踊るアホウに撮るアホウ。娘の動画が100メガバイト。

娘・R(1才半)が突然テレビの前でノリノリで踊り
出したので、デジカメで動画を撮ってみた。

おかあさんといっしょとか子供向け番組の踊りに合わせて
はしゃいでいるのなら分かるが、何故かさくらんぼが盗まれた
という地味ーなニュースを見ながら…。

「でゅでゅゅりわわわー」

何かの歌を歌い、手をぐるぐる回すモンキーダンスやくるくる
回転する踊り、はてまたサタデーナイトフィーバーのような
キメのポーズもしたり、とにかく目まぐるしく踊りまくる。

お遊戯というよりどこどなく70年代のディスコダンスのような
様相である。Rは読めとお遊戯教室に通っているので

「こういう踊り、お遊戯教室で習ったのか?」

「いやー…こんな踊りはやってないよ」

嫁もどこでこんな踊りを覚えたのか分からないとのことだった。
おそらくパパイヤ鈴木の霊が乗り移ったのだろうということで
話がまとまった。まいうー。トギセンサンカ。

次の日、Rがどうしようもなくグズって泣き叫んでいたので、

「ほら、踊るRちゃんだよ」

と動画を見せたところピタリと泣き止み、踊る自分の姿に釘付けと
なっていた。泣き顔がいつの間にかニヤケ顔になっている。なんて
ナルシストな娘。やがてRは昨日の自分に触発されたのか、

「でりゅりゅでりゅのめー」

再び激しく踊り始めたのであった。よし、今後Rがグズってどうにも
ならなくなった時はこの手で行こう。絵本より効果的な踊る動画。

グズっていてもRはすぐ踊りだす。

これをグズの踊り子といいます。
.

おまるのフォオマルスタイル。

「R、こっちにおいでー」

嫁が娘・R(1才半)と一緒にトイレに入って行った。
おむつ娘を卒業し、トイレで用を足せるように訓練する
トイレトレーニングの始まりである。

僕もRのノーパン姿に心を奪われたので付いて行った。

(みだらな視点ではなく、純粋に可愛いと思ったのである)

トイレの扉をギイイ…と開けて

「母ちゃん、紙〜」

と覗いてみると見ると、おまるの上にRがまたがっていたので
父である僕もトイレ躾の第一歩を踏むことにした。

「R。ここでおしっこするんだよ。はい、やってみよう。
 おしっこしー」

photo「しー」


いや、口で言ってるだけだし。
というよりもその「しー」じゃないし。

「ははは、まだ全然なのよ」

と嫁。しかしRは慣れないトイレに戸惑ったり嫌がることもなく、
むしろ楽しそうにニコニコ笑っている。この調子でゆっくり
教えればいい。

僕はそんなRの姿の、おまるに腰掛けているお尻から太ももの
ラインが美しいと思った。

(重ねて書くがみだらな視点ではなく、純粋に可愛いと思ったのである)

僕が見惚れているとRは更に嬉しそうに笑い、木馬に乗っているかの
ようにガタガタ腰を振り始めたので僕は度肝を抜かれた。

その悩ましげな腰振り…まるで騎上位ではないか。

(とうとうみだらな視点になってしまった)

しまった、嫁にこのトレーニングをせめて5年前からさせておけば…
じゃなかった、R、これはそういうトレーニングじゃないよー。

これまで自分を変人だと思ったことは一度もないが、オマル姿の娘に
ここまで興奮してしまうとは、さすがに少し異常ではないかと思った。
既に嫁の動きよりダイナミックだったのでつい。

これをアブノオマルといいます。
.

やらずがたり。

「あー…休日があっという間に終わってしまった」

寝起きでポーっとしている娘・R(1才半)を抱きしめながら、
今日もこの子と一緒に遊んでいたいと思ったマニックマンデー。
遊び足りまへんでー。

「何よ、土日とも寝てばっかりだったじゃないのよ」

そこに嫁がイテコマシタルデーと言わんばかりの鋭い
ツッコミを入れた。夫婦において突っ込むのは夫の
役目であるのに。

確かに嫁の言う通りではある。土曜日は午後3時ごろ
Rと昼寝していたらノンストップで朝まで寝てしまった。
日曜も夜9時ごろRが寝付くのを見届ていたら、やはり
朝までそのまま寝てしまった。

しかし土曜の午後は丸っきり寝っぱなしではあったが、
やることはやっているのである。午前中は、嫁のママ友が
創価学会だったため、熱心に選挙に誘われたことにも付き
合ったし(投票はしてないけど)、日曜は海に行って、帰って
来てもRの遊び相手やRの入浴や晩飯の皿洗いもした。

話はツッコミに戻るが、いくら頼んでもやらせてもらえないのが
現状である。。やれ眠いだのやれ疲れただの。妊娠中なので
無理強いはできず、残された道は無理自慰しかない。そんな
手持ち無沙汰な夜は寝るしかないじゃないか。

「夜寝る分には別にいいじゃん!」

そんな不満は隠しつつ、とりあえず反論したのだが

「そうだけどさー。昨日は、私は別になんでもない夜
 だったんだけどなー」

嫁のなんとも遠回しな言い回しが…。これは昨晩はOKだったと
いうことか?どうやら性器、じゃなかった好機を逃してしまったよう
である。とても悔しい。こうなったら今晩の予約を取るしかない。

「じゃ、じゃあ今晩お願いします!」

「今夜はキムタクのドラマがあるからダメ」

ヒイイイイ!こんなぞんざいな断わられ方初めてだ!

「お前は俺のツユダクよりもキムタクを取るのかー!」

と、問い詰めようかと思ったのだが、あっさり「そうだ」と答えられる
事が火を見るより明らかでありやめた。そう明言されたら二度と立ち
直れないかもしれない。

夫のマラより月9のドマラ。
…じゃなかったドラマ。
.

