逆噴射家族。

小さな子供がいると、笑顔が可愛いとか振る舞いがお茶目とか
癒されるとかで和やかなイメージが多い反面、吐いたり漏らし
たりちびったりとか、逆噴射系の尾篭なトラブルも避けられない
ものである。

今日はそういった汚い話になるので、弱い方は読むことをお勧め
しない。

娘・R(2才)と息子・タク(生後1ヶ月)を風呂に入れていた時の
こと。Rは最近鼻水が出ているので、水っ洟を垂らしながら風呂の
おもちゃで遊び、僕はタクを仰向けにして湯舟に浸からせていた。
タクは打ち上げられたエチゼンクラゲの如く、ゆらりゆらりと気持
良さそうにたゆたい、リラックスしまくってますと言わんばかりに

「ぼこぼこぼこ」

大きな音を奏でながら数多の屁バブルを生み出していた。

「我が子が奏でるセレナーデ。すなわちオナラーデ」

僕もタクに追随し、屁協奏曲でもおっぱじめようかとしたその時、
悲劇は起こった。タクが生み出した泡の後に、黄色い固体がぷか
ぽかと浮いて来たのである。たちまち湯舟はジャワカレーを投げ
込んだ鍋の如く黄色に染まり

「よ、嫁ー!」

パニックになった僕はたまらず嫁を呼んだ。

「どうしたの?」

「うん、ちがでたの」

というギャグをかましたかったがそんな余裕はなく、まずタクを
嫁に預けた。それからこの汚染状況を分かっておらず、洟を垂ら
したままぼーっとしているRを湯舟から脱出させた。

体にはタクの「実」が付着してるわ、Rの洟もぬぐわなければなら
ないわで

「我が子等と ハナも実もある 三十路哉」

と即興で最低低の低の歌を詠みながら体と風呂場全体を洗い直し
たのである。赤ん坊が漏らしてしまう話など、別に珍しくもない
ことであるが、いざ我が身に降りかかって来たとなると、大いに
取り乱してしまった。

タクには産まれてすぐに尿もかけられた。Rの時はそういったこと
が全くなかったので初体験だったのである。男の子の方がワイルドな
排泄なのだろうか…。タクのお陰で僕は黄金プレイも聖水プレイも
経験済みとなってしまった。

時間をかけてじっくり洗い直し、ようやく風呂場から出た時、タク
のみは体の内面も外面もサッパリした趣きで、ニンマリと満足そうな
笑みを浮かべていた。

「ほ糞笑む」ってやつなのだろう…。

.

34度目の誕生日プレゼント。

誕生日の夜、子供達とウトウト眠りに落ちていきそうな時に
嫁が紙袋を枕元にドンと置いた。

「はい、誕生日プレゼント」

おおおお、まさかもらえるとは思わなかった。というのも僕が
欲しいものといえば、例えば「睡眠時間」という非物質的なもの
であったり、それ以外に敢えて言えば8億円とか姫路城とか、
乳房下垂(ちちが垂れること)が始まる前の、ツンと上を向いて
いるピンクの乳首を持つEカップ以上の女子高生であるとか、
とても手に入りそうもないものや手に入れたら手錠もおまけに
もらってしまうものばかりなので、

「それならば別にいいよ」

と言っていたのだ。それなのに嫁は…やはり僕の嫁はいい
嫁なのだなあと思った。

「はいRちゃん、パパにおめでとーって渡して」

更に最愛の娘・R(2才)にプレゼンテーターをやらすという
演出付き。もう泣けてくる。

「ちょっと、R!そのまま、待ってくれ」

Rに紙袋を持たせたままダッシュでカメラを持って来てその姿を
パチリ。おおヤラセ写真を撮ることが出来た。


ありがたく包装を解いて中身を見てみると、ワイシャツと靴下と
ネクタイがあった。…オヤジへのプレゼントの定番ではある。
それと入っていたのは、Rの落書き。直線と曲線が入り乱れて書か
れている紙である。

「それ、パパの顔を描きなさい、って描かせたから多分あなたの
 顔なのよ」

「そうか。嬉しいよR」

僕の顔って切れ痔の肛門みたいなんだなあ…。

「あと、その靴下はRとお揃いなのよ」

「へえ、そうなのか」

多少おやじ臭い柄の靴下なので、Rに似合うかどうか些か心配で
あったが、嫁は大丈夫だというので多分大丈夫なのだろう。親子で
足並み揃えて生きよ、という嫁の教えなのだろうか。

「とにかくありがとう…」

もらったプレゼントを大事にタンスにしまい、眠りに落ちていった
僕なのであった。

翌朝後悔した。

ソックスのプレゼントは貰ったが
セックスのプレゼントを貰い損ねたことに。

.

