下半身タイガース。

photo
「エキセントリックなお方。」
のはなぽさんが描いてくれた娘・R。
ありがとう!

風呂から出た娘・R(2才)が踊っていた。パジャマを
着るまでの間、Rは気ままなネイキッドダンサーとなる。

「お尻ふりふり〜」

というNHK(なんとか・払って・下さいよー)の幼児番組で
やっている歌を歌ってやると、

「んーうふふふー」

ちゃんとおヒップをプリプリ揺らして踊る。可愛くてたまらん。

この頃流行の女の子。お尻の小さな女の子。こっちを向いてよ
R〜。お父さん、だってなんだか、だってだってなんだもんな
気分になってしまうのである。

Rは無邪気なストリッパー。親父は頭がジステンパー。また
親馬鹿が始まったよ、と思われるかもしれないが、未だ
どこぞの馬の骨とも知れない男の手垢が付いていない、汚れ
なき娘の小さなお尻が揺れる様を見ようものなら、父親なんて
イチコロよ。

一方で自分の下半身を鏡に映してみる。Rと同じ血を分けた人間
とは思えない程の、ただひたすら醜いオタク三十路男のケツである。
アホが見ーるー、オタのケーツー。

Rが公衆の面前でお尻を出してフリフリしても、それは可愛い
モウコハンで済むが、僕が同じことをすればそれは危ない
ゲンコウハンである。

Rに目を戻すと、踊りはやめてしまっていた。

「ほらほら、もっとお尻ふりふりー」

僕も使い古した腰を振ってRを誘う。さあもっとお尻振り振りを
父に見せるのだ。お父さんも頑張るよ。

「下半ー身ータイガース!振れー振れ振れ振れー!」

でも実は巨人ファンである。

.

狂態電話。

夜に会社の歓送迎会があったことをすっかり忘れていた。

嫁に無断で飲むと、1週間は口を聞いてくれない。無断飲酒は
細木数子を敵に回す程の恐ろしい行為なのである。

慌てて昼休みに嫁の携帯に電話して了解を得ることにした。

「もしもし。今日歓送迎会だからご飯いらない」

「あらそう。今R(2才の娘)と児童館の帰りなのよ」

歓送迎会などの職場イベントはなかなか断れない。嫁はそれを
よく理解してくれているようで、特に嫌味も言われずにあっさり
OKを出してくれた。電話の向こうからは

「Rちゃん、おとうさんよ。Rちゃんは何才かな〜」

嫁がRの声を聞かせようとしてくれている様子が窺え、その後

「あんしゃーい」(にさい、とはまだ言えない)

と、紛う事なき我が娘の声が聞こえた。Rは普段キャアキャアと
喋っているくせに、電話を向けると何故か寡黙になってしまう
傾向がある。だから今日も喋ってはくれないだろうと思っていた
だけに感激もひとしおである。

「R、わんわんって言ってみて」

「わんわん!」

「ぶたさんは言えるかな?」

「ぶーぶー」

会社という戦場の中にあって、ひとときの安らぎを求め、つい
Rの声をたくさん聞きたくなってしまう。

「じゃあ、象さんは?」

「ぞうしゃーん、ぞうしゃーん」

「よし、上手だぞー。象さーん」

気がつくと周りの会社同僚がニヤニヤとこちらを見ていたので、
イヤーン恥ずかしいまいっちんぐ。

「じゃ、Rちゃんバイバイ」

「ばいばーい」

ちゃんと電話でも会話ができるようになった!と喜びに浸って
いると、待ってましたとばかりに同僚にからかわれてしまった。

「いやー。いいお父さんしてるねえ」

「はは…そうでもないですよ」

「お父さんも象さんを見せてあげなきゃ。ほーらお父さん
 象さんだよーん。お前を作った立派な象さんだよーって」

「…ハードゲイみたいに腰振らないで下さい」

いかにお下劣な僕であっても、さすがに怒れるお父さん象さんは
汚れなきRの目に触れさせるわけにはいかぬ。

無断飲酒は嫁から禁じられており、必ず事前許可が必要であるが、
無断手淫については罪を問われないので、今夜辺りこっそりと
暴れることになるであろう。

許可を求められても困ると思うが。

.

どっちの性別でショー。

妊娠中の嫁はマタニティヨガに通っている。

そこのヨガマスターが嫁の首筋と腕に手を当て、

「男の子ですかー?女の子ですかー?」

嫁に呼びかけながら筋肉の動きなどを診て取って

「多分男の子ですね。80%の確率ですけど」

と言ったそうだ。

「それはダウジングみたいなもんか?」

「そうだと思う。産まれたら当たってたかどうか教えてね、
 だってさ」

嫁は鍼灸院にも通っている。そこでは

「赤ちゃんマークが出てるね。20%ぐらい」

と言われたそうだ。

「なんだその赤ちゃんマークというのは?見えるんか?」

「先生には見えるらしいんだけど。20%だとまだ産まれては
 こなくて、40%だとそろそろなんだってさ」

「うーん。何がマークで何が20%なんだかさっぱり分からん…」

はっきりとしたデータを出す西洋医学と違い、なんだか曖昧な
東洋医学。しかし体を診て触っていろいろと分かるのは何となく
凄いんだろうなあというのは分かる。

「ええか?ここがええのんか?」

というようなザ・スポットGもすぐ分かってしまうのであろう。
ちょっと羨ましいような気がする。

もう産婦人科の検診もなく、出産を迎えるだけになった今。
この診断は当たるのだろうか。

そしてその答えが出るのはいつになるのだろうか…。

.

レイザーラモンHD。

もし自分のパソコンのハードディスクが
ハードゲイ風に喋ったら。


「どーもー!ハードディスクでーす」

「君、最近調子悪いよね。起動しない時あるし」

「バックアップして下さいよ〜。もう4年も使われているん
ですから。本家ハードゲイの芸風は1年持つかどうか分かり
 ませんけどね〜」

「わりとひどいこと言うね」

「バックアップは大切。バックから突いてアップ! アップ!
アップ!バッチコーイ!」

「電源切る」

「流した。フォ〜」

「でもR(2才の娘)の画像と動画はちゃんとDVDにコピーしたよ」

「オッケー!ギガ単位であるんですからね〜。ところでDVDって
 何の略か知ってますかあ? ダッチワイフ!バイブレーター!
 デラべっぴん!で、ディー・ヴィー・ディー!フォー!」

「電源切る」

「流した。フォ〜。エロティックな動画も沢山入れてるくせに。
 ハードコアディスクでーす!」

「それは嫁にコピーしないけどね。当たり前か」

「違法コピーはダメですよ〜。ちゃんと正規購入しましょう。
 エッチなビデオなだけに性器購入。オッケー!」

「やっぱ新しいハードディスクに買い換えようかな」

「セイセイセイ!ちょっと待って下さいよ〜。まだバックアップ
 してないデータもあるじゃないですか〜」

「そうなんだ。Rのバックアップは、とりあえずDVD1枚分だけ
 焼いて、嫁のパソコンにコピーさせるために貸したんだけど、
 それだけで膨大過ぎて呆れられたよ。撮り過ぎだって」

「親馬鹿ですね〜」

「嫁だってRの写真をネットにUPしてブログとかやってるのにさ。
 その嫁に言われるとは思わなかったよ」

「どっちもどっちの親馬鹿ですよ〜。あなたの奥さんは、まさに
 ドッチワイフ!フォー!」

「フォーフォー言ってるとフォーマットするぞ!」

「セイセイセイ!」

完。

(下らな過ぎて申し訳ありません)

.

