としまえんコスプレ天国。


近場の遊園地、としまえんの入場料がタダ同然なっている、と嫁が言うので行くことにした。

「あなた、コスプレイベントもやってるらしいよ」

「ふーん、じゃあRもピノコのコスプレさせて行こう」

「Rちゃんもいたりして!」

「はうう…」

急に嫁の口から僕のお気に入りの美少女・Rちゃんの名前が出たので心の臓が止まりそうになった。RちゃんとRは名前が同じである。ていうかRちゃんの名前をそのままRに付けたのである。

毎度毎度の説明で気が引けるけれども、僕はRちゃんにゾッコン(死語)であった。しかし結果的には嫁にズッコンすることになったのだが、Rちゃんは近所のゲーセンに勤めた後、メイド喫茶でメイドをやっていたりした。そして現在、見捨てられたのか音信不通である。

わりと不細工な女の子が多いメイド喫茶の中にあって一際美少女っぷりを発揮していた彼女は、多くのメイドの例に漏れずコスプレイヤーでもあった。

「近場のイベントだからいるかもしれないねー」

「うん、まあ、可能性はゼロじゃないけど…」

そんなマンガみたいに感動的再会があるわけないじゃないか…と出掛けると、駅で近所の家族にバッタリ会ったので、どこに行くのか尋ねてみると。

「としまえんです」

「わあ、同じですね」

「フリマやってるんで」

「あ、そういえば今日フリマもやってるんですよね」

ウチはコスプレ目当てだなんて言えない…と嫁とヒソヒソ話しながら電車に乗った。としまえんの入り口には

「本日コスプレイベントが開催されております」

という貼り紙がされており、まるで「変なカッコの人がうろついてるけどヨロシクネ」とでも言いたげであった。実際中に入ると、肌も露わなコスプレギャルをキャイーンの天野を数倍キモくしたカメラ小僧が追いかけ、やたらと愛想の良いショッカーの戦闘員がそこらのオヤジに挨拶し、喫煙所では伊達政宗の鎧を着た女の子がクレープを頬張っている、という東京ディズニーランド等の普通の遊園地ごときではとても演出出来ない、終末的カオスを漂わせていた。

「あっ!へんなひとー!」

Rなどは露骨に指差してるし。ゴーカートの前で並んでいた時は、小学生くらいの女の子に

「ねえ、あの人達なにー?」

と聞かれたおばあちゃんが

「あれは…ああいうのが好きな人達なの…」

と答えた後

「…としか言えないわよね~。私には分からないわ」

僕らに苦笑いを見せていた。

「Rちゃんいないわね」

「そりゃいないだろ普通…」

「ブラックジャックもいないね…いたらRと写真撮ろうと思ってたのに…」

「あ、雨降ってきた」

「そろそろ帰ろうか」

「うん」

遊園地もコスプレも全て幻なのさ…とコーヒーを啜りながら、「あ、こち亀の両さんがいる」などと眺めていた僕であった。

もちろんコーヒーはコスプレッソである。


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