キス・オブ・ファイアー。

誕生日であった11月20日。トゥエンティ・ノヴェンバー。

特にこれといって変わったことをするわけでもなく、昼飯は
冷凍していた残り物のカレーだし、娘・R(2才)をいつも通り
公園に遊びに連れて行ったり、ぐずる息子・タク(1ヶ月)を
抱いてあやしていたりしただけだし、夕飯も嫁は

「今日は誕生日ディナーですよ!」

というわりにはただのスキヤキで、

「どこが誕生日ディナーなの?」

と聞いても

「うーん、『スキ』だから」

というわけの分からない答えが返ってきて理解できない平凡な
一日であった。僕も特に何をしたかったわけでもかったのだが、
ひとつだけ欲しいプレゼントがあった。

それはRのちゅー。

Rは嫁やピカチュウのぬいぐるみにはぶちゅぶちゅするくせに、
僕がいくらお願いしてもダメなのである。いつも巧みに逃げら
れてしまう。これってもしかすると

「お父さんお口くさーい」

というやつなのか…と真剣に悩んだりしたものだが、今日だけは
食い下がって娘の唇をゲットしようと直談判したのであった。

「Rちゃん、今日はパパの誕生日です」

「たんじょーびー」

「そう。だからパパおめでとーってチューしてくれ」

「ちゅー」

しかしRがちゅーしたのは僕ではなくアンパンマンの人形。

「アンパンマンじゃなくて、パパにだよー」

「えへへ、あんまん(アンパンマンのこと)、ちゅー」

このRの態度と表情は、照れているような、じらしているような、
そんなはにかみと意地悪っぽさが入ったような笑い顔であった。
それを見て僕は、これは決して本心から嫌がっているのではない!
じらして楽しんでいるのだ!そう確信した。

何故ならば、その表情は遠い昔、嫁を口説いた時の嫁の表情に
そっくりだからである。さすが親子。なればもう一押しである。
嫁と同じ口説き方をすれば落ちるはずである。

「なあー。先っちょだけでいいからしてよー」

…こんなことを言って嫁を落としたかどうかもう記憶が定かでは
なかったが、とにかく最後のお願いに来ました、という選挙活動の
政治家ばりの平身低頭ぶりで頼んだところ、

「ぱぱ、ちゅー」

なんと、Rが歩み寄ってしてくれたのであった。ああ、ついに…。
もう他にプレゼントはいらぬ。Rから毎年ちゅーしてもらえばいい。

将来Rに彼氏が出来てしまったら、彼氏と間接ちゅーになる恐れが
あるので、発見次第すぐ別れさせる所存である。

.

誕生日イブ。

昨晩、娘・R(2才)と一緒に床に就き、布団の中でまだ眠らずに
遊びたがっている彼女を

「今日はおしまい。明日は何して遊ぶ?」

となだめながら夜伽話をしていた。

明日(昨日の時点での明日。つまり今日)は僕の誕生日である。
しかしこれといって何の感慨もないのでおそらく平凡な日曜日と
なるであろうと思った。

「いつものように公園に行って、砂場で遊ぶか?」

「うなば(砂場)、しない!」

「あれ、遊ばないの?Rちゃんは砂場大好きじゃないか。じゃあ
 ぽーん(ボール遊び)しようか」

「ぽーん、しない!」

「えー、じゃシーソーは?

「しーそー、しない!」

「ブランコ」

「ぶだんこ、しない!」

Rの好きな遊びをことごとく言ったが、何故かRはやらないという。
もしやRは僕の誕生日を知っていて、いつもと違うもっと特別な
ことをしたいの…と考えているのではないだろうかと勘ぐった。
いつもは絶対してくれないチューをしてくれるとか。

「じゃあRちゃんは明日何をするのかナ?」

そんな期待半分でRに猫なで声で尋ねてみたところ、

「のんのーん」

と言ってお手手の皺と皺を合わせた。のんのん、とはR語で拝む
ことである。Rはお墓や仏像などを見ると必ず手を合わせる。
どこまで分かってるか知らないが、とりあえず拝む対象というのを
幼いながらも区別出来ている。

「そうか。のんのんか。拝むのか。明日は僕の命日だもんなあ」

「のんのーん」

「…って命日じゃなくて誕生日だろオイ」

思わずボケツッコミをしてしまったが、一体Rのこの言動は何を
意味するのであろうか。何となく気になってしまう。子供って
突拍子もなく妙に予言めいたことを言うし…。

明日、僕は車にでも撥ねられて死ぬるのだろうか。それとも僕の
パターンからすると、日付が変わって誕生日になった途端

「なー誕生日だしいいだろ。ハッピーファックデー」

と嫁に言い寄ってそうだから、その最中に腹上死してしまうとか。

せめてRと息子・タク(1ヶ月)が成人するまでは生きていたいな、
と些かセンチメンタルが止まらない状態になってしまった。

そして翌朝。つまり今。この文章を書いているということは、ひと
まず腹上死からは免れた。というか嫁に免れられた。

今日のバースデーがエックスデーになりませんように。

セックスデーになりますように。

.

