可愛い子には何をさせよう?

娘1才可愛い盛り。
親父三十路のやりたい盛り。

というわけで親父の盛りは関係なく、娘・Rに
おしゃれ欲が出てきたようである。

ある日、外に出かける時に帽子を被せようとした。
これまでのRは帽子が大嫌いで、被せるなり投げ捨てて
いたのだが、この日は自らカポッと頭に乗せたではないか。
そしてにっこりとして叫んだ。

「かーいー!」

かーいー?…可愛い?

そうなのだ。この日から帽子を被っては「かーいー」、
カーディガンを羽織っては「かーいー」と連呼するように
なった。これはおそらく僕がRに服を着せるたびに、いや、
それのみならずRの顔を見るたびに

「R、可愛いよR」

絶えず念仏の如く唱えているのを聞き、覚えてしまったに
違いない。僕の真似をしているのだろうか。それとも本当に
自分のことを可愛いと思って言っているのだろうか。

「まずいわね…Rが自惚れ屋さんになっちゃうよ」

嫁がクスクスと笑っていた。だとすれば由々しき事態である。
いずれ成長し、小生意気になって

「やっぱアタシって可愛いしー」

みたいな超ベリーバッドな糞娘になってしまったらどうしよう。
自意識過剰な天上天下唯我独尊娘になってしまったらどうしよう。
そして「この世は私のためにある」などとのたまい、ウララウララと
夜通し踊り明かすような不良娘になったら…。

「R。心で思ってても口に出しちゃダメだ!謙虚に生きなさい」

僕は父として幼い娘に人生の心得を教えた。三つ子の魂百まで。
しかし1才のRには当然そんなことは分かるはずもなく。
帽子を取って僕の頭にポンと乗せて

「かーいー!」

と微笑んだ。え、僕が?

やっぱアタシって可愛いしー。
三十路の親父も百まで。

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ひとりで斬るもん!

嫁の実家に泊りがけで行って来た。

嫁の父母に娘・R(1才)の顔を見せるのが大きな
目的であるが、先月嫁とRだけで帰った時はRが
場所見知りと人見知りを炸裂させ、嫁が少しでも
離れてしまうと大泣きしてしまったという。

「お父さんは機嫌悪くなって『泣くなら帰れ』なんて
 言い出すし…ひどいよ。今回は大丈夫かしら」

身内の男を厳しく斬ることで定評のある(僕だけ)嫁が
父を責めつつ一抹の不安を抱いて帰郷した。

しかし今回のRはよい子だった。嫁父のみならず集まった
嫁一族全員に、まるで千代田区江戸城跡にお住まいの
やんごとなきご一家のようにニコニコと笑顔とお手振りで
応え、喜ばせていた。

場所見知りもせず、家の中を嬉しそうに走り回っていた。
ちゃんと成長したのだろう。さすがに疲れたのか早めに
眠ってしまったが、

「よくがんばったねえ」

かつての嫁の部屋で眠るRの寝顔を眺めつつ添い寝していたら
僕もいつの間にか寝落ちしてしまった。ふと気付けば午前4時。
ちょうど嫁も寝返りを打って目を覚ましたところだった。

嫁が生まれ育った部屋で嫁と寝ていることに妙に興奮を
覚えた僕は

「なあ…よかんべ?」

と嫁の袖を引っ張ったが

「やだ!眠い!」

さすが身内の男を厳しく斬る嫁。さっさと僕の腕を振り払って
寝てしまった。まあこれは午前4時に誘う僕が悪いのであるが。

次の日、家に帰る電車での中、

「あっちゃん(嫁の弟)もRと楽しそうに遊んでたでしょう。
 女の子と遊べて嬉しいのよ。暗くてモテないから」

ここでも身内の男を厳しく斬る嫁。

嫁が3匹を斬る!

僕はそんな貴女と娘に斬り斬り舞いなのです。
魔球はハリケーン。
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湘南顰蹙ライン。

鎌倉からの帰りの電車の中で、僕は眠かった。
横須賀線経由の湘南新宿ライン。

うとうとと瞼が重くなって池袋までオヤスミナサーイ、
といきたいところであったが

「ちゃーちゃーん!」

娘・R(1才)が急に叫び声を上げた。目を開けるとRが
ニヤニヤしてこちらを見ている。ちゃーちゃーん=父ちゃん
であろうか?

