接吻の鬱憤を発憤。

娘・R(1才)に接吻したい…。

何故ならば、明日嫁とRは実家に帰ってしまう。週末迄
帰って来ないのでその前にせめてお別れのちゅーをば…
と思ったわけである。

しかしRは僕に口づけをしてくれない。いつもイヤイヤと
首を振り逃げられてしまうのだ。父はいつも愛を注いでいる
のに…と、Rが寝ている時にそっと唇を当てる僕は罪無き
リップ泥棒。その姿を見ていた嫁は冷たい視線で非難する。

「あなた、そんなことして虚しくないの!」

「そんなこと言ったってさ…」

「ワタシにはちゅーしてくれるもんね!」

おのれ嫁。貴様はそれを言いたかったのか。
優越感に浸りたかったのか。

「じゃあ嫁、僕に接吻してくれ」

「…」

娘を射んとすればまず嫁を射よ、とばかりに
嫁にすがってみたがいつものように無視され、
悶々としたままその夜眠りについたが、どうも
明け方に僕は目覚めたらしく、寝惚けたまま
嫁の唇をべろべろと舐め回していた。

そこでハッと我に返った。嫌だわあたしったら
なんてことを。違う。こんなアダルトヴィデオの
ような濃厚な接吻がしたいのではない。
もっとこう、小鳥が嘴をチョンと当てるぐらいの
さわやかでせつない接吻をRとしたいのだ。

翌朝。僕は会社に出勤する。いよいよお別れである。

「Rちゃん、お父さんにちゅーして」

僕の最後のお願いに、Rはにっこりと笑って

「ちゅ」

…口で言っただけだった。

仕方が無い。これでよしとするか…。と自分に言い聞かせて
出勤したのが、職場に着いてもどうにも寂しくて切なくて
もう嫁の実家に飛んで行きたい気分なのである。

飛んでも接吻。歩いて接吻。
.

CATVケーブル繋いで私の家まで連れてって+イラスト「吉田が巨大な物を作ってますよ」

つまらないので普段はテレビを見ない。

しかし娘・R(1才)が夕食時にグズっていたので、気を
紛らわそうとテレビを点けたのだがやはり面白くなく、
ケーブルテレビに切り替えてみることにした。すると
映っていたものは

「ドリフの大爆笑'86」

懐かしい!これは見るしかあるまい。約20年前の番組である。
これを見ながら飯を食っていると、少年時代の頃の夕餉に
タイムスリップしたかのような錯覚を覚えた。

カトちゃんが「えっきし!」とくしゃみをするとセットが
崩れ落ちたり、いかりや長介の「だめだこりゃ」等の往年の
ギャグが炸裂する。今のお笑いってこれを超えられないから
悉くつまらないんだなあとしみじみ眺めていた。

コントの合間には石川秀美、松本伊代、長山洋子、堀ちえみ等の
古の忘れ去られたアイドル達が歌い、

「ギャハハハ!こんな間抜けな歌知らないー!しかもヘター!」

嫁と笑い転げていたのであった。

きっと昭和50年代中盤以降の生まれの人達にはさっぱり訳が
分からないことだろう。21世紀の平成2ケタ生まれのRには
尚更である。しかしRは

「ぽかーん」

と口と目を大きく開いて釘付けになっていたのであった。
生まれて初めての80年代テイストはどう映ったであろうか。

ほのぼのとノスタルジアに浸っていたのも束の間、画面が
ドンと変わり、映し出されたのはいかりや長介が女装して
芸者になった見るもおぞましい姿。更には着物の裾をビラビラ
開き、スネ毛を惜しむことなくドアップで映し、

「お食事中の方すみませんねえ」

とニヤニヤ笑っておるではないか。

吉田さんが描いた僕の顔※吉田さん:「吉田が巨大な物を作ってますよ」に描いて頂きました。
(下のフォントは僕が加工)

20年前に仕掛けたいかりやの罠が、時を超え21世紀の今まさに
食事中の我々に襲い掛かろうとは。

何と言ってよいか、例えると、夜空の星の光は実は過去のもので、
何十年何百年もかかって届いた姿を僕らは見ているんだよ…
というような雄大でロマンティックな気持ちになった…わけない。

そんなわけでエンディングである。

ババンババンバンバン。宿題やれよ!
ババンババンバンバン。風呂入れよ!
ババンババンバンバン。子供寝てからにしろよ!

「なあ嫁、身重のお前にやらせてくれとは言わぬ。せめて今宵は
 手でいかせて候…」

「ダメ!」

また来週ー!
.

嫁への甘い誘惑。その時夫と娘は。

水天宮で安産祈願のお参りをして昼食を摂った。
その後娘・R(1才)を近くの公園でたっぷり遊ばせて
さあ帰ろうとしていたのだが、嫁が迷っていた。

「何か甘いもの食べたいなあ。せっかく水天宮まで
 来たんだから、あんみつとかいいなあ」

「じゃあちょっと歩いて甘酒横丁で甘味処を探すか」

「でもRも疲れてるだろうから可哀想だし。やっぱり帰ろう」

しかし嫁は家に帰ってからも呻いていた。

「ううう…甘いもの…」

むう。僕が草刈政雄のような甘いマスクを持っていれば
嫁はよろめくものを…などと口惜しみつつ

「コンビニでよければ何か買って来るよ」

「じゃあセブンイレブンでトルエン臭(しゅう)買ってきて」

なに…トルエン臭?脳をとろけさせ、天国へ誘う甘い臭い。
ヘブンイレブンいい気分…ってこら。嫁が元ヤンだったなんて
初耳だぞと動揺していたら

「とろけるシュー」

の聞き間違いだった。いやだわ僕ったらせっかちさん。
早速セブンイレブンに行き、とろけるシューをゲット。ついでに
嫁が念仏のように唱えていたあんみつも買う。

「はい。あんみつもあるよ。よかったら食ってくれ」

ひとまず冷蔵庫に入れていたところ、Rが隙を見てコンビニ袋を
ゴソゴソ探っており、店員が入れてくれたスプーンを取り出して
遊び始めていた。

「R、君もあんみつ食べたいか?お母さんとお食べ」

Rはしばらく僕の周りで遊んでいたが、僕が布団に投げ出していた
足に覆い被さったところで動きがピタリと止まり、そのまま寝て
しまった。昼間公園で大いに遊び回ったせいだろう。

力尽きる限界まで暴れ回り、死ぬる時も悉く敵の前を向いて
倒れたという、三河武士の如き凄まじい根性である。
あんみつどころではなかったようだ。

しかし足に圧し掛かられたままだと、Rに手が届かない。
どうしようも出来ない体勢である。

死して屍拾うものなし。あんみつ同心。なんつって。

…縁起でもないので嫁に手伝ってもらって布団に寝かせた。
我が家のあんみつ姫はその後3時間ほど眠り姫だったとさ。
.

前途多難な安産祈願。

嫁のお腹にいる第2子の安産を祈願するため、
水天宮にお参りすることにした。

お参りの後は目星を付けたうどん屋で昼飯を食べて、
近くの広い公園で娘・R(1才)を遊ばせて…と、
一応計画を立てていたものの、駅を出てみると

「水天宮参拝の方はこちらの列にお並びくださーい」

地球博も真っ青の100m以上の長蛇の列が!誘導している
警備員に聞いてみると、およそ1時間待ちと言われて
面食らう僕と嫁。僕らは別にマンモスとか見に来たわけ
じゃなく、単にお参りしたいだけなのに…。

「ヒイイ!どうしよう!」

嫁、パニクってる、パニくってる。

「とりあえず並ぶよりまずRを遊ばせるか…」

仕方なく予定変更して、Rの乗ったベビーカーを転がして
公園まで向かうと、公園内にある「清正公寺」にぶつかった。
加藤清正を奉ってある寺だそうだ。

「清正…?」

嫁が何故か恐ろしげに眺めている。

「知らないか?加藤清正」

「それって、祟りとか、首が奉られてるとか…」

「そりゃ平将門だ」

嫁、パニクってる、パニくってる。

公園に着いてさあR、遊べ!とするところであったが…。

「R、寝てるー!」

いつの間にかRはすやすやとベビーカーの中でお休み
していたのであった。

「こうなったらもう並びましょう…」

覚悟を決めて行列に戻ることにした。Uターンした道すがら

「おい見てみろよ、こんなとこに相撲部屋があるぞ」

「ホントだ。あそこには『すもう豆腐店』もあるよ。
 おすもうさんってよく食べるんだね」

「ありゃ『相模豆腐店』だ」

嫁、パニクってる、パニくってる。

行列の最後尾に加わり、辛抱強く待つ。Rは寝ているので
グズられることがなかったのがせめてもの幸い。およそ
1時間後、ようやく境内に入れた。せめてしっかりお祈りだけは
しようと思い、この頃には目が覚めていたRに

「Rちゃん、赤ちゃんオイデーってお祈りしようね。
 はい、のんのーん」

賽銭を入れて一緒にお祈りしようとしたが、余りの人の多さに
怖くなったのか

「プギャアアアア!」

爆竹のように泣き叫ぶのであった。
Rもパニクってる、パニくってる。

安産祈願のついでに疳の虫封じもお参りすればよかったかな?
.

