親しき仲にも便器あり

尾篭な話ではあるがビロートークをゴートークである。

ひとりでトイレで用を足せるかどうかというのは子供の成長の証のひとつではあるが、息子・タク(1才)はおむつが取れていないのでまだまだである。その代わり

「たっくん、いま、うんちしてるの」

とプルプル震えて四つん這いになりながら自己申告するようになった。なるほど確かにタクから強烈な大自然の香りが漂ってくるので、すぐさまおむつを交換できる。これはこれで成長の証と言ってもよかろう。ただし単なるすかしっ屁の場合もあるのでフェイントには要注意である。

娘・R(3才)の場合はいざその時になると、ぽやんとした表情がスナイプ直前のゴルゴ13のようにすっと冷徹な顔になり

「うんち…」

鋭い視線で僕を見つめるのだ。僕ははいはい急げ急げ便は急げとRをトイレに連れて行くのである。Rを便器にまたがらせると

「ふーん」

と拳を振り上げるラオウの如き咆哮を上げ、用を足す。その生む瞬間の緊迫の表情がなんとも言えぬほどいい。絶頂に達した時のおなごの表情と合い通じるエロスが滲み出ていると思う。

コトが終わり、ほーっと一息付いたRが言った。

「びっくりしないでね…」

ん、何をびっくりするのだ…一瞬考えてハタと思い付いた。Rは便秘気味なので週1回ぐらいしかお通じがない。僕の子供の頃もそうであった。つまらないところが似るものである。つまらないのにフン詰まりとはこれいかに。

いつも詰まっている分…出る時はでかいのである。「一本糞のり子」と命名して写真に収めておきたいぐらい立派である。過去その作品を見るたびに

「おおー!すごいのが出たなあ!」

と純粋に驚嘆していたのだけれども、Rにとってはそれが恥かしいのかもしれない。3才といえども心は乙女。排泄物を見られて喜ぶ乙女はいない。これはRが見せた初めての恥じらいかもしれない。愛しき幼き美しき乙女心は大切にせねばならない、と思った。

「うん。びっくりしないよ。ちゃんとトイレでうんちできたねーって褒めてるだけさ」

だんだんと人並みの恥じらいを感じるようになり、やがて親を避けひとりでトイレに行くようになるのかな…と嬉しくもあり寂しくもあり。

お尻を拭いてやると、紙に小さな赤いシミが…血である。

そうか、ついにRにも初潮が…ではなくて、作品があまりにも大きいのでお尻が切れてしまったのだろう。僕もよく切れていたものである。だがこれぐらいなら大したことはない。

「どうしたの?」

トイレットペーパーをまじまじと見詰めていた僕を不審に思ったのか、Rが聞いてきた。血が出ているなどと言うとまた気にしてしまうかもしれない。しかし何でもないと言ってしまうとウソになる。ウソはいかぬ。真実を言いつつ、かつ普通に受け流させる返事をしなければ、そう思った。

「うん、ちがでたの…」

ウソは言ってない。

問題:緊急を要する瀬戸際なのに、Rがトイレで必ずやりたがることは何でしょう?

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エンピツ投票。

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