とんでも接吻しないで鬱憤

あぐらをかいて座っていると、子供達がよじ登ってくる。

ジャングルジムか僕は。ジャングルファイヤーやっちゃうぞ。ジャングルファイヤーとは、アンダーヘアをライター等でセルフバーニングさせる宴会芸である。ギャランドゥファイヤーとも言うらしい。

「よいしょよいしょ」

娘・R(3才)が僕の膝の上に立ってこっちを向くと、ちょうど頭ひとつぶん程高い位置にRの顔がある。僕はRの顔を見上げ、なんと愛らしい顔だろうとしばし見惚れた。いわば恋人とじゃれついているようなロマンチックが止まらない気分になり

「R、パパにチューしてくれ」

結ばれぬ恋とは知りつつRに甘えた。今コレを書いていたらなんという気持ち悪い親父だろう、と己の行動を客観的に眺めることが出来、冷や汗が流れる思いである。しかしRはそんな父をキモいと突き放すことはせず、

「もう、あとでしてあげるからね、ふふふ」

3才児とは思えぬ小悪魔的なセリフと悪戯っぽい笑みを浮かべ、僕は呆気にとられてしまった。僕を手の平の上で転がすような、いかにも男の扱いに慣れてます的な仕草をいつ身に付けたのだろうか。

まるで美人女教師(Fカップ)が詰襟イガクリ頭の男子中学生を手玉に取り、

「先生、僕、もう我慢できんとです!」

「うふふ、まだ早いわ、ぼうや…」

と妖艶な笑みであしらうかの如くである。

これは僕がRにいいようにあしらわれてしまったことよ…ふっと溜め息をついて暫し目を閉じた瞬間、

「ぬっ」

唇にねっとりした感触が伝わった。

「うひゃほほほ」

飛び上がらんばかりに驚いて目を開けると至近距離にRの顔が。Rがチューをしたのだ、と気付くのに2秒ほどかかってしまった。

「R…おまえ…」

「あとでしてあげるっていったでしょ」

チューしてくれて嬉しい、というよりRの振舞いに舌を巻いてしまった。言い寄る男を適当にあしらい、一旦引かせたところで逆襲のサプライズ。この間の取り方、男の下心を見抜いての扱い方、まさに銀座のママクラスの熟練した手練といえよう。むせっ返る程の女臭さをRから確かに嗅ぎ取った。

3才児とはいえ女は女…改めてそう思ったのであった。それと同時に僕のRを想う心もますます高ぶってしまったのでどうしてくれよう。おおそうじゃ。

「嫁は僕にちゅーしてくれんのかね」

「したくないし」

本来成熟している筈である嫁から女の臭いが全く感じられないのはどういうことであろうか。まじでジャングルファイヤーやっちゃうぞ。この芸は火傷しないために程々に、しかし見栄え良くある程度のファイヤーを燃え上がらせるために、絶妙な技術が必要である。従って

ジャングルベール、ジャングルベール、腕がー鳴るー、ってやかましいわ。

問題:大学のコンパで見た、ジャングルファイヤー並みにお下品な芸は何でしょう?

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