おタバコはご遠慮しません

日に日に風当たりが厳しくなるが、僕は喫煙者である。

家ではホタル族であり、外に出てタバコを吸う事になる。嫁は内心やめてくれと常々思っている筈だがそんなにうるさくはない。ただ僕の実家に帰ると嫁以上に喫煙にうるさい母がいる。実家に帰った時、僕が外にタバコを吸いに行って戻って来ると娘・R(3才)が突然

「ぱぱ、たばこやめて!」

と食って掛かって来ることがよくある。これは僕が席を外している間に母がRにそう言うようにたらしこみ、嫁も便乗してやれやれと煽動した結果である。それでも僕はタバコを止められないし、Rも本心で言っている訳ではないので、以後僕がタバコを吸っていてもケロッと忘れており現在に至っている。

この週末嫁実家に帰った時もその気配があった。Rと息子・タク(1才)と遊んでひと段落付いた時に

「ちょっと失礼…」

外に出てタバコを吸いに行き、戻って来ると嫁がチラリとRを見たので

「あ、またRに言わせるのか」

とピーンと来たのだけれども、何故か嫁は不機嫌なような苦笑いをしているような、なんとも言えない表情で僕を見つめていた。

「なんだ、どうした?」

「さっきあなたがタバコ吸ってる間に、Rに『パパたばこやめてって言いなさい』って言ってみたんだけどね…」

「うん。いつもの手だね」

「拒否されちゃったの」

「え、なんで?」

「パパはたばこが好きなんだからやめてって言っちゃダメ!…だってさ」

僕は猛烈に感動した。Rが僕を庇ってくれたことに。

「Rー!」

翻ってRの肩を掴み、じっとRの瞳を見つめて問うた。

「Rちゃん、ママの言うことを断ってくれたの?」

「うん。パパ、たばこすきだから…。Rちゃん、パパすきだから…」

もうぎゅううううと抱き締めてしまった。僕のRへの愛が確実に伝わっていた。なんと愛しい娘であることよ。

本当はタバコをやめることが本当の意味での家族への愛である。しかし分かっちゃいるけど止められない。今はRの言葉に甘えることにしよう。娘心は変わりやすいものである。現在のRの純粋なパパ激ラブ愛もいつまで続くか分からない。ただ10年後ぐらいに成長したRがセーラー服に身を包み、

「パパがいつまでも元気でいて欲しいから…だからタバコやめて」

と上目遣いで訴えてきたら岩にかじりついても止めてみしょう。これはRでなくてはダメである。タクに

「父ちゃんタバコやめてよー」

と言われても、逆にお前も1本どうだと同じ男として悪の道に誘ってしまいそうである。やはり娘に言われた方がグッと来る。これは悲しい男親の性である。長女が最大の恋人なのだから。Rにだけは逆らいたくない。Rだけには煙たがられたくはない…。

タバコを止めても止めなくてもいずれタバコ同様煙となる身ではあるが

世の中の 人と煙草の善し悪しは 煙となって 後にこそ知れ

このことなのである。

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