海性欲、いや海水浴。

女体の肉の海に溺れたかったが嫁が許してくれないので
普通の海に行くことになった。

嫁と娘・R(1才半)を連れて逗子の海へ。ここは10年ほど前、
嫁と来たことがある。逗子駅から海へ歩いていく道すがら、

「この辺の道、覚えてない?」

「全然」

「えー。じゃあこの橋とかこの川沿いの道とかは…」

「通ったっけ?」

まだラブラブ絶頂期だった頃のデート。僕らの仲は南洋の海のように
輝いていた。そういった思い出は嫁の中ではどんどん忘却され、現在
僕が家事しないとか休日は寝てばっかりとか、そういった今の不満の
蓄積に埋もれてしまうのであろう。あの頃とは全てが変わった。
変わらないのは僕の性欲だけだ。

そして辿り着いた海は現在の僕らを象徴するかのような、ドブ川の色を
した灰色の海。それでも都会のうだるような暑さから解放された僕らは
満足し、ケラケラと笑いながら遊んだ。

「フギャアアア!」

泣いているのは娘・R(1才半)ただひとり。Rにとっては生まれて2回目の海。
初めての時は僕が抱いて波打ち際に連れて行っても絶対砂浜に足を着けよう
とせず、今日は少し慣れてもらおうと思ったのだがやはりダメであった。

しかしやがて慣れてきたのだろうか、海水があるところはダメだが砂浜では
トコトコと歩き回るようになり、なんだかラグビー部のようにひとりで砂浜
ランニングを嬉しそうに敢行していた。若いっていい。飛び出せ青春。

僕はビキニスタイルのお嬢さんを発見。
若いっていい。飛び出す性春。

Rの砂遊びはどんどんエスカレートし、海水交じりの砂でドロドロとなり

「あー…もう服がグチャグチャ…」

嫁は嘆いていたが

「だいぶ慣れてきたな!次は海の中に入ろう!」

そう逗子の海に誓って帰ることとなった。帰りの道は行きとは少し違う
ルートを辿ってみたところ

「あ、このへんの道は覚えてるよ!なんとなく!」

ようやく嫁が思い出してくれた。先程まであまりにも嫁の記憶が無いので、
ひょっとしたらあのイチャイチャした思い出は、全て僕の妄想だったのでは
ないかと心配していたところだ。危なかった。

リメンバーズシハーバー!
.

選挙は続くよどこまでも。

嫁の育児仲間、ミゲル君母(ミゲル君は1才のハーフの男の子で
とても可愛い)から都議会選挙に行こう、との誘いがあったとか。

投票日は7月3日なのに、期日前投票の初日に行こうというのだから
熱心なことである。しかし以前ミゲル君の家に行った時に見た、
あるお人の写真が飾られていたことを考えると、さもありなんと
思ったのであった。

嫁が困った顔で

「○○党の候補者に入れて欲しい、ってお願いされたんだけど
 どうしよう」

僕にも是非とお誘いがあったからと言うので

「君の好きにすれば…僕は興味がないからって言っておいて」

そういうことになった。ただ、選挙の後はゴハンを食べようという
ことなので、娘・R(1才半)と一緒に投票会場の区役所まで行った。

区役所に着くとミゲル君一家はまだ来ておらず、しばらく待つ。
僕はとっとと投票して来ようかとも考えたが、告示されたばかりで
選びようがないと思い、本チャンの投票日に改めて来ようと思った。

やがて来たミゲル君一家。嫁とミゲル君ママが投票所に入って行った。
僕はミゲル君父(南米人)とパソコンオタクな話をつらつらと。彼は
僕も舌を巻くほどのゲームオタクなので、選挙そっちのけで怪しい
ソフトウェア情報などの話に。

嫁とミゲル君母が戻って来て、

「もう投票しちゃったんですか?」

と僕にも聞いてくるので

「いやーまだ。あはは」

「ちなみにどこの政党を…」

ミゲル母さんはきっとあの政党に入れて欲しいんだろうなあ、
というのが伝わってくる。しかし僕は

公に誰に入れるとか入れないとかを
明らかにしたくない。誰がどこの政
党に入れようがいいではないか。なので

「えーと、白い巨党とか…」

寒いギャグで誤魔化すしかなかった。しかしミゲル君母、熱心である。
学会の方々(あ、書いちゃった)のこういった面に接したのは初めて
なので、どう接していいか分からなかった。皆こうして一人一人当って
いくローラー作戦を展開しているのだろうか。

学会だけに池田大作戦。なんつって。
.

おっぱいは2個である。名前はまだない。

僕が着替えをしていると、露わになった僕の体を見て

「ぱいぱい」

と父の乳を指差す娘・R(1才半)。少し前の日記に書いたが、

「おへしょ(おへそ)」

に続き、どんどん体のパーツの呼び名を覚えて指差すように
なっている。しかしそれを痛し痒しな表情で見つめている
嫁が言った。

「でもねこの子、いきなり自分の服をめくってお腹を出して、
 『おへしょ』って指差すようになっちゃったのよー」

妙なポーズを覚えてしまったものである。僕はセクシーコマンドー
は仕込んだが、こんな芸、僕も嫁も教えていない。

「家でやる分にはいいけど、外でやったら大笑いされるぞ」

「それは今のところないの。家の中だけなのよ」

1才児ながら、そのくらいの分別というか恥じらいはあるの
だろうか。と、じーっとRを見つめていたら、Rは自分のシャツの
裾をがばっとめくり

「おへしょ」

で、でた。これか。キャー。お腹丸出しー。

話は反れるが、僕が中学生の頃、「な?おじさん」と呼ばれる
露出狂が現れた。女の子が何人か遭遇しており、彼女らの話に
よるとそのおじさんは、女の子の前に立ちはだかり着ている
コートをがばっとめくるのである。コートの下には何も着て
おらず、その隆々とした逸物を天に向かってそびえ立たせつつ