「なんですかあ?Rちゃん」

とだけ答えてまた目を瞑ると

「ちゃーちゃーん!」

Rのハッキリした意思が伝わってきた。Rは僕が眠るのを許さない。
自分が寝る時はいの一番に眠るくせになんという身勝手な娘。
しかし若い娘に

「寝かせないわよフフフ」

とたしなめられるのはまんざら悪い気がせぬ。それにしても
僕のことを「ちゃーちゃーん」と呼ぶとは。そんな風には
教えていない。本当は「お父さん」と呼んで欲しいのだが
一向に覚えてくれないのでとりあえず「パパ」と呼ぶように
日々仕込んでいるのだ。しかしこれもうまく覚えてくれず…。

「Rちゃん。僕のことはパパって言ってみようよ」

僕が寝る意志を放棄したのを嬉しく思ったのか、Rはニヤリと
微笑んだ。そして…

「まま!」

ごーん。いや、ままじゃなくてね…。

「パパ!パパなの!お父さん!ちゃーちゃーんでもいいよもう!
 この父を認知してくれ!」

「まま!まま!まま!」

明らかに僕の言うことに逆らうことを楽しんでいるR。ムキー!
すると向かい側に座っていた、同じく鎌倉から乗ってきた上品そうな
ご婦人たちが

「あんなころもあったわねえ…フフフ」

僕らを笑いながら見ておった。ヒイイ恥ずかしい!よそさまで
恥をかかせるんじゃないよ!

「あっ!戸塚だ!」

と、それまで平静を装っていた嫁が声を上げた。

「Rちゃん。お父さんとお母さんはここで知り合ったのよ〜」

僕と嫁は戸塚という横浜の田舎で知り合い今に至る。
駅のところで当時の彼女、今の嫁と別れを惜しんで
いつまでもウダウダベタベタしていたことも今は昔。

「そんなころもあったなあ…トホホ」

この電車を使って大学にいっていたあのころ、まさか
約10年後の僕がこうしてまだ嫁と一緒に、しかも子連れで
同じ電車に乗っているとは思ってもみなかった。

過去の自分が歩んでいた人生の轍を、もう一度辿って
歩んでいるような気分になるこの横須賀線。

嫁とあの戸塚の街で知り合ったがゆえに今の僕があり
嫁がありRがある。これが因果である。

因果鉄道999である。

「パパと呼んでくれー!」

「まま!まま!まま!」

轍馬鹿よねー。お馬鹿さんよねー。
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1192296(いいくにつくろう)鎌倉幕府。

嫁と娘・R(1才)でいざ鎌倉。Rにとって生まれて
初めての海を見せたかったのである。

九郎判官義経ブームなのか人がドッサリ溢れる
市街を抜け、由比ヶ浜海岸に到着。

「ほらR、海だぞ」

砂浜にレジャーシートを敷いてそこに座る。汚い湘南の
海ではあるが、目の前に広がっている、水平線が緩やかに
弧を描いているこのパノラマを見せてやりたかった。
しかしRはいつものマイペースで特に感動した風も見せず、

「ほら、波がざぶーん」

もっと海に注目せよ、とばかりに波打ち際まで連れて行き、
靴を脱いで足だけ海に浸かったところ

「フギャアア!フギャアア!」

大泣きして暴れまくり砂浜に足もつけようとせぬ。僕としては
波打ち際をかけっこして

「ウフフ。ほら、早くアタシを捕まえて」

というようなイメージを抱いていたんだけどなあ…。

「さすがに最初は無理でしょう。私はこうじゃないかって
 思ってたよ」

嫁は冷静にRを膝の上に乗せて座りRをなだめた。僕が
砂山を作ってやるとRはようやく平静を取り戻し、砂を
ひと掴みしてはサラサラと撒く、ひたすら地味な作業に
没頭していた。

