卑猥なるマンネリ

マンネリである。

寝床で僕が嫁に「いいじゃないか」と迫ると手刀で跳ね返されプイと背を向けられる。これは水戸黄門が8時45分に印籠を出すと悪が倒されるように、我が家で何度も繰り返されるマンネリである。僕が陰嚢を出すと嫁に倒される。

嫁が駄目なら息子がいるさ、とタク(1才)に

「タク~。お父さんと抱き合ってモフモフしてねんねしよう。こっちおいで」

と誘うのだが、タクは「まま!」と叫んで嫁に抱きついてモフモフしていた。

「あらタク~。かわいいね~」

嫁よ。僕は駄目で息子はいいのか。若い肉体がいいのか。それにタク。お前も女体がいいのか。さすが僕の息子。血は争えない。すなわちブラッド・キャント・ファイト。

それならば、息子が駄目なら娘がいるさ、とR(3才)に

「Rちゃん、お父さんとねんねしよう」

と迫ると嫁譲りの手刀で跳ね返され、プイと背を向けられてしまった。さすが嫁の娘。血は争えない。すなわちブラッド・キャント・バトル。

「Rちゃーん、寂しいよう~」

全ての者にフラれ、親の威厳もあったものではないダダッコぶりを見せると、Rがくるりと振り返り、仕方ないわね、という顔で

「はいはい、じゃあちゅーしてあげるからね」

ちゅっと僕の唇に口づけをしてまた背をむいてしまった。

「うわ…ちょっと…R…」

あまりにも一瞬の不意打ちだったので呆然となった。というか鼻血が出そうになった。何この色っぽい男のあしらい方。Rは一体どこでこんなことを覚えたのだろう。嫁にはこんな艶のあることはしない!悲しいことにしない!3才の娘の方が親父の扱いを知っておるわ。

Rにツンデレな接吻をされ、もうこのまま永眠しても「我が生涯に一片の悔いなし!」と叫べる程浮かれあがってしまったが、それでも冷静に考えると嫁息子娘と全ての者にフラれたことには変わりがないので、振られ気分でロックンロールな僕であった。

振られ気分でロックンロールとは、「TOM CAT」というグループが1曲だけヒットした歌のタイトルである。すなわち一発屋である。

嫁と一発も出来ない僕はそれにも劣るわけであるが…。

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