「な?」

一言だけ言ってニヤリと笑うのだという。何が「な?」なんだか
知らないが、今は元気なのだろうか。

話を戻す。

自らのお腹をさらけ出すRの姿に、遠い昔の露出狂の思い出が
重なってしまった僕は、

「決して外でやっちゃいけないよ。お嫁に行けなくなっちゃう
 からね。やりたかったらお父さんだけに見せるんだよ」

と言い聞かせたのだった。そしてこれに加え、

「R、おへしょは分かったけど、Rのぱいぱいはどこにあるのかな?」

僕の胸じゃなく、R自身の胸を指差すよう示したところ、

「ぱいぱい」

Rは素直に自分の胸を指差した。よし、これで覚えた。さすれば
お腹を出して「おへしょ」と言うだけでなく、胸までたくし上げて
「ぱいぱい」と見せてくれることであろう。そして

「これも外でやっちゃいけないよ。お嫁に行けなくなっちゃう
 からね。お父さんだけに見せるんだよ」

こう付け加えるのも忘れなかった。向こう20年ぐらいこの父にやり
続けてくれればベリーナイス。これぞ萌える娘育成20年の計!

僕とRは腹と胸をさらけ出す親子になるのである。
.

淡白でもいい。たくましく契って欲しい。

夫婦の契りは大切である。

うっとりしっぽり絆を確認し、愛の結晶を作成する
美しくもみだらな行為であり、人類も子孫繁栄。                  ところが嫁は冷たくなった。僕がいくら口説いても

「今日はなりませぬ」

つれない答えしかしてくれない。もともと嫁は契りに対して
そんなに貪欲ではない。僕の甲斐性なしさを身に染みて感じ、
契るに値しない男であると感じているのか、それとも僕の
みだらなテクニークが未熟なせいで契りに魅力を感じないのか。
おそらくその両方であろう。

尤も嫁は現在妊娠中なのでごり押しも出来ない。自戒の意味も
あり大人しく下がるしかない。しかしいつまで経っても「今日は…」
の同じ答えである、ノー契り期間が特に長くなってきたので

「お願いだ、お願いだ。お願いだ、お願いだ。…やらせてください」

見も蓋もない土下座外交ならぬ土下座性交を試みたのだが

「私達は冷たい関係になるのよ。私は氷の王女オルゲルド…」

などと訳の分からないことを言うので

「私は光の王女アルディス。ラストニア…私の国…お姉さま。
 やらせてください」

嫁に合わせて寸劇を試みたところ(意味が分からない人は
「ガラスの仮面」を読もう)

「わかったわ、わかった。いいわよもう。うるさいから
 やらせてあげる」

嫁は履き捨てるように言った。なんだとー!うるさいから
だとー?じゃあ何か。僕はスーパーで

「ママー!お菓子買ってお菓子買ってー!」

と駄々をこねるガキンチョと同じか?そのように憤慨したのだが、
落ち着いて考えてみると全くその通りなので愕然とした。

お情けでやらせてもらえるだなんて、僕はそこまで落ちぶれては…



落ちぶれているのでお情けを頂くことにする。
これぞ「情愛を交わす」ということに…はならないか。
.

ハードなソフトクリーム。

河口湖旅行日記ファイナル。

旅行中、ずっと嫁の心を捕らえているものがあった。
それはソフトクリーム。

湖畔の至るところに「ラベンダーソフトクリーム」という、
どうやらこの辺の名物として売り出したい感がひしひしと
伝わってくるノボリや看板が目に付くのである。

嫁はそれにまんまと引っ掛かった。嫁まっしぐら。
僕バイアグラ。いや、まだノーケミカルで現役さ。
かっこインテグラ。

それでも嫁は妊娠中の太り過ぎを懸念してかある程度
我慢していたが、夕方とうとう耐え切れずとあるお店に
飛び込んで買ってしまった。しかし…どうも美味くない。

ラベンダーソフトクリームという語感のイメージからすると、
ラブミーテンダーな高原のような爽やかな味を期待して
いたのだが、クリームの中にマーガリンでもぶち込まれた
ようなニョッチリした脂っぽさが口の中に残るものであった。
嫁は無念の表情を露わにする。

「えー…こんなのって…悔しい」

「じゃあ別な店で買ってみようか」

「いくら好きだからって2つも3つも食べられないよう」

一方で娘・R(1才半)は嫁や僕が口に運ぶそばから
ばくばくと平らげ、ウェハースまでバリバリと食べる
逞しい食いつきっぷりだけが救いであった。

翌日、僕らは大きなラベンダー畑がある公園に行った。
ラベンダーソフトクリームがウリになっているのは、
どうやらこの公園が由来のようである。そしてここの
屋台の出店でもそのソフトクリームは売っていた

「私、買うわ!」

嫁は凝りもせず再び挑んで行き、

「おいしいよー!昨日のより全然おいしい!」

ラベンダーにネバーサレンダーな不屈の闘志でようやく満足の
いくもの辿り着いたのだった。Rも嫁に負けじとばかりに再び
ソフトを舐めまくっていたが

「ひええええん。ひえええん」

「どうしたの?急に泣き出しちゃって?」

「たぶん、頭がきーんとなったんじゃないか?」

このがっつき具合、誰に似たんだか(嫁だー嫁だー)

このように嫁は連日ラベンダーの甘いものを食べていた癖に、
旅行から帰ってきて

「なー。母さんがいたから出来なかったのでいいだろー?」

僕の甘い言葉には一向に食らい付いて来ぬ。

いつになったらやらせてクレンダー。
.