腰抜け親の子供の叱り方(略してコシシカリ)

草木も眠る丑三つ時。北斗の兄弟ケン・ラオウ・トキ。

そこまで世は更けていなかったが、よい子が寝る時間をとっくに
過ぎていた午後10時ごろ。娘・R(2才)は未だ眠らずにはしゃいで
いた。

「R、寝なさい」

「きゃははははは!」

「R、ねんねするの!」

「じゃんぷー!じゃんぷー!」

嫁と僕がいくら言ってもぴょんぴょん飛び跳ねたりしていて、全く
寝ようとしない。これはもっと厳しく叱るべきではないかと思った。
言うことを聞かないということは要するにナメられているのである。

僕は今までRを本気で叱ったことはない。もともと聞き分けの良い子
でありマジギレすることもないのだが、それより何より可愛いんだ
モン。しかしRがおちゃらけ過ぎて全く言うことを聞こうとしない
今この時、本気で叱る時が来たようだ。時には父の厳格な面を見せ、
しっかりしたしつけをしなければならない。

「R、だめでしょ!寝なさい!」

Rに初めて大きな声で叱った。

「あ、パパが怒った」

嫁も僕がRを怒ることが珍しく映ったらしく、意外な顔をしていた。
僕だってやる時はやるぜ!だからRが寝たらやらせろ。しかしRは
相変わらずどこ吹く風で遊び回る。ここまで舐められていたとは!

「ほーら、ゲンコツさんが出てきたぞぉー」

今まで娘に手を上げたことはなかったが、ついにこの時が来た。
全く手を上げないでいたのでは将来Rも

「父さんにもぶたれたことがないのに!」

というへなちょこな大人になってしまう。だから悪い子にはゲン
コツである。初めてRに体罰を下す時…。

「R、寝なさい!」

ゴン!と頭を小突くつもりであったが…やはりできぬ…できぬのだ。
愛娘をグーで手にかけることなんてできぬ。掌で頭をポンと当てる
ことしかできなかった。

「あ、パパが叩いた」

それでも珍しそうなものを見る目で嫁は言った。こうして初めて
我が子に手を上げた結果は…

「きゃはははははははは!」

全然効いてなかった。そりゃそうである。全然痛くないし。これ
だったらRと遊んでいる時に持ち上げてブンブン振り回すほうが
よほど体罰っぽい。

親として子を叱るのはどうすべきか…。生命を育てる身としての
しかるべき叱り方。ああ、誰か教えて欲しい。生命の源である海よ。
空よ。大地よ。どうか教えて欲しい。

叱るー海、叱る大空、しーかーるー大地ー。なんつって。

.

息子のサプリメントはシャブリメント。

嫁と息子・タク(生後1ヶ月)の定期検診があったそうな。

結果を聞いてみると母子共順調のようである。特にタクの成長は

「生まれてから1日に50gずつ増えて5s、身長も1ヵ月半で8p
 伸びて57p」

という恐るべき速さで成長している事が分かった。このペースで
ハタチまで成長するとなると、身長約13m、体重約370sという、
大豪院邪鬼のような化物になってしまうので、生き物として節度
ある成長をしてもらいたいものである。

一方でタクの竿というか「かなまら様(※1)」のほうは、産まれた
時からとてもかわいらしい。

かなまら祭り
(※1:かなまら様)

だが、嫁の目からすると小さ過ぎるように映るらしく、いつも心配
している。曰く

「玉の上に申し訳なさそうに乗ってるんだもの」

神聖なる陰茎をまるで寿司ネタのように表現する。

「僕の遺伝子どおりに成長してくれれば、馬並みには及ばない
 けど人並みにはなるだろうよ」

と、僕は何度も言っているのだけれども。

「それはそうと、コレ」

嫁が僕に見せたのはおしゃぶりだった。タクは口が寂しい時に
よく愚図るので、ついにおしゃぶり導入に踏み切ったようだ。

「R(2才の娘)の時はおしゃぶりなしでいけたけどなあ」

おそらくふたりの子供に同時に愚図られても、いちいちかまって
られない故の嫁の決断だと思った。

「はい、これで君もおしゃぶり君!」

嫁はタクの口におしゃぶりをポンと入れた。ふふふ、そういう
君も夜は僕のかなまら様をおしゃぶり君〜。という最低の低の
ギャグを言いたかったのだが、最近してくれないので口に出す
のは憚れた。

「タク、おしゃぶりの按配はどうよ?」

むちゅむちゅとおしゃぶりを口で弄ぶタクであったが、ものの
30秒ぐらいでペッと吐き出してしまった。

「どうやらおしゃぶり君は苦手なようだね。そういうとこ、
 ママにそっくりだよ…」

これを見て、タクが年頃になったら教えてやろうと思ったことが
あった。将来、交尾関係になる女が出来たら、始めの内にそういう
技はしっかり女に叩き込んでおけ、と。そして自らも技を磨け。
付き合いが長くなりダルダルな性関係になってからでは「何を今更」
って感じになってしまうからのう…。

父の失敗の轍を踏まないように…。

.

