嫁と汗と涙

仕事から帰って来て、暗闇の中でテレビだけが点いている時は嫁がビリーズブートキャンプをやっているということだ。

闇の中では嫁が蠢いているはずなのに、目が慣れていないのでなかなか見えて来ない。ぼうーと嫁の姿が徐々に浮き上がって来るさまは、分かっていながらもいつも恐ろしい。

「またやってるのか!怖いよ!」

「そう言われると思って子供達が寝たらすぐ始めて、あなたが帰って来るまでに終わろうと思ってたんだけどね…遅れたわ」

この嫁がドタバタしている現場を目にしてしまった時のガッカリ感は、例えば鍵がかかってないのでトイレの扉を開けたら、嫁が今まさに産む瞬間だった、という時の残念感に似ている(あくまでも例なので実際目にしたことはない:嫁の名誉の為)

出来れば見たくなかった…という残念さと、ちゃんと鍵締めとけ、隠しておけ、百年の恋も醒めるわ、という嫁への僅かな苛立ちと。

仮にもエヴァーラスティングラブを誓い合った相手。その相手だからこそ、隠すべきものもあるのではないか。秘するが花という言葉もあるではないか。ラブミー世阿弥ー。そう、華がないのだ。

汗だくすっぴんの必死の形相、白いTシャツにネズミ色のヨレヨレハーフパンツでラジオ体操第二より変な動きを見せ…どう見ても華がない。見ていて勃起する余地がない。今までコレに欲情してきたのかと思うと自分が不憫でならなくなり、どうしようもなく悲しい。

かつて僕が高校生ぐらいの時だったろうか。「デニスのおはようエアロビ」という番組では、朝5時半ぐらいの時間からデニスというパツキンのチャンネーがビーチクが浮きまくりのレオタードを着てエアロビしまくっていた。早起きの老人を鼻血で出血多量死させるぐらいのお色気があった。

同じエクササイズをするにしても嫁とは大違いだ。だから僕は嫁に言ったのである。

「どうせやるならもうちっとエロカッコいい姿でやるべきだ。レオタードとか裸エプロンとか」

すると嫁は

「うるさい!嫌なら見なきゃいいのよワンモアセッ!」

ブログを炎上させられた管理人みたいな言い草で全く取り合おうとせぬ。また夫婦の中で大切な何かを失ったようだ。見ているこっちがゲンナリして痩せてしまいそうである。

嫁見て痩せるダイエットってか…。

問題:嫁は高校時代どんなスポーツをしていたでしょう?

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