母は言った。私は万年妊娠十ヶ月。

河口湖旅行の2日めの朝。

温泉宿の寝起きでまずやることといったら
迎え酒…ではなかった、朝風呂である。

僕は娘・R(1才半)と一緒に入りたいと嫁に
せがんだところ

「ほんとに?じゃあよろしく!」

あっさりOKをもらった。嫁もRから開放されてのんびり
湯に浸かりたかったのだろう。しかし

「そうだ。湯上りのRを写真に撮って来てね!」

という指令を渡された。そういえば昨晩、真夜中に腹が
減ってひとりラーメンを食べに行った時も写真を撮って
来いと言われ、仕方なく店の人の目を盗んで撮ったのに、
見せたら

「ふーん」

リアクションはそのひと言だけ。一体何なんだ。何故写真を
乞うのか。もしかしたらここには林家ペーの地縛霊がおり、
嫁は取り付かれてしまったのかもしれない(まだ生きてるよ)

そんなわけで嫁と母は露天風呂女湯へ。身重の嫁と太っている母。
どちらもハラボテコンビである。

僕はRを連れ、デジカメをひた隠して男湯へ。しかしこれじゃ
まるで盗撮男である。幸いにして僕らの他にはしなびた金玉の
爺さん(略してシナジイ)がひとりいるのみ。
Rは最初こそ怖がって泣いてしまったが慣れてしまえばこっち
のもの、ニコニコと風呂の中をじゃばじゃばと歩いておった。

露天風呂をほぼ僕とRで独占。これぞ親子水入らず。お湯に
入ってるけど。Rが成長してもこうして僕と一緒に温泉旅行に
付いてきて泊まってくれるだろうか。

そして温泉宿の寝起きでまずやることといったら、わかめ酒…
ではなかった、迎え酒…でもなかった、朝風呂で父の背中を
流してくれるだろうか。

将来の希望を考えつつのぼせてしまった。Rを連れて露天風呂を
出、脱着衣所でRに浴衣を着せた。

はう…1才児とはいえ、我が娘とはいえ湯上りのRは色っぽい。
嫁が写真を撮って来いというのも道理である。しかしこんなところで
写真を撮るというのはいくら男湯とはいえ気がひける…。

幸いさっきのしなびたシナジイがうろうろしているのみだったので、
ちょっくら失敬してRを撮りまくった。親バカということで許しておくれよ。

「写真撮れた?」

「あ、うん」

風呂から戻ると嫁が聞いてきたので、嫁に見せる前にデジカメの
プレビューで確認する。にっこりと笑うR、湯上りのうなじが
妙に色っぽいR、どれもこれもベストショットであったが

「ひいいいい!いつの間にかRの後ろに金玉が!」

その内数枚に先程のしなびたシナジイのお宝が映っており、
泣く泣く削除したのであった。こんなもんプリント出来るか!

いや、爺さんは悪くない。露天風呂で裸なのは当たり前である。
写真を撮る僕が悪いのである。

そんなわけで今度温泉に行った時は、嫁に、女湯で、Rの写真を
撮ってもらうことにする。削除しちゃいやよ。
.

静かな湖畔の宿の影から。

河口湖で泊まった宿は一泊の料金が都内で月極駐車場を
借りられそうなぐらいの値段だったが、その分豪華だった。

何よりも仲居さんがカワイイ!初々しくて、いつも笑顔で、声も
東京メトロのアナウンスお姉さんのような人懐っこい美声であり、
可憐にてきぱきと食事を運んでくれるだけでなく、

「お嬢ちゃんはカルピス好きかナ?」

娘・R(1才半)に飲み物のサービスまでしてくれて、僕のツボを
押さえっ放し。一方で僕は

「な、仲居さんもカルピス好きかナ…」

明らかにオチが見え見えなハラスメンツをしたくなる我が身を
必死で抑えっ放し。何しろ嫁と母がいるのである。目を血走らせ
たりせず、変な汁もほとばしらせたりせず、気さくな振る舞いを
しなければならない。皆でおいしいおいしいと食事をしつつ、

「あの、このメニューに書いてあるさかなへんに『豊』っていう字、
 なんて読むのかなあ?」

「えーと、えーと、ごめんなさい!わかりません!」

仲居さんのはにかんだ紅潮した笑顔がぱっと開く。そんな
仕草もカワイイ。

じゃあおっちゃんと布団部屋でしっぽりと漢字の練習しようか。
さかなへんに「喜」っていう字はなんて読むのかナ?
じゃあ答えを教えてあげるから目をつぶって…ぶちゅう。
なーんて。

いかん。酔いが回ってきたようだ。富士山が見えなかったので
せめて雰囲気だけでも、と「アサヒ生ビール富士山」を飲んだ
くれていたのである。こんなことばかりを考えて仲居さんを
眺めつつ、相当ニヤニヤしていたように思う。

富士山には月見草が良く似合うが
僕には妄想が良く似合うようである。
.

ふじさーん!ふじさーん!高いぞ偉いぞふじさーん!

嫁と娘・R(1才半)と…僕の母とで旅行をした。

場所を決めるにあたり、去年と同じく母の希望である
「富士山が見えるところ」を尊重し、河口湖となった。

去年は箱根の芦ノ湖にしたのだが、日頃の行いが
悪過ぎたせいか大雨になり全然見れなかった。

河口湖は芦ノ湖より富士山に近い。近過ぎちゃって
どうしよう、可愛くってどうしよう、というくらい近い。
だから今年こそはと意気込んで河口湖に到着したが…。

今年も見えない。雨こそは降らないものの空が淀んでいて
裾野しか見えない。

「あー…でもしょうがないねえ」

「やっぱ冬じゃないとダメだよ、冬」

などと言い合いながらそれでも望みを捨てず、眺めが良い
という展望台がある山にロープウェイで登った。ここは
「カチカチ山」の舞台といわれる山であったが、そんな
ことはわりとどうでもよく、肝心の富士山はというと、
無駄に暑いだけでやはり見えなかった。

