2007年06月27日
ミ・アセモーレ
花のような息子・タク(1才)
髪が長いためか女の子に間違われることが多い。姉・R(3才)の影響もあってか、喋り方や仕草もどことなく女の子っぽい。末は日出郎か雁屋崎かと心配である。
しかし今年もこの季節がやって来た。
「タクを坊主頭にしよう!」
と嫁が言った。去年、髪がフサフサになったタクは頭に汗をかきまくり、痒くなったのだろう、引っ掻き傷や汗疹が多くなってしまったので丸刈りにした。今年もそうしようと言うのである。
「えー。かわいそうだからやめようよ…」
僕は中学時代、強制坊主頭の3年間を過ごした。中学入学直前、納得がいかないまま「校則だから」ただそれだけの理由で丸刈りにされた時は屈辱の余り本気で泣いた。その為坊主頭への恨みと拒否反応は大きい。去年丸刈りにされたタクの姿も見ていて痛々しくて辛かった。
「でも今年もすごい汗かいて、汗疹になってるのよ」
かさぶたになっている引っ掻き傷や汗疹を見ると確かに去年同様にしたほうがいいと思う。今も寝ているタクの頭周辺のシーツには汗の染みが出来ている。
「でもなあ…」
「じゃあタクの頭のにおいをかいでみなさいよ」
嫁に言われるがまま鼻をタクの頭に近づけてみると
「くっさー!」
「でしょう!」
「野良犬の臭いがする…」
あまりの臭さにチャーリー浜になってしまった。最早屈辱のノスタルジアなどに浸っている状況ではなく、自らの手で息子の髪を刈らざるを得なくなったのである。
夕方、風呂場で裸になった僕とタク。僕の片手にはバリカン。いよいよ断髪式である。
「じゃあ切れ味をば」
試しに自分のアンダーなヘアーを刈ってみようとしたが、よく考えると頭が痒くなる別の要因を伝染させるのではないか、と気付き思い留まった。嫁には断られた。
「ではタク、覚悟!」
ぶっつけ本番で一気に刈った。タクは大声で泣き叫びドアを叩き
「ママ!だっこ!ママ!だっこ!」
嫁に助けを求めるが当然嫁は耳を貸さぬ。タクの絶叫が響き渡り、バサバサと髪の毛が落ちる。風呂場は阿鼻叫喚の地獄と化した。僕も必死である。
「よ…よし。こんなもんか」
ようやく刈り終わりシャワーで体を洗ってやってようやく解放。タクはママだっこママだっことひたすらパニック状態であった。やはり坊主頭には強制と屈辱のイメージが付き纏う。
もう女の子に間違われることもなくなった姿。どこからどうみても男。漢。男闘呼組。サンバモードが解けた素の松平健のようである。
翌朝、タクの頭を嗅いだ嫁は
「臭くない!シャンプーの匂いがする!」
と大喜びであったが、僕はやはり坊ちゃん頭のタクが愛しい。それは一晩明けてからも変わらない考えであった。
これを坊主憎けりゃ今朝まで憎し、といいます。
問題:タクの頭を刈っている間、Rはどうしていたでしょう?
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