2007年10月11日
天国のキス、もしくは地獄の
我が幼子達の潤いあるほっぺたや唇を見ていると、くちづけのひとつでもしたくなるものである。
僕はいつも子供達にねだっている。まずは息子・タク(2才)。
「タク、ちゅーさせてー」
「やだ」
そっけない拒否り方は深夜のまぐわいを拒む嫁のそれ。愛しいけれどニクいお方。ちゅーを拒むならそれもまたよし。それがタクの人生。しかしこの父がタクぐらいの時は既に隣のタカコちゃんと毎日のようにちゅーをしていた。お前は父を超えられぬ。ふーんだ。ふーんだ。
「じゃあRちゃん、ちゅーしてー」
息子がダメなら娘・R(4才)である。
「お絵描き終わったらしてあげるから待っててね」
Rはタクよりやはり大人で、というより大人顔負けのたしなめ方で僕は
「は、はい」
としか言えなかった。それから待たされること十数分。
「お絵描きまだー?ちゅーまだー?」
最早どちらが親か分からなくないほど駄々っ子になっていた僕の元に、Rがようやくやって来た。
「いっぱいしてあげるからね」
と僕の首に腕を回して来たのでドキッとしたのも束の間、僕の唇を始め、ほっぺた、首筋、おでこ、まぶたにまでぶちゅぶちゅと濃厚なくちづけを連打するではないか!
「うひゃおおおおお」
「キッスは目にして」とはこのこと、「息が止まるようなくちづけを…」とはまさにこのことでありまするうううう…と80年代歌謡曲のフレーズが頭を過ぎり、Rのくちづけに陶酔する数秒間。しかしそれは何時間にも及ぶ恍惚のひとときにも思えた。やがてRは僕から離れ、
「はい、おしまいよ」
涼やかな目で僕を見、すっと指で己の唇をぬぐった。な、なんなんだこの一仕事終えた後のような表情は。まるでおしゃぶりテクニークに自信を持つ女性が、じゅるっぽんじゅるっぽん舐めまくった後、上目遣いで
「どお?」
と聞いて来る時のまなざしそのものだ。どこで覚えたんだろう。もしかして幼稚園で「おっぱっぴー」などと共に変なことを教わって覚えて来たのではあるまいか。先生が自ら「でもそんなの関係ねえ!」とかやっている幼稚園である。どんなものが流行っているか分かったものではない。「チューごっこ」とかが流行ってたらどうしよう!
こんな日活ロマンポルノのような濃厚なくちづけではなく、小鳥の嘴がチョンと触れ合う程度であったならばこれほど陰々滅々と悩むことはなかったのに。また要らぬ心配がひとつ出来てしまった。
くちづけは災いの元。
問題:逆にRが僕にしてくれとせがむことは何でしょう?
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