春分の日・醜聞の日

彼岸の日の今日、法事のために帰っている嫁と子供達を迎えに嫁実家に向かう。

1日だけとはいえ子供達の顔が見れない寂しさといったらない。早く会いたい一身で電車に乗り、終着駅で降りるとそこは霊園のメッカ。墓参りの大群が駅前に溢れていて

「ああ、これが嫁が言っていた『彼岸ラッシュ』か…」

道路も「彼岸渋滞」で、その中を嫁父が車で迎えに来てくれた。

「法事、うちの子はいい子にしてましたか」

「ああそうねー。タク(1才の息子)はずっと坊さんのお経に合わせてウニャウニャ言ってたよ」

「す…すみません。何でもマネしたい年頃なんで…」

嫁実家に着いて「こんちはー」と玄関を開けると娘・R(3才)がスタタタと走って来た。

「R!会いたかったぞ!久しぶりだね!(1日ぶりだが)」

「あらパパやっときたの?はやくあがりなさいよ」

すっかりこの家に馴染んで、家の主ヅラでお出迎え。もっとメイド喫茶風にウェルカムして欲しかった。

「タクは?」

「ねんねしてるの」

仏間を覗くとそこでタクがしかめっ面をして昼寝中であった。今日二十三回忌であった嫁の祖父の遺影がその寝顔を見下ろしているようであり、そっと手を合わす。僕の法事では、どんな人間が残ってどんなやりとりをしているのであろうか。

リビングに入ると嫁がいた。

「おいしいもの食べたいー。はー。実家帰ろ」

前日、溜息を付きながら帰った嫁は、さぞや実家で羽を伸ばしていることだろうと思っていたが、健気にも来月入園するRの幼稚園グッズ作製のため、ミシンをダカダカと走らせながら目も血走っていた。

「子供達が寝てから5時間もかかってやっとこれだけ出来たのよう…」

自然、かあさんがーよなべーをして…という歌が口から出て来た。そんな嫁の苦労を傍目にRは嫁の弟と遊んではしゃいでるし、嫁父と僕は

「まあ飲め」

「は、どうも」

酒飲んでるし、嫁の苦労子知らず親知らず夫知らず。

「えへへ。酔っ払っちった。昼の酒は効くなあ。嫁、あとはよろぴく」

「荷物運びのために呼んだのに、あなたがお荷物になってどうすんのよー!」

僕は子供達に会えたから本望である。

彼岸達成。

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