乙女ロード~腐っても女子

「あなたに言うことがあったんだけど…なんだっけ…」

嫁が迷いながらうろうろしていた。思い出せない程度のことなら大して重要な話ではなかろう。これでもし

「あ、思い出した。離婚して」

とかいうギャグだったら悲し過ぎて笑うしかない。

「あ、思い出した。今日の『アド街』は『乙女ロード』だって」

実際思い出したことは、やはり全然大したことではなかった。

「アド街」とは「出没!アド街ック天国」という、街の名物を紹介する番組で、テレビ東京が作っているので東京近辺の街を取り上げることが多い。司会は愛川欽也で、「なるほど!ザ・ワールド」なき今、キンキンの「おまっとさんでした」が聞くことが出来る貴重な番組である。

そして「乙女ロード」とは池袋東口にある特殊なエリアを指す。別に純情可憐な乙女がたくさんいるのではない。むしろ乙女の対極に位置する、いわゆる「腐女子」と呼ばれる、または自虐的に自らをそう呼ぶオタク女性が闊歩する。彼女達が好むホモ系同人誌が売られている店が林立している通りがそうなのである。「乙女」は褒め殺しで名付けられたものと思われる。

嫁よ。僕がそんな番組を見ると思っているのか!

…えーと、9時からだったよね…。

実は2月ごろ乙女ロード近辺にある「男装喫茶」でわざわざ娘・R(2才)も連れて行ってオフ会をやった。ビシッとしたスーツ姿の男装店員が、宝塚ばりの雰囲気でもてなしてくれるので、腐女子に大人気なのである。

もっともこの男装の麗人達は、Rの前では「カワイー」「いくつでちゅか?」などと素の女の子に戻ってしまっていたので、逆におじさんはときめいてしまった。ここがアド街で紹介されることは間違いない、と思った。

嫁がそんな話を振って来たのも僕を腐女子でこそないものの、腐ったオタク男として見ているからであろう。しかも嫁とこの会話をした後、たまたま池袋東口方面に用事があったので出掛けたのである。

サンシャイン通りを歩いていたら、オタク文化の象徴といえるメイドコスプレをした可愛い女の子がメイド喫茶のチラシを配っており、見惚れていたら前を歩く嫁を見失ってしまったり、ようやく追いついたら道を間違えて

「そっちじゃないよ!そっちは乙女ロードだよ!行きたいの?」

と天下の往来で大声で嫁に言われてしまったりした。よそさまで恥じかかせるんじゃないよ!とにかく僕の頭は池袋オタク文化と乙女ロードで満ち満ちてしまったようであり、結局アド街を見てしまったのである。

案の定、前述の「男装喫茶」が取り上げられていた。一緒に見ていたRが

「あ!Rちゃんも行ったでしょ!行ったでしょ!」

と叫び、驚いた。Rは覚えていたのである。

「そ、そうだね。でもあんまりほかの人には言わない方がいいよ…」

どうせすぐ忘れると思って連れて行ったのだが、2才児の記憶力は侮れなかった。

やがて番組は常連客である女性ふたり組を映した。ひとりめが男装店員に熱を上げる理由を

「見た目は男だけれども、中身は女だから、自分の気持ちを分かってもらえるところがいいんです」

こんな感じのことを喋っていた。フーン。次にふたり目の女性が映った。

乙女ロード
こんな感じの人だったのだが、こともあろうに

「(男装した女性だから)ナンパされることもないから安心ですしね」

と言っていたので、腰が抜けそうになってしまった。

乙女ロード
(キャプチャー画面)

いや、まあ、用心するに越したことはないですけど…。おそらくこのテレビを見ていた人全てが一斉にこうツッコミを入れたに違いない。

乙女ロード

僕がこの男装喫茶に行った時は可愛い女の子もいた。これが乙女ロードの乙女達すべてであるとは思わない。しかし全てではないが多数なのは事実…。テレビ制作側も、よくこんな濃いい乙女を見つけたものだなあ…。

命短し濃いぜよ乙女。

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