想われオヤジ

仕事に行っている日は、子供達が起きている内に帰れることはとても少ない。

その日の行動は嫁から聞くことになる。

「R(3才の娘)がね、自分でパーカー着れたのよ」

「へー。上着が着れるようになったとは」

「パパにも教えてあげるんだーって言ってたよ」

「おお、僕がいない時でも僕のことを想ってくれてるんだね」

そういう話を聞くと涙が出ちゃう。だって、女の子だもん(今年、年男である)

「あと児童館でおもちゃ作ったときも『パパにも教えてあげよー」とか言ってたよ」

「ああ、パパはいつでもRの心の中にいるよ!あと夜中とか家にいるよ!」

「それとベランダから空を見上げて『パパ早く帰って来てねー!」ってよく言ってる」

「うおおおおん!」

もう涙が止まらない。Rは3ヶ月前に死んだ父をいつまでも待っているのです…。という話だったら超滂沱の感動の話ではないか。では僕は死ななければならないので早速練炭を…っていやあん。

翌朝、Rが起きると

「パパ、うわぎ着れたのよー」

ほらほら来たぞ、早速僕に言ってきた。僕は待ってましたとばかりに

「じゃあ見せてみて」

と答えるとRはえっちらおっちらパーカーを着始めたのだが、どうにもうまくいかず

「できないいいいい!」

うわああんと泣いていじけてしまった。

「またやってみたらいいさ。でも昨日はほんとに着れたの?」

思わず上着ではなく濡れ衣を着せてしまった僕であった。


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