ひとつ掴んでは父のため、ふたつ掴んでは母のため、海辺なのに
賽の河原のような様相を示し始めていたが、騒々しい鳥の声が
するのでふと後ろを振り返ってみると、

「ヒイイ!カラスがアアア!なんだ!どういうこっちゃ」

僕らのレジャーシートにカラスの大群が襲い掛かっていた。
走って戻ってみるとカラスはバタバタと飛び去って行き、
コンビ二袋に入れておいた未開封の「チー鱈」が袋ごと
破られ、食い荒らされた残骸が残っているのみであった。

湘南のカラスは何て目敏いのだろう。これも義経ブームの
影響なのだろうか。カラスだけにcrow判官義経。なんちて。

「大丈夫ですかあ?何があったんですかあ?」

いつの間にか僕らの隣にシートを引いていた水着ギャル2人組に
声をかけられた。まだ5月だというのにビキニである。乳が
たわわな果実である。掴み取れと言わんばかりに(言うわけない)
豊満である。九郎豊満義経。なんちて。

「ごめんね。びっくりしたよね。酒のつまみを襲われちゃったよ」

「そうだったんですか」

「…高校生?」

「はい」

湘南の海はいい!高校生の発育がいい!

帰り際、嫁が3人で写真を撮りたいと言うので、この豊満ギャル達に
カメラを預けてお願いした。

「はい。撮りますよー」

「ほら、R、お姉ちゃん達の方を見てー!」

嫁がよそ見しているRに声をかけた。僕もお姉ちゃん達を
じいーっと見ていた。特に胸の辺りを。

湘南の海はいい!波もでかけりゃギャルの胸もでかい!

ムラムラジェーンである。
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嫁の体をマタイ伝。

ここ1カ月で3キロも太った嫁は妊娠5ヶ月。

「このままでは妊娠中毒症になりますよ!」

1ヶ月に1キロぐらいだったら大丈夫だが太り過ぎである、と
産婦人科医に怒られて以来、甘い物を控えている。

栃木の実家に帰った時も帰ったら必ず所望する

「マックスコーヒー」

(栃木・茨城・千葉でしか買えない練乳が入った狂ったように
 馬鹿甘い缶コーヒー)

「みかもの月」(萩の月のパチモン)

といった定番栃木スウィーツにも手を伸ばさず、じっと
耐える姿を見せていた。

「ていうか、何でそんなに太ったの」

「毎日1個は甘いもの食べてたから。えへ」

「えへじゃねえだろ」

今夜は寝かさないぜハニーとか、めくるめく官能の世界へ誘うぜ
モナムーとか、僕の甘い囁きには全く耳を傾けず、目の届かない
ところで貪り食っていた嫁の自業自得な気もしないでもないが、
さすがに僕がひとりだけ

「うまいにょー。甘いにょー。でも君は耐えるんだジョージアー」

ホクホクと飲み食いしているわけにはいかず、嫁に付き合って
控えることにした。

しかし嫁を甘いものに誘う罠は実家の中だけに留まらず、遊びに行った
公園ではまるで待ち受けていたかのように

「おいしいアイスクリームはいかがですかあ〜」

ワゴン車の流しのアイス屋が執拗に巡回していた。

「うあああ!アイス屋が追いかけて来る〜!」

嫁は誘惑にぐらんぐらんになり、だんだん苦行の様相を醸し出し、
このアイス屋もキリストを「石をパンに変えてごらんなさい」と
誘惑した悪魔に見えてきた。

がんばれ嫁。人はアイスのみに生くるにあらず。でも無理しなくて
いいんだぞ。だって僕も食べられないからね!

そんな忍耐の日が終わろうとした夜。嫁が風呂に入ってきた隙に
母がそっとマックスコーヒーとみかもの月を持って来た。

「…何?」

「お嫁さんが見てないうちに食べちゃえ」

母よ、お主もワルよのう…。いや待て。これぞ神の試練。この母こそ
母の仮面を被った悪魔。僕に嫁への愛が本物であるかを試そうとする
御霊の試み。ふん。鋼の意思を持つ僕にそんな猪口才なことは…

「うまいにょー。甘いにょー」

人目を忍んで食べる甘いものは格別の美味さがあった。
許せ嫁。体で返すから。

誰でも一度だけ 経験するのよ〜♪
誘惑の甘い母〜♪
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