「あーアチアチアチ!」

堪らず扇子をあおぐ母。その扇子を奪い、展望台の一番上で
ぶんぶん振り回し楽しそうなR。お前はジュリアナギャルか。

「ここはアチアチ山っていうんだよ…」

そのさまを眺めて呟いているうちに山を降りることになり、次は
湖の遊覧船に乗ることにした。芦ノ湖の遊覧船は豪華でその分
値段も高かった。一方で河口湖のそれは値段はリーズナブルで
あったが、その姿は

(カチカチ山の後だけに、泥舟っていうオチだったりして)

と思うぐらいみすぼらしい物で、嫁も同じ危惧を抱いたらしく、

「ひょっとして、これ?」

そっと耳打ちする。すぐ側に遊覧船係員と思われるおじさん達が
いたので聞こえてはならない。なのに、

「なんか北朝鮮の工作船みたいだねー」

母さん!そんなこと大声で言っちゃダメー!結局遊覧船に乗っている
間も天気が良くなるどころか夕立が来そうな気配になり、富士山は
見れず。船から降りた後、旅館にチェックインした。

宿は嫁が気合を入れて探した、部屋から富士山がドーンと見れる
旅館。しかし見えたのは湖と曇り空だけ。

富士山の全貌が丸見え!というのがウリの露天風呂も
おじさんの陰毛が丸見え!なだけであり、少しだけ
悲しかったのであった。
.

恋の火事場泥棒。

会社の喫煙室で、朝一発目のタバコを吸うエレガントな私。

鰹節工場の燻製室のような密室の中で煙に燻され、私、
身も心も汚されるわ。仕事モードに切り替わる瞬間よ。

胸のポケットタバコを取り出して唇にちゅっと挟むの。
いつもファーストキスの感触を思い出すわね。あの時は
味噌汁の匂いがしたわ。

それから、火よ。スーツのポケットからカルティエ(と
マジックで書かれた100円)ライターを居合抜きのように
素早く取って火をつけて…あら、いつもと感触が違うわね。
何故かしら、と視線をライターに落としてみたの。

photo

キャア!何これ!R(1才半の娘)のオモチャじゃないの!

「…それ、どうしたんですか」

喫煙室のみんなに見られてしまったわ。私ったらチョドジー!
視線が痛くて赤道小町ドキンちゃんだわ!

きっと、家でスーツの上着を椅子にかけている時にこっそり
忍び込まれたに違いないわ。いやーん、R、おそろしい子!
慌ててポケットをまさぐってしまったわ。ライターはあった。
Rにはまだライターとドキンちゃんをすり替えるようなイタズラを
する知恵はないのよ。

でも、ライターをポケットに入れておいたとはいえ、Rの手の届く
ところにあるのは良くないわね。気付かなかったわ。チョドジー。

いつの日かライターを取り出してイタズラしてしまうかも知れない。
幼児に火は禁物。火遊びするとおねしょしちゃうから…ってそういう
問題じゃないわね。まだオムツしてるし。

そうよRちゃん。あなたに火をつける道具は必要ないわ。だってだって、

だってアナタはもう私のハートに火をつけまくっているのだから…
イラスト素材→SAYURINA

Rはライター。私はタバコ。あなたがつけた恋の火で
私は燃え尽きて灰になるの。

でもポイ捨てしないでね。

※お知らせ:旅行のため、明日の日記は休みます。
 でも夜に書くかもしれません。
.

ヘソの緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする

娘・R(1才半)が何故かヘソに興味を持ち出した。
風呂に入っている時など、ポンポコリンの自分のお腹を
じーっと眺めて指差したりしているので

「へそだよ、おへそ」

と教えてやると

「へしょ、へしょ」

舌っ足らずな呟きとともにいじくり始めたりする。

「あんまりいじってるとお腹痛くなっちゃうよ」

そう言って止めさせると今度は僕のヘソを突っついてくる。
ついでに乳首にもタッチされたりしてしまうことがある。えーと、
こういう時にしなくてはならない事があったような。そうだ、
思い出した。

「いやーん、まいっちんぐ」

よし、このポーズもRに教え込むようにしよう…。

ひょっとしたらまだRぐらいの年齢の子供だと、ヘソの緒が
付いている時のことを覚えているのかもしれない。それで
今は無くなっている違和感を楽しんでいる、そんな風に
見えなくもない。

そして今朝、着替えるのでシャツを脱いだ時、Rが僕をじいと
見ていた。おそらくヘソに興味を示しているに違いないと思い、
ここは気合を入れてランバダダンサーの如く悩ましい腰振りを
もってヘソをアピールし、Rの気を引いて見る事にした。

「ほれほれ、へそらそらそらうさぎのだんす〜」

「…」

へんじがない。ただのバカのようだ(取り残された僕が)
いまいちRのノリのタイミングが計れん。

照れ隠しにホホホと笑い、座って新聞を読むみじめさよ。
しかしRはワンテンポ置いてやって来た。僕のシャツのすそを
くいと摘み上げて

「へしょ」

それからRは僕のパンツにまで手をかけ…や、やめて。そこは
立入禁止の禁猟区で18禁。お前の手を汚すわけにはいかぬ。

間一髪でRの手を振り解いたのであった。危ないところであった。

よいか娘よ。お父ちゃんのヘソの下には、ヘソの緒よりもっと
太くて長くて逞しいものがトグロを巻いているのだ。

…申し訳ありません。見栄を張るあまり、一部虚偽の発言が
ありました。

ヘソ800。
.

