ビバプール

うだるような暑さの中、栃木の実家にいる僕は今日もプールである。

栃木には海がない。最寄の海まで車で4時間ぐらいかかるのだ。あるとしたら

「お父さんお口臭い!」

「歯槽膿漏だべ」

オヤジの膿ぐらいしかない。だからプールである。昨日とは別のプールであるがここも子供向けプール。娘・R(3才)と息子・タク(1才)に楽しんでもらいたいが故にである。母が道を知っていると言うので車を出してもらったところ、あっさり迷ってしまった。

「あそこに人がいる!聞いてみんべ!」

トマト畑で作業しているおじさんに聞いてみたら「ひたすらまっすぐ」と言われたので直進していたら、ものの20秒でT字路にぶつかってしまい、

「神よ、これは前の家を破壊して行けという試練なのですか」

絶望のあまり空を仰いだりしている内にどんどん裏道に入り込んでしまった。

「裏道っていえば、お母さんの友達で昌江さんていう人はね、いつも裏道しか通らないんだよ」

迷い込んでもわりと余裕をかましている母がどうでもいいことを言う。

「なんだそれ?裏道マニア?」

僕も何となく裏ビデオとか裏スジとか「裏」が嫌いではないので話に乗ってしまった。

「とにかくハナッから表通りを無視するのよ、裏へ裏へとしか行かないの」

「なんで?ひねくれ者?」

「信号が嫌いなんだって」

「逆に遠回りになったり迷ったりしない?」

「それでもいいんだって。信号さえ避けられればいいみたいね」

「裏街道の人生か…」

「そんな生易しいもんじゃないよ。ついたあだ名は『獣道の昌江』!」

「どんだけワイルドな人生送ってきたんだって感じだね」

30分ほどさ迷った後ようやく辿り着き、まずは着替え。僕はロッカーの番号を気にする性質で好きな番号を探してしまう。

69
男ならやはり夢と浪漫の69番である。

着替えを終え早速子供達を遊ばせようとしたのだが…タクは道に迷っている間に寝てしまったのである。プールサイドでも寝続け、ようやく起きてもまだ寝足りないようで、水着姿にさせても

タク
「やーだ。ねんねしてるの!」

スモウトリ・イン・ザ・ビーチのようなふてぶてしさでふんぞり返っておった。泳がなくても睡眠グとは…おそろしい子!

R
一方Rは素直に喜んで僕と一緒に流れるプール。基本的には水を怖がるヘタレなのだが、徐々に慣れて来て浮き輪があれば足が付かない深さでも自分で泳げるようになっていた。これまでは僕がRの体を支えていないと不安がっていたのに

「ぱぱ、こないで!Rちゃん、じぶんでおよぐの!」

寄るな触るなといっちょ前に調子こいたことを言う。それでも不安なのでRから手を離したものの並行して泳いでいたら

「ぱぱ、だめ!うしろ!」

それでもダメだと言う。Rは僕より前を泳いでいたいのだった。

「Rちゃん、ぱぱよりはやいよー」

と勝ち誇りたいのである。

「もっとさ、水掛け合ったりさ、じゃれ合ったりして一緒に楽しく泳ごうよー」

「だめっ」

僕は仕方なくRから1メートルほど距離を置いて後方を泳がなければならなくなった。まるで仲の悪い親子ではないか。妙に自立してしまったR。こうして少しずつ僕の手が離れていくのね…。

僕の頬にRのバタ足で跳ねた水とは明らかに違うものが流れていた。

僕の人生、のけもの道…。

問題:このプールの近くには珍しいメルヘンな名前の町名がある。それは何でしょう?

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