レイザーラモンHD。

もし自分のパソコンのハードディスクが
ハードゲイ風に喋ったら。


「どーもー!ハードディスクでーす」

「君、最近調子悪いよね。起動しない時あるし」

「バックアップして下さいよ〜。もう4年も使われているん
ですから。本家ハードゲイの芸風は1年持つかどうか分かり
 ませんけどね〜」

「わりとひどいこと言うね」

「バックアップは大切。バックから突いてアップ! アップ!
アップ!バッチコーイ!」

「電源切る」

「流した。フォ〜」

「でもR(2才の娘)の画像と動画はちゃんとDVDにコピーしたよ」

「オッケー!ギガ単位であるんですからね〜。ところでDVDって
 何の略か知ってますかあ? ダッチワイフ!バイブレーター!
 デラべっぴん!で、ディー・ヴィー・ディー!フォー!」

「電源切る」

「流した。フォ〜。エロティックな動画も沢山入れてるくせに。
 ハードコアディスクでーす!」

「それは嫁にコピーしないけどね。当たり前か」

「違法コピーはダメですよ〜。ちゃんと正規購入しましょう。
 エッチなビデオなだけに性器購入。オッケー!」

「やっぱ新しいハードディスクに買い換えようかな」

「セイセイセイ!ちょっと待って下さいよ〜。まだバックアップ
 してないデータもあるじゃないですか〜」

「そうなんだ。Rのバックアップは、とりあえずDVD1枚分だけ
 焼いて、嫁のパソコンにコピーさせるために貸したんだけど、
 それだけで膨大過ぎて呆れられたよ。撮り過ぎだって」

「親馬鹿ですね〜」

「嫁だってRの写真をネットにUPしてブログとかやってるのにさ。
 その嫁に言われるとは思わなかったよ」

「どっちもどっちの親馬鹿ですよ〜。あなたの奥さんは、まさに
 ドッチワイフ!フォー!」

「フォーフォー言ってるとフォーマットするぞ!」

「セイセイセイ!」

完。

(下らな過ぎて申し訳ありません)

.

江戸前出産前寿司。

嫁のお腹の中の第2子・トロ(胎児名)の出産予定日は10月1日。
あと1週間を切った。

出産前祝いというか景気付けというか、そんな意味合いで寿司
でも食いに行くか、ということになった。

「でも妊婦は大きな魚を食べないほうがいいって…水銀が多く
 含まれているから…」

嫁は多少気にしていたが、魚ばかり食べているわけでもなし、
と諭してみたら

「トロちゃんの安産をトロを食べて祈ろう〜」

2秒で翻ってホイホイ付いてきた。

妊娠前にはよく行っていた通称「バイオレンス寿司」は避け
(行くと必ず客が喧嘩していたり酔っ払いに絡まれたりする
デンジャラスな寿司屋なのである)、今まで行った事のない
商店街の外れの寿司屋に行った。

座敷に通されて食べ始めると、驚いたことに娘・R(2才)が
呪われたように食べる。今迄ナマモノは食べさせたことはなか
ったが、マグロやホタテなどをペロリと食べてしまった。

「あらー。よく食べるわねえ」

寿司屋の女将が目を丸くして驚いていると

「おいしー!」

なかなか外交術にも長けてきたRはそう言って更にトロにも
食指を伸ばすのであった。その一方でRは突然

「あんまん!」(アンパンマンのこと)

と叫びだすので

「ん?どこにアンパンマンがいるのかな?」

と辺りを見回してみると嫁がそっと耳打ちした。

「隣の座敷に座ってる女の子の靴下がそうなのよ」

「あ…」

ちょうどその小1ぐらいの女の子にギロリと睨まれてしまった。
へへ、怪しいもんじゃないよ…おいら、ベロってんだ。

最後に嫁とトロを一貫ずつ手に取って

「じゃあ安産を祈って…乾杯」

寿司の食べ納めをしたのであった。

「あー。トロちゃん、トロおいしかったねー」

帰り道、嫁が溜息をつきながら呟いていた。トロがトロを…
これって共食いになるのだろうか。いや、直接食べたのは嫁
だから間接共食いに…などとどうでもいいことを考えていたが、
突如僕は閃いた。

「トロの出産予定日は、ト・ロだから10月6日だ!」

金田一少年並みの素晴らしい推理であったが

「えー。5日も伸びるなんてやだよ」

嫁はお気に召さなかったようである。

.

水もしたたるいい幼女。

そこそこ暑かった金曜日。

僕と嫁と娘・R(2才)は光が丘公園にいた。ここは大きな公園で、
1メートル幅ぐらいの人工の小川が流れており、子供達が裸足で
水遊びをしていた。

Rは彼らの姿をじっと見ていた。インドア派でオタクな僕の血を
引いているせいか、Rは汚れたり濡れたりする遊びをあまりしよう
としない。今回もRは尻込みしているのか迷っているのか…。

小川の中にはRと同じくらいの年の女の子もいる。丸々太った体に
宮川大助のような顔。派手に水しぶきを上げて突っ走る様はまるで
サバンナの水牛のよう。

あそこまで野生化しなくてもよいが、子供らしいアウトドア派ぶりには
惚れ惚れする。少しはRもあやかって欲しい。僕でさえ今でこそオタク
だが、子供の頃は子供らしく外を駆け回って遊び、背伸びをしたい
お年頃になってからはスカートめくりに励んだものだ。だからRにも
出来るはずである。オタクの子はオタク、と諦めてはいけない。

オタクはオタクに生まれるのではない。オタクになるのだ。

「Rもじゃぶじゃぶーって遊んでみるかい?」

意を決して水遊びの誘い水をかけたところ、Rは少し迷ったが

「くっく!くっく!」

靴を脱がせて、と水に入ることを決めた。おお、R、素敵だよ。
その姿は「私、脱ぐわ!」と決意した女優のように凛々しく、
僕が靴を脱がせるとソロソロと小川に入って行き

「きゃははははは!」

ものの10分もするとすっかり慣れてしまった。アウトドアの
子になってくれたようである。しかしはしゃぎ過ぎて先程の
水牛女児に向かって足で水をばっしゃんと掛けてしまい

「お嬢ちゃんごめんね。R!人に水を掛けちゃだめ!」

急激にアウトドア派になり過ぎたのを嫁が叱ったところ

「いえーい!ばしゃーん!」

他の子供にはやらなくなったが、僕にだけ水を浴びせるように
なってしまった。

「うわ。やめてくれ。僕は人じゃないのかー」

「いえーい!いえーい!ばしゃーん!」

Rがアウトドア派になってくれたのは嬉しいが、むごい。
いじめかこれは。僕は野比のび太のようにいじめられるが
ままで、悲鳴をあげることしか出来ない。

「助けてー。ホリエモーン」

あ、ライブドア派になっちゃった。

.

娘のジャイアンリサイタル。

娘・R(2才)が歌って踊っていた。

「あてれぷれれのれのれー」

何の歌か全く分からない歌詞とメロディ。僕がクラブで
酔っ払った時を彷彿させるような左右に揺れるステップ。
オモチャのトンカチを手に持ちマイクに見立てている。

僕は寝転がって新聞を読んでいたが、Rは新聞を奪い去り

「めー!ないない!」

新聞を片付けろ、と要求したした後

「ち!ち!」

こっちだ、とRの目の前を指差した。そこに座ってワタシの
歌と踊りを見ろ、ということらしい。まるでRのジャイアン
リサイタルである。

「はいはい、みてますよー」

僕はよっこい庄一と座り、Rの歌と踊りを眺めていたのだが

「めー!めーよ!」

Rはまだ不満があるらしい。何だろうと訳が分からぬまま
いると、Rは僕の両手を取り、合掌する形を取らせた。しかし
それでどうしろというのか。まだ理解できない。すると痺れを
切らしたRが

「ぽん!ぽん!」

と言った。

「あ、手拍子を取れってこと?」

なんてわがままな…ジャイアンだってそこまで要求しない!
R、なんて子!しかし我が子の傲慢さに驚きつつも、僕は
のび太やスネオのように従順に

「はい、じょーずじょーず」

と、パンパン手拍子を取りながら、いつ終わるとも知れない
我が家のディーヴァ(歌姫)のワンマンゴウマンリサイタルに
付き合うのであった。

嫁も隣で寝転がってるのに何故僕だけ…。

.

産めよ増やせよ教えろよ。

嫁のお腹にいる第2子トロ(胎児名)は、長女R(2才)の
時と比べて胎動が大人しいような気がする。

Rの場合は呼びかけると腹をドオンと蹴ってきたりして
いたのだが、トロの場合は「ぐにゅううん」とゆったり
動いている時が多い。例えて言うならば陰茎が徐々に
屹立してゆく動きのような(なんて例えだ)

しかし胎動が激しい程元気である、というわけでは
ないらしい。嫁が助産師に言われたことによると、

「居心地が悪いから暴れてるんです」

とのことで…。この助産師の説を採るならば、僕はRの
胎動に対しては

「ハーイ、パパ」

などと小さな命が健気に応えていることよ、と感動した
ものだがそれは幻想で、実際は

「ダリー。うっせえよ」

ということであったようだ。ひどいわR。いたいけな
父を騙したのね。

一方、とある方に教えてもらったことによると

「お腹の子にいつ生まれるのか日にちを云って聞いていくと、
 生まれる日にお腹を蹴って答えるとかいう話があります」

ということで、何れにせよ外からの呼びかけで胎動を起こす
ことは確かである。早速嫁の腹に手を伸ばし、聞いてみた。

「トロ、産まれてくるのは明日ですか、明後日ですか」

トロの胎動はない。今起きている筈だと嫁は言うのだが…。

「みっふぃー!」

一方で横からRがミッフィーの絵本を読めと催促を始めた。
しかし心を鬼にしてそれを突っぱね、トロへの質問を続ける。

「産まれてくるのは24日ですか、25日ですか」

「みっふぃー!」

「26日ですか、27日ですか」

「みっふぃー!おーい!」

「Rぅうううう。わかった。お父さんの負けだ」

結局トロの返事は得られないまま、Rに根負けして絵本を読む
のであった。トロはまだ教えたくないのだろうか。もっと腹を
割って話し合おうぜ〜。あ、それだと帝王切開になってしまうか。

しばらくしてからもう一度嫁のお腹を撫でたが、やはり反応は
なかった。これがホントの

腹のさぐり合い。なんつって。

.