ネットを捨てよ。街に出よう。そして彼女を見つけろ。

嫁には弟がいる。独身で女っ気は感じれらない。

その義弟から嫁がこんなことを頼まれたそうだ。

「あなたのホームページ教えてって言われたよ」

「いやだ。絶対。断る」

「だから『身内には知られたくないらしいから教えられない』
 って答えておいたよ」

「そんな言い方じゃだめだよ!好奇心そそられて探しちゃう
 じゃないか!」

「ごめん。いきなり言われたもんだから、つい…」

「こういう時は『始めてすぐ飽きちゃったみたいで、何もない
 から見ても意味ないよ』って答えるのがベストだ」

「そうだねえ」

ここのサイトは死んでも教えられない。昨日の日記なんて嫁に
まぐわいをお願いして思いっきり断られた話である。こんな物
義弟に見られた日には、嫁一族全員に知らされることになるで
あろう。僕は嫁実家に行けなくなってしまう。

しかし、何故義弟は僕がサイトをやっていることを知っているの
だろうか?と疑問に思った。僕は教えていないはずだ。見られたく
ないのにわざわざ話すこともない。その答えは嫁と話していく内に
分かった。

どうやら嫁が娘・R(2才)とタク(生後1ヶ月)の写真日記をWEBに
アップしていることを言ったらしい。義弟は忙しくてなかなか子供
達に会えないから、せめてネットで見たい、だから教えてくれ、と
いう話のようだ。僕のサイトもその話の途中でポロッと出てしまった
ようだ。

義弟はまだ生まれたてのタクには会ってないが、Rのことは結構かわい
がってくれる。しかし今追いかけるべくは2才の姪よりも交尾可能な
年頃の女なのではないか、というのは余計なお世話だろうか。

「そういえばね、弟、こないだ誕生日だったんで家でケーキ食べたって
 言ってたよ」

「バースデーケーキを家で食べたの?ということは家族一緒に?」

「うん」

「彼女いないね。絶対。鉄板で」

「うん…」

義弟よ。くれぐれもこのサイトを探さないで、彼女を探すことだけに
専念してくれ。

.

ヨバイヨバーイ!

利己的な遺伝子に従い、凝りもせず嫁に夜這いをかける。

仕事から帰って来てメシの準備などをしていたら嫁がモソモソと
起きて来たのでアイガッタチャンス。このタイミングを狙うのだ。
しかし育児で疲れ果てている嫁は

「いやー…やりませぬ」

の一点張り。挙句の果てには

「月イチぐらいでいいわ、そういうの」

と頻度まで決められてしまった。僕は水道局のおじさんか。

「どーもーメーターの検針でーす」

というノリで僕も

「どーもー月イチの女体定期点検でーす。入れポン」

こんな感じでやれというのか。あ、喩えが悪かったかもしれない。
よく考えたら水道局の検針は2カ月に1度であった。そこまで頻度を
落とされてはかなわぬ。僕は嫁に丁重にお願いし、三顧の礼ならぬ
ま○この礼をもって粘ってみたところ

「あーなんか目が覚めちゃったなあ」

とのことで遠回しにOKをもらう形になった。もう、照れ屋さんなん
だから。

「では夜分遅くすみませんが失礼します」

いざ開始しようとしたその時、息子・タクの夜泣きが始まった。嫁は
すさかず授乳をさせる。さすがにこの邪魔をする訳にはいかないので
タクが吸った後に思う存分乳を吸おうね、と臨戦態勢の我が体をなだめ
つつ待つことにした。

寝転がって授乳の様をしばし眺めていたが…気付いたら朝だった。
いつの間にか寝てしまっていたのだ。

「あああ、寝落ちしてしまった」

「まあ、タクの授乳してる時点でそうなるとは思ってたけどね」

嫁は分かったような顔をして笑った。おっぱい欲しさに泣くタクそっち
のけでおっぱじめる訳にもいかず、あの場では待つしかなかった。そして
性欲も睡眠欲も旺盛な自分の体に振り回される自分が情けなかい。

泣く子と亀頭には勝てぬ。

.

ラーメン地獄道。

近所の下駄履きマンションの1区画ににラーメン屋が出来た。

娘・R(2才)を良く遊ばせに行く公園の向かい側で、教会の隣。

この区画は昔はパスタ屋があったが潰れ、その後焼きそば屋に
なったがすぐ潰れて以来空室だったのだ。住宅街の真ん中だし
立地条件が悪いのだろうと思っていたので、このラーメン屋も
正直そう長くは持たないだろうと勝手に失礼な予測をしていた。

ところが「あのラーメン屋は美味い」という噂が徐々に伝わって
来たのである。そんなわけで昼飯時に

「食べに行ってみない?」

と嫁に持ち掛けてみたところ

「あらいいじゃない」

乗り気になっていた。息子・タクのために良い母乳を作るべく
高野山の僧侶並みの厳しい菜食主義を強いられている嫁だが、
ラーメンぐらいはいいだろうと思った。外食の味は久しぶり
であるはずだし。家のすぐ近くだからタクを連れて行っても
さほど大変ではないだろう。

