このソバらしき世界


うちの嫁は大変よく出来ており、毎晩必ず夕飯を作っていてくれる。

仕事で遅くなって帰って来ても、温め直すだけで食べられるようになっている。鍋だのフライパンだのを開ければ料理が出来ているし、要冷蔵のものは冷蔵庫の中に皿ごと盛り付けられて入っているし、ゴハンも保温中。

至れり尽くせり諸人こぞりて主は来ませり、なのである。

今宵も家族全員が寝静まった後、ひとりもそもそと食べるべ!、とフライパンを覗いてみたところ、思わず悲鳴を上げそうになった。

めちゃくちゃにカリカリになった肉があった。おそらく料理の存在感からして、これがメインディッシュであろうことは想像に難くないが、これを食うのか。干し肉とかジャーキーというレベルを通り越して、黒ずんだ長いヘソの緒のような凶悪なビジュアル。

とても牛・豚・鳥などのメジャーどころの肉には見えなかった。もしかしたらこの肉の生前の名前はポチとかタマとかではあるまいな…などと考え、

「…どっか食べにいこ」

そーっと家を抜け出たのであった。どうせ嫁は爆睡中であり気付くはずもない。嫁の今夜の料理の手間隙と食材も無駄にはならない。そのまま翌日の飯として出されるだけだ。とりあえず何の肉か、どういう意図でこれを作ったかを聞かないことには…。

という訳で深夜営業のラーメン屋にしようか牛丼屋にしようか迷ったが、「なか卯」でザルソバを食べた。やはりラーメンにすべきだったかと少し後悔した。

ザルソバというものは、どこで食べてもザルソバであることよなあ…

このことであった。片やラーメンは様々なスープ、様々な麺のタイプがあり、今まで見たこともないようなメタモルフォーゼされたラーメンが日々生まれ、栄枯盛衰のラーメンバトルを繰り広げている。。

しかるにソバはどうだ。天ぷらソバや鴨南蛮ソバ他種類はあれど、それはトッピングの違いでしかない。遠い昔、「そばゲッティ」なる得体の知れないCMを見たような記憶があるが、実物は見たことがない。最近では「韃靼そば」というのを聞いたことがあるが、それもまだ見たことがない。僕にとっては「韃靼」といえば、

「よし来たおい来た、それごらんの通り。ダッタン人の矢よりも矢よりも速く!」

という北島マヤのセリフ(※)しか思い浮かばない。ダッターン。ボヨヨンボヨヨン。

韃靼
※北島マヤ(ガラスの仮面)

同じ麺類だというのに、進化を忘れた食べ物よ。

いや、たかがなか卯でザルを食べて思い付きで言っているだけなので「私は神田でソバを刻んで40年だが…」という通の人などは聞き流して欲しい。ただ脇にいた飲み会帰り風会社員3人組もザルを食べていたので、みんな同じザルを食っているのもなんだか芸がないことよ…と思った次第。

塩ラーメン、醤油ラーメン、味噌ラーメンではないけれども、ザルソバにも3種類ぐらいあればもっと楽しいのではないだろうか。

すなわち、見ザル言わザル聞かザル。わーまたダジャレだ。

【追記】

翌日、嫁が言うには

「脂がすごそうだったのでカリカリにした」

とのことだった。脂とカリカリの関係はよく分からなかったが、確かにラードを食ってるんじゃないかって位脂っこかった。

これが僕のソバにいる人。


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