俺の背後に立つな。

真夜中、嫁も娘・R(1才半)も寝静まった後。

僕は遅い晩飯を食べ、台所にて皿を洗っていたら、
背後に人の気配を感じた。びくっとして振り返ると
嫁がもっさり起き上がっており、トイレに入って行く
ところであった。

あまり夫婦の仲がよろしく時に背後を取られるのは
不気味なものである。

「私が寝首を掻いてあげるから、首根っこも洗っておいた方が
 いいんじゃないのー?」

そんな事を後ろから囁かれたら怖過ぎる。ゴルゴ13の気持ちが
分かったような気がした。慄いた感じで皿を洗い続けていたら

「フギャアアアアアアアアア!」

突然、向こう三軒両隣に轟きそうな馬鹿でかい泣き声に心臓が
止まりそうになった。慌てて振り返ると、今度はRが僕の真後ろに
棒立ちになっておお泣きしているので二度びっくりである。

いつの間に僕の背後を取ったのであろうか。ひょっとしたら
この将来くのいち忍法帖…いや、そんなことはともかく、
RはRでそれ以上の怖さがあったのだろう。夜中物音で目覚めたら、
嫁も僕も誰もいないひとりぼっちの寝床で…。

「ごめんねー起こしちゃったねー」

皿洗いを中断してRを抱いてあやしていたら、嫁がトイレから
ぬうと出てきて、無言のまま僕からRを奪って寝床に入って行った。
やはり嫁の態度は刺々しい。

いつか僕が目覚めた時、嫁もRも誰もいない一人ぼっちの寝床で…
なんてことになったら…。

その時は地獄まで轟きそうな大声で泣くことにする。
.

空も飛べるはず。

娘・R(1才半)が最近こんなポーズをよくする。

photo

これってどこかで見た事があるなあと思ったら

photo

某巨大掲示板から発生したキャラ、「内藤ホライゾン」
だった。Rにこんなマイナーでオタクっぽいポーズを
仕込んだのは一体誰か?嫁か?クオリティー高ス。
夢がひろがりんぐ

これまで僕はRにセクシーコマンドーやら「ばんざい、なしよ」
などといった思いっきり自分の趣味のポージングをRに仕込んで
来たが、ここまでマニアックなものは…。

嫁、侮り難し。そしてなかなかまぐわらせてくれないので
嫁、穴入れ難し。

そこに当の嫁がやって来て言った。

「あら、Rちゃん上手ねー。お遊戯のひこうきぶーん」

…はっ。やっと僕は気付いた。このポーズは単に嫁が
Rを通わせているリトミック(お遊戯のようなもの)教室
で習ったものだということを。僕は一度も付いて行った
ことがないのでちっとも分からなかった。

だが、ごく普通のお遊戯のポーズ。そりゃそうだ。普通
そっちを考えるよなあ。いきなり内藤ホライゾンを連想
する僕が病んでいるのである。

だからといって反省する気は更々なく、お遊戯教室に負けない
よう、もっと色んなお遊戯を仕込んでやろうと思った次第である。
とりあえずパーデンネンあたりが狙い目かな。

ところで昨日の日記に出てきた火事。実はそのお遊戯教室が
入っているビルであったということが後で判明した。

い、1日ズレていたら嫁もRもそのレッスンの真っ最中であった…。
腰が抜けそうになった。

お遊戯教室で死亡遊戯になったら…お父さんどうにかなっちゃう。
.

ウチの家内は…おっ家内。

夫婦冷戦の真っ只中だから、うちのワイフがクチ聞いてくれないのさ。
僕はひとり近所の商店街で買い物をしていたんだ。すると馴染みの
ゲーセン店員のジョージ(仮名)とバッタリ会っちまってね。

「あれ、奥さんと娘さんは一緒じゃないんですか?」

なんて言いやがるんだよ。まったく最悪のタイミングだぜ、と思ったね。
だけどオイラはこう返事してやったのさ。

「うちの家内は…クチき家内」

ってね…HAHAHA!

そんなアメリカンジョークはさておき、昨日は朝から夕方までにおいて、
嫁が無言のまま娘・R(1才半)を連れて行かれ、独占されてしまったので、
今日は僕が先手を打つことにした。

「Rちゃん、お父さんとおんも出ようか」

Rと公園で戯れることにし、お出掛けの準備をしたのである。

「…私も後で行く」

玄関を出る間際、久々に僕に向って喋った嫁の声が聞こえた。
そうか、とだけ答えて出掛けた。公園でRと遊ぶことしばし、
嫁はその通りやって来た。

「カジを見ようと思って…」

と言ったので我が耳を疑った。僕を見たくて…とは嬉しいことを
言うではないか(嫁は僕のことを「カジ」と呼ぶのである)
照れるぜハニー、とちょっと面映い思いになったのだが

「カジを見ようと思ったんだけど、やっぱりやめたわ。
代わりに見てきてくれない?」

嫁が次に言ったことは意味が分かりかねた。僕を見ようと
思ったのにって、現に僕は君の前にいるではないか。それに
僕自身に僕を見に行けとは、さっぱり訳が分からない。
暑さにやられたのだろうかと心配になっていたら

「ほら、妊婦が見るとお腹の子供に痣が出来るっていうでしょう?
 サイレンとか聞こえなかった?」

カジとは僕ではなく火事である、ということがようやく理解できた。
そういえば少し前、消防車のサイレンの音がやたらと聞こえてきて
Rが騒いでいた。ときめいて損した。

嫁は妊娠6ヶ月。確かに火災現場に妊婦がいるなんて危険極まりない。
別にわざわざ行かなくてもと思ったが、田舎物の僕とは違い嫁は
「火事と喧嘩が華」の江戸っ子の血が騒ぐのだろうと察し、代わりに
野次馬となって見に行ってやった。

「…もう鎮火してたよ。ドラッグストアの奥のビルだね」

「あらそう」

戻って来た僕の話に嫁はさして興味を持った風でもなく。
だからオイラはそんなワイフにこう言おうと思ったのさ。

「野次馬になってやったのだから、夜は種馬にならせてくれよ」

…ってね。HAHAHA!

