家族全員妊娠。

嫁のお腹の中にいる第2子。僕らはトロと呼んでいる。

産まれて来るまでの仮名である。いわばウームネーム。
僕は時々お腹をさすって

「トロ〜。元気か〜」

などと話しかけるのだけれども、娘・R(2才)も

「トロチャーン、トロチャーン」

僕と同じことをする。嫁の話だと1日何回もやるのだという。

「Rもお腹の中にいることが分かってるんだねえ」

と嫁に言うと

「さあ…それはどうかしら」

嫁は首を傾げる。それはどういうことかと思ったら、
Rは自分のお腹も撫で回して

「トロチャーン」

と言っているではないか。そこで僕は

「ははは、Rのお腹の中に赤ちゃんがいるのか。はは…
 そうかそうか…えーちょっと待て…。

 …誰の子だー!

 なーんちゃって」

気さくでエスプリの効いたギャグを飛ばしたのだが、嫁は
ノーリアクションであり、なんだか周りの空気が寒い。おい。
夫がボケてんだからちゃんとツッコミ入れろ。ていうより
今晩あたり突っ込ませろ。

しかし僕のギャグは100回に1回ぐらいしかウケないので
大して気にすることもせず、

「ひょっとしてお父さんの子かナ?」

引き続きボケをかましたのだが、一瞬だけ嫁の眼が鋭く光った。

「あんたなら本当にやりかねないんだから、これ以上そんな
 こと言ったら殺すわよ」

という殺気を覚えたのは気のせいだろうか。僕は最早これまでと

「ははは…R、そろそろねんねしようか」

Rとの戯れをお開きにしようとしたところ

「トロチャーン」

Rは僕のお腹もナデナデしてしまうのであった。僕が妊娠かよ!
娘よ。見事じゃ。そのボケがあったか!

父を上回るボケをかますRを見て、やはり血は争えないのだなあと
思ったのであった。

いわばブラッド・キャント・バトル。


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