男か女か分からないまま出産予定日が近付く僕らは。

妊娠中の嫁が行っている産婦人科。

最後の診断を終え、あとは産まれるのを待つばかりだが
寡黙な医者が性別を教えてくれないため、とうとう男か
女か分からないまま出産を迎えることになってしまった。

「エコー画面でも顔しか見れなくてさあ」

お腹の子、トロ(胎児名)のリアル名を付ける権利がある
嫁は男女両方の案を考えなければならなくなった。しかも
今回の出産はかなり早いだろう、とも言われたらしい。

「陣痛が来たらすぐ来なさい!もたもたしてると家で産む
 羽目になりますよ、って言われた」

えーそれってガバガバってこと…どうりで最近…いや、
そんなことを言うと嫁に殺されるので

「そうすると僕が仕事中だと間に合わないかもしれない。
 頼む、産まれるなら夜にしてくれ。それか日曜日で頼む」

嫁のお腹を撫でながらトロにお願いをしたのであった。
出産予定日は10月1日だが、もっと早まるかもしれない。

「産まれる時になると、上の子(長女R:2才)が妙にはしゃぎ
 出すこともある、って言ってた」

「ふーん。小さい子供だけに分かる前兆があるのかね」

しかしRのいつもの行動は

「おいでー」(何かと僕を連れまわして遊ぼうとする)

「ぽーん!」(キャッチボールをしようと激しく誘う)

「もっかい!」(デジカメで撮ったRの動画を何度も見たがる)

「あんまん!」(アンパンマンのヴィデオを見せろとしつこい)

という感じで…

「いつも最高潮にはしゃいでるじゃないか」

「そうなんだよね」

普段からハードゲイ並みのハイテンションのRでは判断できない
という結論に至った。しかし一応聞くだけ聞いてみるかとRに
話してみた。

「R、トロちゃんはいつ産まれて来るか分かるかな?」

「ねんね!」

寝ろ!ということで…。

果報は寝て待て、と言いたいのかもしれない。

.

アキバナデシコ七変化。

娘・R(2才)と戯れていると、嫁が

「こないだテレビ見てたら『アキバ王選手権』っていうのを
 やってて、こういう問題が出てね…」

と言ってきたので驚いた。何でそんな胎教に悪そうなの
見てんだよ。Rにしても、見せたらトラウマになるだろうが。

言うまでもなくアキバ=秋葉原=オタクの聖地。そんな
イロモノ企画の王になったとてどうなるというのであろう。
スパ王の方がうまいだけマシだと思われる。

しかし僕もインターネットにどっぷり浸かり、秋葉原には
そんなに行かないまでも、いわばオタク属性の男。
近親憎悪を覚えつつもつい嫁の話を聞いてしまう。

「問題です。あるメイド喫茶ではメイドさんがコーヒーに
 砂糖とミルクを入れてくれます。さて、お客はどのように
 お礼を言うでしょうか」

うーん。普通に「ありがとう」ではないだろう。もしかすると

「姉ちゃんの母乳も入れたってや。へっへっへ」

かもしれない。いやそれだとアキバ王じゃなくてただの
セクハラ王である。僕は降参した。

「わからない。なんて言うの?」

「グッジョブ!(good job)って言うんだって!」

「…」

それって、2ちゃんねるとかでよく見る

photo

こういうやつ?実生活で使うとはさすがオタクである。
きんもーっ☆

「グッジョブ…ねえ…」

口に出して言ってみてもやはり変…と首をかしげた
ところで、僕の側にいたRが

「ぐっ!じょぶ!」

なんと覚えてしまったではないか。しかも拳を握って
親指を立てるポーズまでしている。そんなことまでは
教えてないのに何故!さては嫁、やはりテレビを見せて
いたに違いない。

「R、そんな言葉覚えなくてもいいから!」

「ぐっ!じょぶ!ぐっ!じょぶ!」

さすが齢1才2ヶ月にしてセクシーコマンドーの「放課後
キャンパス」を覚えてしまっただけのことはある。
(2004年10月16日の日記参照)

「そんなこと言ってる子は、お尻触っちゃうぞー」

と、Rの臀部をぺろりんと撫でたのだがRは

「いえーい」

何故か喜んでいる様子。やはり僕はセクハラ王を
目指すべきなのだろうか。

「Rよ。父は頑張るぞ」

「いえーい。いえーい」

相変わらず両手を結んで親指を立ててイエーイ。
今度は松鶴家千とせになってしまったようだ。

(このオチ、今の人に分かるかな?分かんねえだろうなあ)

.

やっちゃったからできちゃった婚。

「すごいね。今や安達祐実が子供を作れる時代だってよ」

「相手は誰だっけ?」

「いや、竿のほうはどうでもいいんだけど…」

世間から乗り遅れた感じで、些か風化した下世話な芸能ネタを
嫁と話していた。あの「具が大きい」と言っていた女の子が
自分のお腹の中に大きな具を作ってしまうとはやはりすごい
世の中になったものだ。さすが21世紀。

しかしこういう話をしていると、アダッちゃんと僕の側でモグ
モグとご飯を食べている娘・R(2才)が重なってしまう。

できちゃった婚というお茶目感溢れる単語の流布と共に、昔とは
違って結婚と妊娠の順序が逆でも「おめでと」と普通に祝福する
ようになってしまったが、いざ将来Rがそのようなことになったら
当事者としてはやはりヘビーなものと思われる。

「お義父さん、できちゃいました」

などといきなり言われても

「どのツラと金玉下げて言ってんだこの馬の骨がー!」

いくら温厚な僕でも日本刀に手を掛けてしまうかもしれない。

娘狂愛の僕としては、やはり順序通り「カレシ紹介」→「婚約」→
「結婚」と小出し小出しに娘が徐々に巣立って行く様を渋々ながら
確認しないとどうなってしまうか分からない。

えー妊娠?結婚?一編に報告するなバカチンが!ていうか初孫?
娘を毒牙に掛けた男は憎し、しかしこいつの子供であり孫…。
というように混乱してメダパニもいいところである。

せめて口頭だけでもいいから「婚約しました」とでも伝えてくれた
後でなら何とか耐えられるかもしれない。

しかしアダッちゃんも数々の名ゼリフを残した女優なのだから、
男とウフーンな場面になった時でもちゃんと言うべきである。

「欲情するならゴムをくれ!」

と。
.

