あんみつ同心心得の条

嫁の誕生日が近付いて来た。

例えば息子・タクが2才の誕生日を迎えるとなると年齢がなんと2倍!ポイント2倍!界王拳2倍!ニバイニバーイみたいな感じでそりゃもう派手に祝おうという気にもなるが、もう僕や嫁の年齢がひとつ増えたところで今更どうってこともない。

まあとりあえず目出度いのでイベント的なことはしようかと思った。去年の僕の誕生日だった時も、別に何もしてもらわなくてよい、と特段何もリクエストはしなかったが、嫁が腕時計をプレゼントしてくれた。

数日後ジャパネットたかたの広告でその腕時計が投売りされているのを発見してしまい、非常に悲しくなったことが今となっては良い思い出だ。

「嫁、なんかプレゼント欲しい物ある?」

「えー別に。わざわざ貰わなくてもウェストポーチあたりを勝手に買おうかと思ってた」

やはり嫁も非常に醒めた答えであった。しかもウェストポーチとは、なんというアキバ系オタク的発想だろう。どうせならセーラー服とかブルマとかメイド服とかプレゼントたるにふさわしいアイテムをリクエストして欲しいものである。さすればそれを着用してバースデーコスプレナイトとか夢のある発想に繋がってもいくというもの。

「なんかこう、もっと違うのないの?」

「うーん。それじゃあ一日ご飯を作らなくていい日とか欲しいわ」

「それじゃあフランス飯でも食いにいこうぜ。誕生日豪華ディナー」

「子供達連れてくの?ただでさえ風邪引いてるっていうのに、あまり遠出は…」

「近所にあるだろ。フランス飯屋。前行ったことあるじゃん。あそこならいいべ」」

「でもあそこ不味かった」

生意気に食通家ぶったことを言いやがって。ペッパーランチでも食ってろ。

「もう何もネタないね…」

「んー。子供達と切り離された時間が欲しい」

「じゃあ明日僕が子守してるから好きなことするがいい」

「池袋にあんみつでも食べてこようかな。美味しいところあるのよ」

「ふーん。でも楽しいのか?あんみつウマーイ!でもひとりポツーン!みたいな」

「た、楽しいよ。それなりに…」

「ひとりでポツンと店にいる人に限って携帯であんみつ写真撮ってたりするよね。絶対ブログとかmixiに載せてるんだよきっと」

「はあ…」

「てかさ、あんみつ食べに行くだけならわざわざひとりで行くこともなかろうに」

「それもそうか」

なかなか煮え切らないまま嫁の誕生日を迎えそうである。もう残されたアイデアとしては、ちんちんにリボンを結んで贈るしかない。

オンリーワンなプレゼント、と言えば聞こえがいいが…

世界にひとつだけのマラ。

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