情けは娘のためならず。

風呂の水を洗濯機に移すという、ひたすら地味な作業を
行っていたら、

「てぃ?」

娘・R(1才)が絵本を持って来て僕に差し出し、
「読んでー」と訴えた。

「これが終わるまでちょっと待っててね」

とバケツを振りかざしてみると、Rはそのままの姿で
じーっと待っている。なんて聞き分けの良い、健気な子。
僕はもちろん絵本を読んでやった。

耐え忍ぶ人情の女・Rの姿がそこにあった。

「Rちゃんはお利口ね」

嫁もその姿を見、Rのガマンを褒め称えた。

その後僕がエロファイルを外付けハードディスクに移すという、
ひたすら地味な作業を行っていたら

「てぃ?」

またしてもRが手を差し伸べ、「パソコンいじらせてー」
と訴えた。

「これが終わるまでちょっと待っててね」

とDVDを振りかざしてみたが、今度のRは

「ひいいん、ひいいん、ママー、ママー!」

全く待ってくれようとしない。ちなみにRは
僕にも嫁にも「ママ」と呼ぶ。

欲情に忠実な、激情の女・Rの姿が そこにあった

「ワタシはRの前ではパソコンやらないからね!
 アナタがパソコンの楽しみを教えてしまったのよ!」

嫁もその姿を見、今度は僕の愚かさを蔑んだ。

ひょっとしたらRは…。

先ほどの水入れ替えは家のための作業。そして今度の
データ入れ替え作業は全くの遊び。ひょっとしたらRは
その辺りことをちゃんと見抜いているのかもしれない。

仕方がないのでRの腰を抱いて膝に乗せ、キーボードをバコバコ
打ちまくらせるに任せていたが、ポンポコリンのRのお腹に
ムラムラしてしまい

「お嬢ちゃん、いい肉付きだねえ…」

と手を近づけようとしたのだが

「だー!」

素早く手刀でかわされてしまった。

穢れたオヤジの手は一切近づけない、烈情の女・Rの姿が
そこにあった。

そして娘にあしらわれた劣情の男・僕の姿もそこにあった。

最早呆れていた嫁は既に見ていなかった。
.

孕んだときの神頼み。

明日は嫁が産婦人科に行くのだが、僕は仕事なので
一緒に行けなくなってしまった。

「ごめんよう…嫁…」

「いえ、いいのよ。その代わり日曜日はよろしくね」

日曜日に何をするのかというと、水天宮という神社に安産祈願
しに行くのである。ここは娘・R(1才)が産まれる時もお参り
している。嫁は近くの美味い店をネットで調べまくったらしく

「お昼ゴハンはうどん屋で食べたい。すき焼き屋もいいけど」

「あそこのすき焼きはまともに食うと何千円も取られるぞ」

「フフフ…だからそこはスポンサーがいる時にしましょう…」

「お前、親にたかる気か?」

「あーでもうどん屋もいいけどここの中華もいいなあ。あ、それと
 重盛の人形焼を買ってぇ…」

異様に食い意地が張っている嫁。一体安産祈願に行くのか
食べ歩き漫遊に行くのか。しかし食欲があるのは良いことである。
しっかりお参りしてしっかり食って無事産んで欲しい。

ということで大事なお子を守る嫁の腹と、出産時に奮闘してもらう
嫁の腰に充分願をかけて来るつもりだ。

腰に願いを。
.

それだけが愛の汁し。

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■お知らせオワリ。以下日記。

僕は花粉症ではないがハウスダストアレルギーである。

時々まるで龍神様が怒り狂って大雨を降らせるが如く、
怒涛の鼻汁が流れっ放しになることがある。
そのような時はティッシュで鼻をかみまくって耳がおかしく
なったり、鼻の皮膚がガビガビになったり、盛りのついた
中学生男子のようにゴミ箱にティッシュの山を築いて
恥ずかしい思いをするより、ティッシュを両鼻の穴に
突っ込むに限る。

そうすると嫁はやれみっともないだの百年の恋も冷めるだのと
僕の鼻を見て鼻で笑うのだが、とても辛いのでなりふりなど
構っていられないのだ。

そして現在、嫁が花粉症で鼻汁大放出中である。
毎年そうなるのだけれども、嫁は今までティッシュで
鼻を塞いだことはなかった。僕が

「楽だよぉ〜君もやってごらんよぉ〜」

と悪魔のささやきでもって勧めるのだが

「ワタシは女よ。アナタの前でそんな姿を見せるのは
 恥ずかしいの…」

なんとも乙女ティックな恥じらいを示すので、思わず

「愛い奴じゃ、近う寄れ」

と頬擦りしたくなる衝動に駆られたものであった。

ところが今朝、嫁は朝っぱらから鼻の両穴に
ティッシュを突っ込んで歩いているではないか。
あの乙女のはにかみはいずこに。

「嫁よ…女を捨てたか…」

思わず漏れた僕の落胆の呻きにも

「女、いらないっしょ」

自分は女を捨てた、と言わんばかりの答え。
いや、いるのである。僕が。

嫁に女を捨てられたら、その鼻汁と同様に
溢れ出て来る僕の我慢汁の行方はどうなるのだ。

嫁は娘・R(1才)を産んでから逞しい母になった。
その分、この例にもあるように女らしさはひとつづつ
減っている。女らしさで育児ができるか!とある種の
悟りの境地に立ったようである。

これがいわゆる「おばさん化」であるかと嘆いてみても
始まらない。

誰が言ったか「夫婦は合わせ鏡」

この僕も既に男ではなく、三十路を過ぎで単なるオヤジと
化しているのも事実であり、これは嫁だけではなくインタラク
ティブな問題である。

夫婦とはこんな風に年輪を重ねていくのだろうか。
お互い色褪せつつも鼻汁を啜りながら苦楽を共にし、
人生の道を歩んで生きたいものである。

これを汁苦労ードといいます。
.

愛・柳生博。

photo

柳生博じゃなくて地球博である。

栃木の母から「行く予定ある?」というメールが届いた。
いや、全然ないんだけど…。明日開始だなんて全然
知らなかった。だって全然盛り上がってないんだもん。

母のアンテナに引っかかるイベントということは…
あまり面白くないのかもしれない。母の言われるがままに
連れて行かれた場所は、おばさん趣味のところばかりで、
つまらなすぎて死ぬる思いをする。
なんとかフラワーセンターとか。

とはいえ僕は万博に行ったことはない。大阪万博の時は生まれて
いなかった。三波春夫が歌っていた

「こんにちは〜こんにちは〜」

というテーマソングもリアルタイムで聞いたことはなく、
後に明石家さんまが「オレたちひょうきん族」で
「ナンデスカマン」に扮し、

「ナンデスカ〜ナンデスカ〜」

と歌って踊っていたのを見た、紛い物の記憶しかない。
そんなわけで娘・R(1才)のためにはいいかなあとも
思ったりする。「万博行ったことあるのよ!」と大きくなって
言えるかもしれない。もっとも記憶は全く残っていないだろうが。

パビリオンなどは行列が出来て、R連れでは入ることは
難しいだろうけれども、Rが好きに駆けずり回れる広場などは
いくらでもあるだろう。

Rのために、万博に行ってもよいかなあと思うようになった。

万博でもいい。逞しく育って欲しい。

早速嫁に聞いてみることにした。今は妊娠12週目の身重で、
つわりがひどくケロケロ吐いているけれども、安定期に入れば
旅行も出来るようになるはず。

「嫁、万博行きたい?」

「別に」

…。

淡白でもいい。逞しく育って欲しい。
.