娘・R(2才)にとっても食べた後すぐ公園で遊べるので

「R、ラーメン食べた後は砂場で遊ぼう」

「らーめん、すなばー!」

彼女も大喜びであった。ラーメンひとつでテンションが盛り
上がる安上がりな我が家庭。意気揚々と出掛けることにした。
ところが…

「ギャー!シャッター閉まってる!」

なんと営業してないではないか。よく見ると貼り紙がしてあり

「肉離れで歩けないので1週間休業します〜店主」

とのことで…店主も災難だが僕らも災難。嫁は見る見る不機嫌
になり

「あなた午前中買い物してたでしょう?その時ちょっとでも
 確認しておけば良かったのよ!」

などと責められ、僕は非常にダークな気分になり、隣に見える
教会に駆け込んで救いを求めたくなった。

主よ、我等迷える家族を救いたまえ。ラーメン。なんつって。

もうどうしようもないので家にUターンすることになったが、
ここで暴れたのがRであった。

「すなばー!すなばー!」

遊びに行こうねと言ってしまったので大騒ぎである。R、ごめん。
僕の思い付きのひとことで嫁は怒るし娘は泣くし。つくづく僕は
泥舟の船頭であることよ。嫁にも娘にも愛想尽かされる日は近い
かもしれない。

麺の切れ目が縁の切れ目。

.

海は広いなおいしいな。

娘・R(2才)を連れてネットのお友達ゆきやなちゃんの大学祭に行く。

彼女の大学はズバリ書くと弊害があるかもしれないので遠回しに
書くが、「海」に関することを専攻する大学であり、大学祭も
「深川丼」だとか「サンマ一匹25円」だとか、海の幸がお安く
振舞われていると聞いたので、浅ましくも出掛ける事とした。

「しらす干しかちりめんじゃこがあったら買ってきて」

留守番をしている嫁から届いたメールも、僕が魚屋にでも行く
ようなノリであった。

大学に着いてひと通り見渡すとマグロの解体ショーをやっており、
さすが海の大学であると感心した。しかしメイド姿で食物を売る
女装学生もおり、学祭で女装したがる男が必ずいるのはどこの大学
でも同じなのだなあとも思った。

電話でゆきやなちゃんに連絡したところ、迎えに来てくれた。胸に
大きなリボンをつけた可愛い女の子。不思議に思うのだが、彼女の
ような若くて可愛い子がどうしてうちの生活臭くて親父臭いサイト
に足を運んでいるのだろうか。彼女はRの手を引いて案内してくれた。

「R、新しいママだよ〜。なんつって」

「それヤバイっす!彼氏も来てるんですから!」

早速親父ギャグを発動して窘められてしまった。

ゆきやなちゃんの案内で、彼女の部が出している「深川丼」を
食べさせて貰っていたところ、彼女から2人のお友達を紹介して
もらった。その時もゆきやなちゃんはRと遊んでくれていたので、

「R、新しいママだよ〜。なんつって」

親父らしく同じギャグのリピートをしてしまったところ、何と
そのお友達の内のひとりが彼氏様であった。申し訳ありません。

その後たくさんのお友達の中に混ぜてもらって談笑。その中でも
ゴスロリ服を着ていたゆきやなちゃんの妹さんがかなり目立ち

「すごいねーゴスロリだねー」

「いえ、これは『黒ロリ』というんです」

「クロロリ?」

何だそのクロロホルムのような名前は…。どこがどう違うのか、
最後まで区別が付かなくて気絶しそうだった。一方でRは妹さんと
5分ぐらいで打ち解けてしまって、自らごにょごにょと話しかけて
いた。人見知りするRには珍しいことである。よく聞いてみたら妹
さんは保育士を目指しているそうで…。

徐々に寒くなって来たし、嫁には早く帰ってくるよう言われていた
ので、皆と別れて帰る事にした。帰り際にミスコンのチラシが目に
飛び込んできたので、これは引き返さなければとUターンしそうに
なったのだが、よく見ると

「ミスター・ミスコン」

海の男によるオカマコンテスト、とのことだったので速やかに帰った。
ミスコンひとつにもいちいちクレームがつく、世知辛いご時世の影響
なのだろうか。それとも単に海の男は女装好きなのだろうか。
さすが海の大学である。

ゲイやヒラメの舞踊り。

ゲイとオカマは違うけど…。

.