しかしそんなアメリカンジョークは冷戦の雰囲気が未だ重く
のしかかっていたため、お蔵入りとなったのであった。
.

MUGON…ダメっぽい。

些細なことで夫婦の仲が冷え、嫁と一週間口聞いてない。

せっかくの休日なのにそんなドメスティックサイレンスの中、
家族愛の触れ合いを求むるとすれば娘・R(1才)と戯れるしかない。

…と思ったら嫁に先手を打たれ、午前中早々とRを連れて
どこかに行ってしまった。当然「どこどこへ行く」などという
断りもなく、僕を完全黙殺する構えのようである。

シカト?シカトですか?じゃあワタシはアナタがそうやって
シカトする様をシカト見守ることにします…Yeah!

あ…ウソウソ!気ぃ悪くした?あっ、でもそんな黒くないよね…
嫁の乳頭って。黒じゃないよね…うん。

僕はなす術もなくペリーの物真似をひとりやっていた。どうせ
昼頃には帰ってくるだろう…と侮っていたが2時になっても3時に
なっても帰って来ない。当然僕の昼飯もなし。知ったことかという
構えのようである。尤もこんなギスギスした状況では食欲なんてない。

しかし昼飯どころかもう2度と帰って来なかったりして…という嫌な
予感が頭の中を駆け巡り、家の中でジメジメと待つのみでは精神衛生上
よろしくない。嫁が僕にお構い無しの休日の過ごし方をするのであれば
僕もそうすればよい。

久しぶりに嫁からもRからも開放された(見放された)休日である。
思いっきりデカダンスな休日の過ごし方をしてやる、と家を飛び出し、
プリンセス天功似のおばさんウェイトレスのいる近所の喫茶店で
ビールをかっ食らっていたら夕方になってしまった。

家に戻ってみると、嫁とRは何事もなかったかのように帰っていた。
僕は酒臭さとあやしい足取りを悟られないようにコソコソとしなければ
ならなかたのであった。

デカダンスな休日ではなく
バカダンナの休日になってしまった。
.

父娘の歯権争い。

ついさっきまで仲良く遊んでいたのに、娘・R(1才)は
夕飯を食べ終わった後ぐらいから露骨に僕を避けようとする。

この後のオフロを恐れているのである。何故恐れているのか
というと、我が家のオフロにはパパイヤ鈴木がいるのだ。

そりゃアフロだ。

正確に言うと、Rはオフロそのものではなくお風呂でやらされる
歯磨きが大嫌い。本来R自身の手で磨かせたいところだが、

「さあR、歯を磨け。そして女を磨け」

と歯ブラシを持たせても、口に咥えてフゴフゴと遊ぶだけであり、

「お、咥える、であるとか、しゃぶる、とかそういうテクニークも
 磨いているのだな…ってそんなもん磨かないでくれ!」

無垢なお前の姿からみだらなイマージュを連想したくないのだよ…と
純粋な父心を掻き乱されてしまうので僕がやることにしている。

しかし痛くないように最新の注意を払ってもRはこれを大変嫌がり、
泣き叫んで鼻水・ヨダレ・涙が駄々漏れになってしまうので、
風呂場でやることにしているのである。

夕飯を食べ終わり一息ついた頃を見計らい、浴槽にお湯を入れ始める。
そのドドドという音が聞こえてくると、Rの怯えようは益々顕著になる。
そしてお湯が溜まり、

「さあR、お風呂に入ろう」

僕がRを抱こうとすると

「イヤアアアア!ギャアアアア!」

Rの恐怖は絶頂に達し、爆竹のように泣く。しかしオフロ自体は
好きなので、服を脱がせようとすると泣きながらでもちゃんと
バンザイするし、手を繋ぐと素直に浴室まで付いてくるところが
また何とも可愛い。
         
「ぎゃあああん!うわあああん!」

浴室に入って早速歯を磨き、後もうひとつRの嫌いな洗髪を済ます
までは泣き女バンシーをも凌ぐとすら思える激しい泣きようである。

「はい、終わったよ」

しかし歯磨きと洗髪が終わると、Rはケロッと泣き止み、

「うへへへへー」

嬉しそうに水遊びをするのであった。落ち着いたところで
      
「Rちゃん、そんなに怖くないでしょう?」

歯ブラシを手に取ってRに振りかざしてみると

「いやーっ!」

激しく拒絶反応を示し、また大泣きになる前兆を見せたので
慌てて歯ブラシをRに持たせた。

「早く自分で磨けるようになるといいんだけ…ぐえほがぼがぼ!」

Rに歯ブラシを口の中に突っ込まれた。Rの反撃である。
これぞまさに「歯に歯を」

みごとじゃ…。
.

アサイチデート。

仕事がある日は出勤前の朝が娘・R(1才)と遊べる
唯一の時間である。

妊娠6ヶ月目の嫁には出来ないであろう、Rを持ち上げて
アクロバティックなお遊びをたくさんしてあげるのだ。

高い高いとか。飛行機ぶーんとか。両手を掴んでクルクル
回るとか。肩車とか。地獄車とか。駅弁とか(一部嘘)

「うきゃーーーー!でへへへへへ!」

Rは殊の外喜んでくれるので僕も力の限界までやった。すると
その後Rはウヘヘへと僕に抱きついて来た。

「ウフフ…あなたのディックは今夜も激しかったわ」

まるでベッドでの戦を終えた後のよう。僕もRをひしと抱きしめ、
熱き抱擁を交わす。Rの体が小刻みに震えていた。きっと
熱き放尿をしているのだと思った。

異変はその後起こった。Rが絵本を持って来たので請われるがまま
読んでいたのだが、

「いやっ!めっ!めーーーーーっ!」

何故か急にRが不機嫌になってしまった。「めっ」とはR語で
「あっち行け」という意味である。僕が何をしたのであろうか。
みのもんた風に読んでしまったのがいけなかったのだろうか。
ここは江守徹風にするべきだったのだろうか。