娘よ、俺色に染まれ。

娘・R(1才)をツーテールの髪型にしてみたら
僕のロリっ子魂が燃え上がってしまった。

ツーテール(ツインテールとも)はロリコン男にとても
人気が高い髪型。そしてその僕の心を汲んでくれたというか
憐れんでくれた、聖母マリアの如く心優しき嫁が、更にトドメと
ばかりにセーラー服を着せてくれた。

「おお!これは…!」

ツーテール+セーラー服という鬼に金棒のロリアイテムを
装着したRは僕の親父心を鷲掴みにするだろうと思われたが、

photo

「…田舎の中学校の入学式みたいだね」

「うん。こんな子、栃木にいたべよ」

「スカートがカカトまであるっていうのも…」

「では今度は膝上スカートのセーラー服を買わねばなるまい」

嫁とふたりでしみじみと語り合うのであった。
やがて嫁は買い物に出掛けて行った。

「Rちゃん…ふたりきりになりましたね」

「あぱぱぱぱー!」

「君にはまだ分からんと思うが、セーラー服の女の子と
 密室でふたりきりというシチュエイションに、ととさまは
 ドキドキしています」

「うにゃうにゃ」

分かってるんだか分かってないんだかよく分からない返答のR。
こうして見ると、Rにはトナカイだのサンタだの天使だの
セーラー服だの、コスプレまがいの服を大いに着せている。
好き放題に親の趣味に染めてしまってよいのだろうか。
かといって、Rに好きな服を選べと言ういうのも無理な話だし、

photo「でへへへへ!」

本人は服とは無関係に楽しそうだし。別にRをオモチャにしてる
訳ではないので、まあ、よいのだとうと思う。

娘で遊ぶな、娘と遊べよ。

「よし、ととさまと遊ぼう!」

嫁が帰って来るまで、ふたりでデカダン酔いしれ暮らさないか。
白い壁に堕天使って書いて!?アハハハ…。

しかし僕に手を引かれ、スカートをゾロゾロいわせながら歩くRは、
鉄パイプでも持たせたらそのまま仏恥義理で栃木のレディースに
なれそうな姿…なんて思い耽っていたら

「うきゃー!」

Rはどこからか見つけてきたのか、空のペットボトルを振りかざし、
ぼっこんぼっこんと容赦なく僕を叩きつけるのであった。
レディースじゃなくてオヤジ狩り…!!

父で遊ぶな。父と遊べよ。

おあいこ。
.

ホリデーにパークでスパーク。

嫁と娘・R(1才)を連れて光が丘公園という大きな
公園に行った。

Rを好きなだけ遊ばせるにはもってこいの場所である。
更に嫁にはもうひとつ目的があった。

「公園の奥の方に焼き立てパンの売店があるのよ!」

ということで食い意地が張っており、やる気充分。
嫁は、前世は南蛮人じゃないかと疑いたくなる程パン好きであるが
ゴハン党の僕にはどうでもよい話である。せいぜい興味があるのは
はみパンとかひもパンとかそういう類である。

嫁が首尾よく焼き立てパンをゲットした後、

「うきゃー」

Rは公園の中をどんどん奥へ歩いてゆく。しかし歩みは遅いので
僕と嫁はRを追いつつ優雅に散歩をし、やがて草野球場に辿り着いた。

見ると歩道にボールがコロコロと転がって来た。それを野球チームの
マネージャーらしき女の子が捕らえ、高いフェンス越しに投げ返そうと
するところであった。

「女の子の肩で届くかしら」

嫁は興味深そうに眺めていたが、マネージャー女子の放った
ボールは楽々フェンスを越え、野球場の中に帰って行った。

「へえ、肩いいなあ」

などと嫁は感心していたが僕はそう思わなかった。
野球部のマネージャーといえば部員のむさい男達を相手にする
仕事である。時により愛のキャッチボールな仲にもなろう。
上杉達也は朝倉南を愛しています、とか。だから

「やっぱ野球部のマネージャーだもの、球と玉の扱いには
 慣れてるんだろうよ」

と嫁にしたり顔で言ったら

「…こんな下品な人を選ぶんじゃなかった」

侮蔑の眼差しを僕に食らわせつつ、Rの手を繋いで遠ざかって
行ってしまった、いや嫁よ、このひと言だけで即座に理解して
しまうお前もどうかと思うぞ。僕は慌てて走り嫁に追い付くと

「あっ!テニスコートもある!」

嫁は野球場の向かいにあるテニスコートを見つけて
素っ頓狂な声を上げているところだったので

「あなた〜を待つの〜ペニスコート♪」

思わず歌いそうになってしまったが抑えた。いかんいかん。
これ以上駄目押ししては公園に置き去りにされ、ひとりで
散歩をする羽目になってしまう。

「お前のボデーにサービスエースでセットポイントだぜ!
 ああダメよキャプテン、そこはフォールトよ」

最低低低の寸劇まで考えたが自制した。いかんいかん。
ここは春のうららの光が丘公園。お下劣ネタは似合わない。

暖かい日差しを浴びながら、爽やかにちんぽするのである。

いや、散歩するのである。いかんいかん。
.

春のうららの墨田区錦糸町。

休日なので、娘・R(1才)を外に出して遊ばせたいのだが、
嫁は妊娠中で身重であり、更に数日前に出血をしていることから

「近場がいいよなあ」

地図を見て公園などを探していたのだが

「そうだ、ワタシ、錦糸町のアカチャンホンポに行きたい!」

「近くないじゃん!電車で1時間かかるじゃん!」

「まあ大丈夫でしょう。あそこならRを遊ばせるスペースもあるし」

そういうことになった。

錦糸町に降り立ち、まずは昼飯をば、と駅前をうろついて良さそうな
店を探したところ、タイ料理の店がとても美味そうだったのだが、
タイ料理は辛いのでRには食べさせられないので「つばめグリル」という
都内ではよく見かける洋食屋に入った。

Rが乗ったベビーカーをよいしょよいしょと持ち上げて、
座席の側に置くと、

「あっ!Rがいつの間にか寝てる!」

「ムキイイ!これならタイ料理にすれば良かったわ!
 あなた、気が付かなかったの?」

嫁は散々に悔しがるのであった。これでは単に錦糸町にメシを
食いに来ただけじゃないか…!

さて、このつばめグリル。ここはどうも店名から受けるイメージが
よろしくない。どうしてもつばめが30羽ぐらい鍋にぶち込まれた
ものが出て来るようで怖い。

実際はそんなことはなく、ハンバーグがウリの店なので僕も
頼んだのだが、

「不味くはないんだけど、ウリにするほど美味くもないような…。
 これならこないだ君のお母さんが作ってくれたハンバーグの
 ほうがいいよ」

「あら、そう?」

「うん。そうだって。…って僕が言ってたって伝えておいて!」

期待はずれの腹いせに、義母へのリップサービスをアッピール
しておいた。

「そうそう、こないだの出血だけどね…」

嫁が体調のことを話し出したので少しだけドキッとした。

「やっぱり、まぐわっちゃったことが原因だと思う。
 だから安定期までまぐわい禁止ね!」

「…はい」

産婦人科の定期健診の後につい契ってしまい、今度は2週間後の
検診の後ね!なんて嫁と決めていたのだが、この場において
無期限のまぐわい禁止令を受けた。受け入れるも受け入れないも
なかった。

錦糸町にて禁止令。嫁もシャレたことしてくれるじゃないかよう。
やはり僕の嫁であることよなあと変に関心せざるを得ない。
.

