おつぱひ ぽろぽろ

僕が札幌に出張に行っている間、嫁はママ友を家に呼んで餃子作りパーチーなるものを主催したらしい。

「みっちゃんと、もなちゃんと、ぎょーざつくったの」

娘・R(3才)も楽しそうに語った。亭主が家を空けると分かった途端にこのイベントを思い付いたという。全く油断も隙もない嫁である。

僕が見知らぬ北の大地で働いていたというのに、のどかなお遊びで羨ましいものである。同日の夜、僕は慣れぬ仕事でどんなに汗水垂らしていたか。

札幌初日は夜まで仕事をしてひと段落した後、札幌の方々が宴を開いてくれた。新鮮な海の幸と美味しい酒。すっかり堪能した僕は長旅の疲れもあり、宴が終わったら宿に戻りたかった。しかし同行した上司が札幌のお色気街・ススキノ超ラブなので

「次の店行くぞっ!」

そうなるんだろうなあと予想していたらやはりそうだった。逆らえずに連れて行かれたのはススキノのキャバクラ。誰も信じてくれないが僕は風俗店には一度も行った事がない。行きたいと思ったことがない。友達の紹介とか、趣味のサークルか何かの繋がりで初対面、ということなら分かるが、何の脈絡も接点もなく「どーもー」と隣りに座られても話す事なんてないわのよ。アッチョンブリケよのさ。

風俗童貞を破られた大きな喪失感を抱きながらも、ギャルは話し掛けてくる。もうおうち帰りたい、というのが本音だったのだけれども、

「実はキャバクラ初めてなのです」

正直に話し、勝手が分からないので酒くれ、と酔いに逃げることにした。

「お客さん東京の方?」

「はあ」

「東京のキャバクラとススキノのキャバクラは、呼び名は同じでもちょっと違うんですよ」

「はあ」

そんなこと言われても東京のキャバクラを知らないのだからススキノとの違いも分かる筈なかろう。早くタイムオーバーになればいい!さすればこの子ともラブイズオーバーだ、とグラスを舐め舐めしていたら、店のBGMがフェードアウトし、照明も殆ど消えてしまった。

これは如何なる主旨なのか。以前ロックアップという監獄を模した居酒屋では、いきなり照明が落ちてモンスターが襲いかかって来るイベントがあった。これも同様のサプライズなのだろうか、と身構えていたら…横の女の子が服をもぞもぞし始めた。

「じゃあいきますよー」

「?」

彼女はなんと…ずぱっと上着を脱ぐではありませんか!

おっぱいが…モンスターじゃなくおっぱいが出たー!

「これがススキノのキャバクラよ」

おぱいがこんな簡単に、ジュースの自販機のようにポロンと出て来る世界があったとは。もう僕の昭和新山はメリメリと隆起してしまったわけで…。

いかに僕が出張先で苦労したかということを思い出そうとしたが、汗水どころかヨダレ垂らしていたようだ。

嫁とはまあ「お互い様」ということにしておこう。あの夜のことは墓場まで持って行く秘密としよう。

ともかく札幌は素晴らしいところであった。「少年よ大志を抱け」でお馴染みのクラーク博士の言葉が心に染み入る。そりゃあんな思いしたかったらガムシャラに大志を抱いて女体を抱こうとするだろう。

ボーイズビーアンビシャス。
両ちくびー超デリシャス。

問題:家に帰る前に充分気をつけたことは何でしょう?

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