愛するあなたを、送るオヤジ

今週幼稚園に入園した娘・R(3才)。

仕事のため入園式に出席する野望を絶たれた僕は、次なる目標を立てた。

すなわち「Rを幼稚園に送って行く」である。

よくスーツ姿のお父さんが幼稚園の制服を着てちょこちょこ歩く子供の手を引いている姿を見るが、それがとても羨ましい。しかし僕の出勤はRが幼稚園に行くより30分ほど早い。Rを待っていては遅刻なのである。

「これも叶わぬ夢なのかな…」

つくづく制服姿のRと縁がないことよ…と嘆いていたら、たまたま仕事の都合で今日は少し遅めの出勤となったからこれ幸い。

「今日は僕がRを連れて行く!Rちゃん、今日はお父さんと幼稚園行こうね」

嫁とRに大々的に宣言し、Rの手を引いて家を出た。何故か嫁も付いて来た。何事か、と問うと

「ふたりの写真撮ってあげるよ」

「ああ、ありがとう」

何やら僕までも「初めてのお使い」みたいな子供扱いされてないか、と多少照れながらRと写真に写った。

「嫁、君も撮ってやろうか」

「すっぴんでジャージ姿の私を撮ってどうすんの」

「そりゃそうだ」

嫁と息子・タク(1才)の見送りを受け、Rと喋りながら幼稚園に向かう。

「R、幼稚園は好きかい?」

「うん、すきー」

「幼稚園の何が好きかな?」

「えーと…えーと」

細かい問いかけにはまだ適当な答えを言えないR。いずれもっと突っ込んだ会話が出来るようになるといいなあ…。

「全部?」

と助け舟を出してやると

「うん、ぜんぶ、すきー」

「そうか。それはよかった」

送って行く甲斐もあるというものである。幼稚園に到着し、門をくぐり園庭を突っ切るともう教室の入り口である。

「おはようございまーす」

先生が園児を出迎えてくれていた。

「あ、先生おはようございます。ほらR、先生にごあいさつ」

「…ぉはょぅござぃます…」

Rは下を向いて靴を脱ぎながらモジモジ挨拶。まだ先生に慣れてはいないようだ。

「先生、この子を宜しくお願いします」

「あら、今日はお父さんがお送りなんですね。」

「いつもは時間帯が合わないんですけど、一度はやっとこうかと思って…縁起物というか」

「縁起物?」

「いやいや、ははは、なんというか記念というか…」

動転して変な言葉が出て来てしまった。その内にRは靴を上履きに履き替えており、

「Rちゃんの靴を入れるところはどこかな?」

と言うとちゃんと自分の名前が書かれた靴箱に入れていた。

「よくできたね。じゃ、お父さんはここまでだ。頑張ってね」

「うん…」

Rは先生に手を引かれて中に入っていった。教室に入ったRの姿は所在無さげにモジモジしていたが、それでも前を向いて少しずつ自分の居場所に歩いていった。

親が教室を覗き込むことは、子供達が親を思い出して里心が付いて泣いてしまう恐れがあるのであまりよくない。しかもRといる時は良かったが、ひとり幼稚園を覗き込むオヤジという姿はそれだけで怪しい。

しかしRがチラリとでもいいからこちらを向いてくれないかな…そしたら僕は離れよう…と見守っていたらRがくるっと振り返った。そして硬い表情であるが僕に

「ばいばい」

と手を振った。

「ああ、よかった…」

もうオヤジは行っていいよ、ということである。ここの幼稚園面接の時大泣きしていたのがウソのようだ。こうしてRは少しずつ自分の世界を広げていく…もうどこに行くにも何をするにも親とベッタリ一緒、という蜜月の関係は終わったのである。プチ「娘を嫁がせる父親」気分。

出掛ける前はウキウキウェイクミーアップな気分のちょいワム親父だったのに、Rと別れてひとり会社に行くことの寂しさよ。しかしいつかは通る道であるし、こうして子供の成長の過程をひとつひとつ体感出来ることは親としての幸せである。

やはりRを幼稚園に送って良かった教室に入っていくRの後ろ姿を思い浮かべ、電車の中で目を潤ませていた(ことは嫁には内緒である)…やはり縁起物だったよ。

いや、幼稚園だから園児物かな…。

問題:教室を見てみて、あわよくば僕が先生にお願いしくなったことは何でしょう?
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