泣かぬオヤジが身を焦がす

朝と女の涙には弱い。

朝、眠い目を擦りながら渋々起きたら、既に5時半から起きているという息子・タク(1才)が飛び込んできたので戯れていた。

すると僕の隣で寝ていたはずの娘・R(3才)が突然

「うわああああん!」

と大泣きし僕の胸に飛び込んできた。

「どうしたんだ。なんで泣いているの?」

「うわああああん!」

「ひょっとして、あれか。僕が起きた時Rちゃんも起きてたの?」

Rはコクンと頷いた。

「それで僕にだっこして起こして貰いたかったのかな?」

再び頷いた。

「なのに僕が見向きもしないでタクと遊んじゃったから悲しくなったのかな?」

ようやく小さな声で「うん」と返事をし、僕にしがみ付きまたうわああんと泣いた。

「あああ、ごめんなー」

ぎゅうと抱きしめながら、こんなことならお早うのチューでもしてやれば良かったとRを愛しく思った。

こんなことですぐ泣くRなので、幼稚園でもよく泣く子として既に認知されているらしい。幼稚園の先生が書いてくれる連絡帳にも、ヘアピンが取れたといっては泣き、友達のマユちゃんがベタベタ付き纏っては泣き、とにかく泣いたことがたくさん記述されている。泣かなかった日などは

「今日は泣きませんでした!スゴイです!」

泣かないで当たり前なのにこんなことを先生に書かれてしまうあたり、よっぽど泣いているのであろう。

マユちゃんのベタベタぶりは僕も知っている。Rを妙にお気に入りらしく、ある日公園で会った時などは

「Rちゃあああん!Rちゃあああん!」

幼女ながらレズビデオかと思わせるような色っぽい声と妖艶な手付きで、Rの頭やほっぺを撫でたりまさぐったりする。将来が楽しみな幼女だ…じゃなくて、Rはそれが嫌いなようで

「うわあああん!パパー!」

と泣いて僕のところまで逃げてきたものである。実はRが泣く理由の半分ぐらいはマユちゃんが原因なのでは…と読んでいるのだがどうだろう。

そんなことを考えながらRの頭を撫でていると、ようやく泣き止んだようだった。

「しかしなあ…Rちゃん。こんなことでいちいち泣いてたらきりがないぞー」

泣くのも自己主張のひとつであるが、だんだん強くならなければ…と、

「Rちゃああん、Rちゃあああん」

マユちゃんのマネをしてRのほっぺたを撫でまくったら

「う…うわあああああん!」

しまった。また泣いてしまった。

「あ…ゴメン」

「何やってんのあんたは」

嫁にまで呆れられた。朝起きてからものの30分で2回も泣かしてしまうとは。実はマユちゃんなんかよりも僕の方がRを泣かしていた、というオチが付いてしまった。

泣きっ面にオチでございます。

問題:これだけは泣かなくなった!というRの数少ない強いところは何でしょう?

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