髪よ、我を萌えさせたまえ。

嫁が娘・R(1才)の髪を梳いていた。

「今日は違う髪型にしてみましょう」

「はあ…」

何やらヘアゴムを取り出して、Rの髪を結んでいる。
待つことしばし。

「できた!あら〜Rちゃん可愛い」

こんな髪型になった。

photo

「おおおおおおお!」

僕は思わず身を乗り出して興奮した。この髪型は僕が
最も愛するツーテールではないか。髪を左右に分け、
左がきよしで右がたけしで…ってそりゃツービートだ
(古いなあ)

ああ、女の子の父親でよかった、と涙まで出そうになった。
ロリコン属性の者にとって、ツーテールは欠かせない髪型である。
更にセーラー服を着せれば最強のロリっ子が出来上がるであろう…
って、しまった。何故Rにセーラー服を着せなかったのだ!
僕は今になって激しく後悔している次第。

ところでこの髪型、ツーテールよりもツインテールという呼び名
の方が通りが良いようである。しかし僕はツインテールというと
どうしても「帰ってきたウルトラマン」に出て来た、古代怪獣
ツインテール(※)を思い出してしまうので、敢えてツーテールと書く。

photo※グドンという別の怪獣に食われてしまう情けない怪獣。

さて嫁と僕のつがいの馬鹿親は、ひとしきり「可愛い可愛いキャー」と
褒め称えていたが、

「これで顔が卵形だったらもっと可愛いんだけどな…ごめんね、
 ママ顔が四角くて」
                  
急に嫁が素に戻ってしまった。髪を結ぶことによって露わになった
Rの顔の形を気にしてのことだろうか。そういえば…この写真も
そうだが、Rを撮った写真を見てみると、悉く僕の小さい頃に
そっくりなのである。これは嫁の責任ではない…。

…許せよR。ろくな遺伝子じゃなくて。

嫁がしんみりする中、僕もやや落ち込み、へぼい遺伝子でも
程よくブレンドされ、そこそこのレベルになってくれまいか…
などとかすかな望みを祈るのであった。

Rの未来への望み…それは髪のみぞ知る。なんつって。

しかしそれはそれ、僕はツーテール姿のRにすっかりやられて
しまった。身も心もメロメロである。ケンシロウが放つ北斗神拳で
木っ端微塵にされてしまったというか。

お前はもうツーテール。なんつって。
.

サタデーホスピタルフィーバー。

嫁が病院に行ってお腹の子を看てもらったところ

「ぴょんぴょん跳ねてた!」

とのメールが入ったのでひとまず安堵した。
あとはお腹の子がウサギかなんかじゃないことを
祈るばかりだ。違う。引き続きしばらくは嫁には安静に
してもらおう。幸い3連休だ。家に戻ってから嫁と話した。

「お腹の子は無事だったけど、Rが病院で泣きまくって…」

娘・R(1才)は大の病院嫌いだ。自分が診察される訳でも
ないのに中に入った途端号泣する。

「今度病院に行くのはいつだ?」

「来週の土曜日」

「え、土曜もやってるのか?だったら僕も付いてってやれるよ」

「そう思って今後は土曜にしてもらうように頼んだの」
                                       
「そうだったのか。でも…来週の土曜は出勤なんだ…」

「ええっ?」

僕は完全週休二日ではない。不定期に土曜の出勤があるのだ。
そんなわけで嫁を病院に連れて行きたいから休暇を頂きたいと
上司に掛け合ったところ

「チビちゃんいて大変だし、奥さんもナーバスになってる
 だろうから付いててやんなよ」

「ありがとうございます。おっしゃるとおりです」

「で、いつ出産予定なんだ?」

「10月なんですが…」

「ふふふ。お前、正月から撃ちまくってたな!」

「お、おっしゃるとおりです…」

有難い温情と素早い逆算によって許可を得、
再び嫁との会話。

「あ、そうか。僕が一緒に行かなくても、お前だけ
 病院に行って、家でRと留守番しててもいいんだよね」

「そう。それをお願いしたいのよ」

じゃあ来週の土曜日はRと嫁の帰りを待とう。
R、お父ちゃんと一緒に遊んでいよう。

嫁が病院に行っている間、何して遊ぶか。

もちろんお医者さんごっこである。うへへへ。
.

いい日乳断ち。

「今日、R(1才の娘)の乳断ちをしました…」

嫁が悲しそうに言った。嫁の腹の中に第2子がいることを考え、
とうとう決断したようだ。R、1才7ヶ月。遅い方かもしれないが。

「お風呂で言い聞かせたのよ。今日でもうおっぱい終わり
だからねって。おっぱいありがとーばいばいーって」

「…意味分かったのかな」

「フニャフニャ言いながら胸に向かってペコペコおじぎしてたよ」

ああ、なんていじらしくも可愛い。しかし、いつも風呂から上がって
乳を飲みながらトローンと眠りにつくのがRの常。その一日の締めくくりの
授乳がないとなると…

「寝る時グズらなかった?」

「グズったけどね…でも、これ。ホラ」

嫁は上着とブラジャアを剥ぎ取った。いきなり誘惑されたのかと
ドギマギし、いやんまいっちんぐと目を手で隠そうとしたのだが

「キャアアアアア!」

嫁の乳に人面阻がっ。いや、乳首を鼻に見立てて、その周りに目と
口がマジックで書かれているではないか。
まるでアンパンマンがふたつ、嫁の胸に現れたような。

「これ…君が描いたの」

「うん。これを見たらRは怖がっておっぱい飲もうとしなかったよ」

田んぼの鳥除けみたいな効果があるらしい。僕もギョッとした程だもの。
それにしても嫁のこの姿、辛かろう。おいたわしや…。

しかしこれでさすがの僕も、嫁のこの姿を見ればみだりに欲情する
こともなくなり、発情抑制効果も期待出来て一石二鳥である。
僕もお腹の子のために乳断ちである。

Rが産まれるはるか昔の、夢中で乳にむしゃぶりついていた
青春時代のあの頃をふと思い出した。その乳に顔が描かれた姿を
見る時が来ようとは当時は思いもよらなかった。
思えば遠くに来たもんだ。

愛と青春の乳断ち。
.

苦しくったってー悲しくったってー♪ネットの中では平気なのー♪

妊娠11週目に入った嫁の具合が悪いので午前中仕事を休んだ。

嫁は寝てて指示してくれるだけでいい、その通り僕がやるから…
と言いたかったものの、普段ろくに家事をしてないことが祟り、

「パンを焼いておいて」

と言われたのでフライパンで焼こうとしたら

「オーブンで焼くのよ!」

初っ端から嫁を激怒させ、ぶち切れて鬼女と化した嫁が
結局自分で動いてしまうという不手際さを露呈してしまった。

何をどこにどうやってどうしろ、という完璧な指示がないと
動けない程レベルが低い僕が悪いのだが、元々嫁はテニヲハに
欠ける物の言い方が多い上、イライラしてくると僕に飛ばす言葉も
更にぞんざいになり、ますます僕は何をしたらいいのか分からなく
なるという悪循環を生み出した。

いくら僕でも独身時代はひとりで家事をやっていた。料理はしないが。
しかしこの家では嫁が法律。僕の自己流でやってはこれまた嫁の逆鱗に
触れるのである。どうせ触れるのなら逆鱗ではなくおっぱいの方が良い。
だからひとつひとつ嫁に手順を確認するのだけれども

「あなた、そうじゃないって!」

「ちゃんと言ってくれないと分からんだろう」

ツーと言えばカーと応えるおしどり夫婦の理想像とは
程遠く、大変見苦しいあげあしとり夫婦以外の何者でもなかった。

嫁にはバカボンのパパよりも使えないおやじとして映ったことで
あろう。急遽栃木から手伝いに来てくれた母がいなければ、救い
ようのない有様になっていたに違いない。

「この人、家事や育児の苦労知らないから」

嫁が僕の母に吐き捨てるように言っていた。

苦労…会社の仕事も決してうまくいっておらず苦汁を舐めて
いるのにこの言葉はきつかった。どうせ舐めるなら苦汁より
おっぱいの方が良い。しかしそれを言っても逃げ口上にしか
ならない。だから言わなかった。

でも、涙が出ちゃう。だって、おやじなんだもん。
だからここにだけは記す。

がんばれ嫁。僕もダメ夫ながら努力しなければ。

さしあたって何をするべきか。安産の大願成就を祈願して
お参りをしようか。いや違う。そんな他力本願でハルクホーガンで
僕の睾丸な陳腐な心がけでどうする。家事手伝えよ。

家事は嫁の仕事…と非協力的だったが今度こそ本腰を入れて
努力しなければならない。そしてなおかつ大願成就を祈る。

昔の人は言いました。

大願の家事。
.

