ヤムヤム闇ー

夜、家に帰って来ると嫁が若い男と飯を食っていた。

「あれ?どうしたの?」

若い男とは息子・タク(1才)なのだが、普通こんな時間に起きていて、しかもゴハンを食べているなんてありえないので驚いてしまったのである。

「ぱぱ!ぱぱ!」

もう良い子が寝る時間はとっくに過ぎているというのにタクはもりもり食べていた。嫁は苦笑いをして言う。

「いやー。ちょっと昼寝の時間が狂っちゃって。夕方から8時ごろまで寝ちゃってね。ちょっと前に起きたんだけどそれから全然寝ないのよ。お腹がすいてるのかなーと思ってゴハン用意したらこの通り」

「ていうか部屋明るくしたら?」

闇鍋奉行

何故かこの通りランプひとつ点けただけの薄暗い部屋の中のタクと嫁。何やっとるんだチミ達は。闇鍋か。タクの顔がハロウィンのカボチャに見える。

「まあせっかくだから僕も一緒に食べようかな。父子で闇鍋パーティーだ」

子供と夕飯を食べられるのは休日ぐらいしかないので、とっとと僕もゴハンを用意し、タクの隣で食べ始めた。

「愛の流刑地…闇鍋淳一。なんつって」

と言ったところ嫁に無視された。おのれいつか闇討ちしてやる。そんな滑ったオヤジをタクは

「ぱぱ…ぱぱ…」

キラキラとした瞳でじいっと見つめていた。

「タク…」

僕も見つめ返す。暗がりの中で見詰め合う男女が語るのは「愛」であるが、オヤジと息子の場合は

「ぱぱ…(パパのおかずのカニカマちょうだい)…」

タクは僕のカニカマをむんずと掴み「くれ」と目で訴え

「やだ…(僕もお腹減ってるの)…」

僕はそれを阻止しようとし空腹同士が食欲で火花を散らす有様であった。

「あああ。こんな時間にそんなに食べると朝ゴハンが入らなくなっちゃう」

心配する嫁の声などタクの耳に入るはずもなく、結局僕も上目遣いでおねだりするタクに抗う術を知らず、タクにカニカマを全部食べられてしまった。

「ぱぱ…」

タクはまだまだ僕のおかずを狙っており、コメもばくばく食べる。

「じゃあお肉も食べてみるか?」

あまりの食いっぷりの良さに僕も心を打たれ、タクは肉はあまり好きではなく普段は殆ど食べないのだが、この時は勧めてみた。するとどうだろう、よく食べるではないか。いつも肉を食べさせようとするとプイッと横を向いてしまうのに。

もしかしたら案外この暗がりが美味しく感じるように演出しているのかも、そんなことを考えた。諺にもある。

闇鍋に焼き豚、と。

問題:この後タクを寝かせたのだが、僕がやらかした失敗はなんでしょう?
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