娘はZOOでZZZ…。

娘・R(1才)は犬が歩いているのを見たり
テレビで動物が映ると指を差して

「あ!あ!」

と反応する。動物に興味があるらしい。
そんなわけで上野動物園に行って来た。

実は僕は動物が苦手である。幼い頃親戚のコリー犬に
タックルをかまされた上に舐め回されて以来トラウマに
なっている。嫁にも過去何回か動物園に行こう、と
誘われたことがあったが

「獣の臭いがどうしても嫌」

その都度突っぱねて来た。しかし今や一児の父である僕。
Rの情操教育のため、と重い腰を上げた次第である。

覚悟を決めた僕とは対照的に、動物園解禁となった嫁は
電車の中からはしゃいでいた。

「私はパンダが見たいなあ〜」

「僕はオッパイが見たいなあ〜」

急に黙り込む嫁。そしてそのまま上野に到着。

動物園に入る前に昼飯を食ったら、なんとRが既に眠そうな
顔をしているではないか。これでは来た意味がない。

「こうなったら大物から回っていこう!」

こうして真っ先にパンダ舎に向かったのであった。

「R、パンダだよー!」

意気揚々と向かった僕らを待ち受けていたパンダは、
昼寝していた。しかも背をこちらに向けて…。

「…愛想悪いわね」

「Rのリアクションもいまいちだのう」

「写真撮っておく?」

「こんな中年サラリーマンみたいな哀愁漂う背中、いらん」

動物を見たRがキャアキャア喜ぶさまを想像していた僕らで
あったが、動物達もノッソリしていたり遠かったりで
インパクトのあるヴィジョンに欠け、何よりもRは眠かったのだろう、
ボーっと見ていることが多く、やがて寝てしまった。

僕もたくさんの動物を見てクラクラして来た。
喫煙所を見つけたので

「ちょっとタバコ吸ってるから…」

嫁と離れてベンチで一服することにした。

しばらくの時間が過ぎた。2本目のタバコを咥えていた。
嫁の姿が見当たらない。もしかしてはぐれた?

サッと別れて来てしまったので嫁はこの喫煙所を
確認してないのかも知れぬ。まずいことになった。
電話しようとも思ったが、嫁はどこに携帯を入れているのか
知らないが、いくらかけても絶対気付いてくれないのである。
意味のない携帯電話…。

こんなところではぐれメタルとなってしまっては

「ウサギの絵のパーカーをお召しの、かじりんちゃんという
 三…十三才の大きなおぼっちゃまをお見かけの方は…」

などという迷子放送を嫁にやられてしまう恐れがある。

やられる前にやれー!とタバコをもみ消して走り出したが
案内放送をどこでやってもらうかも分からぬ。
これはもう八方塞がりのピンチである。

折りしも目の前には僕のピンチの焦りをよそに、悠々と歩く
キリンの姿があった。

これぞまさに、危機キリン。

なんつってジュリー!(嫁はサルを見ていた)
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