愛するーハナタレー贈るー言葉ー♪

鼻水が物凄い勢いで垂れてくる。

僕は子供の頃からハウスダストアレルギー
なのである。外に出ると鼻水は引っ込むので
花粉症ではないと思う。

しかしハウスダストハウスダストとそれを強調して言うと

「じゃあ何かい。あたしの掃除がなってないってことを
 遠まわしに言いたいのかい。だいたいあなたは掃除一つも
 しないくせに…(以下略)」

などと嫁の火薬庫を突いてしまいそうな雰囲気にあるので、
あまり口には出さない。ただ黙っておもむろに鼻紙を
鼻の穴に突っ込むだけである。

この姿を見ると嫁は必ず笑う。笑わば笑えと僕は毅然と構える。
死ぬ程みっともないが楽である。かみすぎで鼻がヒリヒリしたり
耳がおかしくなって地獄を味わうよりも、恥を晒してでも生き延びる
道を僕は選ぶ。それに山瀬まみの物真似も出来てトレンディである。

それに、僕のアレルギーは数日で治る。しかし間もなく嫁は
花粉症で僕の数倍の鼻水を出し、苦しむことになろう。
嫁は女としてのプライドが許さないため、鼻紙詰めはしない。
さすれば僕はここぞとばかりに

「ほ〜ら、君もやってごらんよ。女として何かを捨てることには
 なるけどとっても楽チンだよ〜」

三途の川の向こう岸へと誘う死神のように嫁に語りかけるのだ。
それが復讐。

そしてこの呪われた血を受け継いだ子がひとり。
娘・R(1才)である。僕と同様鼻水が垂れっぱなしであった。

つむじがふたつ。眉毛が濃い。便秘気味。そしてアレルギー。
つまらんところばかり似てしまっている。なんとかわいそうに…。

「R、お前だけはこの苦しみを分かってくれるよね。
 お父さんがどんな姿になろうとも君は裏切らないよね」

と、鼻紙ぶち込み顔をありのままにRに向けてみたら

「うぎゃー!」

ハエたたきの様にブンブン手を振り回して避けられてしまった。
ああ、なんて冷たい我が家の女たち。嫁はまたそれを見て

「あなたが伝染したんでしょ!」

と、全ての元凶をぼくのせいにする。

「アレルギーは遺伝はするかもしれないけど
 伝染はしないと思うぞー!」

腹いせに杉花粉に先駆け、僕の植物でいうところの花粉を
嫁に撒き散らそうとしたが、それも断られた。

鼻の水は 伝染りにけりな いたずらに…。
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