春色の汽車に乗って遊園地に連れて行ってよ。

嫁と娘・R(2才)を連れて近場の遊園地に行くことにした。
僕らが出掛ける仕度をするとRにもそれが分かるようで

「くっく!くっくー!」(靴の意)

まだ準備も整っていない内から靴を履かせろと玄関で座り込みを
するのである。

「お前は桜田淳子か…」

平成2ケタ生まれのRにこんなツッコミをしても分かる訳はなく、
ばたばたと出発し、都電荒川線に乗る。

「嫁、東京23区で一番洗濯物が乾きやすいところはどこだ?」

「は?」

「あら乾く(荒川区)だ」

「…」

仲睦まじい夫婦の会話を交わしながら荒川遊園地に到着した。
ここはとてもミニマムな遊園地であるが、Rぐらいの小さな子
には東京有名ネズミランドなどの大テーマパークよりも小回りが
利いて良い。

観覧車やメリーゴーラウンドに乗ってほのぼのとした気分を
味わった後、動物コーナーに行く。

「おっ!ヤギ夫!」

ヤギが檻の中から出ていて思わす稲中の前野みたいな反応をして
しまった。ここではヤギに直接触ることが出来るのである。

Rは怖がるかと思ったら意外にも自ら進み出てヤギをなでなで。

photo

成長したんだね…と嫁は感動していたが僕はRの横で

「おっ!ヤギ夫!」

稲中の前野みたいな反応をしてなでまくっている4才ぐらいの女児
の今後の成長が気掛かりであった。

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パンダ1号にも乗り更に稲中度UP。

しかし何よりもRの心に響いたのは、遊園地内を走る汽車のようで
あった。園内のどこにいても汽車の音が聞こえるたびに

「ぽっぽ!ぽっぽ!」

と、目を見開いて探しに行ってしまう。

「R〜さっきみんなで乗ったじゃないか」

「ぽっぽー!ぽっぽー!」

あまり駄々をこねないRにしては珍しく執着するので、もう一度
乗ってしまったのであった。将来Rが鉄子(鉄道マニア女子)に
なってしまわないか心配である。

「ぽっぽー。ぽっぽー」

汽車に揺られてRは嬉しそうだった。汽車だけに上機嫌じゃなくて
蒸気嫌。なんつって。汽車は先程の動物コーナーにさしかかり、
車窓からヤギ夫のお尻が見えた。

「ぽっぽ!」

いやそれは尻尾。

「ぽっぽ?」

今度は僕の股間を指差した。いや、それは、ちん…。待て。
そんなことまだ教えてないのに…。

.

酸っぱいブドウと酸っぱい胃液と甘酸っぱい人妻。

午前様になった翌朝、嫁に叩き起こされた。

「あなた、リトミック(お遊戯)教室お願いね」

そうだった。嫁は今日産婦人科に行かなければならないので
僕がR(2才の娘)を連れて行くことになっていたのだ。

頭痛と吐き気の完全な二日酔いでしばらく動けなかったが、嫁は
呆れてとっとと行ってしまった。誰のせいでもありゃしない。
みんなおいらが悪いのさ。身重の嫁を放って、僕だけ楽しんで
来たのだから自業自得。楽あればクロードチアリ。

「じゃあR、行きますか…」

Rの手を引いて駅前のリトミック教室まで歩いていく。途中、
猛烈な吐き気を催してゲーセンのトイレに駆け込んだ。

生まれて初めて「子連れゲロ」を体験した。

人生、長くなるといろいろ経験するものである。

ようやく教室に到着すると、そこはママと幼児の園。オヤジは
僕だけであった。嫁は父親もいる、と言っていたのにうそつき!
大きな見鏡に映った僕の姿はドラクエの「くさった死体」そのまま
だった。絶対まだ酒臭いだろうなあ…。それでも

「奥さんから聞いてますよ。今日はパパさんが連れて来て
 くれるんですってね」

嫁の教室友達であろう、菊川怜似の美人人妻が声を掛けてくれた。

「さあみんなで踊りましょう〜」

ヨウコ先生なるリトミック教室マスターがピアノを弾き始めると、
みんなが踊りだす。無垢な子供達と他愛もない踊りを踊っていると、
酒の瘴気がするすると抜けていく気がするから不思議である。

「じゃあ今日はみんなでブドウの絵を描きましょう」

ヨウコ先生がA2ぐらいのサイズの画用紙と絵の具を配り始めた。
ブドウの葉と茎だけが描かれており、実は紫の絵の具を指に付けて
ぐりぐり描く、というワイルドな描画だ。

「さ、R、指に絵の具を付けて」

しかし自分の手を汚したくないのかRは

「いやー!めー!めーよ!」

ひたすら逃げ回っている。他の子はちゃんとやってるのに。
Rを捕まえると何やら異臭がする。

「君、うんちしたね…」

「だから愚図っているのかもしれませんね」

先程の菊川怜似の美人人妻がフォローしてくれた。奥さん、
この後僕とティーでもドリンクしませんか…とナオンを
パーナンしそうになったがここは言わば嫁の縄張り。ばれたら
殺されるに決まっている。しかしそれ以前に酒臭い父とうんこ
臭い娘のスメルファミリーを相手にしてくれるとは思えぬ。

それにしてもRだけは一向にブドウの絵を描いてくれぬ。

「ほら、みんないい子にしてブドウ描いてるじゃないか」

画用紙を渡してもやはり

「めーよ!めーよ!」

怒って相手にしてくれない。

あ、これって…

怒りのブドウ。

.

酒に飲まれ嫁に怒鳴られ。

大阪にいる旧友、RHが帰省を兼ねて東京に来た、というので会って
飲んだ。

僕ら共通の友人、某漫画誌編集長HIRAMEさんにも来ていただいた。
そしてHIRAMEさんの仕事仲間の方々も一緒になってもらった。

そのうちのもんぺちゃんは3年ぶりぐらいになるだろうか。
最近落ち込んでいると言っていたが、この酒の席に限っては
明るく振舞って、というかうるさかった。

そしてHIRAMEさんの編集部の女性の方がひとり。この方がHIRAME
さんの漫画誌に連載中の漫画に出てくる「ひさぴょん」という
編集者だと教えられて超興奮。

もうひとりのK野さんという女性は僕と同い年の方だったが、
途中から色男RHとイチャイチャしていたのでむかつく、いや、
ふたりがこれを機会に結ばれることになったら素敵なことね、
ひとりじゃないって素敵なことね、と生暖かい目で見守っていた。

久々に飲む酒に酔っ払い、時間が経つのを忘れてしまっていたが、
そう、僕もひとりじゃない。途中嫁から電話がかかってきて我に
返るともう午前2時。血の気が引いた。時間を忘れるにも程が
ある。

こんな時間まで飲むなんて何年ぶりだろう。RHとタクシーで
帰る途中、これまた10年ぶりでタクシーゲロまでする有様。

家に帰ってスーツを洗っていたら起きて来た嫁に当然の如く
叱られた。

「R(2才の長女)なんかね、隣の人が帰ってきたのをあなた
 だと思って『おかえりー』ってずっと言っていたのよ!」

「ごめんなさい」

また嫁を敵に回す神をも恐れぬ不敵なことをしてしまった。
ひとりじゃないって〜不敵なことね〜。

恐る恐る嫁にデジカメを見せて

「ほら、リアルひさぴょんだよ…」

「うわー。すごーい」

ごめんね。

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Yahoo!カテゴリ掲載/出産予定日に休日出勤要請。

【お知らせ】

今日、YAHOOカテゴリに登録されました。ウホー。
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【お知らせおわり】


嫁の出産予定日は10月1日である。

土曜日だから余裕で立ち会えると安心していたところ、
恐ろしいことに2日の日曜も含めて休日出勤の予定に
なってしまった。下半期の始まりなので絶対外せない
仕事なのだ。

「嫁、ごめんよう…トロ(胎児名)、ごめんよう…」

必ずしもその日に産まれるとは限らないが、僕は相当
動揺してしまった。入院の手伝いが出来ない。立ち会い
が出来ない。長女R(2才)の時の様に嫁より早く我が子を
奪い、抱くことが出来ない。

しかし嫁は強かった。落ち着いて張りのある声でお腹トロに
向けて言った。

「トロちゃん、いい?1日はダメになっちゃったから
 もうちょっと遅く生まれて来るのよ!」

そうか。トロ本人に言い聞かせるのか。我が子ならきっと
理解してくれると信じることが大切なのだ。僕はどうせ
分からないからとハナから諦めていたことよ。

「トロ様、どうせなら前の週ぐらいがいいんですけど…
 こちらの勝手で申し訳ないんですが…」

それならば僕も、とつい仕事相手にアポを取るような
へりくだり方でトロに話しかける。

「ほらRもトロちゃーんってお願いしなさい」

僕らの脇でボーっとしていたRにもそう呼びかけると、
Rは嫁のお腹をナデナデと触りながら言うのだが

「Rチャーン、Rチャーン」

「そりゃお前の名前だ!」

「ダメだこりゃ」

ドリフのオチのファンファーレと共に崩れ落ちる僕と
嫁であった。

じゃあ後半戦参りましょう後半スタート!後半はオトナの
時間!子宮を中から突っついてみれば、トロも少し早めに
生まれてくるのでは…と嫁を押し倒そうと考えたのだが、
(もうトロは2,500グラムを超えているので問題ない)

なかなかRが寝てくれないので布団の上で悶々とするしか
なかった。そしていつの間にか寝てしまい、気付いたら朝。

ああ、また空しい朝を迎えてしまった…。

ババンババンバンバン。また哀愁〜。

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トイレの我が子さん。

娘・R(2才)はトイレトレーニングのお年頃。嫁が都度
練習させているが、現時点では

「しー」

おむつの中で排泄してしまった後に自己申告する。その後
トイレに連れて行け、と嫁の手を引っ張るのである。

Rはまだトイレを「排泄する場所」と完全理解しておらず、
「した後に便器にまたがる場所」と思っているらしい。
単に便器に登るのが楽しいからトイレに入る、と考えて
いるのかもしれない。

