2006年06月19日
自作自演の父の日
「お父さんにビールでも贈ってあげるか」
嫁がそう言っていたので今日は父の日だと気付いた。
「じゃあ僕が酒屋で買ってくるよ」
「確か父の日詰め合わせ、とかそれっぽいのがあったはずだから買ってきて」
と言われて近所の酒屋に行ったのもの、父の日当日のじかも午後6時には既にそんなものはなかった。仕方がないので普通のビール6本パックを買い、あとオリオンビールを2本買って帰った。
「そんなもんなかったよ!」
「あらそう」
クールに夕飯の支度を続ける嫁は放っておき、僕はさきほど買ったオリオンビールを娘・R(2才)と息子・タク(8ヶ月)に持たせ、
「さあ君たち、コレを1本ずつ持って『お父さんありがとう、これどうぞ』と言いなさい」
父の日自作自演を試みた。先月の母の日、嫁は
「子供達が自分で考えて自分で何かしよう、っていうのじゃない限り、そういうヤラセをやってもらっても嬉しくないし意味がない」
と言って何もしなかった。ヤラセが嫌いだからなかなかヤラセてくれないのだろうか。しかし僕は違う。ヤラセ万歳。やらせて番台。ホモでパンチラのロボ飛脚。
「ぱぱありがとう~どうじょ~」
Rは素直に缶を持って僕に差し出した。
「ああっ。いいね。可愛いね。はいこっち向いてにっこり笑って」
すさかずデジカメをRに向けて、父の日おおヤラセ写真を撮影しようとした。なかなか笑ってくれなかったりアングルが悪かったりして何度かダメ出しをしていたら
「ぱぱ!どうじょ!どうじょ!」
とっとと受け取れ、と怒り出してしまった。
「缶が冷たいんだからいつまでも持ってられないのよ!」
嫁もケラケラと僕を嘲笑う。
「私もあなたに何かあげようと思ったんだけど、よく考えたらあなたは私のお父さんじゃないし」
当たり前だ。
タクに至っては持つ気すらなく、ダイレクトに口を付けて今にも飲みたそうな感じでガフガフと舐めまくっていた。お前が酒を飲むにはあと19年4ヶ月早い!
「まあそんなわけで」
誰が缶を開けてくれるわけでもなく、コップに注いでくれるわけでもなく、ひとりでポチッとプルタブを開けて飲むビールの味は、昔好きだった子に振られて飲んだ涙交じりの味に似ていた。あの時僕は血の涙を流していた。血だから赤だね、じゃあビールにトマトジュースを混ぜてみようか、僕だけのオリジナルカクテル、名付けて「ブロークンハート」だね、とか言っていたあの時の自分を自分で火葬してやりたい。レッドアイだバカ。
嫁よお前は正しかった。自作自演なぞするものではないね。オリオンビールだけに、夜空のお星様も笑っているさ。冬の星座だし、雨降ってるけど。
自虐自怨。
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