留守番長

嫁がキムタクの映画を観に行きたいのだと言う。しかももう前売り券も買っているという。

「留守番してるから行っておいで」

そのようなことを言い出すのは滅多にないので引き受けたが、いくらキムタク好きだからといってそこまでするか。僕は好きなアイドルがいたとしても映画まで観ようとは思わないなあ…。実家で氷川きよしのポスターを貼りまくっている僕の母を嫁はもう笑えまい。

こっそり嫁が行った後、娘・R(4才)と息子・タク(2才)に昼ゴハンを食べさせた。

「ママは?」

「えーと、お買い物」

「ふーん」

ゴハンの後は、ふたりともハナ垂らしているから外には出さない方がいいだろうと思い、画用紙とペンを出してお絵描き開始。

「たっくんは何描いてるの?」

「ばいきんまん!」

「そうかそうか、上手だね。Rちゃんは?」

「見ないで!」

画用紙を覗き込もうとするとえらい剣幕で怒られた。

「そんなふうに言われちゃうとパパ泣いちゃうよ」

「じゃあ泣けば!」

ツンデレ喫茶
ツンデレ喫茶か。

どうもRはハナ垂れてるのと寝不足のせいか機嫌が悪い。ひょっとしたら眠いのではないだろうか。ツンツンしながらRがお絵描きしているのを遠巻きに見守っていると、着々と毒々しい絵が展開されている。

「どんな絵なのか教えてよー」

「パパじゃま!」

ツンデレ喫茶
やっぱりツンデレ喫茶か。

僕はいじけてひとりインターネッツでもやってるかとパソコン部屋に引き篭もったら、ようやく絵が完成したらしいRがやって来て絵の解説を始めた。

ツンデレ喫茶
「しゃぼんだまがたまごやきにぶつかって、ライオンさんが欧米か!」

「…そうか、よくわかった」

うわあちっとも分からない。このように支離滅裂なことを延々と言っている時は眠いのである。

「ねえパパ~。あそぼ~。プリキュアみる~」

Rのツンデレの「デレ」の部分が発動したようだ。決められた時間以外にはテレビやビデオを見せてはいけないのだが、嫁はキムタク見てるのでいいか、とプリキュア鑑賞タイムに突入。こうしてドタバタと遊んでいる内に、ようやく嫁が帰って来た。

「映画どうだった?」

「キムタクかっこよかったあああんあん」

嫁はヤンデレ(病んでいるデレデレ)のようである。

問題:嫁が僕に買って来たおみやげはなんだったでしょう?

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