パンツ落ちてました事件。

我が家のトイレに入ると、嫁のパンツが落ちていた。拾って
みると濡れている。まさに脱ぎたて染み付き臭い付き。

なんだお前も下着マニアか♪(電気GROOVE/電気ビリビリ)と
歌いそうになってしまったが、

…一体嫁はここで何をしていたのだろうか。

これが外での出来事であったらどんなに良かったか。持ち主は
誰か分からない故に色々なファンタジーを感じることが出来る。
勿論実際の持ち主はヤワラちゃん似の女性である、という悲劇
的な事実があるかもしれないが、見つけた者には分からない。

よって美少女女子高生のパンツであるとか、若奥様の生下着で
あるとか、妄想の赴くままにドリームをスパークできる自由と、
お持ち帰りして夜通しフィーバーし、そのままきれいに食べ
ちゃう自由がある。

しかしここは我が家。嫁以外のパンツであることは揺るぎよう
がない。今僕がつまんでいるものは、幻想も妄想も何一つ入り
込む余地のない、ただの汚れ下着に過ぎない。

僕はそのまま洗濯機に放り込んだ。そして考えた。何故トイレに
脱ぎ捨てたパンツがあったのか、嫁に聞くべきではないだろうか。
真実を知りたい好奇心と、いや、たとえ夫婦でもこれは見て見ぬ
フリをするべきではないかという羞恥心と、美少女の写真を撮り
まくる篠山紀信が頭の中で交錯し、迷った。

しかし嫁の顔を見た途端、口から出てしまった。

「嫁、トイレに君のパンツが落ちてたよ…」

「えええええ!それは失礼しました…」

嫁は大変動揺していた。やはり嫁がトイレで脱いだのだ。

「あ、ていうことは今ノーパン?」

「はいてるよ。取り替えたのよ」

「あ…」

そこで僕は全てを理解した。トイレに入った嫁は産後の悪露
(おろ:産後のおりもの)でパンツが汚れていることのに気が
付いたので着替えたのだ。ただ脱いだパンツを忘れてしまった
という…ただそれだけのことであった。

たかが嫁のパンツひとつ転がっていただけで、これだけ動揺
してしまったとは我ながら滑稽である。しかし平凡な日常の
中でこのようなちょっとした物に一喜一憂する。それの繰り
返しが人生の大半を占めるものなのかもしれない。

じーんせいは、ワンツーパンツ。

.

乳児期→幼児期→掃除期。

娘・R(2才)と入るお風呂。

既婚者ともなると、嫁以外の若い娘と一緒にお風呂に入ると
いうことは、不倫か風俗のいずれかである。どちらも危険な
2つの「F」。この後に待ち受けているのはこれまた「F」、
即ちファックである。不倫風俗+ファック、これがいわゆる
「既婚者の3大危険F」である。

不倫においてはやがて身を滅ぼし、風俗においてはお金を取ら
れてしまった挙句

「お湯熱くない?早く脱いじゃって」

などとやる気なさげに言われてしまうもんだが、実の娘なら
タダであり安全であり貴重な肌の触れ合いである。

さて、Rはいつも風呂ではおもちゃで遊んだり、お湯をばしゃ
ばしゃ弾いたり、飛んだり跳ねたりと、いつもやかましい事
この上ないのであるが、この日はどこか違っていた。

父に背とモウコハンの青いお尻を向けて、ずーっとバスタブを
タオルでゴシゴシ磨いているのである。

「Rちゃん、ちゃんとママが洗ってくれてると思うんだけど…」

ゴシゴシ。

「パパと遊ぼうよう」

未だにゴシゴシ。

Rと遊べないとなると僕は気を引く為に踊るしかないではないか。

汚れ物はなんですか。落としにくい物ですか。それより父と
踊りませんか。ウフッフー。ウフッフー。ウフッフー。

さーあー(金玉を揺らしながら)
さあ!!(金玉を揺らしながら)
さ!あ!(金玉を揺らしながら)

いくら僕がセクシーな誘いをかけても、Rは可愛いお尻をフリ
フリさせながらバスタブ磨きに没頭する。そういえば汚い風呂
に現れるという妖怪「アカナメ(垢舐め)」なんてのもいたなあ
と、ひとり取り残された僕はボーっとそんなことを考えていたが、
いい加減のぼせ過ぎたのでこれにて本日の入浴は終了。

「Rのお陰でアカナメなぞ出る幕もないほど綺麗になったよ」

と、Rに言いながら

「いや、Rがずーっとバスタブを磨いていてなあ」

嫁にも報告したところ

「あら…わたくしの掃除にどこか不具合がありまして?」

顔では笑っていたが、非常にドスの効いた声で答え、私の家事に
ケチを付けるとはいい度胸しとるのうワレ、と顔に書いてあった。

アカナメの出る心配はなかったが、一方でそれより恐ろしい
オニヨメを出現させてしまった。

この妖怪は、前述した「既婚者3大F」の罪を犯した時にもよく
現われることで有名である。くわばらくわばら。

.