ニコニコと楽しそうに便器に座るRの姿はとても可愛い。
娘のトイレシーンなぞ今の内しか見れないのだから見れる
内に見とけと僕は覗きに行く。しかし最近はそんながっつ
いた下心が2才児にも通じたのか

「めーよ!」(R語で激しい拒否をあらわす)

覗くなと怒られてしまう。ああ、自ら期間限定の期限を
縮めるハメに。それならば覗くだけでなくトイレに連れて
行くところから始めてみよう。真面目に僕もトイレトレー
ニングをしてみよう…と、Rが「しー」と言ってきた
タイミングを見計らい

「じゃあお父さんとトイレ行きましょうか」

貴婦人をエスコートする英国紳士並の丁寧さでRの手を
取った。ところがRは

「めーよ!ママー!ママー!」

あくまでも嫁と行きたいと泣いてしまった。やはり下心が…
しかし待て。お風呂は喜んで一緒に入るではないか。なのに
何故…と僕は考えた。

何を恥ずかしいと感じるかは人それぞれである。自分の過去を
振り返れば思い当たることもなくもない。

僕は昔、嫁とはガンガンまぐわる癖に、お風呂は恥ずかしくて
絶対一緒に入れなかった。今はさすがに慣れたが自分でも理解
不能だった。

僕の血を引くRにも同様のことがあるのかもしれない…と、Rに
フラれたのでひとりトイレに入ったところ、Rの声が聞こえた。

「とーんとん」(ノックのつもり)

しまった。ドアに鍵をかけてなかった。ちょと、待て、今、
身動き取れない…しかしRは逆襲とばかりにドアをご開帳。

「きゃー。Rさんのエッチ!でも…これでおあいこ」

Rは2秒後無言でドアを閉めた。「見なきゃいい物を見てしまった」
というような苦い顔をしていた。2才児には刺激が強過ぎたか。

排泄物陳列罪。


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伝説のオウガニックバトル。

水道橋の「おもちゃ王国」を出、昼飯を食べるために店を
探して皇居方面に歩き始めた僕と嫁と娘・R(2才)

しかし良さげな店が見つからず、嫁が空腹で苛立ち始め

「そこのマックでいいよ。あ、あっちの吉牛でもいいよ」

嫁の美食レベルは最低の低まで落ち切っていた。しかし
僕は海原雄山ばりの冷徹さでそれを断わり歩き続けていた
ところ、神保町までやって来た。ここなら多少地理に明るい。

「神保町ならうまい洋食屋を知ってるぞ」

嫁をなだめて勇んで向かったのだが

「あ、休みだ」

「…最悪」

嫁の顔に般若が乗り移った。折りしもここは帝都のど真ん中。
空気が震えるほど怒りを露わにした嫁は、さながら帝都物語の
魔人・加藤保憲のよう。本当に東京を呪いで破壊しそうな勢い。
恐ろしい。触らぬ神に祟りなし、触らぬ嫁に孕みなしである。
触っちゃったから妊娠しているけど。

荒ぶる山の神を鎮めるには、祓いたまえ清めたまえと祝詞を
読む…わけはなく、早く食える店を見つけなければならず、

「あ、あそこになんかバイキングやってる店がある!」

幸いにもレストランを見つけたので一も二もなく飛び込んだ。
入店してから気付いたのだが、ここはオーガニックレストラン
というコンセプトの店で、有機野菜のみを使った料理しかない。

肉が全くなく、レンコンやイモの煮っ転がしのような料理しか
ない。僕は野菜が苦手で、しかもこのような料理は在り難そうに
盛り付けてなくても、実家の栃木に行けば幾らでも食えるし…と
途方に暮れていたら

「妊娠中の私やRには体にいいから歓迎だけど、アナタは辛い
 でしょ。本当にこの店でいいの?」

荒ぶる嫁が一転して上機嫌になって言った。

「いいよ。だって君、怖いんだもん」

Rも一生懸命モゴモゴと食べており、僕に

「おいしい?」

と聞いてきた。最近覚えたての言葉である。

「うん。おいしいよ。おいしいよR」

でも僕はオーガニックよりオーガズムの方が好きだ。

その横で腹を満たして一段落した嫁からは最早祟り神の恐ろしさは
消え、胎内で生命を育む穏やかな母なる神のように見えた。

孕みたまえ清めたまえ。


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おもちゃの変態。

東京ドームシティ内にある「おもちゃ王国」に行った。

広い屋内にチビッコ向けのおもちゃが沢山あり、非常に
子供心をそそる遊び場である。大人向けに例えるならば、
ソープ嬢とヘルス嬢とピンサロ譲とデリヘル嬢と宍戸錠が
400人ぐらい詰まった夢の城である。

入り口に書かれている注意書きのひとつに

「大人のみの入場は禁止です」

というのがあって、なかなか奥が深いことよと思った。
小さい子供が大好きな大きいお友達が犯罪を起こすのを
防ぐためであろう。また、いつマイケルジャクソンが侵略
しに来て、このおもちゃ王国を子供ごと買い取ってマイケル
王国にしてしまわないとも限らない。

さて、その外敵から守られた王国の中に「ままごとコーナー」
がある。Rを連れて行くと、食べ物のおもちゃがおそらく数百、
そしてコンロやキッチンのミニチュアが数十セットはあった。
とにかく膨大な数だ。

「さあR、こっちにいっぱいおもちゃがあるよ」

Rの手を引いて一緒に遊ぼうとしたら

「めっ!」

手を振り解いてひとりで奥に行ってしまった。こういう場所
では手を繋いでないと歩けなかったRが…逞しくなったね…。
こうして僕の手を離れて行き、やがてままごとより秘めごとを
いそしむようになり、訳の分からない男を「私のカレシ」とか
言って連れて来るのだろう…と落ち込んだ気持ちになったが

「どうじょー」

Rはピザ(のおもちゃ)を皿に載せて持って来てくれたので

「え、お父さんにくれるの?」

僕は一転してまんもすうれぴー。飴と鞭を使い分ける娘である
ことよ。というか、僕がそそるツボを徐々に心得て来ていると
思う。恐るべし2才児。

暫く遊んだ後、自販機コーナーで休憩。僕はアイスの自販機を
見つけ、無性に食べたくなって雪見大福を買ってしまった。

「あいしゅ」

Rが満面の笑みで見つめていた。そうだよねえ。見ちゃったら
食べたくなるよねえ。しかしこのようなジャンクを食べさせて
良いものだろうか…と思い悩んだ。

「あいしゅ」

Rがもう一度言った。僕はもうダメである。

「好きなだけお食べ」

と雪見大福を与え、Rはほぼ1個を平らげてしまった。
ああ、僕は惚れた女に飴しか与えられない男。

一方で嫁もアイスが大好きなのだが、出産直前なので太っては
いけないのでアイスは禁止されている。しかし僕は知ってて

「嫁、食べる?」

などと意地悪い誘いをかけてしまった。

「い、いらない」

嫁は歯を食いしばって答えた。

ああ、僕は釣った魚には鞭しか与えない男。


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屋上NOT欲情。

嫁の産婦人科の検診の帰り道、途中下車した駅で
昼飯を食った。

「ここのデパートの屋上に遊び場があるよ」

というので娘・R(2才)を遊ばせるためにいっちょ
行ってみるかということになった。すべり台とか
ちょっとした遊具でもあれば、Rも喜んで遊ぶだろう…
と思って行ったのだがそれが大いなる見当違いであった。

古ぼけ過ぎたプライズマシン。中に入っている景品の
お菓子は何年も前から取り替えてないんじゃないかと
思えて取ろうとすら思えない。

「故障中ゴメンネ」と貼り紙のある壊れたままのエレメカ。
画面が焼けてディスプレイが緑一色になったままのポップン
ミュージック。まるで10年前から時間に取り残されたような
ゲーセンであった。子供用の汽車の乗り物などもあったが、
汚いし今にも脱線しそうな勢い。

UFOキャッチャーの奥に人の足が見えてギョッとした。そっと
覗いてみると、そこは筐体で囲われた人ひとり入れるスペースに
なっており、この屋上と共に寂びれていった感じのくたびれた
オヤジが椅子に座ったまま寝ていた。どうやら係員のようである。
ものすごいヒマそうでいいなあ…。

