冬のマロとソナタ。

土日、実家の栃木に戻っていた。嫁と娘・R(1才)も一緒に。

母の弟のノリヤス叔父が、還暦を迎えた母を祝して
母と僕らを日光に連れて行ってやりたい、と小旅行に
招待してくれたのだ。

母はこのノリヤス叔父を、昔から「ノンちゃん」と
呼んでいる。しかし

「最近、呼び方が変わったんだよ〜」

と母が言う。

「何て呼んでるのよ」

「ノン様!」

「…」

韓国ドラマブームは嫌な感じに遅れて辺境の地・栃木にまで
伝播していたようだ。

出発の朝、僕らは早くから仕度を整えてノン様、もとい
ノリヤス叔父が車で迎えに来るのを待っていた。やがて
ピンポーンと呼び鈴が鳴り「さあ出発だ」と玄関に走って
行ったら、叔父ではなく見知らぬ婦人が立っていて

「おはようございます」

挨拶をしてくるではないか。はて、母の知り合いだろうか…?と
思う間もなく

「はいはいはい、さあ行くベ行くベ」

母がドタドタとやって来て僕を促す。え、この人も一緒に行くの?
そんなこと聞いてないよ。ていうかこの人誰〜?

僕が戸惑っていると母が「あ」と振り返り

「そうそう、この人はね、ノン様の…えーと、何て言ったらいいか、
 そう…お前の新しい叔母さんになる人!」

「は…?」

僕は一瞬母の言っていることが理解できかねていたが

「やだよもう、そんな紹介の仕方しないで!
 あ、かじりんちゃん、今日はよろしくね」

このご婦人はアハハと手をぶんぶん振って笑うではないか。

ノリヤス叔父:離婚暦1回の男ヤモメ。

えー。ということは、この人は叔父のニュー奥様になる人であり、
僕にとっては、ママ叔母(?)

それこそ聞いてないよ!いつの間に…叔父だって還暦に近い年
なのにやるなあ…。

呆気に取られながらも玄関の外に出てみると、叔父は車を
横付けして待っていた。僕と目が合うと、照れ臭げなのか
得意気なのか分からぬが

「ヌフフ」

と笑みをこぼした。何はともあれおめでとうござんす。
母が「ノン様」の称号を与えたのに習い、

僕は「ほくそ笑みの貴公子」の称号を差し上げましょう。
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