超特急カレー。

会社から帰ってきたら家の中はカレーの匂いが充満していた。
なるほど、オツカレーさまという訳か。

いやそうではない。毎月9日はカレーの日と決まっているのだ。
何度も書いたが、2年前の8月9日に娘・Rがいよいよ産まれる
ので病院に行こうという時に、小腹が空いていた僕がカレーを
かっこんだことにちなんでこの習慣が出来たのである。
できれば我が家の子孫に4000年ぐらい伝承させていきたい。

食事の前に一休みしていると、息子・タク(生後1ヶ月)も腹が
タクも腹が減ったようで夜泣きを始めたので、嫁が乳を飲ませた。
たらふく乳を飲んだタクを寝かせて、嫁は待つ。タクは飲んだ後
すぐにうんちをするのでおむつ換えの為の待機である。

僕が覗き込むとまだタクは催さないようで、ホゲーとした顔を
していた。嫁とふたりでバカツラ揃えて入ても芸がないので

「どうだ嫁、タクを待っている間にまぐわうというのは…」

「なんでよ」

濃厚な夫婦生活の為の時間の有効利用を提案したのに、あっさり
断られた。仕方がないのでカレーを温めることにした。

「ふえええええ」

タクが身をよじらせ始めた。便意が襲い掛かってきたのだ。顔を
真っ赤にして産みの苦しみを味わっている。両手を大きく広げ、
ハードゲイの「フォー!」のようだ。グラサンをかけたら結構
サマになりそうである。

「がんばれがんばれ」

それを横目に僕はカレーを食べ始めたのだが

「はうう」

ものの5分で腹が「ぎゅむむむむ」と嫌な音を発したので、トイレに
駆け込みカレーとは似て非なるものを産み落とした。カレーと一緒に
つまんだ昨日の残り物が悪かったのか、僕の腹の調子が悪かったのか
定かではない。

「僕、もう、出ちゃった…」

「やあだあ」

タクは相変わらずハードゲイの決めポーズのまま寝ている。タクよ。
父はお前より迅速に済ませたぞ。食べてからものの5分のこの記録を
超えられるかな?

早飯早糞ゲイのうち。フォー!

.

べべんじょ、べんじょ、鍵閉めた!

嫁が息子・タク(生後1ヶ月)のおむつを取り替えていると、
わりと高い確率で娘・R(2才)も

「ぱぱ、きれいきれい(お尻を拭いておむつ換えせよ、の意)」

自分にもやって欲しいと言ってくる。

「じゃあズボン脱いで〜」

嫁以外の女体を合法的に脱がす悦びを噛み締めつつRを寝かせ、
ズボンとおむつを剥ぐと、Rのお腹がやたらと出ている。

「そういえば今日はうんちしてないよなあ…」

いささか便秘気味のRを心配していると、

「しー、する?しー(トイレでおしっこしー、の意)」

Rが僕の手を引いてトイレに行こうとするではないか。僕は大いに
驚いた。というのもRは僕と絶対トイレに行きたがらなかったので
ある。脱おむつの第一歩としてトイレに行く習慣を身に付けさせ
ようとしているのだが、僕が連れて行こうとするとギャンギャン
泣き叫ぶので、今までずっと嫁が一緒に入っていたのだ。

おそらく女の子らしい恥じらいなのだろうと思っていた。おむつ
換えの時も下半身丸出しであるが、それは平気。でもトイレはダメ、
という気持ちは何となく分かる。僕も嫁の前で露出するのは全然
平気だが、トイレで産む瞬間などは絶対見られたくないからだ。

それが自らこの父を誘うだなんて…またひとつRと絆が深まったこと
であるよ、とRの気が変わらないうちにトイレに直行。便座の上に
子供用便座をカポンと乗せて、Rをまたがらせた。

「えへへへへー」

Rがトイレでちゃんと用を足すか、というとまだそこまでいってない。
この時も便座に座ってニコニコ楽しそうにしているだけであった。
まだ便意に関係なくトイレで座ってるのが楽しいだけ、という意識
しかない模様だ。

さてどうしたもんか…と僕もトイレで盗撮魔のように佇んでいると

「きれいきれい、する?」

Rの方から、お尻をきれいに拭いて…と言って来た。その言い方が
上目使いで首をかしげてニコッと言うものだから僕の萌え心は直撃
されてしまった。例えるならば

「えっちする?」

と可愛く言い寄られた時の衝撃に等しい。

「よし、きれいきれいするぞ!」

僕は感激の余りRをがばっと抱いてトイレを出、寝かせてウェット
ティッシュで丁寧にお尻を拭く。あんな仕草で言われちゃあ、お父
さん何でもしちゃうよ。これが実の娘でなければ、2才児でなければ、
ティッシュなどではなく舌できれいきれいする勢いである。

これでRとトイレの契りを交わした。今後トイレに行く時は嫁ではなく
この僕をご指名頂きたい。

と、トイレだけに「はばかり」ながら申し上げます。

.