「さ、さあR、何して遊ぼうか…」

デパートの屋上などに連れて行ったらRははしゃぎまくって
ひたすら駆け回って遊ぶのだが、ここに限っては全然リアク
ションがなく、物凄くテンションが低い。

2才児ですらソソらない遊戯施設ってどうよ…。

結局100円入れて走る電動カーに乗せてとっとと帰ることに
したのであった。

「わああ!」

先ほどのUFOキャッチャーの物陰の係員がぬうっと姿を現した。
ボーっとしていてやっぱりヒマそう。

「なんかすごく楽そうな仕事だね…」

「ヒマならメカ直してくれよ…」

嫁とブツブツ言いながら後にした。


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グレートサンフジンカーZ。

嫁のお腹にいる第2子・トロの最後の定期検診があった。

僕も娘・R(2才)のお守り役として西荻窪の産婦人科に
着いて行った。出産を間近に控え「身体が小さ過ぎる」
とか「身体に障害が…」等の結果が出ませんように、と
嫁も悶々と心配しているだろうと思っていたが、

「将来この子がKABAちゃんみたいなオカマになったら
 どうしよう…」

嫁の心配は既にトロの人生の先の先にまで進んでいた。
オカマも何もトロの性別もまだ分かってないし。そして
それが分かるチャンスは今日の検診が最後。今日を逃すと
もう産まれて見るまで分からないのである。

しかしこの西荻窪のジャズ好き産婦人科医は、尋ねても

「分かる時もあるし分からない時もあるねえ…」

質問をのらりくらりとかわして教えてくれない。糠に釘の
政治家のようである。なので今日こそは聞いてやろうと心に
決め、嫁の診察に臨んだ。

医師が嫁のお腹に器具を当てて、トロが映ったエコー画面
を見ている。僕も覗き込むが、やはり素人には分からない。

「先生。男ですか女ですか」

この一言が喉まで出掛かっているのだが、どうしても言えない。
知ってしまうことの恐れが邪魔して口が動かない。今日を逃す
と、もう二度と聞けないのに…。

そういえばこんなもどかしさが昔にもあったっけ。中学校の
卒業式の日、好きだったナオミちゃんに

「君が好きです」

この一言が喉まで出掛かっているのだが、どうしても言えない。
振られてしまうことの恐れが邪魔して口が動かない。今日を逃す
と、もう二度と言えないのに…。

結局そのままだった。大学生の時に再会したら綺麗になっていた。
気に入らない男子のパンツを脱がせ、ちんこ晒しの刑を執行して
いた過去など想像もつかない程清楚な美しさだった。やはりあの
時告白していれば…。

えーと、なんだっけ。

「はい、健康。これで終了…」

医師の言葉で我に返った。昔の回想に浸っている内に、次の患者の
為に退室せねばならない流れになっていた。しまった。僕はなんて
お馬鹿なデイドリーマー。最後のチャンスを逃した…と思えたが、
嫁がふと気が付いて

「そういえば私、血液検査をやってないんですけど」

と医師に質問すると

「え?あ、ホントだ。じゃあ今から血を採るから。結果は後だから
 来週また来て」

うわー。結構アバウトだよこの人。ということでまた西荻窪くんだり
まで来るハメになってしまった。しかしチャンスがもう一度与えられた
ということでもある。

来週こそは絶対告白…じゃなかった、男か女か聞いてやると決意し
産婦人科を後にしたのだった。

来週こそ先生には腹を割って話して欲しい。
いや産婦人科だから股を割って、かナ?


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我輩のお子である。名前がまだない。/日記才人から20万アクセス御礼。

嫁のお腹にいる第2子トロ(仮名)の名前を決めなければならない。

長女R(2才)の場合は、僕がベタ惚れにジュテームな元近所の
美少女・Rちゃんの名前をそのまま付けてしまったので、トロの
命名権は嫁にある。どんな名前になっても僕はそれを受け入れな
ければならない。

まだトロは性別が分からないが、最近の名前ランキングを見ると
男なら蓮、颯太、翔太、拓海、大翔…女ならさくら、美咲、凛、
陽菜、七海、未来…等が多いようである(安田生命調べ)

ランクインしているだけあって手垢が付きまくった感があり、場末
の街で「スナック紫苑」や「おしゃれサロンヤング」といった看板
を見た時と同じような今更感を覚えるのは僕だけであろうか。

(該当する名前の方、ごめんなさい。悪意はありません)

しかし嫁はこのあたりから持って来る可能性がとても高いため、
前もって覚悟を決めておきたいので嫁に探りを入れてみた。

「なあ、名前が決まってるなら教えてよ」

「やだ」

何故…。

それでも詰め寄ってみると、実のところ候補はあるものの、まだ
迷っていたのだった。なので僕らはもう何度目になるだろうか、
色々な名前を挙げて名前比べを始めた。嫁は言う。

「あなたも私も名前の最後が『き』でしょう?トロもそうしようと
思ったんだけど、やめたわ」

「え、どうして?」

「だってRだけ『き』じゃないことになるよ。かわいそうよ」

ああそうだった。僕の邪な恋心を貫き通してしまったばかりに。
そのような名前を付けてしまったらRは将来きっと聞いて来る。

「パパ、どうして私だけ名前の最後が『き』じゃないの?」

「それは『き』が付かなかったからです。なんちゃってウヒョ」

「パパのバカー!」

ということは充分あり得るので「き」はやめるべきだろう。かの
有名なシンガーにしていじめっ子・剛田武もこう言っている。

のび太のくせに名前「き」なんだよ!


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新しい朝が来た、絶望の朝が…。

僕・嫁・娘R(2才)で川の字になって寝ていた。
Rはまだまどろみ中で、嫁の体に絡みながら
くねくねとしっくりくる寝場所を探していた。

「ああああ、トロちゃん(胎児名)が下に降りて
 来てる気がする…まだ生まれてきちゃだめよー」

嫁がそんなことを言った。トロの生まれる予定日は
10月1日。今、出て来ちゃうと未熟児になってしまう。
 
「それでは僕がミートスティック(直訳せよ)で
 子宮内から押し上げてあげようか」

嫁にダメ元で軽いセクハラを投げかけてみたら

「うーん。じゃあお願いします」

なんと、あっさり承諾を得た。

「ただし、お腹と背中のマッサージもしてね」

「うんうん、やっちゃるやっちゃる」

僕が仰せつかっている妊婦のためのマッサージを
条件に出されたが、そんなことは問題ではない。
嫁がこのように明確な契り承諾を出すのは珍しい。

いつもSECOMを導入したような鉄壁のセキュリティーで、
極稀にコソ泥のように「ちょっくら失礼して」と侵入
しているのだ。

そんな情けない近況であったので、今夜はマッサージも
まぐわい汁も120%増量でお届けしよう!と張り切って
とりあえずRが完全に眠りに落ちるまで待った。

「さあR、良い子は早くねんねしな〜」

…待つ。
…待つ。
…布団に横になりながら待つ。

気がついたら…あれ、なんでお日様が出ているのかナ?
とっくに朝だった。しまったああ!せっかく用意された
据え膳を、寝落ちして豪快にスルーしてしまった。

「ごめん。僕が先にねんねしちゃったネ」

お茶目なお寝坊さんを気取って、嫁に可愛らしく謝ったが

「もうやる気失せた」

今後の交渉に悪影響を及ぼしてしまったようだ。


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家族全員妊娠。

嫁のお腹の中にいる第2子。僕らはトロと呼んでいる。

産まれて来るまでの仮名である。いわばウームネーム。
僕は時々お腹をさすって

「トロ〜。元気か〜」

などと話しかけるのだけれども、娘・R(2才)も

「トロチャーン、トロチャーン」

僕と同じことをする。嫁の話だと1日何回もやるのだという。

「Rもお腹の中にいることが分かってるんだねえ」

と嫁に言うと

「さあ…それはどうかしら」

嫁は首を傾げる。それはどういうことかと思ったら、
Rは自分のお腹も撫で回して

「トロチャーン」

と言っているではないか。そこで僕は

「ははは、Rのお腹の中に赤ちゃんがいるのか。はは…
 そうかそうか…えーちょっと待て…。

 …誰の子だー!

