くちづけ、どうどす?

嫁がちゅーしてくれない者は幸いである。

「ねえパパ、ちゅーしよ」

代わりに娘がせがんでくれることだろう。娘・R(4才)のこぼれるような頬をそっと唇で押さえると、春風のような心地良いストリームが体を駆け抜ける。

全身の血が下半身に駆け抜けるエロス目的のくちづけとは違う、アガペエレベルの至高のくちづけである。アガペエとは二本の指で鼻を押さえること。そりゃカトチャンペエだ。

「こっちにもちゅーして」

右の頬をくちづけされたら左の頬を差し出すR。まるでクリスチャンのような。左の頬にもそっと唇を当てると

「たっくんも!」

息子・タクもせがんできた。

「たっくんもちゅーしたいのか?」

「はーい」

こちらはクリスチャンというよりもイクラチャンだった。

「はい、じゃあお顔を近付けてー」

んー、と唇を寄せるといきなりタクの頭がゴオッと近付いて来た。ヘッドバットが飛んで来たのである。

「いてええ!タク、頭じゃなくてお顔…」

鼻の頭にモロに喰らい悶絶した。お前はまだチューのやり方が分かってない…フガフガと倒れ込んでいると、今度はRが僕の首に手を回し抱きついた。そして

「ぶちゅーーーー!」

正面から思い切り唇を押し付けて来た。ガッチリ抱き締められ、ぶっちゅりくちづけされ、僕の頭は桃色に染まってしまった。これはなんという濃厚なくちづけ。

息が止まるようなくちづけを~。

まさにラブレター・フロム・カナダ。恍惚としてつい舌まで入れそうになってしまったほど。あ、危なかった。子供のちゅーレベルを超えていたものだったので、ついいつもの癖で…。Rはようやく僕から腕と唇を離し、

「パパだいすき」

「パパも…大好きだよ」

もう死んでもいい。天の国は僕のものである。僕はパラダイスに到達した。パラダイス銀河(シャブはやってません)。

「たっくんも!たっくんもちゅー!」

はっと我に返るとタクももう一度くちづけを所望していた。

「おお、お前とも熱い抱擁でくちづけを」

と両手を広げるとまたもやヘッドバットがゴン。

「お…お前わざとやってないか?」

ベタベタのコントか。まじで痛いんすけど。まさか僕とRを嫉妬し、僕を亡き者にしようとしている、とか。

抱擁でくちづけどころか
法要で塩漬けにされそうである。

問題:日本で最古のキスが書かれているのはどんな文献でしょう?

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