クロスオーバーイレブンPM。

「ちょうど1ヵ月前の今頃…陣痛が来たんだよね」

「あっという間だったなあ」

「早いものね」

僕は嫁と寝床で語り合っていた。

2005年11月2日から3日になろうとしていた深夜11時過ぎ。
今日1日のエピローグ、クロスオーバー・イレブン。
もうすぐ時計の針は12時を回ろうとしています。
今日と明日が出会う時、クロスオーバー・イレブン。
(懐かしいなあ)

息子・タクは10月3日の午前2時45分に生まれた。まもなく生まれて
1ヵ月になろうとしていたひとときであった。

「ということは…解禁」

産後1ヶ月は夫婦の契りを禁止されていたが、間もなく僕の下半身の
妖刀村雨も解禁になり、タマキン全力投球であり、禁欲生活バイバイ
キーンになるはずであった。嫁の体ともクロスオーバーになる瞬間。
しかし嫁は

「疲れてるし、今日はいいよ」

固く心と体を閉ざしたままであった。

「あ、そう…」

既に上半身裸になった僕であったが、行き場を失って虚ろになって
いたら嫁が哀れんだのであろうか、

「すぐ終わるならいいよ」

極めて事務的に、やる気のないソープ嬢のように言った。

「すぐ終わらせろとは…俺は犬か!」

男としてここは怒るべきである局面かもしれなかったが、今はそんな
こと言える立場ではない。怒りより1ヵ月分の悶々が溜まっているので
ある。

「それでは失礼して…」

「はい…」

タクが1ヶ月前に通ってきた道の封印を解く。1ヵ月ぶりに対面するた
その入り口は…。

「…」

「…」

「形、変わってない?」

「うそー?!」

完。

.

幼児と乳児で一大事。

朝、息子タク(そろそろ生後1ヶ月)がまるで細木和子に襲われた
かのように絶叫しているので、抱いてあやしていた。

アグラを掻いてその上に寝かせていたら今度は娘・R(2才)が

「みっふぃー。みっふぃー」

ミッフィーの絵本を持って来て僕の前に置いた。「読め」という
ことである。そしてR自身は僕のアグラ上に座ろうとするので

「R、タクがいるんだよ!踏むな!」

日頃はタクの頭を撫でたりして可愛がっている癖に、2才の幼女は
気まぐれオレンジロード。僕はふたりの子供に阻まれて座ったまま
どうにも動けなくなってしまった。片やタクが泣き叫んでいるし、
片やRがみっふぃーみっふぃーと連呼して絵本読みをせがむ。その内
タクのお尻から

「びびびびびび」

おむつ交換を知らせるウェットでスメルなサウンドが響き渡り…と、
にっちもさっちもいかなくなってしまった。

Rだけだったら何とかなったが、ふたり同時に世話をするのはやはり
大変なことである。とても手が回らない。手があと4本ぐらい欲しい
気分だ。2本でRの絵本を読み、2本でタクのおむつを換え、残りの2本で
嫁の乳を揉む。

僕は会社に行ってしまうけれども、Rとタクと1日中顔を突き合わせて
いる嫁は身も心も燃え尽きた灰になってしまうだろう、と育児の苦労を
改めて感じた。

子供(チャイルド)がふたりになればチャイルズではなくチルドレンで
あるのも、何故そのような変則的な複数形になるのも分かったような気
がした。

きっと英語を作った人は、チャイルドが複数になると「アナドレン」と
言いたかったのだろう。ぽてちん。

.

フーリッシュマン・イン・ニュウヨク。

息子・タク(生後3週間)を初めて風呂に入れた。

産まれてから一度も体を洗っていないという訳ではない。これまで
ベビーバス(でかい盥のようなもの。かなり邪魔)で洗っていたの
だが、そろそろ風呂場の浴槽でもいいだろう、という嫁の一声で
決行されることになった。

入れるのは僕。娘・R(2才)を先に洗ってからタクと再び入浴した。

「タク〜。入浴に行きたいか〜。罰ゲームは怖くないか〜」

入浴初体験の息子を、ソープ嬢並みの優しさとヒューモアも交えて
エスコートし、そおっと湯船に浸からせる。Rを初めて風呂に入れた
時の記憶が甦った。今じゃ浴槽でゴジラ並みの大暴れをするRも最初は
「ゆよーん」と頼りなげに浮いているだけであったなあ、と。

Rは女の子であるからして、いつまで一緒に風呂に入り、その裸体の
成長過程を見届けられるか分からない。時々そんなことを考えて涙
しながら風呂に入るのもいいが、やはり息子と男と男の裸の触れ合い
もいいものである。エチゼンクラゲのようにふよふよと漂うタクの
玉袋を眺めながらそう思った。

タクはリラックスしていてまったく泣かず、気持ち良さそうである。
僕もゆったりと湯船に浸かっていたら、嫁がカメラを持って乱入して
きた。タクの初入浴を記録しようというのだろう。

「はーい、タクちゃーん。あなた、タクをもっとこっち向かせて」

嫁はたまに僕のデンジャラスな部分まで写してしまうので、細心の
注意を払った。

我が息子で我が「息子」を隠したのは33年の人生において初めての
ことであった。やはり子供は持ってみるものである。

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