脱いだらムゴイんです。

娘・R(1才)がハナタレ小僧になってしまった。

2日前の日記に書いたとおり、風呂に入るため服を脱いだのに、
風呂に行こうとせず裸のままチョロチョロと家の中で遊んで
いたせいに違いない。

同じくすっぽんぽんになっていた僕と一緒に、全裸の汚れなき
森の妖精と化しアハハウフフと駈け回り、「お風呂行きなさい!」という
嫁の要請も聞かなかった。

僕はRを叱ってでも風呂場に連れ込むべきだったのである。
しかし歩くたびにプリプリ揺れる青いおヒップがラブリーで、
裸の大将のようなポンポコリンのお腹がチャーミーで、

「ぼ、僕はゴハンが好きなんだな…」

とばかりに夕食の残りをパクついてる姿に心を奪われ、腑抜けと
なっていたのである。なかなか叱れる父親になれないのが
近頃の悩みである。

夜、ズルズルと鼻水交じりの寝息を立てるRは苦しそうで、
朝も「へっぶひゅん!」とくしゃみをした後、急に泣き出したので
駆けつけてみると、見事な2本の青っパナが垂れ下がっており、
自分で拭う術を知らないRはパニックになっていた。

Rを制することができなかった僕は、ピンピンしていることが辛い。
これは僕の責任だからに災いが来ればいいのに…と、

「おお、よしよし、かわいそうに」

ティッシュで拭いてやるのだけれども

「うきゃああああ!」

Rは普段から顔を拭かれることが嫌いなので怒り出すのである。
泣くか怒るかどっちかにして欲しい。

「お、怒るとおなかが空くんだな…」

そう、これは裸で遊んでいたことへの報いである。

裸の代償。
.

ホワイトデー。娘には弱イノデー…。

ホワイトデーなので、僕の大どどどどど本命、
娘・R(1才)にお菓子をあげた(嫁にも一応あげた)

勿論ものすごいバレンタインプレゼントをくれた、
セーラー服を脱がせないでの有紀さん、和葉さんにも贈った。
彼女達にはリクエストがあった羊羹を。
なかなか渋い中学生ではある。

デパ地下で考え抜いた結果、Rにはイチゴ入りのクッキーを
プレゼントすることとした。Rはイチゴが大好き。
碁石ほどの大きさのクッキーをポリポリ齧るR。

「…おいしいのだろうか」

その様子をじいと眺めていると、

「けっこうおいしいわよ」

横にはいつの間にか盗み食いしていた嫁。お前に聞いてるんじゃねえ!
お前にはロールケーキをあげただろうが。…おそろしい嫁!油断も隙も
あったものではない。Rは早くもいくつかのクッキーを平らげた後、

「てぃ?てぃ?」

僕に食べかけのクッキーを差し出した。どうやらおすそわけして
くれるつもりらしい。そんな気遣いをしなくても、お前が全部
食べていいんだよ…

そう言おうとしたが、言葉はまだ通じるはずがないので、首を横に
振って見せた。これはRがゴハンを食べている時によく見せる仕草で、
もういいよ、という意思表示である。これを真似すれば「僕はいらないよ」
ということが確実に伝わるだろう。

なんてことを考えてしたことだったが、これがいけなかった。

Rはそれを見た瞬間に呆然とした表情で固まってしまった。
合格発表で自分の受験番号がなかった瞬間のような、告白して
「ゴメン」とフられた瞬間のような…こんなRの顔見たことない。
そして5秒後

うわああああああん!

クッキーを手にしたまま大号泣となってしまった。ああ、どうしたと
いうのだ。僕はRの思考を推理してみることとした。

オトウチャンニモクッキーヲアゲヨウ。

エ、オトウチャン、クビフッテル!

アゲタイノニナンデイラナイノ?

ナンデナンデ?

ウワアアアアン!

うわあああああん!ごめんよ!RはRなりに考えた末、悲しくなって
パニックになってしまったに違いない。「いいんだよ、自分でお食べ」という
意味ではなく「いらない」という拒絶の意思だけが伝わってしまったようだ。

「ゴメンゴメンゴメン」

泣きじゃくるRを抱いて謝り倒したのだが、逆に蹴られる有様。
素直にクッキーを貰っておけばよかった。またRの純粋な
心を裏切ってしまった。

つくづく無粋なことをしてしまったと思う。
ホワイトデーに食らうRの蹴り。
これをホワイトキックといいます。つまり、

「白蹴ることしやがって…オトウチャンノバカ」

Rはこう言いたいに違いない…。
.

父娘裸の付き合い。

娘・R(1才)とお風呂に入る時間…。

Rを脱がせてもチョロチョロと逃げ回りなかなか
風呂場に行こうとしない。それどころかちょっと前に
食べていた夕食の残りをパクパクと再び食べたりして、
全裸で何をやってるんだか、といった感じである。

「もういらないって食べるのやめたくせに!」

嫁が苦笑いでその姿を見ている。いやん見ないで。
僕も全裸なのだ。父娘共にあられもない姿。

「あっ!」

油断していたらなんとRの足元に水滴がぽたぽたと…。
食べながら出すという直結肉体娘。

「きゃー!」

「ひいい!」

パニックになって床を拭く僕。Rはそれでも風呂に入ろう
とはせず、TVなんぞをじーっと眺めている。

僕は正座してRを膝の上に乗っけてしばらくTVと対面する。

「…僕は今、何をやっているんでしょう…」

裸で娘を抱いている僕。しかもこの体勢は背面座位。
こんな高度なラーゲ、嫁とすらやったことないわ。

「ホントにあなたたち何やってるのよ!」

嫁の呆れ顔に加え、さすがに寒くなってきたので
ようやくRを無理矢理抱き上げて風呂場に向かったので
あった。こんな醜態、もう僕もRもお嫁には行けない。

風呂から上がり、嫁の乳を吸って眠りに付くのが常のR。
目がトローンとして布団に横たわる。

「さ、お父さんにオヤスミナサイをしなさい」

嫁が僕を指して言うのだが、僕と目が合うとRは

「ヒイイイイン!」

見るな、寄るなという感じで、先ほどとは全く態度が
豹変してしまうのであった。これはいつもそうである。
もう寝る、となるとRは僕を蛇蝎の如く嫌う。近付いた
だけで手をブンブン振り拒絶する。

恥ずかしいのだろうか。しかしどう考えてても風呂場に
行くまでの裸のご乱交の方が恥ずかしいと思うんだけれども…。

父娘の裸祭り。Rの逆ギレにて終了!
いつまでできるかなあ…。
.

オトナの絵本。

娘・R(1才)はよく

「てぃ?てぃ?」

と絵本を持ってくる。読んでくれ、ということなので
開いて朗読して聴かせる。Rのために森本レオ風の、
素朴で優しい感じで読んでやろうと心掛けるのだが
所詮は栃木県人、どうやってもつぶやきシロー風に
なってしまう。

それはいいとして、Rぐらいの小さな子供向けの絵本は
単調である。例えば

いぬさんが、いないいないばー。
ねこさんが、いないいないばー。
くまさんが、いないいないばー。

このように最初から最後まで同じパターンが延々と続くのが常。
このRが持って来た「くだもの」という絵本もそうであった。

photo
みかん

photo
さあどうぞ

延々とこのパターンがループする。

りんご、さあどうぞ。
ぶどう、さあどうぞ。
すいか、さあどうぞ。

当然オトナの僕としては物足りない。何かこう、
もっと波乱万丈で抱腹絶倒でお涙ギブミーな
内容がよい。さすればオトナの絵本としては
こういう展開がよかろう。

なし、さあどうぞ。
かき、さあどうぞ。
いちご、さあどうぞ。

photo
女子高生。

photo
さあどうぞ。

なんて…ぐへへ…。

え、女子高生は「くだもの」じゃないって?
どんでもない、女子高生は紛れもない「青い果実」
という名の「くだもの」である。

あーなたーが望むなら、わたし、何をされてもいいーわー♪

この「くだもの」は当然、山口モモ恵である。
そしてこんな僕は「けだもの」なんである。
.

