母は言った。私は万年妊娠十ヶ月。

河口湖旅行の2日めの朝。

温泉宿の寝起きでまずやることといったら
迎え酒…ではなかった、朝風呂である。

僕は娘・R(1才半)と一緒に入りたいと嫁に
せがんだところ

「ほんとに?じゃあよろしく!」

あっさりOKをもらった。嫁もRから開放されてのんびり
湯に浸かりたかったのだろう。しかし

「そうだ。湯上りのRを写真に撮って来てね!」

という指令を渡された。そういえば昨晩、真夜中に腹が
減ってひとりラーメンを食べに行った時も写真を撮って
来いと言われ、仕方なく店の人の目を盗んで撮ったのに、
見せたら

「ふーん」

リアクションはそのひと言だけ。一体何なんだ。何故写真を
乞うのか。もしかしたらここには林家ペーの地縛霊がおり、
嫁は取り付かれてしまったのかもしれない(まだ生きてるよ)

そんなわけで嫁と母は露天風呂女湯へ。身重の嫁と太っている母。
どちらもハラボテコンビである。

僕はRを連れ、デジカメをひた隠して男湯へ。しかしこれじゃ
まるで盗撮男である。幸いにして僕らの他にはしなびた金玉の
爺さん(略してシナジイ)がひとりいるのみ。
Rは最初こそ怖がって泣いてしまったが慣れてしまえばこっち
のもの、ニコニコと風呂の中をじゃばじゃばと歩いておった。

露天風呂をほぼ僕とRで独占。これぞ親子水入らず。お湯に
入ってるけど。Rが成長してもこうして僕と一緒に温泉旅行に
付いてきて泊まってくれるだろうか。

そして温泉宿の寝起きでまずやることといったら、わかめ酒…
ではなかった、迎え酒…でもなかった、朝風呂で父の背中を
流してくれるだろうか。

将来の希望を考えつつのぼせてしまった。Rを連れて露天風呂を
出、脱着衣所でRに浴衣を着せた。

はう…1才児とはいえ、我が娘とはいえ湯上りのRは色っぽい。
嫁が写真を撮って来いというのも道理である。しかしこんなところで
写真を撮るというのはいくら男湯とはいえ気がひける…。

幸いさっきのしなびたシナジイがうろうろしているのみだったので、
ちょっくら失敬してRを撮りまくった。親バカということで許しておくれよ。

「写真撮れた?」

「あ、うん」

風呂から戻ると嫁が聞いてきたので、嫁に見せる前にデジカメの
プレビューで確認する。にっこりと笑うR、湯上りのうなじが
妙に色っぽいR、どれもこれもベストショットであったが

「ひいいいい!いつの間にかRの後ろに金玉が!」

その内数枚に先程のしなびたシナジイのお宝が映っており、
泣く泣く削除したのであった。こんなもんプリント出来るか!

いや、爺さんは悪くない。露天風呂で裸なのは当たり前である。
写真を撮る僕が悪いのである。

そんなわけで今度温泉に行った時は、嫁に、女湯で、Rの写真を
撮ってもらうことにする。削除しちゃいやよ。
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