イチゴ一会〜真珠の涙を浮かべたら、オヤジなんてイチゴロよ〜

栃木の母親がやって来た。

「お母さんねえ。おととい歌舞伎町のコマ劇場で
 氷川きよし観て来たんだ〜」

相変わらずなミーハーっぷりを嘲り笑おうと思ったが、
僕は昨日、そのコマ劇場の向かいのライブハウスで
ヌメリナイトというインターネッツ臭いイベントに
望月君
と行っていたという、相変わらずのオタクっぷり
だったので笑うことは出来なかった。

さて、母がお土産に持って来てくれたイチゴのショートケーキを
頬張ろうとしたところ、

photo「じーーー」

娘・R(1才)が、それこそカモを狙う歌舞伎町のキャッチの如き
鋭い眼光でイチゴを睨んでいた。Rはイチゴが大好きなのである。
ケーキの上には半分にカットされたイチゴが3つ刺さっており、

「食べるかい?」

その内ひとつを生クリームを拭って渡してやると、ぺロリと
食べてしまった。ひとつだけでは満足できないRは

「てゅ?てゅ?」

残りのイチゴもおよこし!と手を伸ばして来るので僕は
全てのイチゴをRにあげた。まだ一口も食べていないのに
華がなくなったケーキを見て少し悲しくなったが、1才の
実の娘と本気で食い物の争いをするのは、余りにも痛い
所業だと思えたのでここは我慢である。

もさもさとケーキを食い進めていくと、スポンジの真ん中に
イチゴが埋め込まれていた。ラッキーである。小さくスライス
されたものだが、ようやく食べられる…と口に運ぼうとしたところ

「てゅ?てゅ?」

またしてもRの要求の手が!オヤジにも食わせてくれよう!
オヤジ狩りしてイチゴ狩りかよう!

しかし僕は悲しい親馬鹿の性、可愛い可愛い娘に全てのイチゴを
食べさせ、スポンジと生クリームだけの禿山のようになった
ケーキを間食したのであった。

しかしRは本当に目敏い…恐ろしい子!まるで百姓に重税を課し、
ケツの毛まで毟り取る悪大名のような冷酷さである。

イチゴや。お主もワルよのう…。
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