理由は分からないまま出勤時間が迫り、僕は家を出なければ
ならなくなった。

「じゃあね。R。ばいばい」

いつもなら「ばいばーい」と手を振ってくれるR。しかしご機嫌
斜めになってしまったRはこちらを振り向いてくれすらしない。
玄関に見送りに来てもくれない。

いいよー。お父さんいじけちゃうもーん。

超しょんぼりっく、超しょぼんぬでひとり寂しく靴を履き、扉を
開けて家を出ようとした瞬間、

だだだだー。Rが走ってきた。

「ばいばーい!ばいばーい!」

ああっ。やはりRは見送ってくれた。何だろうこの感動は。ドラマで
よくある、駅のホームでお別れするシーンのような。電車の窓から
身を乗り出して手を振るヒロインと、ホームの先までそれを追い掛け

「ワシャア、いつか必ずおまんを嫁に迎えに行くけえー」

などと叫んでこける主人公と。

これもRのじらしプレイなのだろうか?1才半にしてこの三十路オヤジの
僕の心をガッチリキャッチ。恐ろしい子!付いては離れ、離れては付く。

このアメと鞭の呼吸を覚えておけばたいていの男は大丈夫だぞR。
将来のR像を思い浮かべながら会社に向かったのであった。

アメと鞭、両方イケる口の僕のような男もいるしな…。
.

自画自賛の娘と自我悲惨の父。

娘・R(1才)のブログ(→参照)を見ていた。
Rの画像を一枚一枚

「我が子愛しやほーやれほ」

と、穴が開くほど凝視して悦に浸っていた。昔、アイドル雑誌
などをこっそりハアハアと眺めていた中学生の頃を思い出したり
していたら、ひょいひょいと腕をつままれた。

「ヒイイ!母さん、僕、自慰してないよ!」

思わず思考がタイムスリップしてしまったが、腕を掴んでいたのは
当のRだった。どうやら自分にも見せろということらしい。Rを膝の
上に乗せて、ディスプレイに近づけると、Rは自分の画像を指差して

「かーいー(可愛い)」

と叫ぶではないか。画面をスクロールさせ、次々と画像を見せても
その都度「かーいー」と叫ぶ。これは…我が子はナルシストになって
しまったのだろうか。

確かに僕はRを見るたびに「可愛い可愛い」と呪われたように言い続け
ているし、ほっぺたに指を当てて「かーいー」というポージングも

photo

僕が仕込んだのであるが。それが悪かったのであろうか。試しにRの
画像は引っ込めて、僕の画像を出してみた。さあR、「かーいー」と言え。
しかしRはそれを見た途端

「ょいしょ、ょいしょ」

僕の膝から降りて行ってしまった。…ひどすぎる。
ひとり取り残された僕は、自分のアホ面を見て

「…かーいー」

自らを慰めるのであった。

お母さん、結局自慰してしまったよ。
.

児童快感。

トキオ。やさしい女が眠る街(沢田研二/TOKIO)
T・E・C・H・N・O・P・O・L・I・S、トキオ(YMO/TECHNOPOLIS)
トキオ、どうしてあなたはトキオなの?(シェイクスピア/トキオとジュリエット)

などなど古今東西において魅力を謳われる街トキオ。その中でも
1才半の娘・Rを抱える僕と嫁にとって更に魅力的であったのが
シヴヤにある「東京都児童会館」である。

ここにRを遊ばせるために初めて行ってみた。結果、大成功。
広いスペースの中におもちゃ・遊具がどっさりとある。ミニチュアの
キッチンと大量の食器・野菜・果物の大量のおもちゃに囲まれて
夢中になって遊ぶR。食器を運んだり料理の真似事をしたり、
そのテキパキとした台所さばきは平野レミをも凌ぐとすら思われた。

「ボクも一緒に遊んでいい?」

Rを見守る僕と嫁のところに、ひとりの男の子がやって来た。
残念ながらRはまだ他の子と遊ぶことを知らない。おもちゃに夢中のまま
である。しかし男の子はくじけず人懐っこく僕に話し掛けて来る。留吉
(昨日の日記参照)とは違い、なかなかよい子のようである。

「いいよ、一緒に遊ぼう」

「じゃあボクお父さん役ね!だってボク、幼稚園じゃ一番大きいんだ!
 じゃ、お仕事に行ってきまーす!」

「あ、待って、君がお父さんなら僕は何役なんだようー!」

男の子は早速お父さん役としてさっそうと出勤してしまった。
仕方ない、隠居ジジイの役でもやってるか。

「はあー最近リウマチがひどくてのう。温泉でも行きたいわい。
 よっこいしょういちっと。Rさんや、メシはまだかいメシは…」

Rに呼び掛けてみると、Rは皿に包丁を載せて持って来た。
死ねということだろうか…。

ところでお父さんは帰りが遅い。残業か、飲み会か、はてまた
不倫か…と思っていたところにようやく戻って来た。

「ごめんね。ボク、一緒に遊べなくなっちゃった。いろいろと
 仕事があってね!じゃあね!」

僕は手を振って男の子を見送った…なんだ、仕事って。
サバサバとしていて小奇麗で、いかにも都会っ子な感じ。
野蛮かつドン臭かった僕ら田舎の子供達とは違い、トキオで
暮らす子供達は、どこかスマートで垢抜けている。

トキオとトチギの違いなのか、それとも時代の違いなのかは
分からないが…。Rもいわゆる都会っ子として育つのだろうか。

ままごとのみならず遊び場の中を縦横無尽に駆け回っているRを
見て、そんなことを考えた。

トーキーオー駆ける少女ー。
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