ひみつのうXこちゃん

女の子のこういうことを話すのは可哀想なのかもしれないが、娘・R(4才)は便秘である。1週間溜め込むこともしばしば。

つむじがふたつあるとか眉毛が太いとか、つまらないところばかり僕に似てしまった。呪われた血の不憫な娘よ。

一昨日の夜、「出る…」とRがプルプル震えていたのですぐさまトイレに連れて行ったのだが、座った時には便意のビッグウェイヴが去ってしまっていたようで不発に終わった。次は頑張ろうとパンツをはかせようとすると、ちょっとだけ付いているのであった。

「パパ、パンツ替えて」

「はいはい。うんちさんがここまで来てるんだから、次はもうちょっと頑張ってみような」

パンツを洗濯機に放り込もうとしたら

「汚れ物を一緒に入れないで!」

嫁の鋭い声がしたので恐れ戦いた僕はバケツに水を汲んでそれに浸した。

「Rちゃん、溜めてちゃダメなのよ。もっと頑張らなきゃ」

嫁はRにも些か強めの口調で言った。

「でも出ないものはしょうがないし、な」

便秘持ちの気持ちはベンピストにしか分からぬ。出物腫れ物所構わず、と言うが逆もまた然り。出したい時に出せりゃコーラックはいらんぜよ。

昨日の朝もまたRが催したのでトイレに連れて行ったがまた不発。パンツも同様に少し汚れていたので、再びバケツ行きとなった。

「替えてばっかりじゃパンツがなくなっちゃうよ」

嫁がチクリと言った。

そして今日、一昨日から数えて3度目のトイレエマージェンシー出動。うんちさん、今日こそは出てくれ。3度もRを抱えてトイレに駆け込んだ僕を労ってくれてもいいではないか。うんこの礼、じゃなかった三顧の礼である。

そう考えながら「うーん」と踏ん張るRをガンバリーナフンバリーナと応援する。フンバリーナ。それはバレリーナとよく似た語感。

以前テレビでバレリーナが映っていた時、Rが興味深そうに見ていたので

「Rもバレリーナ目指してみるか」

と言ったところ「やだ」と返事されてしまったことがある。アイドルやチアリーダー等、女の子が憧れそうな華々しい職業は、Rは見ることは好きだが自分は将来なりたくはないらしい。引っ込み思案な性格の娘。

そんなRも今フンバリーナとしてならバレエの数々の名作を舞えることだろう。すなわち「直腸の湖」「お尻割り人形」等。

「頑張れ、R。今お前は踏ん張るプリマだっ」

「パパ、でない…」

「そうか」

結局今回もダメであった。またもやパンツは汚れていた。

「また替えなきゃな」

と言うと

「ママには内緒にして…」

なんとRは嫁には言わないで欲しいと言うではないか。いつの間に「内緒」という言葉を覚えたのだろう。パンツを替える度にチクチク嫁に言われる事が嫌だったようである。

「分かったよ。ママに見付からないようにさっとやろうな」

嫁に怯えるRの可愛さと、闇に葬る駆け引きを思い付くほど賢くなっていたことへの感動で、否応なく引き受けてしまった。

今度は嫁の目を盗んでサッとパンツを水洗いして洗濯機の中の衣類の奥にねじり込み、ばばっと替えのパンツを取ってRに穿かせた。どうせバレるだろうが嫁もいちいち後追いしてまでチクチク言うまい。

トイレの中で結んだ、Rのお尻に関する密約。Rとの初めての秘密事なのでこれはとても重要なのである。

すなわちヒップシークレットである。

問題:僕の故郷にある某寺の恐ろしいトイレとはどんなトイレでしょう?

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