多い日も乱心

20世紀に死滅した言葉の中で、男女の肉体的な進行具合を表す隠語、「ABCD」というものがある。

「A」がちゅーで「B」がぺっちんぐで「C」が本番、「D」が妊娠だったと思う。

「私、Aっちゃった」「私、Dっちゃった」など、実際これらの言葉を使用した例は岡田あーみんのマンガでしか聞いたことがない。

そして僕は今日も今日とて嫁にAだのBだのちょっかいを出しつつ

「いざ契ろうぞ」

と誘ったところ

「いえ血が出ておろうぞ」

というようなことを言われた。

「…出血中かね」

「ほら、固いでしょう。ガードルはいてんのよ」

嫁はお尻のあたりをパンパンと叩いた。

「あーここぞって時に使えねーなーもー」

「ひどい!」

いくら僕の子作り用スティックが硬くなろうと所詮は肉の棒(生々しい表現)、ガードルの硬さには敵わぬ。怒張で障子を突き破った元太陽族であるところの現都知事(選挙中)にも無理であろう。

「ガードルはいてたらR(3才の娘)に、『それなあに』って言われちゃった」

「あそ」

「Rちゃんもいずれはくようになるのよーって答えておいたけど」

「Rが…いずれ初潮…」

僕と嫁がCっちゃってDっちゃったところの産物、Rに目を移すとすやすや眠っている。こんなちっこくて可愛いRが、いずれは大人に。今はパパパパと懐いてくれて毎日抱きしめてお風呂も一緒に入って一緒に寝て…それが出来なくなっちゃうんだよなあ。

もちろん成長したRの姿を見てみたいことは山々だが、失う物も多過ぎる。急にセンチメンタルになってしまった僕は、たまらず冷蔵庫からビールを取り出し

「ああ、Rの全てをいつまでも手に触れておくことは出来ないんだね。いずれは父の元を離れて行ってしまうんだね」

Rの枕元で確かそんなことをブツブツ言っていたと思う。Rの寝姿を肴に酒をあおる「娘酒」モードに入ってしまったのであった。もう嫁と「C」をするとか出来ないとかは既に頭の片隅にすら残っておらず…。

男女の肉体的な進行具合を表す隠語、「ABCD」。

女性の事情により出来なくなってしまった場合は

「AB血ー出ー」といいます。

問題:Rが「その日」を迎えた時、僕が心配していることは何でしょう?
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