 なーんちゃって」

気さくでエスプリの効いたギャグを飛ばしたのだが、嫁は
ノーリアクションであり、なんだか周りの空気が寒い。おい。
夫がボケてんだからちゃんとツッコミ入れろ。ていうより
今晩あたり突っ込ませろ。

しかし僕のギャグは100回に1回ぐらいしかウケないので
大して気にすることもせず、

「ひょっとしてお父さんの子かナ?」

引き続きボケをかましたのだが、一瞬だけ嫁の眼が鋭く光った。

「あんたなら本当にやりかねないんだから、これ以上そんな
 こと言ったら殺すわよ」

という殺気を覚えたのは気のせいだろうか。僕は最早これまでと

「ははは…R、そろそろねんねしようか」

Rとの戯れをお開きにしようとしたところ

「トロチャーン」

Rは僕のお腹もナデナデしてしまうのであった。僕が妊娠かよ!
娘よ。見事じゃ。そのボケがあったか!

父を上回るボケをかますRを見て、やはり血は争えないのだなあと
思ったのであった。

いわばブラッド・キャント・バトル。


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台風と氷川きよしと母。

朝っぱらから電話が鳴ったので取ったら無言電話だった。

「もしもし」と問いかけても、10秒程間を置いても無言。
無言電話魔、猪口才なり、返り討ちにしてくれるわ、と

「オカケニナッタ電話番号ハ 現在使ワレテオリマセン。
 番号ヲオ確カメノ上 出直シテ下サイ」

鼻にかかったメカ声で嫌がらせアナウンスを始めたら

「ちょ、ちょっと待って下さい。変わります」

電話の向こうから初めて中年女性らしき声がした。恐れを
なしたか痴れ者め。しかし「変わる」とは一体?と様子を
窺っていたら、次に電話に出て来たのは、なんと我が母。

「はーい。お母さんですよ〜」

「母さんなの?何なんだよ!ていうか今の誰?」

「きよ友の田村さん」

きよ友、とは氷川きよしの追っかけ仲間のことである。母は
氷川のことになると半狂乱のバーサク状態になって手が付け
られない。還暦過ぎて道楽デビューすると歯止めが効かない
から恐ろしい。そういえば今週コンサートのためにわざわざ
飛行機で博多に行くと言っていた。ということは

「今、博多からかけてるの?」

「そう。お母さん携帯をトイレに落としちゃったのよ!」

「いい年してギャルみたいなドジ踏まないでくれ…」

「何かあった時にはこの田村さんの携帯にかけて欲しい
 と思って、田村さんにお願いして電話してもらったの」

顔に脂汗が浮かんだ。母のドジのとばっちりを受けてTEL
してくれた田村さんに、僕は何てことをしてしまったのだ。
田村さん、親子揃って大馬鹿ですみません。

「実はイタ電だと思ってずっと田村さんにNTTのモノマネ
 しちゃってて…うわー!まじヤバイ!」

「あらまー。何やってるのよー」

「それはこっちのセリフだ!」

「それと今、台風直撃なのよ。飛行機止まってるし栃木に
 帰れるんかなあ」

「知らん!博多見物でもしてゆっくり帰ればいい!」

コンサート前で浮かれている母に何を言っても無駄だ。
ひとりじゃないし、何だか台風すら楽しんでるみたいだし。
おそらくなんとか帰ってくるだろう。

「あ…それと田村さんにはくれぐれもよろしく。じゃ」

母に色々まくし立てられた僕は疲れて電話を切った。

しかし母のあのパワフルさは何だろう…と呆れ返っていたら
驚きの事実をWEB上で発見した。↓

こちらの記事

今日(9/6)はきよしの誕生日コンサートだったのだ!
どうりでテンションが異常に高いと思った。

きよしの誕生日イベントのためなら博多にだって飛ぶわ!でも
携帯落としちゃってチョドジー!おまけに台風直撃でギャフン!

ドジキャラぶりもここまで来ると、最早呆れるを通り越し、
母とはいえ少しだけ萌えてしまうから不思議である。

これを「博多もえくぼ」といいます。なんつって。

夜、母がまた電話をかけて来た。

「コンサート、中止になっちゃった…」

さすがにちょっとかわいそうになった。


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電撃夜這い作戦/日記才人10万票御礼。

大雨洪水警報が出された夜。僕のリビドオも無意味に高まり
もうダメ洪水警報が発令されていた。

嫁が娘・R(2才)を寝かし付けている。僕は隣に添い寝し、
Rが完全に寝たことを見計らって嫁を襲うことを決意した。

もうすぐ第2子が産まれる嫁の体だが、まぐわっても問題
なしとの助産師のお墨付きがあるので僕の血も情け容赦
なく騒ぐ。どうせ僕はエロなのさ。

ちっちゃな頃からエロガキで、15でドエロと呼ばれたよ。
ワイフ見たなりつがっては、触る嫁また孕ませた。

寝転がりながら窓の外を眺めながらひたすら待つ。大型台風、
すなわちグレートタイフーンの影響による雨と、煌めく雷光、
すなわちエレクトリックサンダーの美しさに見惚れていた。

やがてRが完全に寝たようで、嫁がゴソゴソと起き上がった。
さあ今だ。求愛のポオズを決めるのだ。

「さあ、おいで」

僕は両手を広げて嫁を迎え入れることとした。しかし嫁は僕に
一瞥をくれただけで、とっとと風呂に入って行くではないか!
何というツンツン嫁。やりたくないのは分かる。しかしシカト
はないだろう!結局それ以上なす術もなく、風呂から上がった
嫁はそのまま寝てしまった。

分かってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか。

と考えつつ僕はまたひとり窓を眺めていた。雨は殆ど上がり、
静かな夜となっていたその刹那、閃光弾かと見間違うほどの
鋭い光が僕の目を射し、

「じゅどおん!」

凄まじい轟音と地響きで家が揺れた。

「ち、近くに落ちた…おっかねー!嫁ー!」

腰を抜かしそうになる程驚いた僕は、さすがに今の衝撃で嫁も
目覚めただろうと思い、嫁の布団に飛び込み抱きしめ、救いを
求めたのだが

「ぐおおわお」

あくまで嫁は眠り続け、雷鳴に劣らぬ重低音サウンドの鼾でもって
返事をしたのみであった。これだけのエレクトリックサンダーにも
かかわらず、堂々とした眠りっぷりはもはや「サンダーが大将」
と褒め称えるしかあるまい。

もういい。誰にもかまってもらえない夜。僕もとっとと寝る。

落雷落雷おやすみよ。ギザギザハートの子守唄。


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案ずるより海は難し。

日曜の朝、僕と嫁は迷っていた。

嫁の出産まで1ヶ月を切ったので、そろそろ遠出は
控える時期になった。なので今日は海にでも行き、
僕と嫁と娘・R(2才)の3人家族での最後の旅行
としよう、と思ったのだが雲行きがあやしかった。

大型で強い勢力を持つ台風が近付いてきており、
A型で強い精力を持つ僕は判断に苦しんだ。

せっかく海に行くなら青い空の下がいい。その考えは
嫁も一緒だ。散々迷ったが、結局この時点では晴れて
いたこともあり決行を決断。横須賀の観音崎に向かった。

幸運なことに海岸に着いても天気は良し。9月なれど
泳いでる人達も沢山いる暑さ。海も綺麗。Eじゃん
スカジャン最高じゃん。

さて問題はRである。Rは海を怖がり、何度挑戦しても
泣き喚いて海に絶対近寄らなかったのである。今日も
砂浜に連れて行ったがやはりダメ。僕にダッコをせがみ、
足を付けようともしない。仕方なく海沿いの石畳の道に
降ろすとようやく歩いたのだが、ビーサンと足の間に砂が
入っただけで

「あんよー!あんよー!」

と泣き出し、流石に親馬鹿な僕もこのヘナチョコぶりには

「どこのお嬢様だお前はー!」

蝶よ花よと育てて来たことを後悔したのであった。しかし
後悔するだけでは何も生まれない。僕はRの大好きなアンパン
マンを砂浜に描いてみせた。するとRは

「あんまん!(アンパンマンのこと)」

ようやく瞳を輝かし初めて砂浜に足を付けたのであった。
たかがこれだけのために月面着陸並みの難作業。

僕はアンパンマンを少しずつ海に近付けて何個も描くと、
Rもそれに釣られて来たので、程よい場所で砂場グッズを
与えると、バケツや熊手でニコニコと遊び始めた。泳ぐのは
さすがに無理だが、今日のところはこれでよしとしよう…。