○ックスコーヒー。

セック○コーヒーではない。
マックスコーヒーである。

我が故郷栃木を含む、関東のへぼい県でしか売られていない
缶コーヒー。画像とかは→(こちら参照)

ローカルプレミアムなモノであるゆえ、ここ花の都東京、
または優しい女が眠る街・スーパーシティTOKIOといえども
手に入らない。

杜の都仙台だろうが華の都巴里だろうが
霧の都倫敦だろうが演歌の都はるみだろうが同様である。

スターバックスコーヒーは栃木にもあるが
マックスコーヒーは東京にはない。
従って栃木の勝ちである。やーい。

そのコーヒー、先週栃木の母からお土産に数本もらったので、
大事に冷やしていた。今日1本飲もうかな、と冷蔵庫を開けて
みると本数が減っているではないか。

「嫁〜。お前飲んだか?」

「へへへ。1本飲みました。ごめんね」

「いや、別にいいけど」

東京育ちの嫁は僕と付き合うまでこのコーヒーを
知らなかったが、今はわりと気に入っているようだ。
僕はもう1本取り出して嫁と交渉することにした。

「コレも飲んでいいから、その代わりに契らせて」

「やだ」

が、愛の駆け引き、愛のコーヒールンバ作戦はあっさり失敗。
考えてみればいくら何でも安過ぎた。カツ丼一杯でOKという
上野の浮浪者老娼婦よりも安い。是非もなし。

停滞した夫婦生活を考えつつ女体を食えずに飯を食う。
おもむろにマックスコーヒーの缶をぱきっと開けると…

どどどどどどど…。

娘・R(1才)のようなハイハイで嫁が猛烈に迫り

「ちょっとちょうだい」

と犬のようにおねだりするではないか。

「契らせてくれたら一口やる」

僕は先程の交渉より更にダンピングして嫁に迫った。
まさに外道!だがそんな不埒な言い分は通る筈はなく、

「フケツな人には抱かれたくありません」

と、僕が数日風呂に入っていないことへの非難を含めて
反発されてしまった。痛いところを突かれたので

「オケツ」

おヒップを向けてあしらった僕であったが

「レイケツな人には抱かれたくありません」

駄目押しの断りを食らったどころか、ダジャレでも返り討ちに会い
散々であった。悲しいやら悔しいやら。おのれ嫁。

やる気のない嫁を奮い立たせるのには何が必要であるか。

こんな時飲ませたくなるコーヒーは、
ヤリマンジャロ、もとい
キリマンジャロかな。
.

ひと晩寝かせたカレーとわたくし。

我が家は毎月9日がカレーの日である。
今月も例外なくカレーであった。

由来は娘・R(1才)が産まれる直前、嫁が破水し
いよいよ病院に行こう、という時に僕がカレーを
食べて腹ごしらえをしたことによる。

「今日のカレー汁は辛いよ!」

まず嫁が、僕が食べる前に宣言した。なぜ辛くしたのだろうか。
妊婦でつわりがひどい上に、花粉症のダブルパンチで味覚が
狂ってしまったのだろうか。それとも日頃の行いが悪すぎる
僕への痛烈な批判なのだろうか。

覚悟を決めて食べてみたら確かにピリピリと辛い。
嫁の機嫌が悪くてピリピリしているものと同種の痛みを感じる
辛さであった。

「私も食べたんだけど吐いちゃってね…」

そら見たことか。自爆してどうする。安定期前の妊婦にとって
この辛すぎるカレーは刺激が強過ぎるのではないだろうか。

そんなやりとりがあったのが昨日。そして今日、カレー汁は
まだ残っていた。言わずもがな、カレーは2日目以降が旨い。
辛いカレー汁といえども昨日よりは旨く食べられるだろう…

と思ったのだが、嫁が作った今日のメインおかずを食べたら
腹一杯になってしまった。しかし嫁は食べたらしく、

「今日も吐いちゃった…」

だから学習しろよ!食い意地の張った嫁である。
しかし、吐いてしまうとは心配ではある。そこで

「カレー汁がだめならば、僕の男汁はどうだい?」

カレー汁は2日目が美味、という理ならば、
僕の男汁も2日目のほうがコクがある、と考えるのが
当然であろう。

昨日の日記を読んだ方なら分かるが、昨晩僕は汁を放出
しないままRにコトを中断されているのである。だから
一晩寝かせた僕の汁を嫁に捧げよう!いざ!

「…いらない!」

しかし嫁はインド人もびっくりの白け切った顔で
こちらを睨むのみであった。さすがにつわりで弱った
嫁を2晩連続で押し倒すという、阿修羅の性豪のような
ウタマロ伝説の道を行く勇気はなかった。

ま、お腹の子のことも考えて、おとなしく寝るか…。

ことなカレー主義。
.

やれずぼったくり。

嫁と長い間裸のぶつかり合いをしていない。
元々嫁に意欲がない上につわりがひどいからである。

しかし、夜、嫁がネットをやっていたのを見て、

「つわりがひどければネットどころではないはず…。
 今日は小康状態らしい」

と判断し脱がしてみたところ、嫌とも応とも言われなかったので
黙認されたと見てそのまま突入した。

嫁に苦悶の表情が浮かぶ。これは快楽によるものか、苦痛の
ものなのか。しばし動きを止めてみた。

「痛いかい?苦しいかい?」

「いえ、大丈夫!これでもうしばらくやらないから!」

誠にもって冷たい返事であった。ダメ亭主が腹を空かせているから
しゃあねえメシ食わせてやるか、みたいなあしらわれようである。
色ボケ亭主が溜まっているから、しゃあねえアタシを食わせてやるか…
といった感じで…。逝く時は一緒よとかもっとXXしてとか、そういう
盛り上がり感全くなし。ひとりでバーニングしている自分のみがアホである。

お情けでやらせてもらわなくてもいいのではないか…。

と考え始めたら、次第に僕の体が物理的に縮小し始めた。
なんということだ。こんなことはやまだかつてないことだ。
お情けがどうのという次元の話ではない。男の恥である。
僕は必死に盛り返しを図ったが、

「プギャアアア!」

横で寝ていた娘・R(1才)が突然の夜泣き。

「あああ、ごめんよ。起こしてしまったね」

「プギャアア!」

Rが僕を睨んで泣く。それで我に返った。
ネイキッドな状態で嫁の上に乗ってる雄姿、
いや、痴態を見られてしまったあああああ。

こうなると全てのイベントは中断である。先程まで
僕が独占していた嫁の体はRがしがみつくことになり、
再び眠りにつくまで離れないのであった。

そして嫁もRと抱き合ったまま眠りに落ちる。

…。

あのー。

お情けでもいいんで、続きを…。
.

小鳥がくちばしを合わせるようなキスを…。

娘・R(1才)が喋れる言葉は「わんわん」(動物全てこう呼ぶ)、
「ママ」(僕も嫁も)、「いち、じゅう」(1,10)、
「バイバイ」ぐらいである。

まだ少ない。ウチにある、喋るおじゃる丸のおもちゃの方が
ボキャブラリーが豊富である。

しかし徐々に増えつつある。絵本を見せながら

「これは鳥さんだよ。ちゅんちゅん」

などと教えていたら口を尖らせて

「ちゅ、ちゅ」

と言うようになった。新しい単語がひとつ増えた模様。
僕も口をタコのようにして

「そう、ちゅんちゅん」

「ちゅ、ちゅ」

「ちゅんちゅん」

「ちゅ、ちゅ」

徐々にRの尖った唇が僕の突き出た唇に近付いてきて

「ぶちゅうー」

キャー!Rと熱い接吻を交わしてしまった。

僕はいつもRにキスをしようとするのだが、普段はいつも
「イヤイヤ」と拒まれるのである。貞操を守っているのか
それとも単に僕が「おとうちゃんお口臭い!」と嫌われているのか。

しかしこれで希望が見えた。この手があった。
これからは狂ったアメリカ人新婚夫婦のように接吻の雨あられを
お見舞いすることとしよう。

と、意気込んで次の日

「Rちゃん、ちゅんちゅん」

再び朝のキッスゥをしようとしたのたが

「うぎゃー!」

いつものように断られてしまった。
鳥だけに3歩歩いたら忘れ去ってしまったか…。
.

