言っていなかったが、何かサプライズイベントでも考えているのだろう。一風変わっていても、なんだかんだ言ってわりと女の子らしいところが多分にある慶子が僕は好きだ。と、微かに期待しつつ放課後になった。
ふふふ…と机に肘杖をついてニヤけていたら、視界に入ってくる制服のスカートが。慶子だな、と思い顔を上げたら…違った。同じクラスの奥村だった。
「あの…いつもお世話になってるから、これ、もらってね!」
奥村は僕の机の上に可愛らしい包装紙の包みをひとつ残し、バタバタと教室を出て行ってしまった。
「ほー。大物が釣れましたなあ」
しまった。慶子に見られてしまった。
「いや、急に渡されて…。義理だよきっと。去年文化祭で手伝ってやったような記憶がなきにしもあらずだから。義理チョコだよ!」
「去年義理チョコを貰って女の子と付き合いだしたのは誰でしたっけー」
「それはお前が訳わかんないチョコで告って来たからだろ!」
「ふん。じゃあね!」
慶子は「大ふへん者」のコートを素早く羽織り、帰ってしまった。これから一周年記念のチョコでも貰って、楽しく過ごせるはず、などと思っていたのに、大誤算だ。奥村も奥村だ。僕達が付き合っているのを知っている癖に…。
ひとりトボトボと家路に着き、部屋に籠もりこれからどうしたものかと考えていたら、いつの間にか時計は夜の10時。
ピンポンピンポンピンポーン!!!
家の呼び鈴がけたたましく鳴った。
「夜分おそれいりまぁっす!」
慶子の声だった。僕が出るから、と両親を制して玄関のドアを開けると、コートを羽織った慶子が仁王立ちしていた。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「あのチョコ、奥村さんに返すんでしょうね」
「いや失礼だろ。難しいよそれは」
「じゃあ…私から贈るものはこれだから」
慶子が僕に手渡したものは、去年と同じハート型のチョコだった。いや、「義理」と書かれていないところが違っていた。
「はは…今年は書いてないんだね。ありがとう」
「後で裏面を見ておいて!じゃあね!」
慶子はこれ見よがしにコートをばばっと翻し、そのまま自転車にまたがった。コートの背中に書かれている「大ふへん者」が「大浮気者」に変わっていた。
「ちょっと慶子!だから違うって!」
慶子は僕の声を無視して、物凄いスピードで去って行った。明日どういう風に話したらいいのか。慶子にも奥村にも。頭が痛くなりつつ、とりあえず先程の慶子の言葉を思い出し、チョコを裏返してみた。
裏面にしっかりと「義理」と書いてあった。
裏に、義理。
ウラギリ…。
一風変わった慶子の誤解を解くのは大変である。
去年のバレンタインの日、彼女に校舎裏に呼び出されたら告白された。その時の彼女はでかいハート型のチョコを持っており、よく見るとホワイトチョコで大きく「義理」と書かれていた。なのにそれを手渡しながら僕に「付き合って下さい」と言うのだ。頭が混乱した。
「ちょっと待ってよ。これ、義理チョコなんでしょ?」
「だがそれがいい」
訳が分からないまま慶子の不敵な笑みに惑わされ、それから付き合いが続いている。はじめのインパクトほどの奇行がないので幸いしているが、最近は制服に羽織るコートの背中に
「大ふへん者」
とでかでかと刺繍をしている。彼女なりのお洒落プラス痴漢対策なんだそうだ。女性専用車両に乗ればいいのに。
さて今年のバレンタインデー。僕らが付き合って1周年の記念日である。慶子は特に何も言っていなかったが、何かサプライズイベントでも考えているのだろう。一風変わっていても、なんだかんだ言ってわりと女の子らしいところが多分にある慶子が僕は好きだ。と、微かに期待しつつ放課後になった。
ふふふ…と机に肘杖をついてニヤけていたら、視界に入ってくる制服のスカートが。慶子だな、と思い顔を上げたら…違った。同じクラスの奥村だった。
「あの…いつもお世話になってるから、これ、もらってね!」
奥村は僕の机の上に可愛らしい包装紙の包みをひとつ残し、バタバタと教室を出て行ってしまった。
「ほー。大物が釣れましたなあ」
しまった。慶子に見られてしまった。
「いや、急に渡されて…。義理だよきっと。去年文化祭で手伝ってやったような記憶がなきにしもあらずだから。義理チョコだよ!」
「去年義理チョコを貰って女の子と付き合いだしたのは誰でしたっけー」
「それはお前が訳わかんないチョコで告って来たからだろ!」
「ふん。じゃあね!」
慶子は「大ふへん者」のコートを素早く羽織り、帰ってしまった。これから一周年記念のチョコでも貰って、楽しく過ごせるはず、などと思っていたのに、大誤算だ。奥村も奥村だ。僕達が付き合っているのを知っている癖に…。
ひとりトボトボと家路に着き、部屋に籠もりこれからどうしたものかと考えていたら、いつの間にか時計は夜の10時。
ピンポンピンポンピンポーン!!!
家の呼び鈴がけたたましく鳴った。
「夜分おそれいりまぁっす!」
慶子の声だった。僕が出るから、と両親を制して玄関のドアを開けると、コートを羽織った慶子が仁王立ちしていた。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「あのチョコ、奥村さんに返すんでしょうね」
「いや失礼だろ。難しいよそれは」
「じゃあ…私から贈るものはこれだから」
慶子が僕に手渡したものは、去年と同じハート型のチョコだった。いや、「義理」と書かれていないところが違っていた。
「はは…今年は書いてないんだね。ありがとう」
「後で裏面を見ておいて!じゃあね!」
慶子はこれ見よがしにコートをばばっと翻し、そのまま自転車にまたがった。コートの背中に書かれている「大ふへん者」が「大浮気者」に変わっていた。
「ちょっと慶子!だから違うって!」
慶子は僕の声を無視して、物凄いスピードで去って行った。明日どういう風に話したらいいのか。慶子にも奥村にも。頭が痛くなりつつ、とりあえず先程の慶子の言葉を思い出し、チョコを裏返してみた。
裏面にしっかりと「義理」と書いてあった。
裏に、義理。
ウラギリ…。
一風変わった慶子の誤解を解くのは大変である。
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