情事プッシュ

栃木の実家に帰っている時は、いつも子供達を遊ばせるために町の大きな運動公園に連れて行く。

この日も母と嫁とで娘・R(3才)と息子・タク(1才)を遊ばせていた。

昼飯は母が近くの「ひかげや」という店で焼きそばを買って来て、芝生の上で食べた。「ひかげや」は僕が生まれた時からある焼きそばがおいしい店。ジャガイモが入った焼きそばが栃木の名物なのである。

「ジャガイモが入ってるけど、肉は入ってないのね…」

東京生まれの嫁が違和感ありまくり、という顔をしてシゲシゲと眺めていた。

「肉はないけどゲソが入ってんべな」

「なんか、しょぼい」

フフンと一笑に付した嫁は栃木人を敵に回した。レモン牛乳一気飲みの刑に処したい。

この日はRが噴水の側で水遊びをするほど暑かった。そしてこの公園にはよくアイスクリーム屋の車がピロリンポロリンとテーマソングを流しながら来る。去年一昨年とここを訪れている時も来ており、その時の嫁は

「子供達にはあんまり食べさせたくないんだけどなー」

他の子供達が食べているのを見てRが駄々をこねるのに困っていたが、今日は

「あー。こういう日にアイスクリーム屋来ないかなー」

自分が一番食べたいらしかった。暑い日、ゴールデンウィーク、野球場にもテニスコートにも人がいっぱい、という商売にうってつけの日、来ないはずはない!と待ち詫びていた嫁。

しかし来なかった。

「なんで来ないのよう…」

「アイス屋さんも連休なんじゃないの」

家に帰る時間になったので落胆する嫁を慰めつつ駐車場に向かった。車に乗ろうとすると

「ちょっと、あれ見てみな」

近くに駐車している某高級セダン車を目配せする母。はあ?と思って見てみると、その車からは薄ハゲのオヤジと栃木名物バタ臭いヤンキーっぽい女が窓を開けて外を眺めている姿があった。

「あれがどうしたの?」

「下、下!」

母がヒソヒソ声で耳打ちするので車の下を見ると…使用済みゴム製品が…しかもふたつ…。

僕と嫁と母。子供達を連れ無言で彼らの車を通り過ぎ、僕らの車に入った途端

「なんであんなとこにあるんだー!」

「中でやった後に捨てたんだべ!」

ギャースカギャースカ大騒ぎ。

「でもさあ、僕らを含めて通り過ぎる人がいっぱいいるのに、いかにも自分達がやりました、ってバレバレな捨て方はしないんじゃないの?元から捨ててあってたまたまあの車が来たんじゃないの?」

「いーや!お母さん焼きそば買いに行った時はなかったもん!あの車が来てからだもん!」

懐疑的な僕に断定的な母。

「あんないい車乗ってんだからホテルぐらい行くだろ!」

「急にやりたくなったんだべ!」

母、ひどい推理。どうしてもやってるという方向に持って行きたいようだ。

しかしあんなオヤジが車の中で…なんて情熱的なことをするんだろうか。車の中で致すのって結構腰が痛くなるもんだが…と言おうとしたが

「誰とやったの!」

嫁と母両方から攻撃を受けそうなので止めておいた。

アイスクリームじゃなくてコンドームが来てしまったというむごいお話でしたとさ。

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