おもちゃのあひゃひゃ。

水道橋に後楽園遊園地がある。今は東京ドームシティと
いうらしい。「後楽園遊園地で僕と握手!」なんてCMが
やっていたことなどは最早今は昔。

その敷地内にある「おもちゃ王国」

ここは郊外の大型ショッピングセンターなどによくある、
子供の遊び場コーナーの集大成のような、広い屋内子供
遊び場である。嫁がそこで娘・R(1才)を遊ばせたいと
言うので行くこととなった。

中に入ると、ブロックが山のようにあるコーナーや、
すごい数のリカちゃん人形がこちらに向かってガンたれて
いるコーナーなど、様々なおもちゃで遊べるようになっていた。
僕はシルバニアファミリーのコーナーも見つけた。

「僕ら汁マニアファミリーだよーん」

嫁と僕は夜に分泌されるみだらな汁、Rは鼻汁をよく出す。
これにあやかり「ここしかない!」と思ったのだが
嫁もRも付いて来てくれないので、「ままごとコーナー」
で遊ぶことにした。

おもちゃの買い物カゴにおもちゃの野菜や果物を入れ、
テーブル備え付けのこれまたおもちゃの台所セットで
ガチャガチャと遊ぶR。奥の方を見ると、子供3人ぐらいが
入れるミニチュアの「家」があったので、

「おうちに行ってみようか」

とRを行かせるように仕向けると、Rは野菜果物を入れた
買い物カゴを下げたままエッチラオッチラと歩いて行った。

しかし家には既に3才ぐらいの女の子が中に入って遊んでいた。
こういう時、Rはなかなか近付こうとしない。じーっと見たまま、
その子が出て行くのを待っているのだ。僕は少し離れて

「一緒に遊びましょーって感じで自分から入れるように
 なればいいんだけどな…まだ喋れないけど」

と草葉の陰から祈るように見ていたのだが、Rはやがて
家とその女の子に近付いていった。よし、いいぞR。
と思ったのも束の間…。先客の女の子はRを見るなり

「はい、およこし」

Rの買い物カゴをむんずと奪って、果物野菜のおもちゃを
独り占めしてしまったのだ。それからはRを見向きもしない。

僕はあまりの出来事にポカーン。Rも奪われるだけ奪われ、
家にも入れてもらえない仕打ちに会いポカーン。
R、文字通り「子供の使い」状態に。ワンテンポ遅れてようやく

「な…なんてジャイアンなガキ…恐ろしい子!」

メラメラと怒りが湧き上がって

「それ、この子のだから返してくれないかなあ」

怒りを殺してにっこりと女の子に手を差し出すと、ムッとした顔で
しぶしぶ返してくれた。Rに再びおもちゃを渡してやってから
僕は考えた。

僕は今、余計なことをしたのであろうか?

子供は純粋とはよく言うけれども、欲望に対しても
純粋だから欲しい物は独占しようとし、奪える相手か
どうかをちゃんと判断し、躊躇せず奪う。

Rがそのように侮られたのが何とも口惜しくて、つい
子供のケンカに(ケンカじゃなく略奪だけど)親が
出てしまった。

Rはおもちゃを他の子に奪われることがよくあるが、
たいてい奪い返す行動には出ず、寂しそうに別の
おもちゃを探すことが多い。

まだ「返して」と喋れるわけでもなく、奪い返す力も
ないけれども、自力でそうさせるようにするためには
僕が手を出すことではなかったのかもしれない。

色々考えさせられる遊び場であった。

それにしてもあの子の強奪っぷりは手際がよかった。
さすが後楽園遊園地…もとい、東京ドームシティだっけか。

後楽園遊園地で僕と搾取!
.

股ニティブルー。

娘・R(1才)が家の中を駆けずり回っていた。
それをボーっと突っ立って眺めている僕。

Rは狭い部屋の中を行ったり来たりすれ違い。
可愛いふりしてあの子、わりとやるもんだねと、
よく疲れずに延々と繰り返しているものだと
感心していた。

するとRがいきなり僕の後ろに回り、僕の両足の
ふくらはぎあたりをガシッと掴んだ。そして頭を
僕のお尻にぐいぐい押し当てるではないか。

Rの背は僕の腰ぐらい。だからRの頭の位置はちょうど
それぐらいになるのである。Rにオカマ掘られてる形
となった。

これってもしかしてスカルファック?1才児のくせに
なんという高度なプレイを…と悶絶していたら、Rは
僕の股間をくぐり抜け「でへへー」と走り去っていった。

それをぐるぐる何度も繰り返され…どうやらRの中で
「お股くぐり抜け」が熱くなってしまったようだ。

「ロンドン橋落ちた♪」みたいな遊びをしたいのだろうか、
可愛いものよのう、とその場は笑って過ごしたものだが、
悲劇はRとお風呂に入っている時に起こった。

なんと、風呂場でもRは僕の背後に回り、頭を僕の
生ケツに押し当ててくるではないか。

「R、だめ、やめなさい!」

裸でこの「お股くぐり抜け」はまずい!ロンドン橋が
落ちるどころか…Rの頭に僕の「ちょんまげ」が落ちる!
Rがお嫁に行けなくなってしまう!

僕はRの人生の危機を感じ、全力で阻止して湯舟に飛び込んだ
のであった。後になって嫁に報告した。

「いやー。Rが僕のお股をくぐりたがるんだよね」

「そんな汚いとこ通らせるのやめさせなさい!」

嫁の雷も落ちた。き、汚いって…。
.

イチゴ一会〜真珠の涙を浮かべたら、オヤジなんてイチゴロよ〜

栃木の母親がやって来た。

「お母さんねえ。おととい歌舞伎町のコマ劇場で
 氷川きよし観て来たんだ〜」

相変わらずなミーハーっぷりを嘲り笑おうと思ったが、
僕は昨日、そのコマ劇場の向かいのライブハウスで
ヌメリナイトというインターネッツ臭いイベントに
望月君
と行っていたという、相変わらずのオタクっぷり
だったので笑うことは出来なかった。

さて、母がお土産に持って来てくれたイチゴのショートケーキを
頬張ろうとしたところ、

photo「じーーー」

娘・R(1才)が、それこそカモを狙う歌舞伎町のキャッチの如き
鋭い眼光でイチゴを睨んでいた。Rはイチゴが大好きなのである。
ケーキの上には半分にカットされたイチゴが3つ刺さっており、

「食べるかい?」

その内ひとつを生クリームを拭って渡してやると、ぺロリと
食べてしまった。ひとつだけでは満足できないRは

「てゅ?てゅ?」

残りのイチゴもおよこし!と手を伸ばして来るので僕は
全てのイチゴをRにあげた。まだ一口も食べていないのに
華がなくなったケーキを見て少し悲しくなったが、1才の
実の娘と本気で食い物の争いをするのは、余りにも痛い
所業だと思えたのでここは我慢である。

もさもさとケーキを食い進めていくと、スポンジの真ん中に
イチゴが埋め込まれていた。ラッキーである。小さくスライス
されたものだが、ようやく食べられる…と口に運ぼうとしたところ

「てゅ?てゅ?」

またしてもRの要求の手が!オヤジにも食わせてくれよう!
オヤジ狩りしてイチゴ狩りかよう!

しかし僕は悲しい親馬鹿の性、可愛い可愛い娘に全てのイチゴを
食べさせ、スポンジと生クリームだけの禿山のようになった
ケーキを間食したのであった。

しかしRは本当に目敏い…恐ろしい子!まるで百姓に重税を課し、
ケツの毛まで毟り取る悪大名のような冷酷さである。

イチゴや。お主もワルよのう…。
.

