かゆいところに手を届かすな

湿疹がひどい。

両足にぽつり、ぽつりと赤く丘のように盛り上がっている。そして非常にかゆい。努めてかかないようにし、かくのは夜の例のいつものアレだけ、と心に決めているのだけれども、寝ている内にかいてしまっているのか1日1個ぐらい増加してしまっている。その上鼻風邪もひいていてなかなか辛い今日この頃である。

ひとまず湿疹の原因を探らなければならない。

「なあ…お前達、かゆいところない?あとR(3才の娘)とタク(1才の息子)も湿疹できてない?」

「別にないよ」

「…じゃあとりあえずは安心した」

家にダニがいるんじゃないかなどとストレートに言うと

「わたしの家事にケチつけるわけー?!」

恐ろしい嫁が逆上し、僕は湿疹の上に失神して失禁してしまう恐れがある。

「なによ、あなた、かゆいところあるの?」

「うん、まあ、ちょっと…」

ちょっと恥ずかしいことであるのでそれ以上話すことはせず、嫁を黙って押し倒したところ

「いやよ!湿疹とか鼻水とか伝染さないで!」

「なに!人をえんがちょ扱いしたな!」

「抱かれるならタクのようなきれいな体がいいわ」

横で寝ている汚れなきタクにそっと手を当てて布団に潜ってしまった。おのれ、ぐうの音も出ない。

翌日、コソソコと薬局で相談して軟膏を買って来た。しかしそれが嫁に見つかってしまった。

「そんなにかゆいの?ちょっと見せて」

「恥ずかしいからやだ」

「見せなさいって」

ずどうと詰め寄る嫁の押しの強さに負けた僕は、いじめられっ子のようにズボンを脱いだ。両足に隆起する赤い湿疹の丘が露わになってしまった。ああ恥ずかしい。これも恥丘というのだろうか。恥丘は赤かった。

「あらー。かいちゃだめよー」

何故新年が始まって10日しか経ってないのに、早々にこんな辱めを受けなければならないのか。今年は亥年であり僕は年男なのだが、その亥年のキャッチフレーズは

猪突湿疹であるようだ。

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