巨峰の凶報

夕飯に巨峰が出た。

僕は巨乳は好きだが巨峰は嫌いだ。皮とか殻のある食べ物は剥くのがめんどい。嫁に対して

「可愛い女の子が皮剥いて種取って、あーん、ってしてくれなきゃやだ」

「百歩譲ってお前でもいいから皮剥いてくれ」

と常々ほざいていたら、いつの間にか僕だけ果物やカニなどが一切与えられなくなってしまった。この日も巨峰があったのは嫁と子供達の皿にだけ。僕の皿に載せる気は皿だけにサラサラなかったようである。

但し自分はさておき子供達の分については剥いてやらなければなるまい。嫁はデザートのつもりで盛ったのだろうが、子供達はまず巨峰に手を伸ばしていた。

「どれタク、皮を剥いてやろう」

息子・タク(2才)を巨峰を取ろうとすると

「たっくんが、むく!」

ぐうたらなオヤジとは正反対で、ぴりぴりと真剣に少しずつ剥き始めた。片や娘・R(4才)も食べたい一心で、剥きながらちょっとでも果肉が現れるとすぐさま食らいついており、ふたりとも父が思っている以上に上手い。特にタクは神経質なまでにひとつひとつ綺麗に剥いている。

「タク、じょうずだね」

「たっくん、もうすぐ2才だから、むくの、できるの」

「いや、もう1週間前に2才になったんだよ…」

「…」

会話もそぞろにタクは皮剥きに集中していた。ただ一向に食べる気配がない。

「タク、剥いたの食べれるよ?」

「たっくん、もうすぐ2才だから、むくの、できるの」

「いやあのね…」

「おてて、拭いて!」

言うことを聞かないどころか、果汁でベタベタになり皮の切れ端が引っ付いた手を拭え、と僕に命令するほどのストイックぶり。タクはひたすら剥き続け、遂に全ての粒を剥き終えた。

「すごいね。全部剥けたよ」

剥けたのはいいんだが、そろそろゴハンを食べて欲しい…と思っていたら

「ふー。ごちそうさまでひた」

「おいこら一口も食べてないじゃないか!」

巨峰どころかゴハンも一口も食べず、さっさとエプロンを外してスタコラと隣のオモチャ部屋に行こうとするではないか。

猿にラッキョウを与えると皮が無くなるまで剥き続けるという。猿と同じではないか。猿にラッキョウ、タクに巨峰ときたもんだ。

「こらタク、ゴハンを食べなさーい」

怒りの葡萄になってしまった。

問題:最近タクが大好きなお菓子は何でしょう?

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