咲かせて咲かせて桃色定期

R
川崎ハロウィンパレードで娘・R(4才)が仮装していた白雪姫。

この先っぽにリンゴがついたスティックがなくなってしまった。家に帰るまで気付かなかったのである。最早どこで落としたのか分からない…。

「あーあ」

嫁はガックリ来ていた。

「ま、あれだけの人混みだったから、どうせすぐ折れるか壊れるかと思ってたし」

僕は落ち着いて答えた。落ち着いて、というのは実はフリだけで、僕は既にスティックなんかより余程重要なものをなくしていたことに気付いており、密かに脂汗を流していたのである。

それは、定期券。なくした場所は川崎駅の精算機で間違いない。定期券で乗車し川崎駅で精算しようとした時に

「僕チンはハイカラでハイテクだからPSMOで精算するんだキャッシュレスファックレス~」

よしゃいいのに慣れないことをしたものだから、PASMOと精算券を取っただけですっかり全て回収した気になり定期券を忘れたに違いない。

こんなマヌケな事嫁には言えないわ…とじっと黙っていたのである。嫁の目を盗み、こっそり駅に電話したらなんと届けられているとのこと。見知らぬ親切な人ありがとう…。僕の定期は新宿や渋谷に通じ、わりとおいしい路線を乗れる。これをネコババすればいわば女湯と女子高フリーパスゲットだぜ、みたいなものである。しかも6ヶ月ほぼ丸々使える。

金額は八万円弱。それが無事だとは。アルプス八万弱、アルペン踊りも踊りたくなってくるというもの。

ついでに昨日のパレードのスタート・ゴール場所だったラチッタデッラまで足を伸ばしてみた。昨日の熱気はどこへやら。道端に止まったドリンクと軽食を売るバンに人がちらほらいるだけで、オレンジ色のライトが石畳の小道とイタリア風の建物をぼんやりと照らす。ちょっと薄暗くなったあの先の角あたりから、それこそジャック・オ・ランタンがぼうっと現われそうな。

キリコ
キリコの絵を思い出してしまった。昼間バカ騒ぎするより今この時こそハロウィンの情景にふさわしい。そう思った。ひょっとしたらRのスティックが落ちてないかな?淡い期待を抱いて来たが、一帯はやはり綺麗に掃き清められていた。

しかし僕はこんなところで何をやってるんだか。嫁に黙って再び川崎くんだりまで来て、その理由が定期を無くして、というパットしない内容。あーあ冴えないことであるよ…とトボトボ駅に向かったら

ちくらっぽ
まさかこんなところで栃木弁を見かけるとは思わなかった。「ちくらっぽ」とは栃木弁で「嘘」。今の僕にぴったりだな。嫁に嘘ついて風邪も治らないし、なんと冴えないことであるよ。

まあ定期券も戻って来たことだし、これで定期を養うことにしよう。なんつって。

どこでも使える「性器券」とかないかなーとか考えてしまった僕はやはり風邪菌が脳まで回っていると思う。

問題:栃木弁で「この馬鹿野郎!」という時はなんと罵倒するでしょう?

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