さてその間の嫁は、大海原に向かって太鼓腹を突き出し、
大ガニ股で岩場にドオンと腰を下ろしていた。

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「君…なんかの合戦の総大将みたいだよ」

「え、義経とか?」

タッキー好きの嫁は笑顔になったが

「いや、武田信玄って感じ」

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「あ、そう…」

一瞬で嫁の顔を曇らせてしまった。いや、ごめんね。
僕もタッキーじゃなくてオタッキーだから…。

あと少しで10万票!→累計記録
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案ずるより産むは恥ずかし。

第2子の出産予定日まであと1ヶ月を切った。

僕と嫁は出産においての心得を叩き込まれるべく、
嫁が産むことになる助産院に赴き、助産師の話を
聞くことになった。

集まったのは僕らを含め夫婦4組。それと子供2人。
うちの娘・R(2才)の他に2人目を産む夫婦がもう
ひと組いた。

豊富な経験に裏打ちされた落ち着きを持つ感がある
院長から、出産を迎えるまでの健康管理、入院する
にあたり準備するもの、いよいよ破水した時の対応
…などの話を聞かされる。

「破水してから出産までの進行の度合いは人により
 異なりますが、あなたはすぐ来て下さい。
 あなたはきっと早いです!」

「えー!?」

断定されたのはうちの嫁。

「君…そんなにガバガバユルユルだったのか…」

「いやほら、Rを産んだ時も早かったし、先生はそれを
 考えて言っているんじゃないかな…?」

そのうち院長の話は雑談レベルになってきて、

「エラが張っている人はお産が軽いと言われています。
 あなたがそうですね!」

「えー!?」

またもや断定されたのはうちの嫁。アハハ、と他の夫婦
から笑い声が起こった。その後も院長は何かとエラエラ
うちの嫁うちの嫁と、このネタを何回も繰り返して話し、
エラ張り妊婦の嫁とそれを娶った僕は、笑っていいともで
タモリにいじられる一般素人のような、カノッサの屈辱
並みの辱めを受けたのであった。

何故にうちだけがこんな恥ずかしい思いをしなければ
ならぬのだ、と帰りたくなったのだが先生はよいことも
言った。

「とにかく妊婦さんに心掛けてもらうのは常にリラックスして
 いることです。ですからそういった意味で37週を過ぎれば
 セックスもどんどんして下さい。体をほぐしてあげて下さい」

よっしゃー!先生ナイス援護射撃。いつも夫婦のまぐわいを
避ける嫁に対し、これで正当な性交の大義名分ができた。

辱めを受けたり喜んだりの出産勉強会であったが…

案ずるより嬉し恥ずかし。

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母は強し。祖母になっても母は強し。

栃木の母からメールが届いていた。

お元気ですか。もう少しで2人目が産まれるよね。
○○(嫁の名)も順調ですか?でもお母さんは
あなたの方が心配です。無理してないかい?
休日の家族サービスもいいけど、疲れてる時は
断ってもいいんじゃないの?なんてね。


とのことで…。母は僕に甘い。どれくらい甘いかというと
ものまね紅白歌合戦でいつも10点を出してしまう審査員
ぐらい甘い。別の言い方をすれば僕が娘・R(2才)にいつも
デレデレしているぐらいの甘さである。そんな母らしさが
滲み出ているメールであった。

母は嫁の真の恐ろしさを知らない。とある休日にうっかり
一日中寝てしまった時の嫁は、ヒンドゥーの怒れる女神・
カーリーが乗り移ったかと思った。あの時はさすがに我が身の
滅亡を覚悟したものであった。

まあその、僕もいい加減三十路半ばなんだからと思わずには
いられないが、母はこのようにいつも遠い栃木の空の下で
僕の体を心配している。

しかし還暦を過ぎた母はもう若くない。本来ならば僕の方が
母の健康状態を心に留めておかねばならないのに。

母さんごめんよ。嫁の妊娠とRの成長が気掛りでいっぱい
いっぱいだったんだ。母さんこそ元気ですか。なかなか
電話もメールもしないことをお許しください…と返事を
書こうとしたが、母のメールにはまだ続きがあった。

来週、氷川きよしのコンサートを観に行くの!お母さんは
福岡に飛びます!笑われるから○○さんには内緒ね!


あと20年は放っておいても大丈夫そうである。

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幼女地獄。

例によって仕事から帰ってくると娘・R(2才)が

「ぞうさ〜ん。ぞうさ〜ん」

象の鼻の動きを真似して、腕をぐるぐると
振り回していた。最近お気に入りのお遊戯で
あるらしい。

それを横目で見つつ、とっととスーツを脱いで
着替えようとしたのだが、ぱんつ一丁になった
僕のところにRがトトトと駆け寄って

「ぞうさん!」

とぱんつを引っ張った。

「あ、ほんとだ」

偶然にもこの日は金色の地に小さい象の絵が沢山
描かれたシルクのトランクスという、まことに
趣味が悪いぱんつをはいていたのだった。

勿論こんな「マツケンサンバ〜ただし下半身のみ〜」
のようなド派手なものを僕が自分で選んで買った
訳ではない。以前タイに行った友人が半分嫌がらせ
の意味で渡されたお土産なのである。

こんなもん絶対勝負下着にはならないが、Rのハアトを
ガッチリキャッチしてしまったようだ。僕はそのまま
疲れた体を布団に投げ出して突っ伏したが、

「ぞうさ〜ん」

ぞうさんシルクパンツに魅せられたRが僕の足を割り込み、
我が尻を撫で回すではないか。

「わあ。ちょっと、R、いやん、そんなとこ」

「えへへ〜えへへ〜ぞうさ〜ん」

おヒップだけならまだしも、その奥にある、我が子に決して
触れさせるべきでないアンタッチャブルな領域にまでRの手が
伸びてきた。R、いけませぬ。そこはAVならモザイクがかかる
ところで…はうう。このままでは踊る大前立腺になってしまう。

photo

このように僕が悶絶しているのに嫁はそれを激写。
(一部お見苦しい箇所がございます)

「R、ちょ、まじで、やめて〜」

これ以上こんなことされたら、ぞうさんシルクパンツの中に
鎮座する本物の怒れる象が暴れだすことになる!いや、もう
暴れ始めている!

そんなわけでやむを得ず前かがみで起き上がって逃げたのであった。
今年三十路半ばを迎えるというのに、何故こんなにまで敏感なの
だろうか。

シルクパンツが汁ダクパンツになる危機であった。

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枕くらくら頭くらくら。

このところ嫁と娘・R(2才)が寝る時間ギリギリに
仕事から帰って来ている。

するとRが必ず僕の枕をエッチラオッチラと持って来て
僕に渡し、

「ねんね!」

僕も寝るように催促するのである。僕は枕がないと眠れ
ないのだが、それをよく知っているようだ。2才児でも
よく見てるんだなあと深く感動してしまう僕の親馬鹿さよ。
父の枕に気を使う心遣い。成長しても忘れないで欲しい。
さすれば将来、

「Rー。君の膝枕じゃないと眠れないよ〜ん」

「まあ、お父様ったら甘えちゃって」

と、若き太ももに顔をうずめて安眠出来ることであろう。
そのようになればいっそそのまま永眠してしまいたい…。

そんな娘いねえよ!と我ながら呆れるが、この先10年位の
教育如何にかかっていると思う。頑張らねば…と考えている
内に我に返った。

「ていうかR、君が寝なさい」

Rはまだ眠るどころかはしゃぎたいらしく、嫁にしきりに

「ママー!ママー!」

とまとわり付く。だが既に本寝モードに入った嫁は返事もしない。
早く寝させるにはそれが最良だろう。嫁は枕をしない。しかしRに
とっての「母」には枕詞がある。「たらちねの」である。昔試験で
「たれちちの」と書いてしまい、中年女性の古典教師の逆鱗に触れ、
どでかい×を食らったがある。

そんな思い出深き枕詞を枕にちなんで、嫁に相手してもらえない
Rのさまを詠むことにしよう。

たらちねの またたらちねのたらちねの
かへすがへすも たらちねの母

(「唐衣 またからころもからころも 
 かへすがへすも からころもなる」:源氏物語のパクリ)


嫁に相手にしてもらえないとなると、次のターゲットは僕になる。
ことになる。僕はRに顔や腹を叩かれ、体をゴロゴロと転がされ、とても
寝るどころではない。

いつもいない僕がいるからRは嬉しくてはしゃいでいるのだうけど、
僕は嫁のようにシカトすることは出来ない。つい悪戯っぽい笑顔に
誘われて相手をしてしまう。

「枕を差し出して寝ろと言ったのはRじゃないかようー」

僕はいつになったら眠れるのだろうか。そしてRはいつになったら
寝るのだろうか。

マクラだけに、お先マックラー。

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