嫁への甘い誘惑。その時夫と娘は。

水天宮で安産祈願のお参りをして昼食を摂った。
その後娘・R(1才)を近くの公園でたっぷり遊ばせて
さあ帰ろうとしていたのだが、嫁が迷っていた。

「何か甘いもの食べたいなあ。せっかく水天宮まで
 来たんだから、あんみつとかいいなあ」

「じゃあちょっと歩いて甘酒横丁で甘味処を探すか」

「でもRも疲れてるだろうから可哀想だし。やっぱり帰ろう」

しかし嫁は家に帰ってからも呻いていた。

「ううう…甘いもの…」

むう。僕が草刈政雄のような甘いマスクを持っていれば
嫁はよろめくものを…などと口惜しみつつ

「コンビニでよければ何か買って来るよ」

「じゃあセブンイレブンでトルエン臭(しゅう)買ってきて」

なに…トルエン臭?脳をとろけさせ、天国へ誘う甘い臭い。
ヘブンイレブンいい気分…ってこら。嫁が元ヤンだったなんて
初耳だぞと動揺していたら

「とろけるシュー」

の聞き間違いだった。いやだわ僕ったらせっかちさん。
早速セブンイレブンに行き、とろけるシューをゲット。ついでに
嫁が念仏のように唱えていたあんみつも買う。

「はい。あんみつもあるよ。よかったら食ってくれ」

ひとまず冷蔵庫に入れていたところ、Rが隙を見てコンビニ袋を
ゴソゴソ探っており、店員が入れてくれたスプーンを取り出して
遊び始めていた。

「R、君もあんみつ食べたいか?お母さんとお食べ」

Rはしばらく僕の周りで遊んでいたが、僕が布団に投げ出していた
足に覆い被さったところで動きがピタリと止まり、そのまま寝て
しまった。昼間公園で大いに遊び回ったせいだろう。

力尽きる限界まで暴れ回り、死ぬる時も悉く敵の前を向いて
倒れたという、三河武士の如き凄まじい根性である。
あんみつどころではなかったようだ。

しかし足に圧し掛かられたままだと、Rに手が届かない。
どうしようも出来ない体勢である。

死して屍拾うものなし。あんみつ同心。なんつって。

…縁起でもないので嫁に手伝ってもらって布団に寝かせた。
我が家のあんみつ姫はその後3時間ほど眠り姫だったとさ。
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