甘えっ子娘育成計画。

嫁が産婦人科の診断から戻って来た時、
不思議な気持ちになった。

甘えん坊の娘・R(1才)

「この子がお姉さんになるとはなあ」

このことであった。

「おい、R、お前がお姉さんだよ」

寝ているRの頭をポンポンと撫でて感慨にふけっていたところ

「そういうことを言っちゃダメなのよ!」

嫁が異論反論をオブジェクションしてきた。

「この子は今、甘えたい盛りの時期なのよ。お姉ちゃんだから
我慢しようねとか言っても、我慢するっていう分別もないし
理解もできないの。だからRに『お父さんお母さんを赤ちゃんに
盗られてしまう…』ってイメージを与えてはいけないの。
甘えたいだけ甘えさせないとダメなのよ」

今日の産婦人科医にそう言われたのだそうだ。分別もつかない時期に
無理矢理我慢させようとしても、Rの心に悪影響を及ぼすのみ。
そしてこのことが心の影となり、将来グレてレディースに入団し
喧嘩上等愛死天流、不純異性交遊で桃色遊戯でニャンニャンして
しまうかもしれない、ということなのだろうか。

しかし果たしてそうだろうか。頭脳の発達も個々に違うだろうから、
徐々に教育していくのも可能ではなかろうか。この不景気の御時世、
いつまでも親に頼ってばかりではなく、早いうちから自立性のある…
インディペンデントな女性になって欲しいと思うことはある。

Rが僕らから離れる日…Rのインディペンスデイもいつかは来るんだな…。
ふと遠い目で将来を見やる。まだ何もヴィジョンは見えないが。

Rをどう育てるか。自立性のあるしっかりとしたインディペンデント娘
にするか。それとも甘えたければ甘えるがいいという方針で、生粋の
甘えっ子にするか。ちょっと考えてみる。

まず甘えっ子の場合。

「ねえ〜パパ〜。お洋服買って〜(と腕を組み胸をすりすりさせる)」

次にインディペンデント娘の場合。

「ちょっと!胸を触らないで下さい!いくら親子とはいえ
 訴えますよ」!

…。

やはりRには甘えるだけ甘えてもらって、思いっきり甘えっ子に
育てることとしよう。いずれ親から独り立ちしなければならないの
だけれど。

ひとまず嫁のつわりがひどく、とても夜の契りなどは出来ないため
僕の「息子」だけは自立している。独り勃ち。

インディペンデント息子。
インポテンツではない。
.

今日は楽しい犬祭り。

娘・R(1才)は犬が好きである。
娘・R(1才)はシールで遊ぶのが好きである。

ということは犬のシールをあげれば喜ぶに違いない。
そんなわけで犬のシールがいっぱい詰まったシール本を
買ってきた。

Rに早速与えてやると

「わんわん。わんわん」

と目を輝かせてシールに飛びついた。おそらく家中に
犬シールが貼られることになると思うが…その時は
嫁、掃除よろしく!などと勝手なことを考えていたが、

「ぎゃー。何するのー」

Rは家じゃなく嫁の顔にばかりベタベタと貼りまくる
のであった。ケラケラ笑っていると

「ぬぎゃー」

僕の顔面も犬シールの餌食になってしまった。何故
親の顔ばかりに貼るのだ…。

犬だらけになった嫁の顔。マヌケだ。いや、これは考えように
よっては縁起の良いことである。嫁は第2子を身篭っており、
犬は安産の象徴である。まさかRはそこまで考えて…と想像すると
目が潤んできた。

そして僕も犬だらけ。これは何を表わすものであろうか。
言わずもがな人生の負け犬とか…。まさかRはそこまで考えて…
と想像すると違った意味で目が潤んできた。
 
しかし、やられっぱなしではない。Rからシールを奪い、僕も
Rの手や顔に犬をペタペタ貼ってやった。ひとつひとつのシールを
良く見てみると、様々な種類の犬がある。

ダックスフンド、土佐犬、秋田犬、柴犬、パグ犬…。

「ひーん!ひーん!」

Rが突然怒り出した。どうやら自分に貼られるのはとても嫌なようだ。

「怒っちゃやーよ!」

志村犬!なんつって。

シールをひとつずつ剥がしてやるのだが、粘着が強かったりRが動くので
なかなか取れないものがあり「ぬきゃきゃきゃー!」とRは更に怒り出す。

「不器用ですから…」

高倉犬!なんつって。
.

朝は淑女のように。夜は爆竹のように。

へろへろ〜んと携帯アラームが鳴って
目覚める朝。娘・R(1才)もむっくりと起きる。

「うふふふ」

寝起きなのに異様にテンションが高いRは、早速
ジタバタと絵本を持って来て

「でぃ?」

読め、と僕に差し出すのであった。はいはい、
読みますよ…。

「いぬ、わんわんわんわん。
 ねこ、にゃんにゃんにゃんにゃん。
 ふみきり、かんかんかんかん。 
 じどうしゃ、ぶーぶーぶーぶー」

…ああ、いかぬ。読んでる内に眠くなってしまった。
おやじ、ぐーぐーぐーぐー。

「ゴメン。あと10分だけ寝かせて」

Rの頭を撫でて、ぼふっと布団に突っ伏したのだが

「うあああああ!」

Rが許しませぬぞよとばかりに雄叫びを上げ、
僕の頭をガスガスと容赦なく引っ叩く。

「へい。分かりました。では読みます。
 赤ちゃん、えーんえーんえーんえーん…」

駄目だ。やはり眠い。お父ちゃんはな、絵本より
素敵な夢を見て君に話してあげるんだよ…と
再び寝ようとするのだが

「うわああああ!」

また同じことの繰り返し。夢より現実に重きを置く1才児R。
結局二度寝はできなかった。

そして夜…。Rが夜泣きでぐずっていた。

「おーよしよし」

僕があやしても手をぶんぶん振り

「あっち行け」

とばかりにギャアアと泣き叫ぶ。朝はあれだけ甘えてきたのに…。
絵本も読みたくないですか。そうですか。

父はひとり寂しく絵露本でも見よう…。
.

妊娠3ヶ月。

仕事中、産婦人科の診断に行っている嫁から

「お腹の子は順調に育ってます」

とのメールが入った。ああ、まだ見ぬ健気な長男もしくは
次女よ…。会える予定は10月。現在3ヶ月目に入ったとのことで、
逆算してみると今年の秘め初めの産物に間違いない。

年末ジャンボは買わなかったが、
年初のチ○ポは大当たりだった。

しかし娘・R(1才)の時は、いつのまぐわいによるものか
特定出来ないぐらい乱射していたのに、それに比べると
寂しい趣がある。現在もこの診断のために2週間以上も
まぐわい禁止令を出されているのであるが…。

夜、会社から帰ってくると嫁の姿がなかった。
暫くして便所の扉がギイイと開いたかと思うと、
そこから出てきたのは…ヒイイ!花子さん!
ではなくて、やつれた嫁。トイレに籠もっていたのだ。
ひと目でつわりがひどいことが分かった。

「順調な結果でよかった。大丈夫か?」

「よかったけど、よくない。またケロケロしちゃった」

「ま、体を大事に…ほれ、休んで…」

嫁の肩をポンと叩いて寝床に誘った。嫁は溜息を付いて
寝返りを打ったが、驚くべき発言をした。

「こんなに気持ち悪くなかったら、解禁後初のエッチを
 しようと思ったんだけどなあ…」

なんと、自らを「枯れた」と言って憚らない嫁が、自分から
「イタシタイ…」と言ってくるとは。西からお日様が昇るよりも
稀有なことである。

「何!それは聞き捨てならん!そうとなったら話は別だ!
 いざ交わらん!いざそこに直れ、そこに寝れ!」

「気持ち悪いって言ってるでしょー!ダメ!」

だったら最初からその気にさせるようなことを
言わないで欲しかった…。

妊娠してるのに否認するとはこれ如何に。
Rがいるのに育児なし(意気地無し)と言うが如し。
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