ジタバタ・タナバタ

「パパ、見て見てー」

娘・R(3才)が小さな笹の枝に飾り付けをしていた。ああ、今日は七夕だったか。

嫁の母が来て一緒に昼食を摂り、子供たちを公園で遊ばせて、風呂に入れて、夕飯を食べて、子供たちを寝かせ…ごく普通の一日であった。

曇天で牽牛星と織姫星を見ることは出来なかったが、この天上のカップルが1年に1度結ばれるというロマンチックが止まらない、また、年イチだけにエロチックも止まらないであろう伝説にあやかり、地上にも永遠の愛を誓ったカップルがいたのである。

あれ、それって僕達?私達?(卒業式風)

今日、結婚記念日だったんじゃねんけ!

ポックリ忘れていた。前述のとおり記念日らしいことは全くしていない。既に日付が変わろうとしており時既に遅し。もう命はないと思う。今夜空を見上げたら牽牛星と織姫星は見えずとも死兆星は火の玉の如く巨大に輝いているはず。

嫁はどこだ、おお、洗濯物を畳んでいた、と見つけ

「今日、結婚記念日だったんだね…」

「そうよ!」

「嫁ー!」

「あなたー!」

手を差し伸べるとガシっと嫁が抱きついてきた。

「ゴメン、それっぽいこと何もしなかったよ…」

「ああ、そうねえ」

「とりあえず、やっとく?」

「なんでよ!」

「今から出来る記念日っぽいことってそれぐらいしか思いつかない」

そもそも七夕とは五節句のひとつ、七夕(しちせき)の節句である。節句にセック●、違和感はない。織姫と彦星のように熱く重なり合うしかない。嫁に肉体的快楽の限りを味あわせてやる。味の宝石箱じゃー!しまった、それは織姫と彦麻呂。

「いいよ、別に」

しかし嫁の返事は冷めたものだった。

「まあそう言わずに」

「記念日を極々平凡に過ごす。これはこれで素晴らしいこと」

「そうなのかな」

特別イベントめいたことをしなくても、ただただ記念日の回数だけが増えていく。続いていくことが素晴らしい、と嫁は言いたいのだろうか。まじまじと見詰めていると嫁はふうと溜め息をひとつ吐き、

「結婚して6年間、ホントに苦労してきました!私、偉い!」

とガッツポーズをした。そういうことかよ!

「ああ、世話かけたねえ…ほんとに…すまんね…」

永遠の愛を誓ったアニバーサリーというよりも「勤続10周年オツカレ」みたいな慰労のノリになってしまった。ロマンチックとは程遠い。

「いや、あなたも私を相手によくここまで…」

「ハナクソほじりながら言うなあ!」

6年前のこの日、確かに存在した燃えるような愛は、燃え尽きて残りカスのようなハナクソになってしまったのであろうか。

笹の葉さらさら。
ヤル気もさらさら。

問題:Rの幼稚園のクラスで、女子の願い事ナンバー1はなんだったでしょう?

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