ほのぼの湖(レイク)が一変して…

河口湖旅行2日目。

前日の日記の通り1日めは子供達と一緒に爆睡してしまい、そのため5時ごろ起きてしまった。

旅館の女将が「朝は湖面に富士山が映って逆さ富士になります」と言っていたのを思い出し、外がだんだん明るくなって来たので

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく…」

枕を抱えながら枕草子を口ずさみつつ窓を開けてみたら

霧
一面霧でホントに真っ白だった。お、女将のウソツキ…と思ったものの、数時間後に霧が晴れ、逆さ富士もくっきりと見えた。昨日の日記では「さすがに飽きた」と書いたが、朝の綺麗な空気の中、青いボディにてっぺんに雪の冬化粧をほどこした富士山はやはり美しかった。

「んじゃま、朝風呂さつっぺってくっぺか」

「そうすんべ」

母と栃木弁で話し、僕は娘・R(3才)と、嫁と母は息子・タク(1才)を連れてそれぞれ浴場に向かった。エレベーターに乗り扉を閉めようとすると、ちょうどRぐらいの女の子を連れたママさんがやって来るのが見えたので、彼女らが乗るまで扉を開けて待っていた。

「あ、どうもありがとうございます」

「いえ」

この何気ないやりとりがその後の驚愕の出来事になろうとは、まだ僕は気付いていなかった。

旅館をチェックアウトした僕らは、送迎バスで河口湖遊覧船の乗り場で降ろしてもらった。湖上から富士山を眺めるのである。船上では危なっかしいので僕がRの手を繋いで客席から景色を眺め、嫁はタクを抱いて僕らがいるところより一段高い、外のデッキに移動していた。

遊覧船が出発してほんの1分後、目の前を黄色いタオルのようなものがヒラヒラと右から左に舞って行った。はて、どこかで見たような。くまのプーさんのイラストが描かれている…っておい。あれはタクがいつも手にしているハンドタオルではないか。

すぐさま斜め上のデッキを見たところ、

「た、タクがタオル投げちゃった…」

口をダッチワイフのようにまん丸に開けて絶句している嫁の姿があった。南極1号ならぬ河口湖1号、というネーミングが頭に浮かんですぐ消えた。嫁の腕の中では、最後の打者を三振に討ち取った後のピッチャーのように、誇らしげな投球フォームのままのタクが。ハンドタオルを追おうともう一度湖面に視線を移したが既にもう跡形もなく…。

タクはいつもハンドタオルを口元に当てていないと落ち着かないので外出時はいつも持たせているのだが、時々わざと落とすことがある。船の上でそれをやってくれるとは。

「タクー。お前はどうしてぶん投げるのだ」

「たおる」

自分で投げたくせに「タオルをくれ」と要求するタクに

「あなたが投げちゃったんでしょ!」

嫁は悲しいやら面白いやら複雑な表情をしていた。ア○ルに入れられた時の顔みたいだと思った。

「やっぱり富士山には雪があった方がいいね」

「んだべ」

湖面からの景色を母と眺め、改めて富士山は冬化粧をしていた方がよい、と話をしながらしみじみとジャパニーズワビサビの心に浸っていた。ところがその穏やかな心を掻き乱すものが現れた。

オッパイである。

いや、胸元がばっくり割れ、男を挑発するような姿のお姉さんである。お顔もこののんびりした観光地には似つかわしくない派手なお色気系美人。嫁や母に感付かれないようにチラチラ盗み見するのが大変だったのだが、そのお姉さんの脇にチョコンと小さな女の子がいることに気付いた。

旅館のエレベーターで一緒になった子ではないか。ということは、このお姉さんも同様にエレベーターで一緒になったママさんということになる。

「ええええええ?」

エレベーターの中の彼女は、「すっぴんだから眉毛ないのか」ぐらいはチラリと思ったが、それも既に殆ど忘却の彼方にあった。それ程印象がなかった。それなのに、あのママさんがこのお色気姉ちゃんなのか!化粧は恐ろしい。さすが「化ける」という字が付いているだけはある。すっかり視線は富士山よりこのお姉さんに釘付けになってしまいどうしてくれる。

今回の旅行で気が付いたこと…富士山と女性は冬化粧ですんごい変わる。

今回の旅行で生まれた疑問…何故うちの嫁は変わらんのだ。

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